佐藤竹善 恒例のクリスマスツアー開幕直前のリハーサルスタジオで訊いた、ライブへの心持ち、選曲の理由、今後の活動について

2022.11.24
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――wacciの曲をやりたいとふと思ったのは、具体的に「歩み」という曲をやりたいなということだったんですか。

そうです。そしたら今年に入ってから彼らがどんどん活躍して……。昔、彼らが47都道府県ツアーで、客が1人もいなかったっていう報告を受けたりしてたんですけど(笑)。

――竹善さんも最初はやっぱり「別の人の彼女になったよ」という曲で彼らを知ったんですか。

いや、その曲は知らなかったんです。後で知ったんです、その曲がネットで盛り上がってるというのは。最初は、小田原のショッピングモールのイベントで共演したんです。その前からいい曲だなとは思ってたんですけどね。ドラマの主題歌で聴いたときとても響いたんです。それで、その小田原のイベントでwacciがステージをやって、その後に僕が出て、そのアタマのところで「歩み」のワンフレーズを歌ったんですよね。その後、彼らに“これ、カバーしたいんだけど”と話したら“ぜひ”と言ってくれたので。実はwacciのメンバーはボーカルの橋口(洋平)くん以外はみんなジャズとかクロスオーバーが大好きな、演奏も上手なミュージシャンばかりなんですよ。そんな彼らが橋口くんとやる時はJ-POPをやるっていう。メンバーみんながシングライクをよく知っていて、それこそ僕らのサポートミュージシャンたちの世代にも憧れてミュージシャンを目指したような人たちなんです。橋口くんも幸い僕のことはよく知ってくれていたので、それでスムーズに話が進みました。橋口くんとは、今日もメールをやり取りしたばかりですけど(笑)。

――今の話もそうだし、「人生に乾杯を!」も確かそうだったと思うんですが、イベントで一緒になったときに聴いて“いい曲だな”と思ってカバー、ということを竹善さんは普通にやりますよね。

「人生に乾杯を!」は、FM802のイベントが京都のお寺であったんですけど、その時にコーヒーカラーが一緒だったんです。そこでコーヒーカラーの2人がやっていたのを聴いてすごく感動して、“いつかこれカバーするから”と、そのインベントのときに伝えたんです。実現したのは、そこから15年後になりましたけど。パリなかやまくんはその約束を覚えててくれて、“約束を果たしてくれましたね、竹善さん”と言ってくれました。

『佐藤竹善Your Christmas Night 2021』より

『Cornerstones』というタイトルは僕の土台という意味なので、僕としてはやっぱりパーソナルな理由をまず第一に掲げることが重要なんです。

――竹善さんのなかでは、“いい曲だな”と思ったから取り上げるというのは自然なことなんでしょうが、プロのミュージシャンがカバーをやるとなると、デビュー前の10代の頃に好きだった曲か、プロになってから世に出た曲の場合はやはりヒットの度合いやメーカーのことなど、現実的な側面を考慮して選ぶことが多いと思うんです。

そうですね。僕も、カバーアルバムを始めた頃はカバーをやる人がほぼいないようなご時世になっていましたし、カバー自体も非常に否定的な空気に溢れた時代になってましたから。そんな頃、全部洋楽で、シングライクにダイレクトに影響を与えた楽曲たちに限定し、しかもみんながよく知っていそうな曲を選ぶという、つまり、選曲については個人的なバックボーンはしっかりありながらも有名な曲を選ぶということにして、アレンジをどう個性的にするかという感じで固めていったんです。けれど、時代が進むにつれてカバーというものに対する世の中の空気はだんだん肯定的な感じになっていったので、レコード会社から“作りませんか”というオファーが続いていったんだと思います。ただ、いろんな人がカバーアルバムを作るようになってくると、たいがいの人たちはいま言ってくださったような感じで作るわけですよね。それは別に悪いことだと僕は思ってないんです。ある曲がヒットしたら、それを無数の人たちがカバーして、“○○さんのが好き”ということが積み重なって、その曲が有名になっていくっていうのは絶対あっていいことだと思ってますから。

――洋楽では、そういうふうにしてスタンダード化した曲も少なくないですよね。

そうです。でも、『Cornerstones』というタイトルは僕の土台という意味なので、僕としてはやっぱりパーソナルな理由をまず第一に掲げることが重要なんですよね。特に、これだけいろんな人たちがカバーアルバムを作っている状況の中では、自分らしさというものをより前に出さなければいけないなと思っています。と言いながら、僕のなかではずっと変わってないんですけどね。選曲の仕方にしても、最初のアルバムで言えば、ボビー・コールドウェルの「What You Won’t Do for Love」は誰もが知っている曲ですけど、エリック・タッグの「PROMISES PROMISES」は誰も知らない曲ですよね(笑)。今回のアルバムも同じです。「ロンリーハート」のようなベスト10ヒットも選べば、オフコースの「青春」やコーヒーカラーの曲も選ぶ、っていう。僕の中ではそのバランスは全く変わってないんですけど、世の中の状況が変化しているので、多分一般のリスナーの皆さんには昔よりもニッチに映ってるとは思っています。

『佐藤竹善Your Christmas Night 2021』より

ジャズミュージシャンたちとやれること、ジャズサウンドの楽しさを皆さんに味わってもらえるということが、本当に嬉しい。

――今回のツアーの話に戻すと、「人生に乾杯を!」にしても、今度はこのメンバーでやる「人生に乾杯を!」になるわけですよね?

そうですね。
 
――アレンジもこの編成でのアレンジということになるわけで、そこがライブに出かける人にとっては聴きどころのひとつということでいいですか。

もちろんです。“これはこれで、いいね”ということにならないと取り上げるべきではないですから。“ジャズのトリオでやるとこんなまた感じになるんだ”と。“そうすると、言葉や世界観、メロディがこんなの違って聞こえるんだ”というふうなアレンジは何んだろう?っていうことで、昨日、今日とリハも進めてます。日本語の曲に関しては。

――クリスマススタンダードな曲にしても、よく聴いてる曲だからこそ、この編成の、このメンバーに竹善さんの歌で聴くとこうなるんだ!?っていうものがきっとあるんでしょうね。

もちろん、それはありますし、他の2人は同じなのにキーボードが青柳さんになっただけで、今までの曲とも違って聞こえると思いますよ。僕自身がそうですから。

――このツアーが竹善さんの2022年の活動の締めくくりということになると思うんですが、このツアーが終わる時には、どんなふうに終えられたらいいなと思いますか。

来年に繋がるいいコンサートになればいいなと思いますし、そもそもクリスマスツアーはやってて楽しいのでね。もちろん、コンサートはみんな毎回楽しいんですけど、それにしてもこのクリスマスのツアーが恒例になったのは僕にとって本当に嬉しいことで。ジャズミュージシャンたちとやれるということ、それにジャズサウンドの楽しさを皆さんに味わってもらえるということがね。こういう機会でもなければ、こういうサウンドには縁遠いポップスファンも、まだいっぱいいますから。これをきっかけにして好きになってもらえるといいなと思いますし、まだ東北とか北海道とか行けてないので、それが来年、再来年とやっていくなかで増やしていければいいなと思ってて。最終的にはジャズだろうがポップスだろうが、洋楽だろうが邦楽だろうが、クリスマスソングだろうが、そうじゃなかろうが、“年末の楽しい1日でした”というような形というか、つまり僕がこれをやってる本来のコンセプトや音楽自体に対するポリシーみたいなものが伝わって、聴いてる側も温かくなれたら最高です。

『佐藤竹善Your Christmas Night 2021』より

僕も来年60歳なので、ソロをしっかりやっていかないと。それは、僕にとって人生の一つの締めの始まりという感じだと思っているので。

――来年に繋がるということで言えば、来年4月のシングライクの中野サンプラザ公演が発表になっています。それも含め、現時点での来年の予定を最後に聞かせていただけますか。

まず4月に、言ってくださった“サンプラ、ニシムラ”(『ありがとうサンプラ・おかえりニシムラ』)が。

――韻を踏んでるところが重要なんですよね?

(笑)、そうです。来年閉館するサンプラザへの感謝と、西村さん復活してよかったねって感じで、まず春に盛り上がれればなと思ってまして、その後にはシングライクとして何かしらの作品は出したいなと思っています。ただ、来年は個人的に実現したいことがあるので、シングライクのアルバムとまでは行けないと思いますが、いくつかの企画は検討されています。僕個人としては人生の締めが始まる時期として、悔いのない一年にしたいですね。

――今回のツアーが、それに向けてのいい弾みとなるよう期待しています。ありがとうございました。

取材・文=兼田達矢

 

ライブ情報

佐藤竹善 Your Christmas Night 2022
11月24日 (木)東京・ビルボードライブ東京
12月 3日 (土)下関・Jazz Club BILLIE
12月 4日 (日)熊本・Restaurant & Live Bar CIB【DUO featuring K】
12月 8日 (木)横浜・ビルボードライブ横浜
12月10日 (土)新潟・ジョイアミーア【DUO】
12月11日 (日)金沢・北國新聞赤羽ホール
12月18日 (日)和歌山・デサフィナード【DUO】
12月19日 (月)広島・Live Juke【DUO】
12月25日 (日)浜松・浜松市福祉交流センター ホール

押尾コータロークリスマス・スペシャルライブ 2022
12月16日 (金)なんばHatch (大阪)


Shin Yokohama Prince Hotel Awesome Christmas Live & DJ Night supported by Fm yokohama 84.7
12月23日 (金)新横浜プリンスホテル 5F 主宴会場 シンフォニア

Sing Like Talking “ありがとうサンプラ・おかえりニシムラ”
2023年4月2日 (日) 開場 17:00 / 開演 18:00
会場:中野サンプラザホール (東京)
お問合せ:SOGO TOKYO 03-3405-9999
(月~土12:00 ~ 13:00 / 16:00〜19:00 ※日曜・祝日を除く)
http://www.sogotokyo.com/

リリース情報

佐藤竹善 カバーアルバム『radio JAOR ~Cornerstones 8~』
発売中


<UNIVERSAL MUSIC STORE>
https://store.universal-music.co.jp/product/pdjp9001/

<配信>
https://umj.lnk.to/CSato_Cornerstones8
 
【LP】
<SIDE A >
01 JAOR FM Radio 1
02 LONELY MAN
03 ロンリー・ハート
04 ワインの匂い
05 雨のリグレット
06 青春
<SIDE B>
01 JAOR FM Radio 2
02 カレーライス
03 人生に乾杯を! ~Merry Christmas To You Version~
04 出航 SASURAI
05 JAOR FM Radio 3
06 潮騒 (THE WHISPERING SEA)

【UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤CD / DL カード】
01 JAOR FM Radio 1
02 LONELY MAN
03 ロンリー・ハート
04 ワインの匂
05 雨のリグレット
06 青春
07 JAOR FM Radio 2
08 カレーライス
09 人生に乾杯を! ~Merry Christmas To You Version~
10 出航 SASURAI
11 JAOR FM Radio 3
12 潮騒 (THE WHISPERING SEA)
※「潮騒 (THEWHISPERINGSEA)」は、LP/DLカード /UNIVERSALMUSICSTORE限定盤CD に収録

【CD】
01 JAOR FM Radio 1
02 LONELY MAN
03 ロンリー・ハート
04 ワインの匂い
05 雨のリグレット
06 青春
07 JAOR FM Radio 2
08 カレーライス
09 人生に乾杯を! ~Merry Christmas To You Version~
10 JAOR FM Radio 3
11 出航 SASURAI
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