作・横山拓也、演出・瀬戸山美咲がタッグを組んで創作する不条理劇『う蝕』 坂東龍汰、近藤公園、綱啓永ら出演者6名発表
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『う蝕』
2024年2月~3月、シアタートラム(兵庫・愛知にてツアー公演あり)にて、『う蝕』が上演されることが決定し、出演者が発表された。
立場や事情の異なる人々の葛藤を対話中心に描き出す作劇に定評のある横山拓也と、公共劇場から商業演劇まで幅広く活動し今最も勢いのある劇作家・演出家のうちのひとりである瀬戸山美咲が強力タッグが実現する。
ともに数々の演劇賞を受賞し、演劇界を躍進し続ける二人の共作は濃密な会話劇。
瀬戸山は横山の戯曲の魅力について、「とても解決しづらい問題をど真ん中に置き、それについて人間ドラマが展開していくことだと思うのですが、瞬間瞬間の会話自体がスリリングで、人を引き込む力がある」と語っている。そこで今作は、そうした横山の創り出すスリリングな会話劇に特化した作品づくりを目指すことに決まり、シーン自体がセリフだけで進んでいくような展開の立案から、不条理劇という手法へとたどり着いたそうだ。横山は「今回は劇作家として、構成というか形というものに向かう色気みたいなものを排除して、徹底的に会話させることで面白いものができるのかなとイメージしています」と語っている。
そしてストーリーには、横山が今も脳裏から離れない風景——震災後の焼け野原で、身元不明の遺体の中に立つ男がいる、彼は歯の手術痕から身元の特定を試み続けた実在の医師である…——をベースに置き、さらにはフランツ・カフカ、サミュエル・ベケット、別役実の作品をモチーフの参考として創作していく。
「う蝕」とは虫歯のこと。荒れ果てた町で、歯のカルテを使い遺体の照合をするために集められた歯科医師と役人が、ひたすらその場に集められたこと、その目的をみんなで探りあっていき、ストーリーは展開していく。
(上段左から) 坂東龍汰、近藤公園、綱啓永(中段左から)正名僕蔵、新納慎也、相島一之(下段左から)横山拓也、瀬戸山美咲
出演者は男性6名に決定。初主演映画で第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞を受賞し映画やテレビドラマへの出演が絶えない坂東龍汰、あらゆる演出家の作品に出演し幅広い役柄をしなやかに演じこなす近藤公園、話題の配信番組やテレビドラマに出演しいま注目の綱啓永、エキセントリックなキャラクターから冷静沈着な人物まで幅広く演じ分ける名バイプレーヤ―の正名僕蔵、ミュージカルやストレートプレイのみならず大河ドラマなどテレビでも活躍を広げる新納慎也、シリアスな役からコミカルな三枚目、謎めいた人物など幅広く演じ分け舞台・テレビドラマ・映画とマルチに活躍する相島一之。
この実力派6名が織りなす不条理な会話劇を楽しみにしよう。
【作】横山拓也 コメント
起筆の準備は孤独な作業だと思っていたので、今回、演出の瀬戸山さん、芸術監督の白井さんと作品のスタート地点を決める会議を繰り返し行なったことがとても新鮮で、作劇の共犯関係を築くようなゾクゾクする時間でした。それが「不条理」になったことも意外で、これまで書いてきたものとは全然違うことをやっていいんだよと、お墨付きをもらった気分です。そういえば、大学1年生のときに対話文の小説を書いて授業で発表したときに、同級生から「別役実みたいだ!」と言われたことを思い出しました。あの頃の自分の手つきなんて何も覚えていないけど、書くことをシンプルに楽しんでいた記憶はあって、今、改めて創作の原点に戻ったようでもあります。『う蝕』がどんな不条理劇になるのか、僕自身も楽しみたいと思います。
【演出】瀬戸山美咲 コメント
とっても魅力的な6人の俳優さんたちと、横山さんが描くおかしくて奇妙な物語に挑戦します。
先日、みなさんと横山さんの過去の台本を読んでやってみるワークショップを開催したのですが、スリリングでありながら、ずっと笑いの絶えない刺激的な時間でした。真剣なのか、ふざけているのか。絶妙なライン上を飄々と歩ける素晴らしい俳優さんたちです。ひとりひとりの個性が際立っていて、誰と誰が組んでも新鮮な驚きがあり、稽古がとても楽しみになりました。
6人の混沌の中にみなさんをご案内いたします。どうぞ、ご期待ください。
出演者コメント
■坂東龍汰
僕自身5年ぶり、2回目の舞台なので今から緊張してますが思い切り頑張りたいと思います。
劇作の横山さんと演出の瀬戸山さんとは初めてご一緒させていただきます。一度全キャスト揃ってワークショップをしたのですが、もうみなさんのお芝居が面白くて面白くて…! もうすでにどんな台本が上がるのか、皆さんとどんな舞台を創っていけるのか、とてもワクワクしています。
同世代の綱くんとは2度目の共演なので彼とのお芝居も楽しみです。
大先輩方の中で飲み込まれないように精一杯挑みたいですし、純粋に楽しみたいと思います。
皆様、来年までお楽しみに!
■近藤公園
昔から、少人数の男だけの芝居に惹かれます。プレハブ小屋で、缶ジュースと煙草の煙と、ほんのり汗臭くて、そしていつも途方に暮れる。はっきり言って気楽だ。いつもより躊躇なく、ささっと恥を捨てられそうな気がする。
先日行われたワークショップでは、横山拓也さんの書く台詞の応酬が本当に面白く、不条理な世界観での台詞劇をこれから当て書きして頂けるとの事で、本当に贅沢で楽しみです。そして、それぞれの場所で活動してきた男子たち(過半数が中年&親子ほどの年齢差もさておき)の戯れを、素敵なセンスをお持ちの瀬戸山美咲さんがどのように見守り、導いてくれるのか。今からワクワクしています。
■綱啓永
今回、舞台『う蝕』に出演させて頂くことになりました!
久しぶりの舞台出演ということで既に緊張していますが、楽しみな気持ちでいっぱいです。
周りのキャスト陣には実力派の先輩方がいらっしゃって、一度この公演のワークショップの際に皆様にお会いしたのですが、本当に優しくて気さくで、自分にとっては贅沢な環境に身を置けるので、ここで沢山の事を吸収しつつしっかり自分の色も乗せていけたらいいなと思っています。
舞台は何度も稽古を重ねて、仕上げて、それを直接お客様に魅せられるのが1番の魅力だと思っています。画面越しでは伝えられない、生だからこそ伝えられるものがあると思うので、努力と熱量で素敵な舞台期間にしたいです。
又、二度目の共演となる(坂東)龍汰君とまたお芝居できるのも本当に嬉しいです。
是非お楽しみに!
■正名僕蔵
“う蝕”とは医療用語で虫歯のことだそうです。私はてっきりこの作品のための造語かと思っていました。そう勘違いしたまま、“う蝕”という文字を眺めていると、ひらがなの“う”が得体の知れない不穏な生き物のように見えてきて、“う”に人が蝕まれる光景などをこわごわ思い描いたりしましたが、れっきとした医療用語だと知り、筋立てに則した題名だったんだと腑に落ちました。とはいえ、“う”の不穏さはいまだ消えずにいます。『う蝕』、どこか怖い題名です。そして題名にすでに、横山さん&瀬戸山さんの目論見が仕掛けられているわけですから、そこに気づくとまた怖い。どんな舞台になるのでしょう。お楽しみに。
■新納慎也
この作品のオファーをいただいた時はまだ何も決まっていませんでした。
ただ「横山拓也さん作、瀬戸山美咲さん演出、男6人、トラム」これだけでした。全く内容も役柄もわからない状態でしたが、僕の中で食指が動いた気がしてすぐにお話をお受けしました。
その後“ワークショップ”と名付けられた会合がありました。作家、演出家、俳優6人が集まって短い台本を演じてみる。恐らくこれは作家と演出家が作品を描いていくにあたり俳優の性質等を見るためのもの。とても丁寧に作品を創り始めている様に思えました。そしてこの6人での化学反応がその数時間ですでにとても面白かった!穏やかだけどクセの強い6人です(笑)。ゲラゲラ笑っている間に終わりましたが、これで横山さんには何が見えたんだろう?瀬戸山さんの脳内にはどんな世界が広がったのだろう? 当て書きに近い方法で作品が創られて行くのだと思います。今の段階ではいったいどんな作品が出来上がるのか想像も出来ませんが、前述した僕の「食指」は最近性能が良いんです!(笑)
きっと素敵な作品をお届け出来ると思います! 是非劇場にお越しくださいね!
■相島一之
男6名だけの芝居。しかも気がつけば曲者だらけとなってしまった。1度この6名でワークショップをやったのだが、その面白いこと。その男たちで横山拓也さんの新作戯曲に挑戦できる。なんと当て書きである! 役者として当て書きほど名誉なことはない。それを瀬戸山美咲さんが演出してくださる。ワークショップの時もケラケラと笑いながら鋭く厳しいお言葉で我ら俳優を導いてくださっていた。そもそも『う蝕』なんてタイトルがまず謎だ。怖い話なんだろうか。笑える話なんだろうか。
ああ、どんな舞台になるのだろう。お客さまよりもまずあいじまが楽しみで慄いている。
公演情報
【会場】シアタートラム
【作】横山拓也 【演出】瀬戸山美咲
【出演】坂東龍汰 近藤公園 綱啓永/正名僕蔵 新納慎也/相島一之
【お問合せ】 世田谷パブリックシアター
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】 世田谷パブリックシアター
【後援】 世田谷区
*兵庫・愛知にてツアー公演あり