大阪芸大生、松竹座映画祭でPV上映「若者にも劇場へ足を運んでもらえるように」ーーFM802『ROCK KIDS』DJ板東さえかインタビュー

2023.4.23
インタビュー
舞台
映画

右上から杉原成美、楠本大貴、佐伯貴裕、板東さえか

画像を全て表示(7件)

大阪松竹座が2023年に開場100周年を迎えることを機に立ち上げられた、大阪芸術大学との産学連携プロジェクト。その第二弾として大阪松竹座会場100周年記念オリジナルショートムービーを、大阪芸術大学芸術学部放送学科の学生たちが制作した。オリジナルムービーは5月2日(火)〜8日(月)に、大阪松竹座が約30年ぶりに映画館として復活する『道頓堀 松竹座 映画祭』にて上映が予定され、現在「YouTube 松竹チャンネル」でも放映中。公開を前に、同じく芸術学部放送学科の卒業生で、自身の番組内でも数々の芸大生の話を聞いてきたFM802 DJの板東さえかがインタビュー。

プロモーションムービー (c)松竹

今回のプロジェクトに関わった監督・脚本担当の杉原成美さん、脚本・編集・制作担当の楠本大貴さん、撮影の佐伯貴裕さんの3人に、制作の経緯やエピソード、そして公開を目前に今のお気持ちなど伺いました。

●格式が高い印象「学生がいく場所ではないのかな」

板東:映像を一足先に観させていただきました。同じ大阪芸術大学、放送学科に通っていた身として現役の学生でしっかりとしたクオリティーの作品を制作されていて「すごいな……」と感じました。

一同:ありがとうございます。

板東:今回のプロジェクトはどういった形で受けることになったのですか?

杉原(監督・脚本):学科の先生からやってみないか、とお話があり受けました。去年(2022)の1月くらいだったと思います。

板東:就職活動もあれば、卒業制作も控えている中で?! 超多忙ですね……。そんな中、どんなふうに進めていったのですか?

杉原:参加する学生らが3チームに分かれ、案を出し合いました。そこからブラッシュアップしていって、大阪松竹座にプレゼンテーションしました。

楠本(脚本・編集・制作):脚本に関しては杉原監督が形にしてくれたものを、僕が足したり引いたりして仕上げていきました。脚本を書き上げるために大阪松竹座で実際の舞台を観させていただいたり、ロケハンとして劇場を見学させていただいたりしました。

撮影の様子

板東:それまでに行ったことはありましたか?

一同:行ったことはなかったです……!

板東:実際に携わるまで、大阪松竹座はどんなイメージでしたか?

楠本:僕は名前をちらっと聞いたことがあるくらいです。

杉原:表面的なイメージとしては、品位の高さ。私ら学生がいく場所ではないのかな……というイメージがありました。昔は映画の放映や来日公演をしていたことに驚きました。

佐伯(撮影):なんばに行ってあの辺を通るたびに、雑多とした雰囲気の中で突然風格ある建物が現れるような印象が残っていて……ここが松竹座だったのか! と。博物館かと思っていました。あの通りに◯◯座と呼ばれていた劇場がたくさんあった中で、今残ってるのが松竹座だけだと知って「100年続くのはすごいなぁ」と改めて感じました。

●「100周年」という漠然とした年数、コンセプトや方向性は?

江口直彌、里美羽衣子、船橋輝人 プロモーションムービーより

板東:皆さんにとって初めての出会いになったのですね。そんな大阪松竹座の100周年を広めるために今後も残るようなムービーを制作されたわけです。最後のメッセージがとても印象的でした。

杉原:最初に、若者が多く来てくれるようなプロモーションビデオにしたいというお話をいただきました。たしかに若者が1人では行きにくいかもしれない。でも親孝行や祖父母孝行のような形だと、自分も行きやすいなと思いました。そういうキッカケにもなるかなと、キャッチフレーズや物語を考えていきました。

佐伯:監督がコンセプトとして「受け継がれていくもの」と掲げていて、その通りだと感じています。これまでも公演を観ておもしろかったら子供や孫を連れていく、それが繋がっているんだなと思いました。

板東:私もおじいちゃんを連れて行きたくなりました(笑)。おじいちゃんといえば、松竹新喜劇の江口直彌さん、里美羽衣子さんが出演されていていました。劇団の俳優さんとモノ作りができたのも貴重な経験になりましたね!

撮影の様子

杉原:プロの役者さんと初めてのお仕事だったので、監督としてどう演技指導をしたら良いのか迷いもありました。でも「こうしたい」とお伝えしたら快く受け入れてくれて、ホッとしました。

楠本:俳優さんと初めてお会いするのが現場でした。プロの役者さんと一緒になるのが今までなかったので新鮮な気持ちというか、緊張感がありました。

板東:実際カメラで捉えた佐伯さんはいかがでした?

佐伯:アルバイトで俳優さんを撮った経験があったのできっとやれるだろうと思ってたのですが、いざ自分で撮るとなると「もし失敗したらどうしよう」とめちゃめちゃ緊張しました。なので監督と楠本くんにもたれかかった撮影になり……お世話になりました(笑)。

板東:初めての経験づくしだった作品がいよいよ大スクリーンで世に放たれます。今のお気持ちは?

楠本:今回のような大きなプロジェクト、大きな規模での制作は今までなかったので、多くの方に観ていただけることが嬉しいです。作品は作って完成ではなく観てもらって完成するので、その時がすごく楽しみです。

佐伯:僕は今まで趣味で書き物をしていたけど結局公開せず殻にこもっていました。けど、いつか自分が作った作品を映画館で上映するのが夢なんだと思っていた中で今回願ってもないチャンスがやってきて、現実味がないというか。楽しみではありますが、正直わからないところです。

杉原:私もどういう反応が返ってくるのかが想像できずドキドキしています。私たちのような学生や同じ世代の人たちに刺さってくれたらいいなと思って作品を作ったので、そういう人たちにより観てもらえたら嬉しいです。

●経験を活かして、それぞれの道へ……

板東:皆さん、春からはどんな道へ進まれるのですか?

杉原:私はドラマ制作で、東京へ行きます!

楠本:僕はアニメーションの制作会社へ。

佐伯:コマーシャルの制作会社に進みます。

板東:すばらしい! 改めて、就職活動しながら卒業制作もして、そして今回のような大きなプロジェクトも完遂させて……すごいです。上映の頃はもう皆さん新天地で励んでいるかと思うのですが、後輩たちにも観てもらえたらいいですね!

卒業式では贈呈式が行われた。ぬいぐるみは大阪芸大生によるデザインの公式キャラクター「しょーちまる」

取材・文=板東さえか

イベント情報

大阪松竹座開場100周年記念『道頓堀 松竹座 映画祭』
日程:2023年5月2日(火)~8日(月)
観覧料:一般1,300円(税込)
※前売・当日共通料金、全席自由席、完全入替制
みどころ
それぞれのシーンに、それぞれの思い出を重ねて・・・
あの日、あの街で観たあなたの映画が、松竹座の大スクリーンによみがえります。
大阪松竹座では、開場100周年を記念して、ゴールデンウィーク期間中の特別映画イベント「道頓堀 松竹座 映画祭」を開催いたします。現在の松竹座は平成9年(1993)3月の新築再開場以来、演劇専門劇場として親しまれていますが、100年前の創建当初は「実演のできる映画館」として開場以来、数多くの優秀映画を上映。戦後は主に邦画洋画の封切館として、数々の名作大作映画とともに、およそ半世紀に亘り映画ファン憧れの劇場として親しまれました。
今回の映画祭では、かつて松竹座で上映された「風と共に去りぬ」「ジョーズ」「E.T.」をはじめ、「ローマの休日」「アラビアのロレンス/完全版」「2001年宇宙の旅」等の洋画作品の名作を選りすぐりました。邦画作品は松竹大船作品から「君の名は(第1部)」、生誕120年を迎えた小津安二郎作品「東京物語」、同じく生誕110年を迎えた木下惠介作品「喜びも悲しみも幾歳月」、山田洋次作品「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」など松竹映画の不朽の名作とともに、近年松竹座の舞台公演でも活躍した関西ジャニーズJr.等の主演映画もラインナップいたします。さらに大阪で唯一の活動写真弁士・大森くみこ出演によるサイレント映画の特別上映にもご注目ください。

特集記事

大阪松竹座開場100周年記念特集『松竹座の未来予想図』
【インタビュー】
・「大阪松竹座」はどんな劇場?ーー藤山扇治郎ら松竹新喜劇団員が100周年記念特集『松竹座の未来予想図』の幕開けを飾る
・坂東玉三郎、繋がりが深い大阪松竹座開場100周年の幕開きを『幽玄』で華々しく飾る
・大阪松竹座と大阪芸術大学の「100周年記念コラボ」ロゴ&公式キャラ「しょーちまる」の制作秘話とは
・「喜劇が一番むずかしい」久本雅美×錦織一清インタビュー 大阪が舞台の人情コメディ『垣根の魔女』会見には室龍太、大和悠河、ラサール石井も
【コラム】
(松)「道頓堀の凱旋門」と呼ばれ、映画に歌舞伎にとハイブリッドな劇場だった
(竹)『風と共に去りぬ』で映画館としての役目を終え「演劇の殿堂」へ
(梅)生まれ変わった「演劇の殿堂」が歌舞伎や上方喜劇、OSK、関西ジャニーズJr.らと描く未来
  • イープラス
  • 映画祭
  • 大阪芸大生、松竹座映画祭でPV上映「若者にも劇場へ足を運んでもらえるように」ーーFM802『ROCK KIDS』DJ板東さえかインタビュー