眞島秀和、倉科カナら舞台『My Boy Jack』上演決定 演出は上村聡史
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2023年10月~11月にかけて、舞台『My Boy Jack』(マイ・ボーイ・ジャック)が東京、福岡、兵庫、愛知にて上演されることが決定した。演出は上村聡史、出演は眞島秀和、倉科カナ、前田旺志郎、夏子ほか。
『My Boy Jack』は、「ジャングル・ブック」などで知られるノーベル文学賞受賞作家、ラドヤード・キプリングが、第一次世界大戦中に書いた詩。声高に戦争が悪いとも、戦争に行かなければよかったとも、息子を返せとも言わず、荒れ狂う風と潮に翻弄され、なすすべもなくいる者のやり場のない憤りや嘆きが語られている。その後、名優 デイヴィッド・ヘイグが戯曲化し、1997年にウェストエンドで上演、イギリスで2007年にテレビ映画化された際には、息子役をダニエル・ラドクリフが演じたことも話題となった。
舞台の演出を務めるのは、『Oslo(オスロ)』『野鴨-Vildanden-』『A・NUMBER』『エンジェルス・イン・アメリカ』などを手掛け、戯曲の面白さを最大限に引き出す上村聡史。人脈を使って息子を軍にねじ込む厳格で優しい父を眞島秀和、子どもたちに無償の愛を注ぐ母を倉科カナ、ハンデがあるにも関わらず必死に努力し将校になった息子を前田旺志郎、不安を押し殺しながら日々を暮らす姉を夏子が演じる。
上演決定にあたり、演出の上村聡史、出演する眞島秀和、倉科カナ、前田旺志郎、夏子からコメントが到着した。
演出 上村聡史 コメント
ノーベル賞を受賞し、イギリスを代表する小説家でもあり詩人のラドヤード・キプリング。その輝かしい功績とは逆に、『帝国主義の伝道者』とも評された、近代の知性を象徴するような人物。本作は、俳優としても活躍するデイヴィッド・ヘイグが、キプリングの同名の詩(1916年)に影響を受け、創作された物語ですが、時代を切り開こうとする人間の知性の闇を描いているように、私は感じます。“帝国主義”と聞くと、前時代的で恐ろしい印象ですが、“愛国心”と聞くと、大きな共同体に対し、献身的な印象があります。しかし、この二つは紙一重で、「国の正義のため」という名目のもと、個人の未来や人間性を崩壊させる殺傷能力があります。そしてそれは、ほんの百年前の世界、つまり戦争の世紀に大きく渦巻いていましたが、果たして現代の私たちは、本当の意味で、百数年前から前進しているのでしょうか?
この物語は、第一次世界大戦の時代を舞台にしたキプリングの家族の物語ですが、栄誉、地位、名声といった男性の知性が作り出した威光が、一気に闇に包まれていく様を、この時代に立ち上げることができればと思います。
眞島秀和 コメント
またとてつもなく高い壁が、目の前に現れました。
稽古が始まるのはまだちょっと先ですが、今から楽しみです。なんてことは正直言えません。しかし、難しい事に挑戦できるのもこの仕事の醍醐味です。
戦場に息子を送り出す父親という役を、今、演じる意味を感じながら、初めてご一緒する演出の上村さん、出演者、スタッフの皆様と一緒にこの作品をお届けします。
頑張ります。
倉科カナ コメント
今回、「ガラスの動物園」でご一緒させて頂いた上村さんはじめ、とても仲の良いマッシーこと、眞島さんとの夫婦役、体当たりしても受け止めてくださるという安心感があります!
私が演じる戦争に息子を送り出した母親・キャリーという役的にも、お互いに静かにリングに上がり、静かに殴り合い、静かに血の涙を流しているようなイメージのある作品だったので、みんなで緻密に役を掘り下げ、板の上では、思い切りぶつけられるように稽古を重ねていけたらと思っています。
ひとたび戦争となれば、人を殺す事が罷り通り、そして名誉になる。
戦死しても英雄となる。名誉とは英雄とはなにか、今一度考えるべき事だな、と台本を読み強く思いました。
戦争というものに対して、キプリング家の中でも意見が違う、きっと観てくださった方々も色んな意見があると思います。正しいや間違いという事でなく、一緒に考えてみるきっかけになれば良いなと思います。
前田旺志郎 コメント
舞台を何度も拝見した事がある上村さんからの演出を受けられる事に、稽古前の今から緊張とワクワクで興奮しております。
今回、僕がやらせていただくジョンという役は、戦地に出て戦う事に憧れを持つ青年です。家族からのプレッシャーを感じながら、それでも戦地へ行き、家を出たいと強く思っています。
ジョンは本作のテーマである親子愛や、戦時中の価値観のぶつかりを担うとても重要な役どころだと感じております。
それだけの大役なので、見ていただく皆様にジョンという人間を強く印象づけられるように、この役を大切に演じていきたいなと思います。
皆様の心に残るような舞台になるよう全力で努めますので、是非ご覧ください。
夏子 コメント
戯曲『マイ・ボーイ・ジャック』は『ジャングル・ブック』を生み出した作家ラドヤード・キプリングが残した詩をもとにうまれた、家族の物語です。
長女を病で失い、息子を戦争で失ったラドヤード・キプリング。
自然的な死と悲人道的な死を経験したキプリングの作品は、読めば読むほど、そこにはジャックの死以外にも、長女ジョセフィンへの想いも複雑に絡んでいるように思いました。
私の演じる、次女エルシーは姉と弟を亡くしています。
大人と子供の狭間の少女は、父親を愛する気持ちと戦争を肯定した父親への不信感に大きく揺れたはずです。エルシーのセリフひとつひとつは誰よりも素直で、その素直さが胸に刺さります。
そんなエルシーを、これから稽古で見つけていければと思います。
あらすじ
激戦が続く第一次世界大戦。健康な体があるなら戦地に行くべしと声高に理想を語る父キプリングは、酷い近視ゆえに軍の規則で入隊出来ない息子を、人脈をつかって軍にねじ込む。
母親と姉は、必死に不安を圧し殺しながら日々を暮らす。戦意高揚を謳っていた父親も、日が経つにつれて不安にさいなまれるようになる。
ハンデがあるにもかかわらず必死に努力し将校になったジョン(ジャック)は、西部戦線へと出征する。厳格だが優しい父と、無償の愛を注ぐ母との幸せな家庭で育った彼は、銃弾が飛び交う戦場を体験する。ある朝、突撃ラッパが鳴り響く中、彼の中隊に突撃命令が下る。数時間の激闘が終わり兵士たちは次々と傷つきながら塹壕へと引き上げてくるが、そこにジャックの姿はなかった。