GRAPEVINE、歓喜に包まれたツアーファイナル アルバム『another sky』再現ライブレポート セトリプレイリストも公開
GRAPEVINE (C)日吉”JP”純平
GRAPEVINEが、2022年夏に開催した5枚目のアルバム『another sky』のリビジット (再現)ツアー『grapevine in a lifetime presents another sky』の再追加公演として、今年2月23日の東京公演から新潟、大阪の3箇所にて開催。3月10日(金)の大阪・Zepp Namba公演にてツアーファイナルを迎え、ライブレポートが到着した。
2022年にメジャーデビュー25周年を迎えたGRAPEVINE。そして、同年夏には、5th Album(2002年発表)の20年越しリビジット(再現)ツアー「grapevine in a lifetime presents another sky」が全国で開催された。
同年12月には、本ツアーのLive Blu-ray & DVD 「in a lifetime presents another sky」が発売されて、今年2月22日には2nd Album『Lifetime』(1999年発表)と『another sky』のライブ音源も配信リリースされている。
今年2月からは「grapevine in a lifetime presents another sky」再追加公演ツアーも開催され、2月23日 中野サンプラザホール、3月5日 新潟LOTSを経て、3月10日にツアーファイナルがZepp Nambaで行われた。
開演時間になり、メンバーがゆっくり登場する中、田中和将(Vo/Gt)が 「in a lifetime presents another sky」のサインボードを、トランクを持つかの様に持って登場する。そのライトが放つ光は神々しくもあり、これから始まるライブにただただ期待してしまう。田中は、そのライトを指差し、観客に向かい一礼。まだ何も音が鳴らされていない状況でありながら、この一連の動作だけで客席は沸く。
(C)日吉”JP”純平
(C)日吉”JP”純平
今年関西一発目のライブがどれだけ待ちわびられていたかがわかる。1曲目は、緩やかなスローナンバー「ふたり」から始まった。アルバムでは12曲目ラストナンバーであり、昨年のツアーでも曲順通り、最後に鳴らされている。
『DVDも出てて、ネタバレもクソも無いんで、趣向凝らして逆からやってみました』
『another sky』収録楽曲12曲全てをやり終えた後に、こう田中は笑顔で話したが、確かに曲順を逆からやっていくライブは新鮮であり斬新であった。12曲全てをやり終えるまでは、それこそ一切ネタバレせずに、ひたすら黙々と逆からやっていくのはクールでしかない。
続いて、本来は11曲目「アナザーワールド」が2曲目に鳴らされる。ギターの緩やかな音色に身を委ねながら、『見ていたよ 知っていたよ 泣いていたのは』という歌詞に耳を傾けていたら、横後ろ三方へと縦に伸びるラベンダー色の照明に目を奪われた。すると、その照明が前へ倒れる様にして三角のピラミッドを形成したのだが、このあまりにも美しい照明演出には驚いてしまった。逆再生とも言うべきライブが、とにかく味わい深すぎる事を序盤2曲から感じる。
(C)日吉”JP”純平
すぐに歌い出される「Sundown and hightide」だが、最初の2曲と比較して徐々にアップテンポになっていき、熱を帯びていく。アルバム1曲目から3曲目からの構成ならば納得するが、しつこいようだが、逆からやっていくライブであり、12曲目から10曲目から鳴らされているのに何の違和感もなく、まるで最初から、この曲順だったと錯覚してしまうのが不思議だ。当時シングルカットもされた「ナツノヒカリ」は、クリアに透き通る透明感があり、軽やかで気持ち良い。一転して、「Let Me In~おれがおれが~」にいく前に、田中は『よし!』と気合いを入れて、右手を高く上げてからギターをかき鳴らす。荒々しいサウンドに派手な照明も似合い、観客からも手が上がっていく。曲終わり、充実感ある拍手が起きる中、すぐにギターリフから「Tinydogs」へ。伸びある歌声には解放感があり、駆け抜けるかの様に終わる。
(C)日吉”JP”純平
早くも6曲、つまり『another sky』12曲の半分が鳴らされた。ここから本来前半の1曲目から6曲目が、どう後半に逆から鳴らされるかが気になる。「Colors」は浮遊感があり、自然に体が揺れ、歪みあるギターサウンドも揺蕩い、とにかく心地よさしかない。まだ、その残響も残ったままで、田中のアコギから「それでも」へ。語り掛けるかの様な田中の歌声が印象的であり、寛大さを感じたナンバー。
残すところ4曲と終盤に入り、ギターが唸り、カッティングから渋いシャウトが響き渡る。これぞファンキーであり、荒ぶる音の素晴らしさにやられるだけ。曲中、田中は『さぁ、大阪のみなさんお待たせしました!』とベースの金戸覚へと繋ぐ。痺れるベースの余韻に浸る間もなく、ドラムの亀井亨による速いカウントから「BLUE BACK」が鳴らされる。アップテンポで伸び伸び生き生きしたサウンドに、この日一番くらいに観客から手が上がっていく。高野勲(key)によるテルミンには恍惚感でうっとりしてしまう…。
(C)日吉”JP”純平
いよいよ11曲目「ドリフト160(改)」。重厚感あるギターのカッティングから高野のシンセが気持ち良すぎるくらいに合わさっていく。遂にラストナンバー「マリーのサウンドトラック」。青いライトにひとり照らされてギターを爪弾く田中の姿は神秘的である。『Mary in the Soundtruck』という言葉がずっと頭の中で鳴り響き、言葉と音に絡みつかれて、どこか遠い所へ持っていかれてしまう感覚に陥る。
こうして12曲が鳴らされた1時間は終幕。ラストナンバーでしか有り得ないと感じて想う「マリーのサウンドトラック」だが、アルバムではオープニングナンバー。こんな荘厳なナンバーで幕を開けていたアルバムだったのかと衝撃を受けてしまったし、再度『another sky』を頭から通して聴きたい。そう今日のライブの逆再生として。それにしても、逆再生での再現ライブという発想は素晴らしすぎる。
第二部として最初に鳴らされたのは、「Big tree song」。じゃぶじゃぶという水の音がサンプリングされてリフレインされる。先程までのコンセプトな世界とはまた違う世界であり、水の音の効果もあるのか、心身が浄化されていく。
中盤のハンドクラップのパートでは、観客全員でクラップハンドをする。拓けていく快感で満ち溢れていた。現時点では最新アルバムである『新しい果実』(2021年発表)から、「目覚ましはいつも鳴りやまない」、「Gifted」、「ねずみ浄土」と立て続けに鳴らされる。GRAPEVINEの楽曲全てに言える事だが、重厚さと恍惚さの絶妙のバランスが堪らないのだろう。特に「ねずみ浄土」の独特のリズムと独特の言葉によるマッチングは、何度聴いてもドキドキしてワクワクする。こんな簡単な言葉を使ってはいけないのかも知れないが、新しい音楽を聴いていると、心の底から想う。
20年前のアルバム『イデアの水槽』収録の「Suffer the Child」。こんな不穏なムードを持ちながらも、心を焦がされる様なナンバーを20年前から鳴らしていたのは凄すぎる。西川弘剛のギターソロはグルーヴィーであり、ずっとずっと聴いていたい。続く「フラニーと同意」はイントロだけで、観客から歓声が起きる。ロックンロールの重みを感じたナンバーから、カラフルで突き抜けた多幸感に胸が躍る「Alright」へ。
本編ラストナンバーは、「Our Song」。ラストナンバーにふさわしい聴き応えがあり、聴き入ってしまうミドルテンポのナンバー。考えてみたら、本来はラストナンバーである「ふたり」から始まったわけで、最後から始まり最後に向かっていくライブは稀有であり、見事であった。
アンコールで登場した田中の『よっしゃ! よっしゃ!』といった明るい言葉からも、ライブの充実度が伝わってくる。「MISOGI」の軽快なリズムに乗っかる『魂 掻き鳴らせ』という言葉が突き刺さる。右手を高く上げての「Evil Eye」と抜けの良さを堪能しながら、アンコール〆は「作家の顛末」。じっくりゆっくりと鳴らされるナンバーは、まさに〆にそぐわしい。いつもの事ながらだが、GRAPEVINEのライブは磨きのかかった音と言葉だけが詰め込まれており、その様には格好良いという言葉しか当てはまらない。
(取材/文・鈴木淳史)
大阪・Zepp Namba最終公演を受けて、リスナーから好評を得ているセットリストを再現したプレイリスト「in a lifetime presents another sky(Set list of 2023.03.10)」が配信スタート。
再追加公演では昨年12月に発売された本ツアーのLive Blu-ray & DVD「in a lifetime presents another sky」とは異なるセットリストになっている。