アクリ瑠嘉が語る、ロイヤル・バレエ『シンデレラ』での役作りの妙味~アシュトンの至高の名作が舞台美術・衣裳を一新してリバイバルされ映画館上映!
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Photograph by Andrej Uspenski
「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23」(配給:東宝東和)の一環として、ロイヤル・バレエ『シンデレラ』が2023年6月16日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開される(6月22日(木)まで一週間限定)。ロイヤル・バレエの『シンデレラ』は、1948年、フレデリック・アシュトンにより振付された。おなじみのシンデレラ・ストーリーを、プロコフィエフの同名曲にのせてユーモアとペーソスを込めて描き長く愛されている。その名作を本年久々に上演するにあたり、舞台美術・衣裳をリニューアル。舞台装置を手掛けたトム・パイは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーによる舞台版『My Neighbor Totoro(となりのトトロ)』で2023年のローレンス・オリヴィエ賞舞台デザイン賞を受賞。「SPICE」では、シンデレラの義理の姉たちを演じたアクリ瑠嘉に、役作りの面白さや2023年6月下旬から7月上旬にかけて開催されるロイヤル・バレエ来日公演への意気込みを聞いた。
■待望の配役! シンデレラの姉たち(妹役)で膨らんだ役作りのイメージ
――アクリさんは、古典から現代作品まで幅広い演目で多彩な役柄を踊っています。このほどフレデリック・アシュトン振付『シンデレラ』全3幕で主人公シンデレラの義理の姉たちをはじめて踊りました。ユーモアたっぷりに踊り演じるキャラクターです。配役を知った際のお気持ちは?
アクリ シンデレラの義理の姉たちの妹の方です。「来るかな」とは思っていましたね。バレエ団に入って長くなり、芸術監督のケヴィン(・オヘア)は僕のキャラが濃い部分も見ているので、こういうことをやるのが好きなのを分かってくれていると思っていました。発表された時はうれしかったです。姉役のギャリー(・エイヴィス)さんにもよくしてもらい、ファーストキャスト(初日を飾る第1キャスト)をやれたので、素晴らしい経験になりました。
Gary Avis and Luca Acri in Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
――エイヴィスさんは、芸達者なプリンシパル・キャラクター・アーティストで、今回の『シンデレラ』上演の振付指導者のひとりでもあります。おふたりでどのように役作りをしましたか?
アクリ ギャリーさんは以前から姉の役をやっていますが、僕は今回新しく入りました。前回の上演時、僕はまだ学生だったので、他の役もやっていません。他のバレエだとコール・ド・バレエ(群舞)に入っていたらソリストやキャラクター・ダンサーの踊りを観て、役のイメージをつかめるのですが、『シンデレラ』ではそれがありません。頑張ってキャラ作りをするよりも、まずは振りを覚えていきました。
ギャリーさんが演じるお姉さんは、強烈で、意地悪なので(笑)そことのバランスがいいようにしました。「かわいくて、ちょっと抜けているけれど、お姉さんが大好きな妹」という感じのイメージがどんどん増えてきました。姉妹のなかで意地悪な方ではないのが僕のイメージです。お姉さんの真似をしてシンデレラを押してしまったりすることも頭に入れてリハーサルを進めました。化粧をして、衣裳を着てといった、舞台に立つ最後の最後まで役作りは続きました。
――試写を拝見しましたが、確かに憎めない感じがしました。
アクリ 僕のイメージは、お客さんに妹役の自分の哀しみを分かってもらえるような「ピュアな心を持っている妹役」でした。ステップは決まっていますが、ちょっとしたキャラ作りは自由でした。ペアにもよっても変わりますね。トーマス・ホワイトヘッドさんとも姉妹を演じましたが、その時はまた違ったかと思いますし、舞台ごとにも変わります。
Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
■「物語に最初から最後まで関わり、ストーリーの展開を感じたい」
――シンデレラの姉たちの演技はアシュトン版『シンデレラ』の見どころのひとつですが、ややもすれば見せ場を盛り上げようとして演技がやり過ぎになるかもしれません。その辺りのバランスが腕の見せどころではないかと思うのですが、いかがですか?
アクリ やり過ぎはよくないですね。自然に、コミカルにやるのは難しいです。
――特にお気に入りの場面はどこですか?
アクリ 第1幕が楽しかったですね。シンデレラにさまざまな形で絡みますし踊りも多いです。(第2幕の)舞踏会のために準備する場面では、小物を扱うことも多く緊張もするのですが、楽しめました。どんどん新しい靴を履いたり、カツラを付けてみたり、化粧をしたりするのが楽しかったです。毎回毎回その場に応じて少し違った対応をすることもできるのも好きでした。
第2幕も笑えますし、姉妹がオレンジを持って踊る場面も凄く良い曲です。姉妹は全幕を通じて登場します。以前映画館上映された『くるみ割り人形』(2021年12月収録)でハンス・ピーター/くるみ割り人形を演じた時の取材でもお話ししたのと同じように、物語に最初から最後まで関わり、ストーリーの展開を自分でも感じて体験できる役は楽しいですね!
Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
――シンデレラはマリアネラ・ヌニェスさん、王子はワディム・ムンタギロフさんです。仙女の金子扶生さん、道化の中尾太亮さん、四季の精のうちの秋の精の崔由姫さんといった日本出身者も含めて豪華な配役ですね。
アクリ マリアネラさんのシンデレラをいじめたり、一緒に踊ったりするのは楽しかったです(笑)。マリアネラさんやワディム、扶生さんだけでなく、(前田)紗江ちゃんや中尾くんも頑張っています。みんなで一つの舞台を創りあげることができました。
Vadim Muntagirov and Marianela Nunez in Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
Fumi Kaneko in Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
■日本での『シンデレラ』映画館上映、そして4年ぶりの日本公演に向けて
――映画館上映に向けて、日本のファンの皆様に一言メッセージをお願いします。
アクリ ロイヤル・バレエが誇るアシュトンの『シンデレラ』で、新しい美術・衣裳も見どころです。フレッシュな見ものになると思います。僕らのコミカルな演技もお楽しみください!
Cinderella, The Royal Ballet ©2023 Tristram Kenton
――『シンデレラ』の映画館公開終了直後、2023年6月24日(土)から7月8日(土)にかけて、英国ロイヤル・バレエ団 2023年日本公演が東京、大阪、兵庫の姫路で行われます。2019年以来4年ぶりのカンパニーでの来日です。〈ロイヤル・セレブレーション〉では、クリストファー・ウィールドン振付『FOR FOUR』に出演予定の回もあります。それから、ケネス・マクミラン振付『ロミオとジュリエット』全3幕にも出られますよね?
アクリ 『FOR FOUR』は、もともとは4人の偉大なダンサーであるアンヘル・コレーラ、イーサン・スティーフェル、ニコライ・ツィスィカリーゼ、ヨハン・コボーのために創られました。男性4人でシェアする力強さとウィールドンならではの綺麗なムーヴメントをお見せできると思うので楽しみにしています。『ロミオとジュリエット』ではマキューシオを踊る予定です。前々回の日本公演(2016年)でもやりましたが、それから7年が経つので、レベルアップした自分をご覧いただければ。ぜひ、お越しください。
【予告編】The Royal Ballet: Cinderella cinema trailer
取材・文=高橋森彦
上映情報
ロイヤル・バレエ『シンデレラ』
北海道札幌シネマフロンティア2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
宮城フォーラム仙台2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
東京TOHOシネマズ 日本橋2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
東京イオンシネマ シアタス調布2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
千葉TOHOシネマズ 流山おおたかの森2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
神奈川TOHOシネマズ ららぽーと横浜2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
愛知ミッドランドスクエア シネマ2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
京都イオンシネマ 京都桂川2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
大阪大阪ステーションシティシネマ2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
兵庫TOHOシネマズ 西宮OS2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
福岡中洲大洋映画劇場2023/6/16(金)~2023/6/22(木)
※上映時間について、公開日が近づきましたら上映劇場へ直接お問い合わせ下さい。
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【舞台美術】トム・パイ
【衣装デザイン】アレクサンドラ・バーン
【照明デザイン】デヴィッド・フィン
【映像デザイン】フィン・ロス
【特殊効果】クリス・フィッシャー
【振付指導】ウェンディ・エリス・サムズ、ギャリー・エイヴィス
【指揮】クン・ケッセルズ
【演奏】ロイヤル・オペラハウス管弦楽団
【出演】
シンデレラ:マリアネラ・ヌニェス
王子:ワディム・ムンタギロフ
シンデレラの義理の姉たち:アクリ瑠嘉、ギャリー・エイヴィス
シンデレラの父:ベネット・ガートサイド
仙女:金子扶生
春の精:アナ=ローズ・オサリヴァン
夏の精:メリッサ・ハミルトン
秋の精:崔由姫
冬の精:マヤラ・マグリ
道化:中尾太亮
1幕シンデレラの父の家で
シンデレラの義理の姉たちは、お城での舞踏会に招かれてうきうきしている。だがシンデレラは家で留守番をして一日中掃除に励まなければならない。一人になったシンデレラは、母が存命中の時の幸せな日々を思い出す。父もその頃を懐かしんでいるが、シンデレラを慰めようとすると叱ってくる、怒りっぽい義理の娘たちのことを恐れている。
謎めいた女性が助けを求めてやってくるが、義理の姉たちは彼女を追い払おうとするところ、シンデレラはパンを与える。女性は優しい視線をシンデレラに送り去っていく。
洋服屋、美容師、宝石商たちが義理の姉たちが舞踏会の準備をするのを手伝う。ダンス教師と共に、姉たちはガヴォットの稽古をする。シンデレラの父と姉たちは舞踏会に出かけ、一人ぼっちになったシンデレラは寂しい気持ちになる。
そこへ謎の女性が再び現れ、仙女だったと身分を明かす。春、夏、秋、冬の妖精たちを呼び寄せ、シンデレラに季節の贈り物を贈る。今までの灰色の日常から離れ、シンデレラは星の中の美しさとファンタジーに満ちた魅惑の世界へと連れられる。優しい心への褒美として、シンデレラは舞踏会へと招かれる。仙女は、時計が12時の針を指すまでに舞踏会を出なければならないと念を押す。その時間には全ての魔法が解けてしまうから、と。四季の精と星たちに導かれ、シンデレラはかぼちゃの馬車で舞踏会へと向かう。
2幕 お城
宮廷の道化は舞踏会の始まりを待ち構えている。シンデレラの父と義理の姉妹を始めとする客人が到着する。ファンファーレが鳴り王子の到着を告げる。シンデレラはかぼちゃの馬車に乗って到着し、輝くばかりの美しさで誰もが彼女はお姫様だと思い、義理の姉妹ですら、シンデレラだと気が付かない。王子は彼女の美しさに魅せられ、王国で最も珍しい果物であるオレンジを贈る。客人は散り散りになり、広間に残された王子とシンデレラはお互いの愛を誓う。ワルツで客人たちはまた集まり、舞踏会で踊るうちにシンデレラは仙女の警告を忘れてしまう。突然彼女は時計が12時の鐘を鳴らすのを聞き、お城から走り去るがガラスの靴の片方を階段に落としてしまう。嘆く王子はこのガラスの靴を拾い、愛する女性を探し当てると誓う。
3幕 宴の後で
シンデレラは再び自宅の暖炉の前に戻り、お城での出来事はすべて夢だったのかしらと想う。エプロンのポケットにあるガラスの靴は、彼女が本当にお城の庭園にいて王子にと踊ったことのしるしだった。義理の姉妹も帰宅し、舞踏会での楽しかった夜を自慢げに語る。
王子がやってきて、ガラスの靴を落とした若い女性を探しているという。義理の姉妹は二人とも、足を繊細な靴の中に押し込もうとする。姉妹を手伝おうと跪いたシンデレラのポケットから、もう片方のガラスの靴が落ちる。王子は、粗末な身なりのシンデレラが、舞踏会での美しいお姫様であることに気が付く。仙女が現れ、二人は祝福されて幸福の光に満たされ永遠の愛を誓う。
【公式サイト】http://tohotowa.co.jp/roh/
【配給】東宝東和
公演情報
上演予定作品:
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド” [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)
マリアネラ・ヌニェス、リース・クラークほか/ナターリヤ・オシポワ、ウィリアム・ブレイスウェル ほか/マシュー・ボール、ジェイムズ・ヘイ、ワディム・ムンタギロフ、マルセリーノ・サンベ/フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生、マヤラ・マグリ、ヤスミン・ナグディ
サラ・ラム、平野亮一ほか/マリアネラ・ヌニェス、マシュー・ボールほか/ウィリアム・ブレイスウェル、セザール・コラレス、ジョゼフ・シセンズ、アクリ瑠嘉/メーガン・グレース・ヒンキス、佐々木万瑠子、クレア・カルヴァート、佐々木須弥奈
高田茜、スティーヴン・マックレーほか/ラウラ・モレーラ、ワディム・ムンタギロフほか/マシュー・ボール、ジェイムズ・ヘイ、ワディム・ムンタギロフ、マルセリーノ・サンベ/フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生、マヤラ・マグリ、ヤスミン・ナグディ
◆ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【配役】ジュリエット/ロミオ
6月28日(水) 18:30 サラ・ラム/スティーヴン・マックレー
6月29日(木) 13:30 ヤスミン・ナグディ/マシュー・ボール
6月29日(木) 18:30 フランチェスカ・ヘイワード/アレクサンダー・キャンベル
6月30日(金) 18:30 ナターリヤ・オシポワ/リース・クラーク
7月1日(土) 13:00 アナ・ローズ・オサリヴァン/マルセリーノ・サンベ
7月1日(土) 18:00 マリアネラ・ヌニェス/ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日) 13:00 高田茜/平野亮一
会場:東京文化会館(上野)
主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会
S=\26,000 A=\23,000 B=\20,000 C=\16,000 D=\12,000 E=\9,000 U25 シート=\5,000
会場:フェスティバルホール
公演日:7月5日(水)18:30開演 主演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ
会場:アクリエひめじ
公演日:7月8日(土)14:00開演