『あまちゃん10周年スペシャルコンサート』のんが大友良英率いる17人のビッグバンドで熱唱、懐かしのダンスにファンも熱狂
のん
『あまちゃん10周年スペシャルコンサート』2023.09.14(thu) 新宿文化センター 大ホール
NHK連続テレビ小説として絶大な人気を博した「あまちゃん」の放送から10年を記念する『あまちゃん10周年スペシャルコンサート』が開幕した。ドラマの音楽を担当した大友良英が率いるビッグバンドに加え、ヒロインのアキを演じたのん、祖母・夏を演じた宮本信子が参加するとあって、初日の東京・新宿文化センターのは早々にソールドアウト。お馴染みの「北の海女」グッズを身に着けた観客や、ロケ地の久慈市から届いたイラストや写真展示など、入口からすでに華やかなムードでいっぱいだ。
「再放送、見てますか?(笑) 去年の12月にちょっとだけ、あまちゃんの音楽をやる機会があって、そこで“来年は10周年だからコンサートをやりたい”と15回くらい言ったら、本当に実現してくれました。実現してくれた方々に感謝します」(大友良英)
おりしも、NHK BSプレミアムでは「あまちゃん」の再放送が大好評で進行中。1曲目からおなじみの曲が次々と登場し、アップテンポの曲では自然と手拍子が湧き起こる。数曲ごとに大友良英による軽妙なトークと楽曲解説が入り、場内は明るい笑い声に包まれる。「アキのテーマ」は実は「潮騒のメモリー」の候補曲の一つで、「サビのメロディが♪潮騒のメモリー、と歌えるんです」など、ちょっとした裏話にも興味津々だ。
「「あまちゃん」の音楽をやるにあたって、今までとは違う人と組んだ方がいいと思って、このメンバーになりました。こんなに次々と曲が書けたのは、一つには宮藤(官九郎)さんの脚本の面白さ、演出の面白さ、そして“この人(ミュージシャン)にこんなことをやらせたらどうなるだろう”という面白さ。この音楽があったのは、このメンバーのおかげです」(大友)
大友が誇らしげに紹介する、総勢17名のビッグバンドの演奏が何と言っても素晴らしい。パーカッションを含めてリズム隊が4人いることで、力強いスウィング感が生まれる。8人のホーンセクションが、時に激しく時に繊細なアンサンブルで魅了する。アコーディオンがふんわり温かい旋律を奏で、ピアノが可憐なメロディを弾く。「スナック梨明日」にちなむ曲では、大友も嬉々として渋いブルースギターを弾く。ジャズのビッグバンドに近いが、それ以上にメロディアスで叙情的で、メンバーの個性が際立つ素晴らしいバンドだ。
のん/宮本信子/大友良英
「今日はスペシャルゲストをお招きしています。天野アキを演じたのんちゃんと、夏ばっぱこと天野夏を演じた宮本信子さんです!」
そしていよいよ、お待ちかねのゲストを交えたトークコーナーへ。すっかり大人びた中にも少女の可愛さを保つ、真っ赤なワンピースののん。当時も今も、役柄も普段の姿も、明るく豪快な宮本信子。当時のエピソードで観客を沸かせながら、「のんちゃんはとにかく可愛くて、しゃべらなくて(笑)。守ってあげなくちゃと思った」と言う宮本。「宮本さんは、かっこいい人だなと思いました」と言うのん。「あまちゃんは、東北人に大きな希望をくれました」と、10代を福島で過ごした経験を持つ大友。いつまでも話は尽きないが、二人のリクエスト曲をビッグバンドが陽気に奏でると、コンサートはいよいよクライマックスへ――。
のん
宮本信子/のん
このあとの大盛り上がりについては、9月23日の岩手・久慈市文化会館アンバーホールでのコンサート、そして配信を楽しみにしている人のためにネタバレはしないでおこう。ヒントだけを書いておくと、「潮騒のメモリー」などの作曲を手掛けたSachiko.Mも加わって、のんのボーカルを中心に「あまちゃん歌のアルバム」がたっぷりと楽しめるということ。バンドの音よりも大きい手拍子、あちこちで振られるペンライト、最後は全員総立ちのスタンディングオベーション。笑顔以外の表情が見当たらない、とても幸せな空間。
宮本信子/のん/大友良英
「今日はありがとうございました。最高です!」(大友)
「あまちゃん10周年スペシャルコンサート」の次回公演は、9月23日の岩手・久慈市文化会館アンバーホールにて。そちらもすでには完売しているが、Streaming+での生配信、及びアーカイブ視聴が用意されている。あまちゃんの地元・久慈市でのコンサートは、東京とはまた違う盛り上がりを生み出すことは間違いない。もちろん、のんと宮本信子も引き続きゲスト出演する。「あまちゃん」10周年のお祝いと、今も笑顔と感動を呼び起こす音楽への感謝を込めて、ぜひチェックしてほしい。
取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
宮本信子/のん/大友良英
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