【新作会見レポート】劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』製作発表~オリジナル作品を生み出す意味~
吉田社長と演出のスコット・シュワルツ氏(撮影 上原タカシ)
2023年4月10日(月)、劇団四季の最新オリジナルミュージカルの製作発表会が都内にて行われ、吉田智誉樹 劇団四季 代表取締役社長と演出家、スコット・シュワルツ氏登壇のもとその詳細が明かされた。ここでは会見で語られた作品の概要やプロジェクトの内容などレポートしていきたい。
新たに製作されるのは、藤田和日郎氏による中編漫画『黒博物館~ゴーストアンドレディ』を原作としたオリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』。2024年5月よりJR東日本四季劇場[秋]にて上演予定だ。本作の演出を担うのはミュージカル『ノートルダムの鐘』で四季とタッグを組んだスコット・シュワルツ氏。オリジナルミュージカルにおいて四季が海外の演出家を招聘するのは今回が初となる。
脚本と歌詞を担うのは四季のオリジナルミュージカル『バケモノの子』でも手腕を発揮した高橋知伽江氏。また、作曲・編曲には富貴晴美氏(『バケモノの子』)、振付にチェイス・ブロック氏(『ノートルダムの鐘』)、衣裳デザインにレッラ・ディアッツ氏(四季『恋におちたシェイクスピア』)さらにイリュージョンにクリス・フィッシャー氏と国内外のクリエイターが集結し、四季のOGでもある音楽監督の鎮守めぐみ氏と装置デザイン・松井るみ氏も創作に参加する。
劇団四季 吉田社長(撮影 上原タカシ)
今回のオリジナルミュージカル製作にあたり吉田社長は「原作漫画『黒博物館~ゴーストアンドレディ』はファンタジックでありながら人生の本質をも同時に示唆する作品。登場するゴースト、グレイが芝居好きということもあり、作中にはシェイクスピアやマザーグースの詩の引用も登場し文学的な骨組みも有するため、ミュージカルのみならず、演劇好きな方の知的好奇心も刺激する内容となっている。舞台版は主人公のフロー(フローレンス・ナイチンゲール)を通し、信念を貫くことの大切さや人生の価値についてメッセージをより強く受け取っていただけるようなものにしていきたい」と語り、さらに「コロナ禍での活動において自由度の高いオリジナル作品創作の重要性を痛感した。本作の上演に加え、オンラインでの配信やグッズなどの商品化、将来的には海外へのライセンス輸出など未来に向けてさまざまな可能性を探っていきたい」と、ビジネス視点でのオリジナルミュージカル創作の重要性についても触れた。
演出 スコット・シュワルツ氏(撮影 上原タカシ)
本作にて演出を担うシュワルツ氏は「四季とのクリエイション『ノートルダムの鐘』が素晴らしい体験だったこともあり、初めてこのプロジェクトのお話を聞いた時はとても嬉しかったですし、原作の漫画も胸を打つもので、その展開にワクワクしました。物語はダークでスリリングでありながらラブストーリーの要素やユーモアもあります。今回のミュージル版はメロディックな楽曲やイリュージョンを使ったスペシャルエフェクトやフライングも見どころのひとつになると考えていますし、壮大な世界観とともに演劇的な仕掛けや作品が宿す強いメッセージもお楽しみいただけると確信しています」と新作に向けての意欲を見せる。
新作ミュージカル『ゴースト&レディ』ビジュアル
今回のスコット氏の来日に合わせ、劇団内ではすでに脚本のリーディングワークショップも行われ、大きな手ごたえもあったとのこと。この後、8月から9月頃に劇団内でのキャストオーディションを行い、本格的な稽古開始は来年2月上旬予定。同年5月の開幕後、半年程度の[秋]劇場での公演を経て、各地での上演も想定している(現時点でのキャスト総数は30名程度の予定)。
ナースとしての希望を失ったフローと芝居好きのゴースト、グレイに加え、ヴィランのジョン・ホールやフローの恋の相手(?)アレックスなどの登場人物の発表もあった新作ミュージカル『ゴースト&レディ』。劇団四季の新たな挑戦となる本作の上演を楽しみに待ちたい。
取材・文 上村由紀子(演劇ライター)