GANMI×宝塚歌劇、ダンスの質感変わる「すみれの花咲く頃」振り付け現場に潜入ーー連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』

2023.5.17
レポート
舞台

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GANMI×宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』開幕まであと10日。3月からスタートし宇月颯、湖月わたる、GANMIのSotaに話を訊いてきた、宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花による連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』も佳境に。今回は稽古場レポートの第二弾をお届けする。稽古初日レポート(こちら)とあわせてチェック。

加速するダンス

スタジオの重い扉を開けると、聞き慣れたメロディーが耳に飛び込んできた。宝塚歌劇を知っている人ならお馴染みの曲、「すみれの花咲く頃」。ダンサーがいっせいに舞い始める。

5月26日(金)に日本青年館ホールで初日を迎える『2STEP』、そのお稽古が始まって1週間が過ぎた。11人のアーティストからなるGANMIは、ライブパフォーマンスにとどまらず、振付提供やワークショップ開催など、その超実力派のダンスで幅広く活躍している。

そのGANMIと7人の宝塚歌劇OGが共演するDANCE LIVEが、『2STEP』なのだ。

お稽古初日のスタジオを覗かせてもらった時、そこに満ちていた朗らかな高揚感は、今はぐっと濃密になっていた。高度な振付が続くお稽古への緊張感はあっても、皆さんの顔はとても明るい。

この作品の振付と構成、演出まで担うGANMIのSotaさんは、出演者の一員でもある。この日は、今日のナンバーを担当するAYAKOさんの振付を受けつつ、常にシーン全体の様子に視線を走らせていた。

今作で使われる「すみれの花咲く頃」は、アップテンポなアレンジを施された流麗な旋律が印象的だ。次々と変わるフォーメイション、総踊りの迫力には何度でも見入ってしまう。これまで別のジャンルの踊りを追求してきたダンサー同士、個性を競い合うような場面に仕上がっていく。

宝塚歌劇の男役のダンスでは、女性を男性に見せるため、多くの工夫が必要とされる。主にジャズダンスを基本としたステップが使われ、そこには「型」とも呼べる男役らしい踊り方というものが存在する。

もちろん宝塚歌劇の舞台で男役として踊るわけではないけれど、宝塚歌劇OGの皆さんにとって、かつてしっかりと身に付けたダンスではある。きれ良く身体を動かす様子には「さすが!」と声が出た。

しかし、GANMIのメンバーが踊る「すみれの花咲く頃」を目にして、自分自身の思い込みはすっかり取り払われてしまった。ものすごく、カッコ良いのだ。

ダンサーを支えるもの

タカラヅカ流の振付を受けたGANMIの皆さんは、あっという間に男役ダンスの特徴をとらえていった。それでいて、腕のラインや背中のしならせ方に一人一人の個性が滲み出ている。踊り慣れないはずの振りがみるみる整い、むしろGANMIの色合いを際立たせていた。またしても「さすが……!!」と呟いてしまった。

真剣な思いで作品に打ち込むのならば、楽なお稽古などないだろうと思う。和やかな雰囲気であっても、それは決して「楽しいだけ」の時間ではない。完成に到達するまで繰り返し練習に明け暮れる日々は、辛いこともたくさんある。そんな時に出演者を支えるのは、ほかでもない「ダンス」そのものなのかも知れない。

ほんのわずかの休憩時間も、GANMIのメンバーはフロアから離れなかった。出会ったばかりのステップをひたすら繰り返し、動きを身体に叩き込んでいく。はじめは不慣れだった振りも、何度も踊るうちに形がバシッと決まってくる。コツをつかむ速さに、驚かされるばかりだ。

『2STEP』、さらに前進

『2STEP』の面白さは、出演者のコラボレーションの他にもある。振付のコラボレーションが、そのひとつ。一作品を数名の振付師が担当してシーンの繋ぎ目などを一緒に作ったりすることはあるが、『2STEP』ではより深く関わり合う共同作業が行われていた。

「すみれの花咲く頃」の旋律が盛り上がって曲調が変化すると、ダンスの「質感」のようなものも変わっていく。それは、一曲の中でAYAKOさんとGANMI主体の振付が合わさっているからだった。

引き継いだパートの雰囲気を大切にしつつ、シーンの流れががらりと変化する振りを作っていく。その境目から、ダイナミックなうねりが生まれるのだ。

そしてそれは紙の上で考えた踊りではなく、実際にダンサーの動きを見て、今あるものを即座に作り直していく。その作業が、目の前で行われていた。

ダンサーも振付師も、制作スタッフも、それぞれの個性の違いを発見したお稽古初日から、ぐっと前進していた。一緒に舞台を作っていく仲間への理解を少しずつ深め、みんなが柔軟な姿勢でお稽古に臨む。

「次は、ツーステップ の繰り返しです」と指示を出して、AYAKOさんが踊って見せると、GANMIのメンバーがしきりに首を傾げている。その名の通り、2歩分の足を踏むステップのことだが、実はGANMIと宝塚歌劇OGでは異なる形のステップのことをそう呼んでいたのだ。

「ツーステップって、こうじゃないの!?」と言い合いながら、わっと驚きの笑い声が上がる。お互いのツーステップを見つめて踊る皆さんの姿は、まさにこの公演のタイトル『2STEP』がひとつになる道のりを象徴しているようだった。

取材・文=早花まこ

『早花まこの、「2STEP、できますか?」』

第一回:宇月颯インタビュー(全文はこちら
<早花まこプロフィール>
東京都出身。2002年宝塚歌劇団入団。2020年の卒業まで雪組娘役として幅広い役を演じた。宝塚歌劇団の機関誌『歌劇』のコーナー“組レポ。”では、8年にわたり執筆。独自の視点で見た雪組生の様子を豊かな文章表現で伝え、ファンの人気を集めた。また、2023年3月1日『すみれの花、また咲く頃―タカラジェンヌのセカンドキャリアー』が新潮社から刊行される。現在は、文章といけばなの修行中。

公演情報

GANMI×宝塚歌劇OG DANCE LIVE『2STEP』
 
■振付:GANMI
■構成・演出:Sota(GANMI)
 
■出演:
【GANMI】
Sota、SUN-CHANG、kooouya、Kazashi、
Mr.D、shun、Dyson、Yuuki、Ryoga、O.S.M、AOI
 
【宝塚歌劇OG】
宇月颯、風馬翔、隼海惺、矢吹世奈、綾凰華、飛龍つかさ、輝生かなで
《SPECIAL CAST》湖月わたる
 
【東京公演】
日程:2023年5月26日(金)~5月28日(日) 
会場:日本青年館ホール
 
5月26日(金)15:00●
5月27日(土)12:00/16:00(貸切)
5月28日(日)12:00●/16:00☆
※●=アフタートークショー ☆=スペシャルカーテンコール
 
:S席11,500円、A席7,000円(全席指定・消費税込)
 
【大阪公演】
日程:2023年6月2日(金)~6月4日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 
6月2日(金)14:00●
6月3日(土)12:00/16:00(貸切)
6月4日(日)12:00●/16:00☆
※●=アフタートークショー ☆=スペシャルカーテンコール
 
:全席11,500円(全席指定・消費税込)
 
■公式HP:https://www.takarazuka-live-next.co.jp/stage/2023/2step/
■公式SNS:
Twitter @Takarazuka_LN
Instagram @takarazuka_live_next
TikTok @2step2023 ※2STEP公演限定
 
■お問合せ:
梅田芸術劇場(10:00~18:00)
〔東京〕0570-077-039 〔大阪〕06-6377-3888
 
■企画・制作・主催:タカラヅカ・ライブ・ネクスト、梅田芸術劇場
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