夏らしいホラーの真相は劇場で 早織、土屋佑壱ら出演のタカハ劇団『おわたり』稽古場レポート
タカハ劇団『おわたり』稽古場より
高羽彩が主宰する、「タカハ劇団」による第19回公演『おわたり』。2023年7月1日(土)より新宿シアタートップスにて上演中である、本作の稽古場模様を紹介する。
タカハ劇団『おわたり』稽古場レポート
高羽彩が主宰する「タカハ劇団」が、第19回公演『おわたり』を2023年7月1日(土)~9日(日)新宿シアタートップスにて上演する。
今作は、1995年夏の小さな集落を舞台に繰り広げられる、ホラーである。
小説家の稔梨(早織)は、友人の民俗学者・紅雄(西尾友樹)と共に、海沿いの小さな集落に住む霊能力者のもとを訪れる。
その頃、集落は年に一度の祭、「おわたり」の準備に忙しなくしていた。
「おわたり」とは、その年に海で死んだ者たちの魂があの世へ渡ることである。
“余所者”と閉塞した集落が交わり、パンドラの箱が開いてしまう。
集落の人々、そして稔梨の秘密が明らかになっていく。彼らが行き着く先とは。
稽古は、ウォーミングアップから始まった。
この日のウォーミングアップは、「真犯人あてゲーム」だった。
「探偵ゲーム」とは、タカハ劇団オリジナルのシアターゲームである。
人狼ゲームのようなルールで行われるそれは、駆け引きの会話が鍵を握る。
しらばっくれたり鎌をかけてみたり、ああでもないこうでもないと推理をしていくキャストたち。大盛り上がりで、キャスト間の精神的な距離の接近に一役買っていた。また、それだけではなく、演劇的な感覚——つまり、会話の中に潜む違和感を洞察したり、相手の心理を考えるという、演技をするにあたって研ぎ澄ませるべき感覚を呼び起こすにもぴったりなワークだった。
ウォーミングアップが終わり、稽古の本題に入っていく。
この日は、物語のクライマックスに差し掛かるシーンからラストまで、台本を持ちながらの立ち稽古である。
最初から動き方を限定するのではなく、一同、試行錯誤しながら舞台上での見え方と登場人物の心情に基づく演技とを擦り合わせていく。
演出の高羽に「こうなったらいいなと思った通りに動いてくれてる」と言わしめるキャスト陣のチームプレーが見ものだった。
ここで印象的だったのが、土屋佑壱の求心力である。集落の町議会議員という役柄であることも相まって、積極的にアイディアを出している様子が、座組の中でも頼れる存在になっているように思われた。
ホラー要素のある作品ではあるが、稽古場では笑いが零れる場面も少なくない。
戯曲の段階ではさほど笑いを意図していなくとも、役者の体と声を通して言葉が立体化することで、面白みを持つという化学反応も随所にあった。
また、1995年という時代を感じる小ネタもあり、様々な角度から楽しめること間違いなしだ。
数時間の稽古の間に、だんだんと形になっていく物語。
筆者はこの段階では戯曲を読んでおらず、物語の全容を把握していなかったのだが、1シーンにおける人物同士の台詞、視線、距離感という諸要素によって、登場人物の関係性が浮き彫りになり、頭の中で相関図が組み立てられるようだった。
物語が進み、稽古は佳境へ。台詞の応酬が見応えのあるシーンだ。
高羽の言葉を借りると、「紅雄頑張れ! と思うシーン」である。
紅雄を演じる西尾は、同じシーンを繰り返す毎に、台詞回しや動きのアプローチを微妙に変化させていた。1つの方法に拘らず、最良を目指していくのが稽古の醍醐味だ。
そしてそこに、早織の儚くも狂気を孕む佇まいが静かに存在感を放つ。
本番ではどのような演技が見られるのだろうか。きっと、それぞれに魅力的なキャラクターに仕上がっているにちがいない。
そして、終盤の畳み掛けるような展開は、最大の見どころだろう。
流石のベテランキャストの迫力に、ついていく若手キャスト。熱量の高い俳優陣の演技は見逃せない。
人為の及ばない事態になったときに、人は何を選ぶのだろうか。
最後のシーンまで、一通りの演出がついたところで、この日の稽古は終わった。
最後の演出プランについては、一足先に聞かせてもらったのだが、とても期待が膨らんだ。是非、劇場で真相を見てみてほしい。
開幕は7月1日(土)、東京・新宿シアタートップスにて。夏らしいホラーを体感しに、劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。
取材・文=伊藤優花 撮影=塚田史香
公演情報
日程:2023年7月1日(土)~7月9日(日)
会場:新宿シアタートップス
出演:早織 西尾友樹(劇団チョコレートケーキ) 田中亨
宇野愛海 鈴政ゲン 土屋佑壱 神農直隆 猪俣三四郎(ナイロン100℃) かんのひとみ
主催:タカハ劇団
7月4日(火)19時公演
ゲスト:うえまつそう
早織、土屋佑壱、神農直隆、高羽彩
ゲスト:黒川晝車、浦下拓巳(ゆる民俗学ラジオ)
西尾友樹、田中亨、宇野愛海、高羽彩
鈴政ゲン、猪俣三四郎、かんのひとみ、高羽彩
HP:http://takaha-gekidan.net/
お問合せ:info@takaha-gekidan.net
Twitter:@takaha_gekidan