美しき吸⾎種の少⼥たちの物語が「新約」で語られる TRUMPシリーズ15周年の幕開けを飾る『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』開幕
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『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』
TRUMP series 15th ANNIVERSARY『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』が4月15日(土)に東京・サンシャイン劇場にて開幕した。
本作は、劇作家・末満健一がライフワークに掲げ、2009年から展開するTRUMPシリーズの15周年アニバーサリーの幕開けを飾る作品。2014年に初演された『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』を約9年ぶりに「新約」として脚本を改稿し、新たな楽曲を加えて再び上演する。出演者は、シリーズ初となるフルキャストオーディションで2,000通を超える応募の中から選ばれた面々が揃った。
『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』
物語の舞台となるのは、⾬が降り続く森の奥深くにあるサナトリウム。そこは「クラン」と呼ばれ、1,000年前から繭期(⼈間でいうところの思春期)の吸⾎種の少⼥たち(別の場所では少年たちも)が療養しながら暮らしている。クランでは、先輩である紫蘭と竜胆に導かれ、少女たちが賑やかに暮らす。時には男子のファルスやキャメリアが顔を出しながら、退屈ながらも平穏な暮らしが続いていた。しかし、ある日リリーは気付く。友人のシルベチカがいないことに。けれど、誰もが「シルベチカなど初めからいない」と言うのだった。
『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』
舞台を覆うように広がっているのは、大きな植物の葉。その葉は当たる光によって、雨が降り続く森の鬱蒼とした空気からクランで過ごす少女たちの明るい空気まで、実にさまざまな表情を見せる。そこを飛び回る少女たちが真っ白な衣裳をひらめかせる姿はどこか蝶々のようで美しい。繭期の症状で強烈な個性を放つ少女たちの中、どこか違う雰囲気を醸しているのは、内田未来演じるリリーと浜浦彩乃演じるスノウだ。「シルベチカとは?」という情報しか与えられていない状態の観客にとって、なにかを背負っているであろうふたりの一挙手一投足は、必然的に意味が大きくなる。その重要な役割を内田と浜浦は丁寧に丁寧に演じ、物語の真髄へと導いていた。また、斎藤瑠希演じるマリーゴールドも、本作初演の4年後に『マリーゴールド』(2018年)という作品が生まれるほどストーリーを背負った人物。斎藤は、リリーとスノウとは違う意味で異色の存在である彼女の感情を破裂させるように好演。ファルス役の大森未来衣も複雑な役柄を演じきり、作品の、そしてシリーズの奥行きを広げていく。
『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』
音楽についても5曲もの楽曲が追加されており、彼女たちの歌、そして旋律が『LILIUM』をより深く強く物語っていく。ダンスも、ひとつの生き物のような群舞などが印象的だ。ちなみに今作では、国内のミュージカル史上初となる『d&b Soundscape』というイマーシブ⾳響システムを採用し、まるで⽣⾳のようなダイナミックな⾳を観客に届けていた。
末満作品ならでは、TRUMPシリーズならでは、『LILIUM』ならではといえるような美しさのある本作。もちろん単独でも楽しめる作品であるが、まる14年という時を重ねてきたTRUMPシリーズの作品の数々によって、本作への思考を深めていくような感覚も味わえた。
『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』は4月23日まで東京・池袋のサンシャイン劇場、4月28日から5月3日まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。