川島海荷「作品に隠されたファンタジックなリアルを見てほしい」~演劇&TVドラマ『君しか見えないよ』オフィシャルレポート公開
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『君しか見えないよ』舞台写真 川島海荷
2023年6月1日(木)、浅草九劇にて、『君しか見えないよ』が開幕した。この度、主演の川島海荷よりコメント&オフィシャルレポートが届いた。
本公演は、株式会社レプロエンタテインメントが運営する浅草九劇と、幅広いエンターテインメントジャンルの番組を無料で放送するBS松竹東急がタッグを組み誕生した。また、演劇公演の上演後、テレビドラマ版として放送するプロジェクト「演劇で、テレビドラマで、」シリーズの第1弾で、同じ作品を多様なメディアを活用しながら展開することで、幅広い鑑賞体験が楽しめる。
今回の『君しか見えないよ』では、2022年に岸田國士戯曲賞を獲得した山本卓卓(範宙遊泳代表)が脚本を、「キングオブコント2013」の優勝者にしてキャストの岩崎う大(劇団かもめんたる主宰)が演出を担当。主演を川島海荷が務めるほか、キャストには岩谷健司、郡山冬果、浜名一聖、ベンガルも名を連ねる。
主人公・熊村亜寿(川島)のモノローグによって、本編は幕を開けた。
8年前、実家にバラエティ番組の撮影クルーが訪れたものの、編集後の放送映像しか記憶にないという。落語のような一人問答を繰り広げながら、亜寿はいつしか同じ日をもう一度なぞることになるが、8年後の変化を知らない当時の父(岩谷)が現在の自分に話しかけてきたり、暑苦しく厚かましいロケクルーの存在(浜名・岩崎)に戸惑ったりしながら、在りし日の家族に想いを馳せていく。
物語は、亜寿が舞台上に登場しない「君」へ向かって語りかけるようにして進む。ヒロインにして狂言回しでもある多彩な役どころを、川島は清廉な魅力を振りまきながら形にしてみせた。父親役の岩谷はとぼけたおかしみを折々に滲ませ、客席の笑いを誘う。母親役の郡山はミステリアスな一面を覗かせ、祖父役のベンガルは「元役者」という設定で立ち回りを披露するシーンも。ロケ芸人・タランチュラ米櫃(浜名)による寒々しいギャグに、すぐさま乾いた笑い声を挟むディレクター役・岩崎の“哲学”ぶりにも注目だ。
客席にいるとされる不在の「君」へ健気に語りかける亜寿の姿に、コロナ禍で無観客だった頃の寂しい客席を思い浮かべて切なくなる側面も。このようにタイトル『君しか見えないよ』の「君」が何のメタファー(隠喩)か考えながら観ると、より豊かな観劇時間になるかもしれない。また壁やドアなどがゴムや紐で表現されている亜寿の実家がどのような行方をたどるのか、そのビフォーアフターに想いを巡らせるのも鑑賞のポイントだろう。公演終了後の7月9日(日)に放送されるテレビドラマと、どのようなシンクロを見せてくれるのかにも注目だ。
今回、主演を務める川島は、「『君しか見えないよ』は、劇場でしか感じることのできない不思議な世界観を持った作品です。それに加えて映像になるというのも、演劇の枠を超えて新しい感覚で皆さんに楽しんでもらえるのでは、と思っています。」とコメント。また、「”君”とは誰なのか、この作品に隠されたファンタジックなリアルをぜひ見てもらいたいです」と作品に対する想いも明かしています。
上演時間は約85分(休憩なし)。
演劇版は6月11日(日)まで。BS松竹東急におけるテレビドラマ版の放送は7月9日(日)21時からを予定している。
テレビドラマ版では、演劇版の全編映像に付随してドラマ用に撮影された新しい描写が加えられた映像作品となっており、演劇版と合わせて観ることにより、より様々な角度から楽しめるドラマになっているとのこと。
いびつながらも、温かい家族の会話を通じて匂い立つホームドラマ作品。まずは、劇場でしか観ることのできない角度から、『君しか見えないよ』の世界観を楽しんでみてはいかがだろうか。
取材・文:岡山朋代 カメラマン:渡部秀平
公演情報
会場:浅草九劇
演出:岩崎う大(かもめんたる)
出演:川島海荷 岩谷健司 郡山冬果 浜名一聖 岩崎う大 ベンガル