RHYMESTERxSOIL&"PIMP"SESSIONS、スペアザ、Kroi、荒谷翔大が想いを音に、喜びとドラマに溢れた『たとえばボクが踊ったら、#005』レポート

レポート
音楽
2023.9.25

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『たとえばボクが踊ったら、#005』2023.9.9(SAT)大阪・服部緑地野外音楽堂

2023年9月9日(土)、大阪・服部緑地野外音楽堂にて野外音楽フェス『たとえばボクが踊ったら、#005』が開催された。「関西で魅力的なキモチいいフェスしたい」との想いから、2016年にスタートし、番外編を含めると今回で8回目。今年は、RHYMESTER、SOIL&"PIMP"SESSIONS、SPECIAL OTHERS、Kroi、荒谷翔大(yonawo)が出演。この日だけのセッションも繰り広げられるとあって、多くのオーディエンスが詰めかけた。例年、ドラマが巻き起こる『ボク踊』だが今年はまた今までとは異なる想いに溢れた1日になっていたように思う。どんなステージが繰り広げられたのか、たっぷりのライブ写真と共に振り返る。

会場は新大阪から約15分、東京からでも日帰り可能な好立地で、自然豊かで開放感あふれる大阪・服部緑地野外音楽堂。今年は1ステージとなるが、こだわりのフードが並び、いつもの『ボク踊』らしいアットホームな雰囲気で賑わう。晴天で当日を迎えることができただけでも、ひとしおの喜びを感じているオーディエンスは『ボク踊』の常連のみなさんかもしれない。(理由については、昨年のレポートを参照:https://spice.eplus.jp/articles/309041)

会場に到着したみながまず目にしたであろう、特大のフラッグ。イベントの初回から出演している、現在は療養中のThe Birthday・チバユウスケの復帰を願うフラッグだった。これを目にした瞬間から、今年は今までとは違う、特別な1日になることを予感する。この時点で、すでに涙がこぼれそうになったのは筆者だけではないはず。そしてステージが始まると、その予感が確信に変わっていった。

荒谷翔大(yonawo)

荒谷翔大(yonawo)

MCの加藤真樹子(FM802)が会場案内と共に、「#待ってるチバさん」のハッシュタグで復帰を願うメッセージをSNSで呼びかける。そして「とろけるような音で気持ちよく揺らしてください!」と紹介され、登場したのは荒谷翔大(yonawo)。7月には、この服部緑地野外音楽堂で開催されたスピンオフ企画『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』を盛大に盛り上げたばかりの彼だが、この日は弾き語りでまさにとろけるような音を奏でていく。

荒谷翔大(yonawo)

荒谷翔大(yonawo)

「福岡出身なので、福岡の町の曲を」と「天神」から始まり、「次は好きな曲を」と奇妙礼太郎の「君が誰かの彼女になりくさっても」を歌い上げる。さらに「ソロでしかやらない曲を」と「Kissbug」、荒谷が作詞作曲を担当したKing & Princeの「Kiss & Kill」など、弾き語りならではの贅沢なステージが続く。「caffe latte」からはフィーチャリング多数参加の「tokyo」をひとりで歌いきり、なんと最後は「チバさんの回復を願って」と祈りを添え、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」をカバー。トップバッターから早くも拍手喝采が巻き起こる、エモーショナルな幕開けに。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

続いて、『ボク踊』初回から出演しており、イベントを共に作り上げてきたといっても過言ではないSPECIAL OTHERSが登場。「Bluelight」から五感を研ぎ澄ませ、一音一音を全身で浴びるようにして気持ちよく体を揺らすオーディエンス。10月25日リリースの9th ALBUM 『Journey』にも収録される「Early Morning」、そして「BEN」へと美しく紡がれ、それでいて激しくうねるように打ち鳴らされるセッション、魂を解き放つように奏でられるソロにフロアから歓声が飛ぶ。「ずっと最高!」「やばい……」なんて感嘆の声が漏れ聞こえてきたが、その言葉に尽きる。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

そして、「応援とリスペクトを込めて」と、初回「ボク踊」で対バンしたThe Birthdayの「なぜか今日は」をカバー。初回の雷雨の中、びしょ濡れになりながら披露された楽曲でもある。スペアザなりの想いと尊敬の念が込められたアレンジが沁みて、目頭が熱くなる。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

宮原 "TOYIN" 良太(Ds)が「こんなカッコいい人たちばりのイベントに出れてうれしいです!」と喜びを露わに、芹澤 "REMI" 優真(Key)は「来年も呼んでもらえたら、今度こそ千葉さんと共演できたら」と思いを伝え、しばしチバとの思い出を語り合ってラストは「Uncle John」へ。

Kroi

Kroi

リハーサルから観客の心を惹きつけていた、Kroi。アキレス腱を断裂してしまい、手術をしたばかりのため『ボク踊』仕様に提灯があしらわれた車椅子で登場した長谷部悠生(Gt)は、リハ終わりでほかメンバーがいったんハケる中、そのままひとりポツンとステージに取り残される。そんなシュールな光景でもまたひと盛り上がり。とにかくファンから愛され、そしてこの日のステージがいかに注目されているかが始まる前からフロアのテンションで伝わってきた。

Kroi

Kroi

ステージに取り残された長谷部がほかメンバーを呼び出すような形で、スタートした本編は「Noob」からの「Custard」とゴリゴリに攻めた幕開けで、フロアはのっけから手が上がりもみくちゃになって踊る沸点に到達する。さらに「Pixie」「Funky GUNSLINGER」から「Juden」と畳みかけ、エネルギッシュでエモーショナルなセッションが繰り広げられどんどん熱気を帯びていく。

Kroi

Kroi

「ホーム感が出てきた」と内田怜央(Gt.Vo)も笑顔を見せたが、前回の出場に引き続き『ボク踊』の舞台がとにかく似合う。今回の緑地野音はステージが低く、オーディエンスとの距離も近いからこそまた他にはない一体感があり、Kroiの新たな一面が引き出されていたようにも思う。ラスト「Fire Brain」でのシャウトと、ギブス姿の長谷部も立ち上がるほどの全身全霊のプレイの爆発力には、フロアから続々と拳が突き上がる。堂々たる痛快なステージを駆け抜けていった。

RHYMESTER

RHYMESTER

そして、拍手に迎えられ登場した「KING OF STAGE」ことRHYMESTER。早々に「警告灯を鳴らしてやろうじゃないか!」と意気込み、今年がHIP HOP誕生50周年の節目である歴史を振り返る、宇多丸のキレキレの前口上から「Future is Born」で口火を切る。1曲目からオーディエンスの心をガッチリ掴み、<踊ろうよ 突っ立ってないで><騒げ!>の合図でフロアはハンズアップ。声を出し、踊って楽しむハイテンションに。続けざまに「Back & Forth」でもMummy-Dとの掛け合いが決まり、オーディエンスの視線を釘付けに。

RHYMESTER

RHYMESTER

MCでは、RHYMESTERも『ボク踊』をホームと思っていると語り、コロナも明け完全に自由な形で楽しめるようになった喜びを伝える。そして改めて、HIP HOPの歴史を振り返るエピソードの数々は絶品。「停電」など題をつけて何度も聞き返したくなるほどで、この日が50年のHIP HOP史の中でどういった意味を持つのか、そのうち約35年もの間に渡って日本でシーンを牽引してきたRHYMESTERがいかにすごいかを痛感させられるようなステージが続いて、もう痺れっぱなし。特に、ラストに披露されたニューアルバムのタイトルトラック「Open The Window」では、RHYMESTERが最新型のスタイルでどういう未来を描き、どんな時代をこれから作っていくべきかという強いメッセージを感じ、聞き入りながらも考えさせられるような展開に。あっという間の別れを惜しみつつ、SOIL&"PIMP"SESSIONSにバトンを渡し、再登場を約束してステージを後にした。

RHYMESTER

RHYMESTER


SOIL&"PIMP"SESSIONS

SOIL&"PIMP"SESSIONS

そして、いよいよSOIL&"PIMP"SESSIONS。社長も「めっちゃ気持ちいい」と声を漏らしたほど、夕暮れ時に浴びるソイルは格別だ。1曲目「Meiji-Jingumae 'Harajuku'」からフロアが波のように揺れ、歓喜の声で溢れかえる。「みんなひとりひとりがこの場を作ってくれてます!」(社長)の言葉通り、集まったオーディエンスひとりひとりが自由に音楽を楽しむ一体感のエネルギーが凄まじい。打ち鳴らされるリズム、突き抜けるホーン、美しい鍵盤のひとつひとつがキマるたびに、手が上がり歓声が沸く最高潮の連続に。

SOIL&"PIMP"SESSIONS feat.内田怜央(from Kroi)

SOIL&"PIMP"SESSIONS feat.内田怜央(from Kroi)

MCでは「いつもいつも気持ちいい音が鳴っていて、毎年近い仲間たちが集まって一緒に音を出せる機会を作っていただけていることを嬉しく思います。どうか続けてくれてるスタッフのみなさんに大きな拍手を」とイベントへの想いを届け、Kroiの内田怜央を呼び込む。社長が顧問を務める『ONE PARK FESTIVAL』にKroiが出演した際のことを振り返りながら、少し緊張気味な怜央としばしトーク。ゆるりとした流れから、「闘病中のチバさんに捧げます」(社長)と「LOVE ROCKETS」のイントロが流れた瞬間のざわめきの大きさたるや。「チバさんに届けー!」と歌われ、ぶつけられたロックンロールにみんながみんな狂喜乱舞の盛り上がりに。勢いはそのままに、ラストの「SUMMER GODDESS」まで熱気と幸福感は高まりっぱなしとなる。

SOIL&"PIMP"SESSIONS

SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

そこにRHYMESTERの3人が呼び込まれ、SOIL&"PIMP"SESSIONSとのセッションへ移行。「始まると終わっちゃう」と名残惜しそうにしつつも、「Funky Pongi x 爆発的」「MIRACLES x The Choice Is Yours」とそれぞれの楽曲のマッシュアップから、RHYMESTERの「フラッシュバック、夏。」、そして10年前の2013年にリリースされたRHYMESTERとのコラボ曲「ジャズィ・カンヴァセイション」とここでしか見れない贅沢なステージがめくるめくように続く。「どいつもこいつも300%で騒げー!」と煽られ、ラストは昨年リリースされた「初恋の悪魔 -Dance with The Devil-」。HIP HOPとジャズの融合というピースフルな多幸感で会場を満たし、今年の『たとえばボクが踊ったら、#005』は大団円を迎えた。

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

この日もいつもの『ボク踊』のように、会場のゴミを拾って帰るオーディエンス。余韻にどっぷりと浸りながら帰路につく、心満たされたひとりひとりの笑顔が印象的だった。

いくつもの困難を乗り越え、数々のドラマと伝説が生まれてきた『たとえばボクが踊ったら、』。数年ぶりに声出しやディスタンスなど気にすることなく、開放的な野外で最高の音を存分に味わうことができたこともあり、イベントの原点に立ち返ることができたような気がする。その上で今年は、全てのステージがこれまでの伝説を更新しようとする強い想いに溢れていた。それは、チバの復帰を願うみなの思いがそうさせていたことは間違いなくあると思う。そしてなにより、あたりまえだったことが、あたりまえじゃないと知ったからこその開放感と喜びに満ちていて格別だった。来年はもっとすごい日になるに違いない。そして次はどんなドラマと伝説が生まれるのか、今から楽しみでならない。

取材・文=大西健斗 写真=オフィシャル提供(渡邉一生、ハヤシマコ)

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