廣津留すみれ、紀平凱成らがトーク&リサイタル 「スタクラフェス in TOSHIMA」自由学園明日館の4公演をレポート

2022.12.2
レポート
クラシック

『イープラス presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL'22 in TOSHIMA』

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2022年11月13日(日)、3年ぶりとなる『イープラス presents  STAND UP! CLASSIC FESTIVAL』が開催された。前回(2019)は横浜赤レンガ倉庫特設会場で行われたが、今回は、株式会社イープラスと豊島区との共同開催で、豊島区制施行90周年記念事業の一環として開催。「in TOSHIMA」を掲げ、GLOBAL RING THEATRE(池袋西口公園野外劇場)、東京芸術劇場コンサートホール、自由学園明日館を会場に催された。

SPICEでは、当日の模様を3つのレポートで紹介する。ここでは、廣津留すみれ(ヴァイオリン)、紀平凱成、髙木竜馬、石井琢磨(以上、ピアノ)が登場した、自由学園明日館(みょうにちかん)での4公演を紹介。それぞれ、40分~1時間のトークとリサイタルを行なった。

自由学園明日館

自由学園明日館は、池袋駅から歩いて5~6分ほどのところにある。

1921年に自由学園の校舎として開校した明日館は、アメリカ人建築家フランク・ロイド・ライトの助手であった遠藤新による設計で1927年(昭和2年)に完成した。明日館の講堂では、いまではさまざまな催しが行われ、クラシック音楽のコンサートも頻繁に開かれている。

【1】廣津留すみれのトーク&ヴァイオリンリサイタル @ 自由学園明日館 11:30~

廣津留すみれ

ヴァイオリニストの廣津留すみれは、高校卒業までを地元の大分市で過ごした。その後、ハーバード大学を卒業し、ジュリアード音楽院の修士課程も修了。2020年に帰国してからは、ヴァイオリニストにとどまらず、テレビのコメンテーターや講師など多岐にわたる活動にたずさわる。

廣津留のトーク&ヴァイオリンリサイタルは、午前11時30分に開演した。自由学園明日館での演奏は、初めてとのこと。彼女は高校時代、イタリアのIBLA国際ヴァイオリンコンクールでグランプリを受賞。この講堂の木の造りを見て、当時のコンクールのホールを思い出したそうだ。

いつもは、「講演・演奏会」として、15分の講演ののちに演奏し、10分の休憩をはさんで再び演奏することが多いという。今回は60分公演で、冒頭にトークを置いた。

廣津留すみれ

プログラム冒頭は、エルガーの「愛の挨拶」。しなやかな音楽の流れのなかで、ロマンティックなメロディを紡ぎ上げていく。彼女の音楽の勢いはとても心地よい。クライスラーの「美しきロスマリン」も、歌心に満ちた演奏を聴かせてくれた。

「前奏曲とアレグロ」もクライスラーの作品。廣津留はこの「前奏曲」に、“ミシミシ”と名前をつけているという。「前奏曲」冒頭のヴァイオリンパートのフレーズは、ミとシの音で作られている。その冒頭部分から、廣津留は高い集中力を発揮し、あふれんばかりのパッションを音楽に注ぎ込んでいく。「アレグロ」でも、典雅な趣のテーマをたっぷりと歌い上げていた。

廣津留のトークは実に興味深い。父親がたくさんCDを持っていて、彼女は好きなのはパールマンのCDで、そのなかにクライスラー作品も収められていたという。ジュリアード時代、エレベータのなかで偶然にパールマンに遭遇したエピソードも披露。その彼を題材とした絵本『イツァーク ヴァイオリンを愛した少年』(音楽之友社)の翻訳を依頼され、今年9月に出版された。

廣津留すみれ

メキシコ出身のポンセの作品「エストレリータ」も弾いた。タイトルはスペイン語で「小さな星」を意味する。ピアノの多彩なハーモニーに支えられ、ヴァイオリンは繊細な息遣いを通してしっとりとした音でメロディを奏でていく。内面の情熱を手繰り寄せるように丁寧に表わしていたのが印象的だ。

プログラムの最後を飾ったのは、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」。この曲を、廣津留は高校時代に文化祭で演奏した。その文化祭を訪れていた南こうせつが彼女の演奏を聴いていたことを、のちに南と共演したときに知ったそうだ。

冒頭からラプソディックな雰囲気を漂わせ、艶やかなポルタメントを聴かせる。振幅の大きな感情表出のヴァイオリンに、ピアノも大胆な息遣いでそれに応える。

河野紘子

共演したピアニストの河野紘子は、幅広いジャンルのアーティストから厚い信頼を得ている。廣津留も彼女と何度も共演しており、「本番で、“こうやってみよう”と急にやっても応じてくれる、信頼を寄せているピアニスト」だと言う。

アンコールは「花は咲く」。

リサイタル終盤、演奏中以外は「写真を撮っていただいても良いですよ」と客席に気さくに話しかけていた。廣津留の日本人離れした情熱みなぎるヴァイオリンと、河野の高度なアンサンブル能力を存分に堪能できたリサイタルであった。

廣津留すみれ

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