万雷の拍手を呼び起こす、唯一無二のハーモニー『Nornis 1st LIVE -Transparent Blue-』レポート
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Nornis 左から町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネ
2023.3.15(WED)『Nornis 1st LIVE -Transparent Blue-』@グランキューブ大阪 メインホール
2023年3月15日(水)に、にじさんじ所属の町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネの3名によるボーカルユニット『Nornis(ノルニス)』による、待望の1stライブ『-Transparent Blue-』がグランキューブ大阪 メインホールにて開催された。大阪での開催ということもあり、事前に道頓堀川ではLEDビジョンを掲載した広告船がクルーズしていたりと、きらびやかな大阪のネオン街の中でも負けない存在感を放っていた3人。しかし、Nornisが放つ歌声こそが紛れもなく一番の魅力であり、その歌唱力こそが、唯一の存在であることを証明するのだった。
町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネの3名によるボーカルユニット『Nornis』が、2023年3月15日にグランキューブ大阪 メインホールにて『Nornis 1st LIVE -Transparent Blue-』を開催した。平日の開催にも関わらず会場は満員御礼で、オンライン
ギターやドラムスに加え、ヴィオラやバイオリンといったストリングス隊までもが並ぶ、豪華な生バンドの演奏で全編進んでいった。そんなストリングスの儚い音色が聞こえてくると、暗闇の中から青白くバンド隊の面々が照らし出されてきた。ベース、ドラムと音が重ねるにつれて重厚感が増していく中で、そのまま1曲目の『Abyssal Zone』へ突入する。バント隊の音の厚みに加え、クライマックスにつれて3人による主旋律と副旋律の掛け合いは緊張感を増していき、荘厳なライブの始まりを告げる鐘の音のような役割を果たしていた。曲の雰囲気はもちろんだが、何より3人の歌唱力を全面に出したこの曲から始まったことが、今夜の行く末を指し示していた。
打って変わって2曲目の『Daydreamer』はメインビジュアルの通り、オープンカーで海岸線をドライブしながら聴きたくなる爽やかなサマーチューンだ。厳かで重厚感ある楽曲から、爽快なサマーチューンまでを乗りこなすNornisの歌唱力の高さをまざまざと感じさせられる冒頭の流れで、一気に彼女たちの独壇場へと引き込まれていく。続けて『Through the glass』ではか細く儚く、泡沫の物語を歌い上げた。
ここまで3曲続けたところで、彼女たちから自己紹介と挨拶が入る。今回にじさんじのライブでは初導入となる『FreFlow(フリフラ)』と呼ばれる無線制御式のペンライトの話題にもなり、「みんな振ってみて〜」という戌亥の呼びかけに応じると、場内は一気に青と白のグラデーションに染まる。また改めて声出しOKのアナウンスもあり「皆さん、盛り上がっていけますか?」に対するレスポンスの熱気に驚きつつも、すぐに「愛嬌〜!!!」と叫ばせたりと、3人だけではなく観客も含め、少しずつライブの勘を取り戻していく。
このMCパートで無料配信が終了の旨も告げられたが、たったの3曲だけでNornisのポテンシャルは伝わったはずだ。しかし、Nornisの魅力が全て伝わりきったかといえばそれは嘘になる。ここからはカバーパートが続き、『酔いどれ知らず』は妖艶で優雅にヒラリヒラリと舞うような歌声を見せると、『君の銀の庭』は本家に負けず劣らずのハーモニーを奏でる。誰がソプラノで、アルトで、とかではなくこの3人のコーラスがとても心地いい。これこそがNornisの醍醐味といっても過言ではない。照明やカメラのフレアが木漏れ日のように世界観を演出する。
朝日南アカネ
町田ちま
戌亥とこ
またここからはソロ曲のパートが続いた。先鋒を務めた朝日南アカネの『Unchained』はユニットの曲とはガラリと雰囲気を変えて、K-POPのようなアグレッシブなダンスチューンを歌い上げる。続く町田ちまの『名前のない感情』はまさに曲名の通りに、なんと表現するのが正しいのか言葉を選ぶのが難しいが、あたたかく温もりを感じるのに、その奥に芯の強さと覚悟を感じさせる、優しさと強さを兼ね備えた歌声をボクらに届けてくれた。総大将の戌亥とこが最後に歌い上げる『六道伍感さんぽ』はとにかくアーバンで、たゆたうメロディに身を預けると、自然と身体が動き出してしまう。朝日南の強めな入りから、町田のワンクッションを挟み、戌亥でふんわりと着地させる曲順の良さに思わず腕を組み、深く頷くしかなかった。
ライブは折り返しを迎え『夜永唄』でしっとりとしたバラードから後半戦を組み立てていく。ここまであっという間のソロパートを振り返り、朝日南のカッコいいダンスが先輩2人にイジられるなど、ユニットとしての仲睦まじさも感じられるMCパートを経て、『PaⅢ.SENSATION』、『シニカルナイトプラン』、『fantasy/reality』とダンサブルなチューンで繋いでいく。「さて、最後の曲に行く前に〜」と唐突なラスト1曲の町田ちまによるMCに「オイオイ!ダンスとか頑張ってたよ!触れてよ〜」と知性担当らしからぬ(?)ハプニングで和やかなムードに包まれる。ここでようやく”最後の曲へ行く前に”改めてバンドメンバーの紹介を挟んだ。
最後の曲は『Goodbye Myself』。やはり何度も言ってしまうがNornisの魅力は、この3人によるハーモニーに他ない。この3人の歌声を最大限に活かす楽器構成になっていて、ボーカルに寄り添うようストリングスが、ベースが、キーボードが、あまりにも美しくて心地いい。万雷の拍手はやがて、アンコールを求める拍手へと移り変わった。
「アンコールありがとう〜〜!!」と緑黄色社会の『キャラクター』のカバーで勢いよく登場。ストリングスアレンジがビタッとハマっていて、思わず笑みがこぼれる。続いて未発表曲『White blossom』が披露されると、空気が一変し、まるで劇場版の主題歌のような壮大なフィナーレに思わず鳥肌が立つ。最後に会場のみんなとの撮影タイムも挟み、1人ずつ今日という日への感謝を述べていく。
「歌がやりたくてにじさんじに入った」という朝日南アカネは、大きなステージで歌うことが夢だったと語り、ようやく夢が叶ったこと、それを支えてくれたファンや何よりメンバーの2人には感謝しきれないと本音を漏らすと「え、アタシ?」と言わんばかりにお互いに指を差し合う先輩2人に茶化されたり、最後までこの3人の距離感には和まされる。
「まちまは最後に言うたってや、こういうのは早いもん勝ちやからな!」と戌亥が続く。「今日のために本当に多くの方に関わって頂いて、出来たライブなので本当に感謝ですし、こうやって終えてみると多幸感でいっぱいで、本当に幸せな気持ちですし、我々のライブが誰かの活力になってくれたら嬉しいなと思うので、これからも頑張っていきます!」と素直な思いを語った。
「ちょっと、喋りづらいよ……」とマジメな戌亥にツッコミつつ、やはり町田も感謝と本当に楽しかったこと、そしてこれからも活動を頑張っていく旨を語り、会場もブルースカイのペンライトで思いに応える。本当の最後に1stシングルの『Transparent Blue』を披露。亀田誠治らしいボーカルの魅力を最大限に引き出す楽曲は、間違いなくこの日のエピローグにふさわしかった。
「Nornisにリーダーとか、ないから!」と戌亥とこが語ったように、メンタルコーチ担当/愛嬌担当/知性担当とは自称こそしているものの、誰がどのパートを担当で……という小難しい話は抜きにして、町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネという役割を果たしているからこそ、Nornisは輝いているのだと改めて感じた。それはMCはもちろんだが、まずは歌唱力という点において他ならない。ソロパートと3人での楽曲との見事なまでのギャップを感じたと思うが、それが何よりの証左だろう。個々のクオリティと個性を併せ持つ3人の見事な調和、これこそがNornisだ。単なる声質や音域の高低だけで区分できない魅力がそこにある。だからこそ、これからもNornisはNornisらしく、どこまでも突き進んでいってほしい。
レポート・文:前田勇介
セットリスト
2023.3.15(WED)『Nornis 1st LIVE -Transparent Blue-』@グランキューブ大阪 メインホール