Saucy Dog『RUSH BALL 2023』ライブレポートーー迷いのない全力疾走で鳴らした現在

『RUSH BALL 2023』Saucy Dog

2017年のATMCに初登場して以来、7年連続の出演となるSaucy Dogは、今や『RUSH BALL』を支える存在と言っても過言ではない。せとゆいか（Dr.Cho）、秋澤和貴（Ba）、石原慎也（Vo.Gt）がひとりずつ登場し、中央でお辞儀をすると、拳を合わせて、いつものようにライブがスタート。

しかし「現在を生きるのだ。」の冒頭で石原が大きく息を吸って歌い出すと空気が一変。ステージをやり遂げる覚悟がみなぎっている。筆者は、2年前の全く同じ時間、同じ場所で彼らのライブを観たが、3人が紡ぎ出す音に、そのときとは明らかに異なる強さが宿っていた。広く世間に周知された「シンデレラボーイ」や「いつか」を組みこまず、7月リリースのミニアルバム『バットリアリー』の楽曲も披露し、現在彼らがいる場所を表現した時間。

「みんなで歌いたい」と、リリックビデオをビジョンに映し出した「Be yourself」では、＜自分の為に生きて良いんだよ 間違えていこう！＞という歌詞を心の中ではなく、声に出すことで勇気づけられた人も多かったはず。せとは、「おし上げてくれて、引っ張ってくれて、お客さんのこともバンドのことも考えてくれる『RUSH BALL』。実家のように安心する場所でもあります。そんな『RUSH BALL』に恩返しがしたい」と感謝を語って演奏を続けた。

ここ数年で躍進を遂げた彼らが向き合ってきたもの、バンドとして伝えたいことに正直に魂から歌い上げた「怪物たちよ」を経て、「俺たちバンドマンの歌！」とはじめた「メトロノウム」では自然と生まれたハンドクラップに力が入る。せとのダイナミックなドラミングと、情感際立つ石原のボーカル、静かな熱を帯びる秋澤のベースが呼応し、高揚感に包まれていくと同時に、それを受け止める手がいくつも掲げられていく。

秋澤のベースソロからはじまる「雷に打たれて」では歓声が上がった。最新アルバムから「夢みるスーパーマン」を披露すると、「ここにいるみんなと、これからも人生をともにできれば」（石原）と「優しさに溢れた世界で」に終着。「いつも学校頑張ってる人！　家事育児頑張ってる人！　仕事頑張ってる人！　みんなで一緒に歌える？」と煽られ、ビジョンの歌詞を見ながら＜積み上げた一瞬はきっと 報われない事もさ 多分あるんだろうけど＞と、みんなで力強くシンガロングした夏の日を忘れることはないだろう。

取材・文＝岡田あさみ　撮影＝河上良

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