宅間孝行×入山杏奈 対談、タクフェス10周年『晩餐』はともに「人生とリンクした作品」ーー入山のメキシコ在住話も
『晩餐』
東京のシェアハウスにある日突然、60年後の未来からタイムマシンで「おっさん」と「おばはん」がやって来る――。宅間孝行が主宰するエンターテインメントプロジェクト、タクフェスの10周年を記念し、タクフェス第11弾『晩餐』の大阪公演が11月16日(木)に開幕する。本作は2013年にタクフェス第1弾として初演し、大好評を博したコメディ。現在、地方で2公演が終了したが、主演の石黒英雄がケガで降板し、大阪公演以降は永井大が代わりを務める。満を持して10年ぶりにこの作品に再び挑む宅間と、ヒロインをダブルキャストで演じる入山杏奈に話を聞いた。
――今回、「晩餐」を再演する理由は?
宅間:10年前にやった時に非常に評判が良くて、何か節目で再演したいなと。タクフェス10周年の節目だったらいいなと思っていたんです。
――宅間版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とも言われていますが、何かモチーフやきっかけはあったのでしょうか。
宅間:キッカケは、初演の前の年に離婚しまして、息子がいるんですけど、なかなか会わせてもらえなかったんです。息子に会いたいという気持ちがすごくあったので、作る時に僕がお父さん役の高槻純二(今回は永井大)で、60年後から大きくなった息子が会いに来るという設定にしたんですね。息子に、お父さんはこんなにも僕のことを愛してくれてたんだということを分かってほしいなと。そこが軸になっていました。ただ、それは一つのキッカケで、僕はストーリーを考える時にオチというか、どこにクライマックスを持ってくるかを考えるんです。逆算で物語を作っているから、そこに僕の個人的な思いや要素を足していった感じですね。
宅間孝行 (c) 友澤 綾乃
――再演の脚本を拝読して、もしかして、宅間さんがお父さまの介護をされていて大変だったのかなと想像していました。息子さんだったのですね。
宅間:ええ。僕が10年前に父親役をやり、戻ってくるのが年老いた息子。今回は逆に僕が息子の耕太郎役で、父親が永井君なんですが、稽古が始まる一か月前ぐらいに父が亡くなりまして……。すごい巡り合わせだなと。僕が息子の役をやる今年に自分の父を亡くした。当時は息子のことをずっと考えて書いていて、父のことはほとんど考えていなかったのに、物語が父とかぶることが多くて、父と自分の話になっていたという。父は神道で、五十日祭の時は稽古がちょうど休みで、うまいこと逝ってくれたなと……。父の人生を振り返るというか、非常に物語が父とリンクしていて、10年後の再演で不思議な縁を感じています。
入山:私もタクフェスに出さしてもらうのは3回目ですが、いつも何かしら人生とリンクしているんですよね。『歌姫』はかぶることが多くて、『天国』では自分も震災を経験した。今回の『晩餐』では、実は私も父が昨年亡くなったんですよ。それを経て感じることがあるなと思いました。
――親の死は本当につらいですよね……。ほかのキャラクターとは演じる上で全然違うのではないでしょうか。
宅間:僕にとってはドンピシャなことが起こりすぎていて、やっていて楽といえば語弊がありますけれど、リサーチして役づくりする必要がない。
入山:私は大阪公演で初めて舞子を演じるのでやってみないと分からないですね。
『晩餐』舞台写真 (c) 友澤 綾乃
――入山さんは永井さん演じる純二の恋人役です。
宅間:稽古の状況では、今回すごくはまっているんですよ。入山さんとは今まで2回も一緒にやっているし、分かっているつもりだったんですけど、ここまでコミカルな役がはまるとは。
入山:私の新たな一面ですか?
宅間:もともとそういう人だったのか? もちろん、これからの稽古で修正したり、変わっていったりする部分はあると思うんですけど、観ている人はびっくりするのかな?
入山:『歌姫』の時はキャラが全然違ってびっくりされたんですよね。喜怒哀楽が激しいキャラクターを、私は全然、自分じゃないと思っていたのに、親戚からは「杏ちゃんだねー」って言われて。『天国』の時もしっかりしているキャラクターだったんですけど、お酒飲んで騒いだりするシーンで、友達に「杏ちゃんだったね」と言われて(笑)。今回も、もしかしたらすごく私と言われるかもしれないです。
宅間:今回はある意味、普通のキャラクターじゃないですか。無理してやっている感がないし、何かはまっている。
入山:家族の中では確かに、舞子みたいに皆を笑わせたりするタイプなんです。
宅間:クールな世間のイメージとは全然違うんですよ。
――それは意外で楽しみですね。ところで、大阪公演の開幕前に主演が永井大さんに代わるというハプニングがありました。
宅間:大阪公演前の稽古は2日間だけのはずだったんですが、永井君が入ったことで、新たに稽古をし直すことになりました。キャストも皆、やりたいって言ってくれて。永井君はタクフェスの『わらいのまち』にも出ているし、プライベートでも親しいので良かったなと。災い転じて福となすですね。
『晩餐』舞台写真 (c) 友澤 綾乃
――地方公演の前に舞子役の方が降板し、入山さんとダブルキャストの高柳明音さんも、緊急で稽古したそうですね。高柳さんとはどのようなやり取りをされていますか。
入山:グループLINEで、「ここはこういう風にやったほうがいいよ」と情報を共有し合っています。同じ芝居をするわけではなく、お互いの個性を残しつつやっているんで、「私はこうだけど、共有します」という感じです。ダブルキャストは初めてで、稽古場に行って演じない日があるので、外側から芝居を観られて助けられたなと。
宅間:ダメ出しの時間があって、それを僕たちは「ギフト」と呼んでいるんですけど、そこで自分の役を客観的に観て、僕が「こうしたほうがいい」と言う演出と照らし合わせてやっている。すごくクレバーな時間の使い方になっていますね。
入山:そうですね。
――「ギフト」というのはいいですね。ダメ出しというとネガティブな感じがしますものね。
宅間:なんですけど、ギフトといっても、もはや皆の中ではそうはなってない(笑)。こっちとしては、芝居が良くなるために言っているし、結果的にお客さんに何を届けるかなんですよ。でも、もはや言葉の意味を感じてないよね(笑)?
入山:はい(笑)。
宅間:「俺が言ってるのはギフトなんだよ!」とたまにいうことはある(笑)。
――ハハハ(笑)。ご本人を前にして何ですけど、ギフトも含めて宅間さんの演出はいかがですか。
宅間:厳しい、うるせぇとか噂があるけど、どうですか? という意味ですよね(笑)? 本人の前で言うわけがないですよ(笑)。
入山:厳しいです(笑)。
宅間:記者発表とか囲みでも、皆、それしか聞きたがらない鉄板ネタだから(笑)。キャストが、「たいしたことなかったと言うと、あまり苦労してないみたいだし、やっぱり厳しいと言ったほうがいいんじゃないか。宅間さんもそのほうがいいでしょ?」とよく分かんないループに入っていくんですよ(笑)。僕は言うほうだし、時には言葉も強めだったりするけど、「僕が言っていることが厳しいんだとすれば、エンタメの世界が緩すぎる。このレベルで僕が求めていることを厳しいと断ずるなら、ちょっとヤバくねぇか?」という話はよくします。
――なるほど。
宅間:初舞台の時に入山さんが陰で頑張っていて、皆、感動したんですよ。大人たちが「すげえな、入山って」。そこでちょっと調子に乗ったんですよね(笑)?
入山:ハハハ(笑)
宅間:ある時、ちょっとサボっていた感じがしたんですよ。「入山、調子に乗ってサボったら承知しねえからな」と彼女に言ったら、「宅間さん、そういう言い方していたら評判悪くなりますよ」と返されました(笑)。
――ハハハ。お二人の関係が見えるようです。
入山:言いました、そんなこと? 言ったかもしれないけど、あまり覚えてないです(笑)。ある種、リップサービスで「厳しいです」とは言いますけど。厳しいか厳しくないかでいえば、厳しいですが、理にかなっているし、あたり前だと思うんです。ほかで言われてないとすれば、当たり前にできてない現場が多いんじゃないかと。セリフを覚えてくるのは当たり前じゃないですか。
宅間:理不尽なことを言っているつもりはないですね。たとえ先輩たちでも、ちゃんとできてなかった場合は、僕は言いますよ。
『晩餐』舞台写真 (c) 友澤 綾乃
――物語には環境汚染や温暖化など、今の時代、このままでいいのか? と考えさせられるセリフも多いです。それは初演の時より感じていらっしゃいますか。
宅間:僕自身が歳を取って子どもができてから、世の中の不条理なシステムに敏感になりましたね。初演の時は震災の後で、放射能や原発問題を軽く考えているんじゃない? という意識が色濃かったんですけど、今、失われた30年と言われている通り、戦争などもっと世界が混沌としている気がして。『晩餐』では、ちょこちょこ時事問題を入れていますが、そこまで説教臭くはない。入山さんは今、メキシコに住んでいるけど、どうなの? よくメキシコに行ったよね?
入山:友達は今まで一人しか遊びに来ていないです(笑)。マフィアはアメリカの国境近くにいたり、貧困地帯は治安が悪かったりするんですが、首都や観光地は安全ですよ。環境問題は世界共通で、メキシコは車の排気ガスを減らすために、「何曜日はこの車種は車を使っちゃダメ」というルールがあるんです。そういう対策は日本ではないですよね。
――皆、守っているのですか?
入山:守っていると思います。
宅間:きっと罰金がすごいんだよね? 皆、鞭がシュールだと守ったりするので。
――確かに。本番がますます楽しみです。
宅間:演劇の入門編で楽しいイベントだととらえて、気軽に来ていただけたら。
入山:こんなシェアハウスに住みたいな、家に帰って温かいお味噌汁を飲みたいなと思ってもらえたらうれしいですね。本番に向けて頑張ります!
取材・文 米満ゆう子
公演情報
【出演者】 永井⼤ ⼊⼭杏奈(Wキャスト)⾼柳明⾳(Wキャスト) / 森迫永依 浜⾕健司 / 広⽥亮平 ⼤薮丘 櫻井佑樹(劇団EXILE) 中野恵那 菅原ブリタニー / 加藤貴⼦ / 宅間孝⾏
【作・演出】 宅間孝⾏
<⼤阪公演>
・⽇程:2023年11⽉16⽇(⽊)〜11⽉19⽇(⽇)
・会場:梅⽥芸術劇場 シアター・ドラマシティ
・(全席指定):8,900円(税込)
・お問合せ:キョードーインフォメーション︓0570-200-888(平⽇・⼟曜11:00-18:00 ※⽇祝休み)
・主催:ABCテレビ
・協⼒:ABCラジオ/サンライズプロモーション⼤阪/FM802/FM COCOLO
・協賛:タカミヤ
<札幌公演>
・⽇程:2023年11⽉24⽇(⾦)〜11⽉25⽇(⼟)
・会場:道新ホール
・
最前列VIP席:12,000円(税込) ※特典付(全キャストサイン付パンフレット/60分前優先⼊場)
中通路VIP席:9,800円(税込) ※特典付(パンフレット付/60分前優先⼊場)
S席:8,800円(税込) ※2列-12列
A席:7,800円(税込)
B席:6,800円(税込) ※⼀部出演者や演出が⾒えにくい場合がございます。予めご了承願います。
C席:4,800円(税込)
・お問合せ:インフォメーション お問い合わせフォームhttps://www.ws-nt.jp/info/
・主催:北海道⽂化放送/ダブルス/ぴあ
<名古屋公演>
・⽇程:2023年12⽉1⽇(⾦)〜12⽉3⽇(⽇)
・会場:名古屋市公会堂
・:S:9,500円(税込)/TAKUFESシート:6,500円(税込)
※TAKUFESシート・・・3階席になります
・お問合せ :サンデーフォークプロモーション︓052-320-9100(全⽇12:00-18:00)
・主催:サンデーフォークプロモーション
・特別協賛:フロンティアの介護
<東京公演>
・⽇程:2023年12⽉8⽇(⾦)〜12⽉17⽇(⽇)
・会場:サンシャイン劇場
・
S席(パンフレット付):10,500円(税込)
S席:9,500円(税込)
TAKUFESシート:6,500円(税込)
※パンフレットは各会場にて公演期間中のみのお引渡しとなります。各会場公演期間以降のお引渡し
はできませんのでご了承ください
※TAKUFESシート・・・2階後⽅席になります
・お問合せ :サンライズプロモーション東京︓0570-00-3337(平⽇12:00〜15:00)
・主催:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/サンライズプロモーション東京
【協⼒】 テイクオフ
【企画】 タクフェス
【製作】 エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
【HP】 http://takufes.jp/bansan2023/
【公式X(twitter)】 @TAKU_FES_JAPAN