SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、WONに、SPRINGMANが仲間入りーー3年ぶり開催『TALTOナイト2023』で謳われたロック・バンドの矜持、贈られたエール
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■マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつ
開演から1時間50分。一際大きな拍手に迎えられたマカロニえんぴつがこの日、1曲目に選んだのは、TALTOから18年10月にリリースした2ndシングル「レモンパイ」。長谷川大喜(Key)のピアノが跳ねるミッドテンポのポップ・ソングに早速、観客が手を振り始める。そこに繋げたのが、17年2月にTALTOからリリースした3rdミニアルバム『s.i.n』収録の「洗濯機と君とラヂオ」。田辺由明(Gt)がギターをガガガと鳴らすアップテンポのパワー・ポップ・サウンドに煽られ、観客がジャンプ。そして、「待ってたか!?」とはっとり(Vo.Gt)が客席に問いかけると、大きな歓声が上がった。
マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつ
曲が終わっても鳴りやまない歓声と拍手に「この感じ、懐かしい。めちゃめちゃ久しぶり!」とはっとりが快哉を叫ぶ。そんな序盤の盛り上がりから、客席には彼らが国民的人気バンドになる以前からのファンが多いことが窺えた。
「これからもこういう素敵なイベントを開催できるようによろしくお願いします。みなさんの応援にかかってますから。ある意味、リスタート。心機一転にふさわしい曲」とはっとりが言って、バンドが演奏したのは、<きみならまだ間に合うよ>と歌う「PRAY.」。
マカロニえんぴつ
3連のリズムがオールディーズ風のポップスを思わせながら、長谷川がキーボードで鳴らすファンファーレや田辺が加えるメタル風のリフを含め、どこかプログレっぽい展開も交えつつ、アンセミックなポップ・ロック・ナンバーに着地するところが、洒脱さとエキセントリックな感性が入り混じるマカロニえんぴつならではか。その「PRAY.」が収録されている最新EP「wheel of love」からもう1曲、テレビドラマ『100万回言えばよかった』の主題歌として書き下ろした「リンジュー・ラヴ」を披露。胸に迫るメロディを重ね、ぐっと盛り上げると、高野賢也(Ba)のドライブするベース・プレイが演奏をひっぱる「星が泳ぐ」で再び観客をジャンプさせる。
マカロニえんぴつ
そして、昨年、バンドが結成10周年を迎えたことに言及したはっとりはロック・バンドを続ける理由について、「好きだからです。1人より楽しいからです」と語ってから、「大事な人がいつまでも隣にいると思わないでください。そして、あなたを輝かせてくれる隣の人を守ったり、お返しに輝かせたりする存在になってください。11年目のマカロニえんぴつ、そして俺の音楽人生はそれを目標に歩みます」と宣言。
この日、彼らがラストナンバーに選んだのは、「なんでもないよ、」。<君といるときの僕が好きだ>と歌うラブソングを、きっと彼らは客席のファンに向け、演奏したのだとステージを降りるとき、照れ隠しにちょっとおどけた調子で客席に投げキッスしたはっとりを見ながら思ったのだ。
マカロニえんぴつ
■SAKANAMON
SAKANAMON
いよいよ大詰めを迎えた『TALTOナイト2023』もあと1バンドを残すのみ。トリを務めたのは、もちろん今やTALTO最古参のスリーピース・ロックバンド、SAKANAMOだ。「はい、いらっしゃいませ。SAKANAMONです。よろしくお願いします!」と開口一番、藤森元生が放った言葉を合図にステージ上手から横一列に並んだ木村浩大(Dr)、藤森、森野光晴(Ba)3人の演奏がスタート。1曲目は16年にライブ会場限定でリリースしたシングル「クダラナインサイド」。最初、リラックスしていたように聴こえた藤森の歌声は曲が進むにつれ、木村の前ノリのドラムと爆音で鳴る森野のベースに煽られるように、どんどん熱を帯び始める。
SAKANAMON
そこからノンストップで鳴らしつづける木村のドラムで繋げたのが14年リリースの3rdミニアルバム『ARIKANASHIKA』のオープニング・ナンバー「幼黄な少女」。「楽しむ元気、残ってます!?」と問いかけた藤森の声に応えるように、観客が手を打ち鳴らす。そして、森野、木村がサビでコーラスを掛け合い、勢いづいた演奏に藤森の激しいトレモロ・ピッキングがさらに熱を加えると、序盤からいきなりの熱演に観客の拍手喝采が止まらなかった。
そんな興奮を鎮めるように昨年10月にリリースした7thアルバム『HAKKOH』から淡い音像を持つ「1988」を、ステージのバックドロップに海や水をモチーフに映像を映し出しながら、視覚効果も狙ったパフォーマンスを繰り広げる。藤森はウィスパー・ボイスの歌を披露した。
SAKANAMON
「本日、『TALTOナイト』久々に行われております。やったぜ! レーベルのみんなで楽しみながら、みんなも楽しんで、よかったと思う」(藤森)
「TALTO6年目、おめでとうございます。TALTOのプロデューサーとはTALTO以前のマネージメントからのつきあい。お互いにまだ新人すぎて、MVもお金を出し合いあいながら作ろうかという(笑)。そんなところから始まって、今日、Zepp Hanedaでできたのはみんなのおかげです」(森野)
「TALTOの長男坊やらせていただいてます。いいイベントとして締めくくれるよう最後まで盛り上げたいと思います」(藤森)
その言葉どおり後半戦はタイトかつアップテンポなロック・ナンバー「ミュージックプランクトン」と、ビデオゲームを思わせる映像を流しながら演奏した爆音のロック・ナンバー「ZITABATA」を繋げ、序盤に負けない熱狂を作りあげる。
そして、SAKANAMONが昨年、結成15周年を迎えたことに加え、マカロニえんぴつの結成10周年、TALTOの設立6周年に言及すると、「まちがいなくみなさんのおかげです。そんなみなさんに感謝を込めて」(藤森)と出来の悪い自分を支えてくれる<君>に対するありがとうとごめんなさいを、胸を焦がすメロディで歌ったバラード「ふれあい」で本編を締めくくった。
SAKANAMON
もちろん、席を立つ観客は1人もいない。アンコールを求める歓声と拍手に応え、ステージに戻って来たTALTOの長男坊は5月12日(金)、新江ノ島水族館で開催する有観客ライブ『えのすいフライデーナイト♪vol.12 ~えのすい×SAKANAMON~』に加え、長男坊らしく本日の出演バンドのライブも告知すると、「TALTOを代表して!」(藤森)と最後に1曲、「ロックバンド」を披露した。
ギターの単音リフにベースとドラムのリフが絡むアンサンブルがマスロックなんて言葉も連想させるアップテンポでソリッドな演奏に観客が拳を振る。演奏から浮かび上がるように聴こえてきた<流れる様な時代に僕等は続けて居るよ 抗おうと委ねようと其処に偽りは無い筈>という言葉が胸を打つ。それはロック・バンドの矜持を謳いながら、そこにいる全員に贈ったエールのようにも感じられたのだった。
取材・文=山口智男 写真=オフィシャル提供(撮影=酒井ダイスケ)
イベント情報
日程:2023年3月3日(金)
出演:SAKANAMON / マカロニえんぴつ / ヤユヨ / WON
■SAKANAMON Official Website:https://sakanamon.com
■マカロニえんぴつ Official Website:http://macaroniempitsu.com/
■ヤユヨ Official Website:https://yayuyo-dayo.amebaownd.com
■WON Website:https://twitter.com/won_ow