桑田佳祐、原由子、サザンオールスターズ、THE BACK HORN、NICO……トルネード竜巻活動休止後、幅広いアーティストに関わる曽我淳一のキャリアに迫った【インタビュー連載・匠の人】
■いい音楽が作れればそれでいいという音楽原理主義みたいなところがある
――昨年の桑田さんのライブツアー「年末も、お互い元気に頑張りましょう!!」にキーボーディストとして参加されましたよね?
レコーディングなどには10年以上関わらせてもらってますが、ライブのメンバーとしてステージに上がったのは初めてでした。楽曲の制作と同じで、構成やバンドアレンジに関しても1から組み立てていく感じでしたし、ツアー中も細かい修正を重ね続けていましたね。失敗できない緊張感は同じなんですけど、桑田さんのライブは、一つのステージを作り上げるための人数がぜんぜん違います。照明、映像、ダンスなど、音以外の部分もすべて一緒になって、初めてお客さんに伝わるものになるといいますか。自分だけがアレンジに凝り過ぎてもよくないし、全体の中の音楽部門を担当している気持ちでしたね。
――桑田さんのパフォーマンスも、前年以上の素晴らしさで。私も見させていただきましたが、「どうなってんの?」と思うほどのすごさでした。
わかります(笑)。リハ、本番を通してずっと桑田さんの歌を聴いていましたが、CD通りに歌う上手さではなくて、生き物としての歌というか。生命力、説得力がすごいんですよ。桑田さんのバックで演奏させてもらったことは役得だし、本当に感謝してます。
――桑田さんのようなビッグアーティストの現場で経験したことは、ほかの仕事にも応用できたりしますか?
直接的にどう役に立っているかはわかりませんが、次第に「何が起きても大丈夫」という感じになってきました。以前は「え、こんなことあるんだ?」とか「こんなことを言う人がいるのか」といちいちビックリしてたんですが、だんだんと「なるほど、そのパターンですね」と対応できるようになったし、よくわからない場合も「とりあえずやってみましょう」と言える余裕を持てるようになって。個人で仕事を始めた当初は、「それってこういうことですか? こうじゃなくて?」と細かく質問することもあったんですよ。それも一つの手段だと思いますが、事前に細かくヒアリングしても、それが上手くいくかどうかはわからないんですよ。先ほども言いましたけど、まずは音に変換して、それをもとにコミュニケーションを取ることが大事だなと。
――この先、曽我さんご自身はどんな音楽活動をしていきたいですか?
2021年、22年はありがたいことに忙しくて時間が取れなかったですが、自分のバンド(ともこ一角)は続けていきたいですね。それ以外には特に……もともと欲がないんですよ。もちろん仕事はやっていきますが、自分がいいと思える音楽を作れたら――たとえ売れなくても、ほかのアーティストの作品であっても、それだけでうれしいので。「絶対売れるんだ!」みたいな気持ちが薄めというか(笑)、いい音楽が作れればそれでいいという音楽原理主義みたいなところがあると思います。
取材・文=森朋之
リリース情報
ともこ一角『ロムエ』
収録曲
1.虹の向こうに
2.アンダースロー
3.シークレット
4.ループ
5.I see, you see
6.月のあかり
7.バードランド
8.言っちゃいな