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松岡醸造 松岡奨氏インタビュー「小川町酒蔵まつり」は小川町の地酒の魅力を堪能できる 今しか飲めない生原酒や演舞もグルメも

2023.2.17
インタビュー
イベント/レジャー

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埼玉県の小川町にある酒蔵をめぐるイベント「小川町酒蔵まつり」が2月26日(日)に開催される。この時期にしか味わえない特別なお酒も登場し、地酒の魅力はもちろん、グルメや地元の高校生による演舞まで楽しめる、小川町の魅力がたっぷりと詰まったイベントだ。今回お話を伺ったのは、本イベントの主催者、帝松松岡醸造株式会社の次期7代目、松岡奨氏。イベントの見どころや小川町の魅力、帝松松岡醸造のお酒についていろいろと教えてもらった。


――まず「小川町酒蔵まつり」を始めたきっかけから教えていただきたいです。

小川町は小さな町ですが、酒蔵が密集しているのが魅力。もともと弊社は自社のイベントとして「酒蔵まつり」を開催していたのですが、「せっかくなら、各蔵をめぐるお祭りを」ということで小川町にある酒蔵をバスでめぐり、お酒を楽しむ会という形でのイベントがスタートしました。埼玉県と小川町の主催で始まりましたが、今年は弊社、晴雲酒造、小川町、小川町商工会からなる「小川町酒蔵めぐり実行委員会」が主催しています。

――自社でのイベントはすでにやっていたのですね。

「帝松 酒蔵まつり」として毎年2月に開催しており、17年ほど続いています。コロナ禍もあり、自社のお祭りもなかなか開催できない状況が続き、今回はコロナ禍前よりスペースを確保できるよう、会場を2カ所にして盛り上げようという背景があり、イベント名を「小川町酒蔵まつり」といたしました。

――ちなみに自社で開催されているイベント「帝松 酒蔵まつり」はどのようなイベントなのでしょうか? 前回は7500人もの方がいらっしゃったとホームページで拝見しました。

無料で試飲ができ、和太鼓演舞や小川のグルメが集まるイベントです。昔は、酒蔵はすごく敷居が高い存在で、一般の方は立ち寄り難い場所でした。お祭りとすることで、酒蔵を近い存在として気軽に楽しんでいただきたい、そんな思いで開催したのがそもそもの始まりだったようです。

帝松松岡醸造株式会社 松岡奨氏

――足を運ぶのは地元の方、埼玉県の方が中心なのでしょうか?

県内外で半々です。青森からのお客様もいらっしゃいましたし、ご家族連れもたくさんいらっしゃいます。若い方や外国の方もいて、客層は本当に多種多様です。

――そして今回、「小川町酒蔵まつり」として久しぶりの開催になりますが、復活を今年にした理由とは?

昨年の夏に開催した「小川町七夕まつり」は、コロナ禍前のまつりに近い形で開催され、たくさんのお客さまが足を運び、大盛況となりました。そこから「そろそろお酒のイベントが復活してもいいよね」という流れから、開催に踏み切りました。

――では今回のイベント内容はどのようなものになるのでしょうか。

今回は弊社、松岡醸造の帝松、晴雲酒造の晴雲と2つの会場と小川町の駅をバスでめぐります。コロナ禍で「小川町3蔵酒蔵めぐり」のうちの一社が休業し、参加するのが2蔵になったため、めぐるからまつりになったという経緯もあります。酒蔵は2蔵になりましたが、内容は盛り沢山です。蔵によって出し物は違うのですが、弊社では各種お酒の試飲に加え、地元の埼玉県立越生高等学校の生徒による和太鼓の演舞や、小川町のB級グルメが楽しめます。

以前開催されたイベントの様子

――飲んで、観て、食べて楽しめるイベントになっていると。

さらに、弊社では酒蔵見学もできます。整理券をお配りして無料でご案内する形となります。

――どのくらいの種類のお酒が楽しめるのでしょうか?

現在予定しているのは10種類ほどです。鑑評会出品用のお酒でもある「帝松 純米大吟醸」の生原酒もふるまう予定です。この時期にしか味わえない、特別なお酒なので大変貴重な機会になるかと思います。

――なるほど。そんなイベントが開催される小川町はどんな町なのでしょうか?

もともとは商人の町で、ユネスコ無形文化遺産に登録された和紙がとても有名です。和紙を求めて商人で賑わい、宿場町としても人気のあった場所です。駅前に黒壁の通りがあるのですが、もともとは遊郭が立ち並んでいて、すごく賑わっていたそうです。小さな町ですが酒蔵も複数あり、日本酒だけでなくワインやビールも製造され、今は発酵の町として人気です。有機農業も盛んですし、すごく自然豊かな場所です。都内からも近いですし。

――お酒造りに欠かせないお水も美味しいのでしょうか?

小川町のお水はすごく美味しいです。加えて、弊社は特にお水にこだわっています。地下130メートルからお水を引いていて、全国の酒蔵さんのなかでもトップクラスの「硬水」になっています。硬水には、鉄分を多く含む鉄鉱水系とカルシウムを多く含む石灰岩系の2パターンがあって、弊社の場合は、後者。カルシウムとミネラルを多く含んだ石灰岩系の硬水という非常に稀な水を使って酒造りをしています。

――イベントではこだわりのお水でつくったこだわりのお酒の試飲ができるわけですね。イベント当日は試飲スペースにいらっしゃるとのことですが、松岡さんはどのようにして今のお仕事についたのでしょうか?

大学卒業後、現在はなくなってしまったのですが、滝野川にある醸造試験場で酒造りの研究をし、2009年に弊社に入社し、弊社の杜氏である叔父の元で3年ほど蔵人として酒造りを学びました。その後は商品開発や味の分析、企画の打ち出しなどに従事しています。

帝松松岡醸造株式会社 松岡奨氏

――これまでどのような企画をしてきたのでしょうか?

「肉フェス」がお台場で開催されていた頃、確か1回目とか2回目の頃だったと思います。お肉目当てでフェスにやってくる人たちに向けて、日本酒の出店をしていました。お酒に全く興味のない人や、日本酒を飲まない人たちに、あえてお酒を提供し反応を見るのが目的でした。味覚は人によってさまざまなので、味わいをどのように捉えるのか、そこから「美味しい」につなげていくためにはどうすればいか、リサーチも兼ねての出店でした。そういった試みをいまだに日々模索し続けています。

――若い方のアルコール離れも話題になっています。日本酒に興味のないターゲットにどのように届けているのか。今現在行っている、松岡さん流の「日本酒の魅力の伝え方」はありますか?

日本酒はかなりの手間をかけて製造されていて奥が深い。それゆえに「日本酒って難しそう」と感じてしまう方も多いようです。まずは日本酒に興味を持ってもらえるよう、取っ付きやすいように、分かりやすく伝えることを意識し、“斜めから日本酒を見せる”方法を考えながら取り組んでいます。

以前開催されたイベントの様子

――斜めから?すごく気になります。

例えば、酒蔵見学はなるべく僕が案内するようにしています。1名からでも受け付けています。私たちの思いをしっかり伝えつつ、ちょっと噛み砕いて面白おかしく伝えて、興味のない人でも興味を持ってもらえる工夫はしています。先ほども弊社の酒造りには硬水を使用しているとお話ししましたが、硬水で作ったお酒は男酒と呼ばれます。いろいろな成分が入り、荒々しい香りと舌触りで濃い味わいに仕上がり、男らしさを感じるお酒です。一方、京都の伏見に代表される軟水を使ったお酒は、口当たりがよくさんも少ない、繊細で淡麗な味わいで女酒と言われます。

――水によってお酒がそんなに変わるんですね。

はい。となると弊社のお酒はゴリゴリの男酒が出来上がる……かと思いきや、鉄分はほとんどなくてお水自体が柔らかいのが特徴です。かつ、元々新潟なので、綺麗なお酒を意識した酒造りをしています。ということで、出来上がるのは今の時代で言うところのジェンダーレス。中性的なお酒ですという説明が、偶然にも時代に合って、お客様にも好評のようです。

――では最後に今回のイベントを経て、今後やってみたいこと、今後の構想はあるのでしょうか。

まずは今回のイベントを成功させること。やっぱりこういったイベントは定期的にできるのが一番だと思っています。1日も早くコロナ禍前のような形で開催できるのが理想です。今回のイベントは感染症対策もしっかり施したうえで楽しんでいただくものですが、そういったことも考えずにフランクに楽しめるイベントが今後、増えていくとうれしいです。このイベントを皮切りに、日本酒の魅力を知っていただき、さらにはお店で、ご家庭で、日本酒を飲む方が増えてくれたらいいなと思っています。酒蔵はあっても、複数を手軽にめぐれるのは小川町という小さな町だからこそ。存分に楽しんでいただきたいです。

取材・文=タナカシノブ

イベント情報

小川町酒蔵まつり

■日程:
2023年2月26日(日)
■時間:
10:00~15:00
■試飲方法:
試飲には共通オリジナルお猪口が必要になります
試飲お猪口引換券 前売り券:800円 当日券:1000円
・試飲以外の参加費は無料
・甘酒無料配布(※無くなり次第終了)
・当日は小川町駅から松岡醸造、晴雲酒造を無料シャトルバス運行