是枝裕和監督『怪物』が『第76回カンヌ国際映画祭』でLGBTQ扱うクィア・パルム賞を“日本映画初”受賞 坂元裕二氏の脚本賞とあわせ2冠
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『第76回カンヌ国際映画祭』是枝裕和監督
6月2日(金)に日本で封切られる映画『怪物』が、『第76回カンヌ国際映画祭』でクィア・パルム賞と脚本賞(坂元裕二氏)を受賞したことがわかった。
『怪物』は、『そして父になる』『万引き家族』『ベイビー・ブローカー』などの是枝裕和監督がメガホンをとり、『花束みたいな恋をした』の坂元裕二氏がオリジナル脚本を手がける映画。企画には、『百花』の川村元気氏と山田兼司氏が名を連ねている。また、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら出演。音楽を、坂本龍一さんが手がけている。
映画『怪物』 (C)2023「怪物」製作委員会
『怪物』は、現地時間5月17日(水)に『第76回カンヌ国際映画祭』コンペティション部門で公式上映が実施。5月27日(土)に差しかかる頃には、主要部門の授賞式前に発表される独立賞「クィア・パルム賞」を受賞したことが発表された。同賞は、カンヌ国際映画祭の独立賞のひとつで、LGBTやクィアを扱った映画に与えられる賞。2010年に創設され、第63回カンヌ国際映画祭から授与されている。公式部門とは別に独立した審査員が組織され、映画監督や俳優、ジャーナリストや大学教授、各国のクィア映画祭のプロデューサーなど、毎年5人から8人が審査員を務めている。同賞はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門、国際批評家週間、監督週間、ある視点部門に出品されたすべての作品が対象としており、『怪物』は日本映画としては初の受賞を果たしている。
『第76回カンヌ国際映画祭』クィア・パルム賞受賞後の是枝裕和監督、ジョン・キャメロン・ミッチェルら
「クィア・パルム賞」の授与にあたり、審査員長のジョン・キャメロン・ミッチェル(『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』『パーティで女の子に話しかけるには』などの監督・俳優)は「私たち審査員は、10日間で12本の映画を観ました。1本を選ぶのは大変な作業でしたが、ある作品が満場一致で選ばれました。その物語の中心にいるのは、他の子供たちと同じように振る舞うことができず、またそうしようともしない、とても繊細で、驚くほど強い2人の少年です。世間の期待に適合できない2人の少年が織りなす、この美しく構成された物語は、クィアの人々、馴染むことができない人々、あるいは世界に拒まれている全ての人々に力強い慰めを与え、そしてこの映画は命を救うことになるでしょう。登場人物のあらゆる面を、繊細な詩、深い思いやり、そして見事な技術で表現した是枝裕和監督の『怪物』に、私たち審査員は満場一致でクィア・パルム賞を授与します」とコメントしている。
『第76回カンヌ国際映画祭』
これを受け、是枝監督は「ありがとうございます。まずこの作品を満場一致で選んで頂いたジョン・キャメロン・ミッチェルさん、審査員の皆さまありがとうございます。そしてこの喜びをここで分かち合って頂いている皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございます。(ジョン・キャメロン・ミッチェルさんが)お話してくださった映画の紹介の中に、この映画を通して僕が描きたかったことが全て語られていて、ここで僕が何か言葉を重ねることは何も必要ないような気がしています。僕がこの映画のプロットを手にしたのは4年半ほど前なのですけども、その瞬間からこの主人公2人の少年が抱えている葛藤とどういう風に、それを演じる少年と同じように作り手であるプロデューサー、監督、脚本家がその葛藤と向き合うべきなのか、どうしたら向き合えるのかをとてもとても時間をかけてやってきました。映画がすべてを語っていると思うので、監督がここでなにかをいうのは、おまけのような、いらない蛇足なのですが本当に、この映画を愛していただいて感謝いたします。ありがとうございました」と語った。
左から、是枝裕和監督、坂元裕二氏
脚本賞は、審査員長のリューベン・オストルンド監督(『逆転のトライアングル』で昨年、パルム・ドールを受賞)をはじめ、ジュリア・デュクルノー監督(『TITANE チタン』で2021年にパルム・ドールを受賞)、ポール・ダノ、ブリー・ラーソンらが選出。是枝監督は、壇上で「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんに、すぐ報告します。僕がこの脚本の基になったプロットを頂いたのが2018年の12月なので、もう4年半前になります。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人の1人として、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというのを見つけられませんでした。なので、頂いた脚本の1ページ目に、それだけは僕の言葉なんですけども、『世界は、生まれ変われるか』という1行を書きました。常に、自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました。一緒に脚本を開発した川村さん、山田さん、作品に関わっていただいたスタッフ、キャストの皆さん、みんなの力でこの賞を頂けたと思っております。ありがとうございました」とスピーチした。
カンヌ国際映画祭での日本映画の脚本賞受賞は、2021年の『第74回カンヌ国際映画祭』での濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』が受賞して以来2年ぶり。是枝監督作品のカンヌ映画祭でのコンペ部門での受賞は、2022年の『ベイビー・ブローカー』に続き2年連続となる。
『怪物』は6月2日(金)、TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー。