the quiet room、愛と感謝が溢れた過去最大キャパのツアーファイナルをレポート
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the quiet room 撮影=山川哲矢
the quiet room Tour 2022-2023『魔法が解けるまで』 2023.1.21 LIQUIDROOM
1月21日に、恵比寿LIQUID ROOMにて、the quiet room Tour 2022-2023『魔法が解けるまで』のツアーファイナル公演が行われた。the quiet roomにとって過去最大キャパで行われたこの日、会場は大勢の人が彼らの帰還を待ち望んでおり、当日券含めてソールドアウトになったことがライブ中に報告された。メンバーは「まさかこんな景色が見られるとは思ってなかった」と話していたが、こういう景色を当たり前だと思っていない彼らだからこそ辿り着くことができた光景なのだと思えた。音楽を愛し、人に感謝し、自分の足で全国のライブハウスに赴き、そこでの出会いひとつひとつを大事にするクワルーが見せてくれた絶景は、あの場に居た人の心にしっかりと刻まれたことだろう。
菊池遼(Vo/Gt)、前田翔平(Ba)、斉藤弦(Gt)、サポートドラマーのぴのり(Dr)の4人がステージに登場し、1曲目に届けたのは「Fressy」。軽快でキュートなメロディに<余所見なんてしないで/出来れば僕だけずっと愛してよ>という照れ臭い本音を乗せて届けると、前回のツアー(the quiet room Tour 2022 “知りたい、高鳴りの正体を”)でもファンからのリクエストが多かったと話していた「かずかぞえ」を披露。オーディエンスは声が出せない分、高く挙げた手で歌詞に合わせて数字を示しながら、バンドと共に音楽を作っていく。
さらにここで、軽快なリズムが身体を揺らす「平成ナイトコウル」で勢いつけると、菊池の「あなたが一歩踏み出す時、この曲が背中を押してくれますように」という言葉を合図に「You」へと繋げていく。恋愛の渦中における酸いも甘いも歌うのもクワルーらしさだが、聴く人を勇気づけ、励ましたいという気持ちを爽快で力強いメロディに乗せて届けるのもまた彼ららしさだ。
「ライブハウスでみんなに会いたいから」という至極明快な目的で行われた、今回の全国ツアー。その中で、菊池曰く「みんなと向き合う中で生まれた、みんなに向けたラブソング」という新曲「知りたい」が生まれたのにも合点がいくし、<会いたいならすぐ呼んでね 君を見捨てるほど野暮なことはしないわ>というストレートな歌い出しも、聴くと前向きな気持ちになれるクワルーらしいポップさ全開のメロディも、昨年から今年にかけてライブハウスで多くの人と出会ってきた彼らが歌い鳴らすからこそ、よりリアルに届くのだろう。
そしてここから、「まだ全然足んねぇな」と煽りつつ、強靭なボトムで超攻撃的な「Vertigo」をプレイ!ぴのり、前田、斉藤のソロタームもビシっと決まり、ここまでの“明るくポップなクワルー”とは一転した顔を見せる。こうした変化を一層堪能できたのは、「Vertigo」からの「アイロニー」、そして「Instant Girl」の流れだ。鋭利なギターリフと、緻密と熱情の狭間を揺らぐメロディに乗せて自我の葛藤を描くクールな「アイロニー」から一変、キラーチューンと呼ぶに相応しい盛り上がりを見せたハイテンションナンバー「Instant Girl」では、フロアを埋め尽くすハンズアップを見て菊池も「すっごい景色だ!」と喜びを露わにしていた。まさに「表情豊かに生きる」というバンドのテーマをぎゅっと凝縮したような、クワルー堪能セットリスト。その上で、ファンからのリクエストもしっかりと反映されており、温もりと優しさに満ち溢れた「Hello Hello Hello」では、オーディエンスが喜ぶ様子が伺えた。
「ここからはリラックスして楽しんでください」という菊池の呼びかけからスタートした「グレイトエスケイプ」では、ジャジーでムーディな雰囲気が醸し出され、フロアは一気にアダルティックな空気感に。そしてここで、新曲「知りたい」と共に会場限定盤としてリリースされた新曲「知らない」を披露。荘厳で静かで、聴き手の胸の内にすうっと入り込んでは溶けていく豊かなバラードナンバーであるこの楽曲は、タイトル通り、見知らぬ未来や景色に向けた希望を歌っている。知らないものや、分からないものに対する恐れや不安ではなく、暗闇の果てから差し込む一筋の光を目指して進んでいくことの大切さを教えてくれるこの「知らない」は、私たちに前に進む勇気を与えてくれる。「知りたい」という好奇心と、「知らない」ものに対しても臆さず触れていきたいという行動力。それはまさに、今のthe quiet roomを動かす原動力そのもののように思える。
今回のツアータイトル「魔法が解けるまで」について、「ライブハウスでみんなで過ごす時間って本当に楽しいし、魔法のような時間だなといつも思っているんです。そんな時間がずっと続けばいいなと思いながら、今回のタイトルを付けました」と話し、「それでもやっぱり魔法は解けちゃうから、みんなの元気がなくなったら、僕らが魔法を掛け直したいと思っているので、またライブハウスに遊びに来てください!」と声を掛けながら「恋の魔法が解けた時に、この曲がみんなを助けてくれたら」と「Twinkle Star Girl」を届けた。
失恋時に表面化される強がりや寂しさ、後悔を、キラキラした音で吹き飛ばしてくれる爽快感たっぷりのこの曲で始まった後半は、ポップな「Number」を経て、「ちょっとずつ日常を取り戻していきたいから」という呼びかけでシンガロングを巻き起こした「パレードは終わりさ」を披露! “会話程度の声量”という制限はありつつも、フロア満員のオーディエンスがそれぞれの想いと喜びを託した声が集まったことで、温かくて愛情深い音と気持ちが会場内をめいっぱい満たしていた。そんな素敵な雰囲気の中、彼らは最後に「キャロラインの花束を」を届け、ありったけの感謝と愛を残して魔法を解いた。
鳴り止まないアンコールに迎えられて「Twilight」と「Happy End」の2曲を届けたthe quiet roomは、3月に地元・茨城にて『New Frag Festival 2023』を開催し、そこで初のホールワンマン(会場:茨城県立県民文化センター)を行うなど、どんどん躍進していく。さらには「Zから始まってPで終わる会場でもワンマンライブをしたい」という野望も語っていたが、これからも彼らは、私たちの「知りたい」というワクワク感を刺激し続ける音楽を鳴らし、ライブでは私たちの「知らない」景色を見せてくれるのだろう。the quiet roomがかけた魔法は、まだ解けそうにない。
取材・文=峯岸利恵 撮影=山川哲矢
ライブ情報
《Day 1》
2023年3月17日(金) 水戸LIGHT HOUSE、club SONIC mito 2会場開催!
- ライブハウス対バン編 -
※ゲストバンド後日発表 ※スタンディング
2023年3月18日(土) ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)小ホール
- ホールワンマン編 -
※ワンマンライブ ※椅子席