「あなたが日々笑顔で過ごせますように――。」ゴホウビが初ワンマンで体現した幸せな時間と無限大の可能性
ゴホウビ
ゴホウビ『Home Sweet Home!! Vol.1』 2023.05.11(thu)渋谷wwww
5月11日、渋谷WWWでゴホウビのメジャーデビュー後初となるワンマンライブ“Home Sweet Home!! Vol.1”を観た。ゴホウビは結成5年目、個性豊かな男女ツインボーカルが特徴の4人組ポップバンドで、それぞれが過去にバンドやソロでのキャリアがあり、実績と初々しさを併せ持つニューカマーだ。メジャー3作目の最新曲「一糸まとわぬアイを見せてよ」は、サブスクやSNSで過去最高ペースの数字を叩き出しながら快進撃中。渋谷WWWもコアなファンでしっかり埋まった。楽しむ準備は万端だ。
1曲目はいきなり新曲の「おかえり」。バンドのコンセプト「みんなの帰る場所でありたい」というテーマをそのまま曲にした、しっとりほっこり胸に沁みるスローナンバー。からの、「ゴキゲンなLOVER」では一気に明るくポップにハジける急展開。ボーカル&キーボードのスージーは、ピンクのドレスに愛らしいメガネ、小柄な体から飛び出すキュートでクリアなパワフルボイスがなんたって魅力的。相棒のボーカル・cody(コディ)は、スマートな細身が映える軽やかなステップで動き回り、熱いソウルの入った技巧的な歌を聴かせる。まるで違うスタイルなのになぜかハモりあい、歓びと華やぎがステージから溢れ出す。これがゴホウビ自慢の強力ツートップ。
むんちゃ / cody
スージー
405
ファンキーなシティポップ風の「次の恋が見つかるまで」から、codyがアコースティックギターを弾く「友達だったよね」へ、男女ツインボーカルの強みを生かしたドラマチックなラブソングが続く。曲調は徐々に深みを増して、よりダークなグルーヴを持つ「ターミナル」へ。妖しくサイケデリックな照明がムードを盛り上げ、ドラムのむんちゃ、ベースの405(シンゴ)、サポートギターの山崎裕也が、気合の入った太いリズムでボトムを支える。codyのボーカルも、時に狂おしいほどにエモーショナル。ポップで明るい開放感から内向的な密室感まで、冒頭5曲で多様な音楽性と感情のグラデーションをしっかり伝える。メジャー1年目とはいえ、やはりゴホウビにはほかのニューカマーにはない年輪の厚さがある。
「“Home Sweet Home”は、「やっぱり我が家が一番じゃ」という意味なんよ。行き慣れた友達の家に遊びに来ているような感覚で、ゆったりと聴いてもらえたら嬉しいです」
ゴホウビ
むんちゃ
ざっかけない広島弁でしゃべるスージーの、天性のノリの良さはゴホウビのライブの大きな魅力だ。ここからはアコースティックセットで、むんちゃが前に出てカホーンを叩く。メジャーデビュー2作目のシングル曲「kissしよ」では初の試み、サビの♪アイラブユー、の全員参加コール&レスポンスがばっちり決まった。続けてcodyがアコースティックギターを弾きながら歌う「好きなんだろ」は、しっとりスローな中に熱い思いを込めた情熱系バラード。そして「ラーメン」はタイトルとは裏腹に、何気ない日常の中での、すれ違う恋愛の心象描写が鋭い痛みと感動を呼ぶ。淡々としたリズムとセンチメンタルなメロディが、深い余韻を残す曲。
「ここからはテンポを上げて、気分を上げて。もっともっと一つになってきたいと思うんですが、みなさん行けますか? 心を丸ハダカにして、思い切り楽しんでください」
codyが高らかにタイトルを叫ぶのはこの曲、関西テレビの深夜ドラマ『全ラ飯』オープニング曲になった「一糸まとわぬアイを見せてよ」だ。60年代のモータウンサウンドを始め、様々な時代のポップスへの憧れを詰め込んだ、ゴホウビ特製の幕の内ポップがとにかく楽しい。盛り上げ隊長・codyもマイク一本でステージ狭しと駆け回り、煽りまくる。「SABISHINBO STREET」では405がシンセベースと生ベースの両刀使いを見せながら、むんちゃ→405→山崎と気合の入ったソロを繋ぐ。音源をはるかにしのぐ強烈な重低音と音圧が、ライブバンド・ゴホウビのアイデンティティを強くアピールする。
ゴホウビ
codyがインストラクターになって観客の手振りをリードする「ラムネ」は、ゴホウビ流のハッピーなダンス・エクササイズ。負けじとスージーがマイクをつかみ、codyを押しのけてステージ中央で歌いまくるパフォーマンスが楽しい。「NO RAIN,NO RAINBOW」はさらに明るく熱く激しく、そこらのパンクやラウドロックに負けない爆音で突っ走り、スージーが笑顔でキーボードをひっぱたいて肘打ちをかます。ゴホウビがこんなにアグレッシヴなバンドだったとは、嬉しい驚きだ。バンドというものは、やはりライブを見ないとわからない。
「誰かの心に寄り添う音楽を、というテーマでずっとやってきました。あなたがほっと一息つけるような、安心できるような音楽を一生懸命作っていくので、これからもよろしくね」
あなたが日々笑顔で過ごせますように――。codyがバンドを代表して伝える言葉に続いて歌われた本編最後の曲は、メジャーデビュー曲「好きな服」だった。ゴホウビの音楽の基本にある、芯の太いバンドサウンド、せつなさをたたえたキャッチーなメロディを凝縮した曲。光が照らす道を、好きな服で行こうぜ。親身なメッセージが、ツインボーカルの力強いハーモニーと、全身を使ったアクティヴなパフォーマンスと共に、心の深いところまでじんわりと沁み込んで来る。
スージー / cody
スージー / cody
そしてアンコール。清涼感溢れる美しいアカペラをイントロに配した「ラブ≠∞」は、観客の手拍子とバンドのグルーヴが一体化して、ハッピーなヴァイブス全開で伸びやかに。4人のそれぞれのプロデュースグッズの紹介で盛り上がったMCタイムをはさみ、この日のラストチューン「LIFE」は、ゆったりとしたヒップホップ調のミドルテンポに乗せて、名残惜しくも前向きに。「僕が生まれた意味」を真摯に問う歌詞が、ゴホウビの音楽が持つ内省と外向の二面性をしっかりと届けてくる。
盛大なスタンディングオベーションの中、手を繋いで声援に応えるメンバーの顔に浮かぶ充実感と、ここはまだ一歩目だという引き締まった緊張感。ライブで体感したゴホウビは、完成度の高い音楽とは別に、飾らない人なつこさを強く感じさせるバンドだった。このあと、7月5日に新曲「なんぼのもんじゃい」をリリース。そして11月2日には、“ゴホウビ 5th ANNIVERSARY ONEMAN LIVE ~GOHOBIRTH 2023~”を東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催することも発表された。ゴホウビがこれから、どんなバンドへと育って行くのか。可能性と期待は無限大だ。
取材・文=宮本英夫 撮影=鈴木友莉
ゴホウビ
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セットリスト
2.ゴキゲンなLOVER
3.次の恋が見つかるまで
4.友達だったよね
5.ターミナル
6.kissしよ
7.好きなんだろ
8.ラーメン
9.一糸まとわぬアイを見せてよ
10.SABISHINBO STREET
11.ラムネ
12.NO RAIN, NO RAINBOW
13. 好きな服
en1.ラブ≠∞
en2.LIFE
ライブ情報
2023年11月2日(木)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
open 18:15 / start 19:00
全席指定・4,500円(入場時ドリンク代¥600必要)