迫力満点のアクションとコメディーを満喫できる魅力だらけの作品 劇団SET第61回本公演『ラスト★アクションヒーロー〜地方都市に手を出すな〜』

2023.10.19
レポート
舞台

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三宅裕司、小倉久寛らを中心に創立された劇団スーパー・エキセントリック・シアター。アクション、ダンス、歌、笑いをふんだんに取り入れ、わかりやすくて誰が見ても楽しめる“ミュージカル・アクション・コメディー”を40年以上にわたって作り続けてきた。第61回本公演では、とある地方都市を舞台にしたスパイアクションが描かれる。

劇団SETが最も得意とするアクションの集大成となるような作品だという本作。10月19日(木)からの開幕に向け、大詰めを迎えた稽古場で行われた通し稽古を取材した。

<あらすじ>
とある平凡な地方都市に潜入した 2 人の男。1人は国家を守る特殊部隊の精鋭、もう1人は世界中で暗躍する腕利きのスパイ。彼らのミッションは、極秘に開発されたと噂される超小型スーパーコンピュータの回収。
純朴な町の人々を巻き込んで、水面下の攻防戦が繰り広げられる。 超小型スーパーコンピュータの全貌とは一体?そして彼らの命がけのミッションは成功するのか?!


今回は、公安の特殊部隊やスパイ組織が暗躍する骨太なストーリー。冒頭からキレのあるアクションがフルスロットルで繰り広げられる。稽古中のため衣裳やセットは完全ではないものの、空間を余すことなく使った派手で見応えのあるアクションに一瞬で引き込まれた。また、稽古場の距離で見ると一人ひとりの身体能力の高さや無駄のない動きの美しさに改めて驚かされる。緊迫した雰囲気の中、着地の衝撃まで伝わってきて、思わず息を呑むほどの迫力があった。

とはいえ、カッコいいだけではないのが劇団SET。冒頭のアクションで魅せたかと思うと、すぐに公安特殊部隊の隊員・隊長が時事ネタを交えたコミカルな掛け合いを披露して笑いを誘う。

また、シリアスな設定が提示され、王道スパイアクションが繰り広げられるぶん、町の人々のシーンの和やかな様子にホッとする。道の駅で採れたての野菜を売っていたり、みんな気さくに旅行者に話しかけたりと、こんな町がどこかにありそうだと思わせるリアリティがある。

もちろんアクションだけでなく歌とダンスも健在。町民文化祭のシーンでは、ラップと女性ボーカルによる面白さとカッコよさを両立したパフォーマンスで場を沸かせたり、アクション研究会を演じるメンバーによる軽やかで華のあるアクションを披露したり。女性陣のパワフルな歌唱や和と洋のコラボレーションのようなダンスなど、ストーリーの本筋以外の部分にも楽しさが詰まっている。 町民一人ひとりが強いインパクトを残しているため、彼らの個性を楽しみつつ、「ここに潜入したスパイは大変だっただろうな……」といささか同情してしまう。

公安・スパイ陣営もシリアスから一気に笑いに振り切る場面が多く、出番は少なくても強烈な存在感を放つキャラクターが多数。パブリックイメージとのギャップで笑わせるキャラクター、ハラハラと笑いを同時に生み出すキャラクターなどが物語に華を添えている。劇団員の個性を活かしたネタや、劇団ならではのチームワークが感じられるシーンも楽しい。

座長の三宅と看板役者の小倉のやりとりでは、どこまでが台本かわからない掛け合いに、稽古に参加したスタッフや劇団員、取材陣からも大きな笑い声が。小倉のとぼけた雰囲気と、それに鋭くツッコミつつ時折反撃をくらう三宅のやりとりに、本番ではどんな笑いが飛び出すのかワクワクさせられた。

2人以外にも、本番での爆笑に向かって、稽古ではアドリブで手応えを試していたり、誰かがセリフを忘れると助け舟を出したり、思いがけないアクシデントから笑いが生まれたり。若手からベテランまで臆せず挑戦し、自分たち自身も楽しみながら魅力的な作品を作っている雰囲気が印象的だった。本番まで約1週間というタイミングでの取材だったが、ここからさらにブラッシュアップされ、芝居としての魅力も笑いも増すだろうという期待を抱かせてくれる。

全体を通してコメディーではあるものの、終盤で一気に熱いバトルアクションになるのも大きな魅力だ。山場となるシーンでは、小道具とセットも存分に活用し、見た目も音もド派手なアクションが展開される。アクションが好きな方にとってはたまらない見応えたっぷりな作品であると同時に、超小型スーパーコンピュータを巡る2人の男の生き様、平和な町が抱える秘密など、警察・スパイものが好きな方に刺さるだろうポイントもたくさん。一人ひとりの芝居を楽しめるシーンもふんだんに盛り込まれているため、見ている側も約2時間、ラストまでノンストップで熱中できるのではないだろうか。

思わぬ部分が伏線になっていたり、コミカルなシーンが王道の熱い展開に繋がったりと、シリアスとコミカルの緩急も心地よい。現代社会が抱える問題や身近な不安、この先起こるかもしれない問題も描かれており、笑いながら時折ハッとさせられる場面も。本番では衣裳やセット、音楽や照明が加わり、よりリアリティと迫力を増した、楽しくも考えさせられる作品に仕上がるのではないかと感じた。腹の探り合いや策略といった部分も描きつつ、一人ひとりのキャラクターに愛嬌があって憎めず劇団SETらしいユーモアに満ちた本作。難しいことは抜きで楽しめる極上のエンターテインメントを、ぜひ劇場で見届けてほしい。 

本作は10月19日(木)から29日(日)まで、サンシャイン劇場で上演される。

取材・文=吉田沙奈

公演情報

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第61回本公演
ミュージカル・アクション・コメディー『ラスト★アクションヒーロー~地方都市に手を出すな~』
 
日程:2023年10月19日(木)~10月29日(日)
会場:サンシャイン劇場
 
脚本:吉井三奈子
演出:三宅裕司
 
出演:三宅裕司 小倉久寛
永田耕一 田上ひろし 岩永新悟 赤堀二英 西海健二郎 おおたけこういち 安田 裕 榊 英訓
栗原功平 岩澤晶範 長谷川慎也 辻 大樹 時松研斗 浅田壮摩 渋谷渉大流 大城麗生 富山バラハス
佐藤雄基 白倉基陽
三谷悦代 杉野なつ美 丸山優子 白土直子 南波有沙 山口麻衣加 鎌田麻里名 立川ユカ子
白井美貴 山城屋理紗 山﨑愛華 須田 歩 岡山玲奈 古家由依 村田彩夏 鶴田 彩
 
※吉井三奈子の「よし」はつちよし
※榊英訓の「さかき」の示はネ、辻大樹の「つじ」は一点しんにょう
​※出演を予定しておりました宮下幸生につきまして、稽古中の怪我により降板することになりました。
 
料金(全席指定・税込):
S席…8,500円
A席…7,000円
こども券…3,500円 ※小学生対象。
※保護者同伴の場合のみ購入可能。※当日、年齢を証明できるものをご持参ください。
アンダー25 当日券…4,000円 ※中学生~25 歳以下対象。平日公演限定。
※お座席の指定はできません。数に限りがございます。
※当日、年齢を証明できるものをご持参ください。

主催:劇団スーパー・エキセントリック・シアター/ニッポン放送
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