未知との遭遇!『PLAYLIST presents“ヘッドフォンを外して”vol.3』ヤングスキニー、原因は自分にある。が見せたZ世代流対バンのカタチ
PLAYLIST presents ” ヘッドフォンを外して ” vol.3
PLAYLIST presents ” ヘッドフォンを外して ” vol.3 2023.0601(thu)LIQUIDROOM
これから始まる90分間、何が起きるのか予測がつかない。Instagram音楽メディア・PLAYLISTが贈る新世代イベント〈PLAYLIST presents“ヘッドフォンを外して vol.3”〉。今夜ステージに上がるのは、名前の通りに若い世代の日常と心理を赤裸々に綴る4人組バンドと、ライブハウスでは滅多に見られないスターダスト所属の人気ダンスボーカルグループ。混ぜたらどうなるか、興味津々の顔ぶれだ。
こっちのけんと
まずはオープニングアクトを任された、こっちのけんと。YouTubeでバズった「死ぬな!」と「どんぐりGAME」のわずか2曲ながら、理屈抜きで体が動くハッピーダンスチューンと軽妙なトークで未知の観客をぐいぐい惹きつける。「菅田将暉の弟でございます」「えー!?」と、お約束の自己紹介は今夜もすべらない。人懐こい陽気なヴァイブスで会場をしっかり温めてくれた。
ヤングスキニー
そしてイベントの先陣を切るのはヤングスキニー。元々シンガーソングライターとして活動していた、かやゆーを中心に結成されて3年弱、コロナ禍真っただ中の活動ゆえライブ経験は少なかったはずだが、1曲目「ロードスタームービー」から真っ向勝負のシンプル&ストレートなバンドサウンドでぶっ飛ばす。「初めて見てくれる人、いっぱいいますよね。完結に自己紹介します。思ってる通りのゴミ人間です」――毒の効いたかやゆーのMCに続くのはもちろん、ドラマ 火曜ACTION!『クライムファミリー』主題歌として耳なじみの「ゴミ人間、俺」だ。メジャーコードでポップな曲調とは裏腹に、吐き出す言葉は心の痛みや自虐を鋭く描き、かやゆーの歌も投げつけるようにパンクでビターな味わい。が、「らしく」では”ちょっとくらいは稼げるようになってきた”という歌詞を“ゲンジブと対バンできるようになってきた”と替えて歌い、意外な茶目っ気も見せてくれる。ゲンジブのファンもしっかりと音に乗って聴いている。
「初めてバンドのライブを見に来た人もいると思いますが、楽しいですか?(大拍手)良かった!」(しおん)
ドラムのしおんは終始笑顔で力強いリズムを刻み、ベースのりょうとは時折スラップを交えながらファンキーなグルーヴをリードする。ギターのゴンザレスは若いバンドマンには珍しく、歌のバックでもメロディを弾き続けてギターソロも得意とする生粋のギタリスト。そしてかやゆーは、ふてぶてしさと繊細さ、ぶっきらぼうと人懐こさ、相反する要素を秘めた独特のキャラでしっかりとフロントに立つ。バンドの所信表明と言える1曲「世界が僕を嫌いになっても」から傷心のスローバラード「好きじゃないよ」へ、感情丸出しで体当たりの演奏が、心と耳を揺さぶる。
ヤングスキニー
ラスト2曲は、YouTubeで1800万再生を超えるヒットチューン「本当はね、」と約2年前にリリースされた「憂鬱とバイト」。可憐な女性言葉で恋する本音を明かす「本当はね、」は、軽快なリズムとポップなメロディの中に胸いっぱいの切なさを込めて。そして「みんなの憂鬱を吹き飛ばせるような歌をーー」と紹介した「憂鬱とバイト」は、恋愛や学校や人生で同じ悩みや疑問を抱える若者世代へのエールを込めて。ステージはフロアより数十センチ上にあるが、彼らの思いは常にフロアの位置にある。今日初めて見た人もそのメッセージと音楽と姿勢とバンド名を、しっかりと覚えたはずだ。
原因は自分にある。
さあ、二番手は「原因は自分にある。」だ。オープニングSEが鳴り、照明が暗転した瞬間に7色のペンライトと大歓声がフロアを埋め尽くす。黄色は大倉空人、白は小泉光咲、ピンクは桜木雅哉、青は長野凌大、赤は武藤潤、紫は吉澤要人。杢代和人は本日欠席だが、緑のペンライトもちゃんとある。1曲目は「Lion」だ。ネイビーとバーガンディーのスーツで決めた6人が、激しいリズムに合わせて一糸乱れぬフォーメーションダンスを繰り広げながら、次々とボーカルをリレーしてゆく。そのスピード感と切れ味の良さ、そしてボーカルが変わるたびにペンライトの色が変わる、フロアの景色の美しさに見とれているうちに曲はどんどん進む。6月7日にリリースされた新曲「Foxy Grape」を筆頭に、「貴方に溺れて、僕は潤んで。」「嗜好に関する世論調査」「結末は次のトラフィックライト」とシングル曲を立て続けに投下しながら、歌もダンスもノンストップ。ゲンジブサウンドの基本形、強力な四つ打ちのリズムにロッキッシュな歪みギターを加えたハイスピードのダンスチューンは、とにかく刺激的で新しい。
「今日は素敵な思い出を作っていきましょう。よろしくお願いします!」(長野)
ヤングスキニーとの2マンは初めてだが、実は小泉光咲が「本当はね、」のミュージックビデオに出演しているという接点のある両者。MCでもその話題で盛り上がりつつ、「音楽界に新しいインパクトを与え続ける存在になれたら」と、ヤングスキニーのファンに向けてグループのコンセプトを紹介することも忘れない。そして再び怒涛のノンストップダンスタイムへ突入し、「Mr.Android(feat.izki)」「0to1の幻想」、そして観客全員がコーラス参加した「原因は君にもある。」から「原因は自分にある。」へと、息をも付かせぬアップチューンの連打また連打。「手を上げろ!」と煽るまでもなく既に全員が手を上げている。ヤングスキニーのファンもきっと楽しんでいるだろう。ゲンジブの楽曲は精密でハードなダンスチューン+哲学的な歌詞と紹介されることが多いが、ライブはよりハイテンションで開放的なエネルギーに満ち溢れ、メンバー個々のキャラの違いも楽しい。百聞は一見に如かず。
原因は自分にある。
「(ゲンジブは)ずっと革靴で踊ってて凄いなと思いました(笑)。凄い世界観でした」(こっちのけんと)
「めちゃくちゃ楽しかったんですけど、僕たちの時にペンライトを振ってくれなかったのがちょっと悲しい(笑)。またよろしくお願いします」(かやゆー)
「みんな一緒に楽しめた幸せな空間で、本当に楽しかったです」(武藤)
最後は出演者全員がステージに集合し、3組揃って仲良くトークと記念撮影。過去2回にはなかった展開だが、こうしてライブは進化し続けるのだろう。次はいつどこで誰と誰が出演するのか。終わった瞬間から未来が楽しみになる、〈PLAYLIST presents“ヘッドフォンを外して”〉はそんな素敵なイベントへと着実に成長している。
取材・文=宮本英夫 撮影=Ryohey