「子供って残酷」[Alexandros]川上洋平、超能力を持つ少年少女の無垢なる恐怖を描いた北欧発のサイキック・スリラー『イノセンツ』を語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】
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『イノセンツ』より
■サイキック映画のおもしろさって、スプーン曲げみたいなことができる超能力のもうちょっとすごい版くらいの感じが良い
サイキック映画って割と好きなんですよね。おすすめでいうと、まず入門編として『クロニクル』が浮かびました。普通の高校生が超能力が使えるようになって車を飛ばしたりする映像が印象的でしたね。あとは『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』もおもしろい。ハンガリーが舞台の『ジュピターズ・ムーン』も良いですね。ただ、スカーレット・ヨハンソン主演の『LUCY/ルーシー』はサイキック映画というよりはヒーロー映画の要素が強いので……ちょっと逸れるかな。僕的なサイキック映画のおもしろさって、派手な演出というよりは、要はスプーン曲げみたいなことができる超能力のもうちょっとすごい版くらいの感じがこじんまりとしてていいんだよね。
──確かに『X-MEN』とかまでいっちゃうと、超能力というよりバトルものって感じかもしれないです。
そうなんです。そういう点でも、スティーヴン・ドーフ主演の『アメリカン・ヒーロー』なんかは大好物ですね。2015年頃の映画ですけど、『アベンジャーズ』シリーズがどんどん世界を席巻していく中で、逆をいく映画。スティーヴン・ドーフが演じる主人公のメルビンは酒と女とドラッグに目がないパーティー三昧のダメ男なんですけど、超能力を持っている。でもそれを小遣い稼ぎの、それこそスプーン曲げみたいなものにしか使ってないんですね。別れた妻に親権を奪われたことをきっかけに改心していくんですけど。ジャケを見ると観るのをためらうかもしれないですが、結構おもしろいです。何せ僕はスティーヴン・ドーフが好きなんで。
──いいですよね。『SOMEWHERE』とか『セシル・B/シネマ・ウォーズ』とか。
やさぐれ感が超似合いますよね。余談ですが、『ウォーキング・デッド』で売れる前のノーマン・リーダスが出てる『処刑人』に出てるショーン・パトリック・フラナリーはスティーヴン・ドーフの初期にめっちゃ似てます。
──確かに!
『処刑人』もめっちゃ好きですね。僕、あまりドラマシリーズは観ないんですけど、「さすがに『ウォーキング・デッド』は観なきゃダメ!」っていろんな人に言われて観たんですけど、シーズン1だけで充分長くて、「もういいや」って思ってそこでやめました。ドラマシリーズは『LOST』のシーズン3が最長ですね。
『イノセンツ』より
■低予算でうまく見せる映画の方が好きかもしれない
基本的にサイキック映画って、あんまり予算をかけてない感が味になってますよね。でも実際に予算をかけられない気もしています。「派手な画を撮りたいんだけど、予算がないから結果的にサイキック映画になっちゃった!」みたいなノリが多いというか(笑)。ちょっと浮いたり、物を浮かしたりするぐらいしかできないけど、だからこそ変な緑色の光線とか出されるよりリアルなんですよね。『イノセンツ』は例えば俺が地元の相模原で超能力を使えたらこんな感じなのかなって想像ができるのがなんかいい。この映画の味ですね。
──川上さんが好きな『イット・フォローズ』も低予算だけど、アイディアでヒットさせたところがありますよね。
そうそう。どっちかというと低予算でうまく見せる映画の方が好きかもしれないです。『イノセンツ』は内容もおもしろかったから、エスキル監督の次の作品も絶対観たいですね。それにしても変わった映画だったな。
──のぞき見しているようなカメラワークとか、劇伴があまりなくて物音が響く感じも良かったですね。
不穏でしたね。描ちゃんが殺されたのはキツかったな。描写もしっかりグロいんですよ。そこはさすがに目を逸らしましたね。人の死体よりキツいかも……(笑)。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!
上映情報
監督・脚本:エスキル・フォクト/出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、サム・アシュラフ、エレン・ドリト・ピーターセン、モーテン・シュバラ
あらすじ:緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少⼥イーダ、⾃閉症で⼝のきけない姉のアナが、同じ団地に暮らすベン、アイシャと親しくなる。ベンは⼿で触れることなく⼩さな物体を動かせる念動⼒、アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能⼒を秘めていた。夏休み中の4⼈は⼤⼈の⽬が届かないところで戯れ合い、魔法のようなサイキック・パワーの強度を⾼めていく。しかしイジメや家庭環境の問題に悩むベンの内⾯が悪意に⽀配されたことをきっかけに、4⼈の友情はもろくも崩壊し、団地内で異常な出来事が続発するのだった──。
7月28日(金)新宿ピカデリー他全国公開
© 2021 MER FILM, ZENTROPA SWEDEN, SNOWGLOBE, BUFO, LOGICAL PICTURES
アーティストプロフィール
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。
ツアー情報
11/15(水)、16(木) Zepp Osaka Bayside
11/29(水)、30(木) Zepp Nagoya
12/08(金)、09(土) Zepp DiverCity (TOKYO)
リリース情報
配信中
[Alexandros]「VANILLA SKY (feat. WurtS)」