『大阪4オケ』から『関西6オケ!』へ ―― 大阪4オケのコンマスが初集結し、来シーズンプログラムや各楽団のトピックスを共同発表

2023.12.22
レポート
クラシック

大阪4オーケストラ(左から 赤穂正秀 大阪響 事務局長、福山修 大阪フィル 事務局長、山口明洋 大阪フィル 演奏事業部長、大野英人 関西フィル 楽団長、小田弦也 日本センチュリー響 専務理事)

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在阪4つのプロオーケストラ(通称大阪4オケ〈大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団〉)の『2024-2025シーズンプログラム共同発表会』が11月下旬にフェニーチェ堺小ホールで行われた。
大阪4オケ共同でシーズンプログラムを発表するのは、今年で6回目。昨年までは、楽団のシェフと事務局代表が登壇していたが、発表会に登壇したのは事務局代表だけ。シェフの挨拶や資料映像などは、大型モニターに映し出された。発表会の模様は昨年と同様に同時配信されたが、今年は初の試みとして一般の参加希望者にも公開され、発表会終了後にはプレゼント抽選会も行われた。
今年の発表会には、初めて大阪4オケのコンサートマスターが集結。発表会に先駆けて、テレマンの「4つのヴァイオリンのための協奏曲ハ長調TWV40‐203」を演奏した。

大阪4オケ・コンサートマスターによる四重奏 左から 森下幸路(大阪交響楽団)、松浦奈々(日本センチュリー交響楽団)、木村悦子(関西フィルハーモニー管弦楽団)、崔文洙(大阪フィルハーモニー交響楽団)

大阪4オケの現在のコンサートマスターが一堂に会するのは初めてのこと。今回の演奏でリーダーを務めたのは、2001年に大阪交響楽団の首席ソロコンサートマスターに就任した森下幸路。大阪フィルの崔文洙(チェ・ムンス)は、2009年に首席客演コンサートマスターに就任後、2019年から現在のソロ・コンサートマスターに就任。日本センチュリー交響楽団の松浦奈々は2011年にアシスタント・コンサートマスターとして楽団に入団後、2015年にコンサートマスターに就任した。関西フィルの木村悦子はカナダのトロント交響楽団のアシスタント・コンサートマスターを経て、2023年4月に関西フィルのコンサートマスターに就任。 コンマス4名のメッセージは以下の通り。

4人のコンサートマスターが一堂に会するのは初めてのこと

■大阪交響楽団 首席ソロコンサートマスター 森下幸路 

コロナの時はどうなるかと思いましたが、お客様は以前より増えている気がします。企業のバックアップや、皆様の声援が嬉しかったです。今年7月、名誉指揮者の外山雄三先生が92歳で亡くなられました。実は私が30歳の時に、仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターとして採用していただいたのが、外山先生でした。まだまだ先生から教わりたかっただけに、残念です。

■日本センチュリー交響楽団 コンサートマスター 松浦奈々 

2015年6月にスタートしたハイドン交響曲全曲演奏・録音プロジェクト『ハイドンマラソン』が、2025年3月に完結します。スタートした時には、10年近く先のゴールなんかイメージ出来なかったのですが、意外と早かったですね(笑)。104曲の交響曲はすべてが素晴らしい作品。とても良い経験になりました。

大阪4オケ・コンサートマスター(左から 森下幸路、松浦奈々、木村悦子、崔文洙)

■関西フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター 木村悦子 

コンサートマスターの就任は今年4月です。関西フィルは明るく温かいオーケストラで毎日が楽しいです。昨年、将来日本に住めるのか、試しに1年だけのつもりで主人と日本に戻って来たのですが、私が関西フィルに夢中で、主人が一人でカナダに帰って行きました(笑)。まだまだ慣れない点も多いですが、急速に日本人に戻っているところなので、しばらくの間、ご容赦ください(笑)。

■大阪フィルハーモニー交響楽団 ソロ・コンサートマスター 崔文洙 

私が大阪フィルのコンサートマスターになって14年になります。尾高忠明監督のもとで、大阪フィルの持つゴージャスなサウンドに機能性を加えようと、厳しいリハーサルを積んだ結果、オーケストラの進化は目覚ましいです。どうぞご期待ください。

以下、オーケストラごとに2024-2025シーズンの聴きどころをご覧いただこう。

■大阪交響楽団

大阪交響楽団 赤穂正秀 事務局長

指揮者3人体制3年目のシーズンも、定期演奏会(8公演)と名曲コンサート(5公演)が中心。常任指揮者 山下一史は、定期演奏会には2度登場。『第271回定期演奏会』では、名誉指揮者 外山雄三追悼公演として、山下がセレクトした外山作品を演奏。バイオリン協奏曲第2番のソリストは、長年に渡って親交があった首席ソロコンサートマスター森下幸路が務める。

外山雄三 大阪交響楽団 名誉指揮者(2023年7月11日に逝去) (c)飯島隆

『第278回定期演奏会』ではライフワークのR.シュトラウス作品から、組曲「町人貴族」、交響詩「ドン・ファン」、交響詩「死と浄化」を演奏。名曲コンサートは、ピアニスト菊池洋子との『ベートーヴェン協奏曲チクルスvol.2』として、ピアノ協奏曲第2番とピアノ協奏曲ニ長調(バイオリン協奏曲のピアノ編曲版)を演奏。こちらは演奏会ごとに、CD化されることが発表されている。

山下一史 大阪交響楽団 常任指揮者『4オケの4大シンフォニー』(2023.4.15 フェスティバルホール) 提供=朝日新聞文化財団 撮影=樋川智昭

ミュージックパートナー 柴田真郁は、『第277回定期演奏会』でヴェルディ歌劇『運命の力』演奏会形式を上演。2023年2月、『第261回定期演奏会』で上演されたドヴォルザーク歌劇『ルサルカ』の評判が高かったこともあって、嫌が上でも期待は高まる。名曲コンサートは、マーラーの歌曲集「若き日の歌」と「子供の不思議な角笛」、そしてモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」の組み合わせ。ソリストには並河寿美(ソプラノ)と山下裕賀(メゾソプラノ)が出演する。

柴田真郁 大阪交響楽団 ミュージックパートナー (c)飯島隆

首席客演指揮者 髙橋直史は『第274回定期演奏会』で「音楽と舞踏」をテーマにリズミカルな曲の数々を採り上げる。ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」(独奏:中川優芽花)やエネスコの「ルーマニア狂詩曲第1番」、ファリャのバレエ組曲「三角帽子」第2組曲に加え、外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」も演奏。名曲コンサートは「オペラアリアとオーケストラの魅力」としてワーグナーとヴェルディを中心とした、彩り豊かな名曲の数々を届けてくれる。

髙橋直史 大阪交響楽団 首席客演指揮者 (c)飯島隆

3人の指揮者陣以外、定期演奏会では、第2代音楽監督のトーマス・ザンデルリンクが『第275回定期演奏会』で記念年のブルックナーの交響曲第7番を指揮する他、お馴染みのガブリエル・フェルツ、大阪響デビューとなるジェイソン・ライが登場。名曲コンサートには、ご存知オーラ・ルードナーと、期待の新人、出口大地が登場する。

「堺市及び南大阪地域に根差したオーケストラ」を掲げて活動する大阪交響楽団にとって、2023年から始まったフェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)での『フェニーチェ堺 名曲シリーズ』は、ホームタウンで行う大切なコンサート。2024年は第2回が開催される。こちらのコンサート、山下一史の指揮、牛田智大のピアノで、シューマンのピアノ協奏曲と、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を演奏する。

大阪交響楽団 (c)飯島隆

■大阪フィルハーモニー交響楽団

大阪フィルハーモニー交響楽団 福山修 事務局長、山口明洋 演奏事業部長

尾高忠明 音楽監督就任7年目となる2024-2025シーズンは、定期演奏会全10回の内、3回を尾高が指揮をする。『第578回定期演奏会』では、コロナ禍で来日が果たせなかったアンヌ・ケフェレックが待望の来日を果たし、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を演奏する。メインはシベリウスの組曲「レンミンカイネン」。『第581回定期演奏会』では、やはりコロナで中止となったベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」を採り上げ、『第585回定期演奏会』では生誕200年を迎えるブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を演奏する。気鋭のバーティー・ベイジェント、ロバート・トレヴィーノからシャルル・デュトワやレナード・スラットキン、ミシェル・タバシュニクといった巨匠クラスまで、バラエティに富んだゲストの指揮者陣は壮観。

尾高忠明 大阪フィルハーモニー交響楽団 音楽監督『4オケの4大シンフォニー』(2023.4.15 フェスティバルホール) 提供=朝日新聞文化財団 撮影=樋川智昭

年間を通して一人の作曲家を掘り下げるシリーズは、これまでベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークから、フランス音楽にテーマを広げて行った後、現在はメンデルスゾーンが進行中だ。2024年は、生誕200年のアニバーサリー・イヤーという事もあって、ブルックナーを採り上げるという。朝比奈隆時代から、大阪フィルのお家芸とも言えるブルックナー。大伽藍が聳え立つが如く、スケールの大きな朝比奈のブルックナー演奏は、現在もCDやレコード、音楽配信などでも人気は健在のようだ。2001年に朝比奈が亡くなって、しばらく封印されていた大阪フィルのブルックナーは、2004年に尾高忠明が交響曲第9番で解禁したのだった。

朝比奈隆 大阪フィルハーモニー交響楽団 創立名誉指揮者 (c)飯島隆

尾高は「ブルックナーは特別な作曲家。ブルックナーを振りたくて、指揮者になったんです!」と公言する。今回採り上げるのは、初期の交響曲で、0番、1番、2番の3曲。尾高は「記念年にブルックナーを採り上げるのなら、7番、8番、9番辺りが並びそうなものですが、敢えてこれまで指揮したことの無い3曲を採り上げます。以前、やはり指揮をしたことが無かった3番を指揮してみて、今までとは違った景色が見えました。やはりブルックナーは全曲演奏しないといけないと思ったのです。ポイントは、何と組み合わせるのか。色々考えてモーツァルトの後期の交響曲と組み合わせる事にしました。この組み合わせを皆様はどのように思われるのか、感想を聞くのが楽しみです」。この3回のシリーズを2024年11月にやり遂げ、2025年2月の『第585回定期演奏会』でブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」を終えると、尾高と大阪フィルによる最初の交響曲全曲演奏を終えることになる。

尾高忠明 大阪フィルハーモニー交響楽団 音楽監督 (c)Martin Richardson

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のクラリネット首席奏者ダニエル・オッテンザマーが、2024年のシーズンより、新たに新設したアーティスト・イン・レジデンスに就任する事が発表された。楽団は2022年5月『マチネ・シンフォニー』の初共演で、卓越した技術、磨き抜かれた感性や温かい人柄に魅了され、より深い関係を結ぶことで本人と合意に達した。来シーズンはマルクス・ポシュナーの指揮する『第580回定期演奏会』でウェーバーのクラリネット協奏曲第2番を、敢えて指揮者を置かず、アンサンブルの向上を目指す『住友生命いずみホール特別演奏会』ではグノーとロッシーニ、ウェーバーの作品を、そして『新春名曲コンサート』でも何かの曲で共演するそうだ。他にも、アウトリーチへの参加などが予定されているという。 

アーティスト・イン・レジデンスに就任するダニエル・オッテンザマー

桂冠指揮者の大植英次は『マチネ・シンフォニー』に登場し、ベルリオーズ「幻想交響曲」を演奏。人気の葵トリオの大阪フィルデビューは、尾高忠明指揮の『京都特別演奏会』で、ベートーヴェンの三重協奏曲を聴かせてくれる。

大阪フィルハーモニー交響楽団 (c)飯島隆

■関西フィルハーモニー管弦楽団

関西フィルハーモニー管弦楽団 大野英人 楽団長

『第2回欧州公演』を成功の裡に終えた関西フィルハーモニー管弦楽団。2024-2025シーズンは核となる定期演奏会と「第九」は全部で10回。音楽監督のオーギュスタン・デュメイは定期演奏会を2回指揮をする。『第349回定期演奏会』では、ロドリーゴのアランフェス協奏曲(ギター独奏:大萩康司)やビゼー「カルメン」組曲などフランスやスペインの音楽を、『第351回定期演奏会』では、サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番(チェロ独奏:マルク・コッペイ)やラヴェルのボレロなど、フランスの名曲を選曲。また『住友生命いずみホールシリーズ』では、『Vol.58』ではドヴォルザークの弦楽セレナード他を、『Vol.59』ではチャイコフスキーの弦楽セレナード他を指揮する。

オーギュスタン・デュメイ 関西フィルハーモニー管弦楽団 音楽監督

首席指揮者の藤岡幸夫は、定期演奏会を2回指揮する。シーズンのオープニングを飾る『第345回定期演奏会』は、マーラー交響曲第1番「巨人」と、林そよか(大阪府箕面市出身)のバイオリン協奏曲の新作初演(独奏:木嶋真優)、『第350回定期演奏会』は、ベルリオーズ「幻想交響曲」と菅野祐悟(人気劇伴作曲家)のピアノ協奏曲の新作初演(独奏:角野隼斗)。共にクラシックの名曲と日本人作曲家の新作初演を組み合わせた藤岡ならではのプログラム。常々、「コンサートのメインで演奏する曲を増やしたい」と語り、人気の指揮者、ザ・スリー・コンダクターズ(山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼)と一緒に、2023年に『ニュークラシックプロジェクト』(ベートーヴェンの曲のように200年後も愛され続けるオーケストラ曲を日本から生み出そうというプロジェクト)を立ち上げたように、藤岡は積極的な啓蒙活動にも取り組んでいる。特に、劇伴音楽作りの第一人者 菅野祐悟には、これまでに交響曲を2曲とチェロ協奏曲を依頼し、関西フィルの定期演奏会で演奏してきた実績を持つ。絶大な人気を誇る角野隼斗(かてぃん)をソリストに迎える『第350回定期演奏会』は、熾烈な争奪戦となりそうだ。

藤岡幸夫 関西フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者『4オケの4大シンフォニー』(2022.4.16 フェスティバルホール) 提供=朝日新聞文化財団 撮影=樋川智昭

ザ・スリー・コンダクターズの一人でもあり2023年に首席客演指揮者に就任した鈴木優人は、『就任披露演奏会』で作曲家ラモーの魅力を伝え、年末の「第九」では、ソリストが最後は合唱団に加わって歌うという、彼らしいアイデア溢れる演出で楽しませてくれた。2024年度のシーズンでは『第353回定期演奏会』で、記念年を締め括るブルックナーの交響曲第7番を指揮する。

鈴木優人 関西フィルハーモニー管弦楽団 首席客演指揮者 (c)s.yamamoto

関西フィルでブルックナーと言うと、2023年8月に亡くなった桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎の存在が大きい。関西フィルと共に全ての交響曲を演奏し、2023年度の『第344回定期演奏会』では再度、第5番を演奏する予定だった。代わりに指揮台に立つのは、人知れず敬愛の念で結び付いていた同い歳の「炎のコバケン」小林研一郎。予定を無理やり調整して、曲目を敢えてブルックナーから、二人にとって大切な思い出の曲、スメタナ「わが祖国」に変えて登場するそうで、これは必聴だ。予定されていたブルックナーの交響曲第5番は『第348回定期演奏会』で高関健が指揮することになった。以上のように、記念年に関西フィルでブルックナーを指揮するのは鈴木優人と高関健。関西フィルのブルックナー伝説は、これからも続いていく。

飯守泰次郎 関西フィル 桂冠名誉指揮者(2023年8月15日に逝去)『4オケの4大シンフォニー』(2023.4.15 フェスティバルホール) 提供=朝日新聞文化財団 撮影=樋川智昭

他にも定期演奏会では、沼尻竜典、阪哲朗といった新旧びわ湖ホール芸術監督や、仲道郁代、堀米ゆず子など第一線級ソリストの登場もあり楽しみだ。東大阪市、城陽市、門真市などをはじめとする関西一円の演奏会は、全国区の人気を誇る藤岡幸夫が指揮する、関西フィルならではの盤石の体制だ。

関西フィルハーモニー管弦楽団 (c)s,yamamoto

■日本センチュリー交響楽団

日本センチュリー交響楽団 小田弦也 専務理事

現在、飯森範親が首席指揮者、秋山和慶がミュージックアドバイザー、久石譲が首席客演指揮者を務める日本センチュリー交響楽団は2024-2025シーズンも定期演奏会が8回、『ハイドンマラソン』が4回、『センチュリー豊中名曲シリーズ』が4回と、主催公演の中心を占める形だ。定期演奏会は、首席指揮者 飯森範親が『第283回定期演奏会』でチャイコフスキーのバイオリン協奏曲(独奏:マルク・ブシュコフ)とR.シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、交響詩「死と変容」を演奏する。センチュリーが「死と変容」を演奏するのは、これが初めてとなる。『第287回定期演奏会』は、ハイドンのピアノ協奏曲とメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番(独奏:マティアス・キルシュネライト)と、生誕150年を迎えるラヴェルの代表曲の中から「亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽版)」「マ・メール・ロワ(バレエ版)」、「ボレロ」を演奏する。

飯森範親 日本センチュリー交響楽団 常任指揮者『4オケの4大シンフォニー』(2023.4.15 フェスティバルホール) 提供=朝日新聞文化財団 撮影=樋川智昭

2015年6月にスタートした『ハイドンマラソン』(ハイドンの交響曲104曲全てを演奏し、CDとして録音しようというプロジェクト)が、2025年3月に完結する。最後のシーズンは2024年5月の『第35回』から始まり、ラスト4回で前代未聞の大記録の達成となる。今迄、気にして来なかったという方も、ゴールの少し手前から並走して、感動の瞬間を分かち合うというのは如何か? 飯森とセンチュリーの奏でるハイドンは、ノンビブラートを基本としながらも、アクセントでビブラートをかけることで、ふくよかな響きを醸し出す。繰り返しを守りながら、装飾音符で変化を付けるなど、奏者の自発性を高めている。バロックティンパニを使用するが、管楽器はモダン楽器を使用。そして、極めつけは、全曲にパブロ・エスカンデのチェンバロが入る事。これこそがセンチュリースタイルのハイドン! 全38回を通して、楽器編成や時代背景を考慮し、プログラミングの作業は大変だったと推察するが、効果はてきめん。和声感やアンサンブル能力など、楽員の技量は上がり、センチュリーのサウンドは格段の進化を遂げた。シリーズ最後の曲だけは初めから決まっていたという。交響曲第104番「ロンドン」だ。ラスト1年。大記録達成の瞬間を客席で見届けたい。

飯森範親 日本センチュリー交響楽団 常任指揮者 (c)山岸 伸

首席客演指揮者 久石譲は『第285回定期演奏会』でスティヴ・ライヒ「デュエット~2つの独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための」と、シューマンのピアノ協奏曲(独奏:萩原麻未)と交響曲第2番。『第288回定期演奏会』は、シューマンの交響曲第3番「ライン」と、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」。これにて久石のシューマンの交響曲全曲演奏は完結する。2023年10月アタマに「2025-2026シーズンから久石譲音楽監督就任!」というニュースが楽壇を駆け抜けた。1シーズン以上前の発表にどんな意味があるのか。うーむ、妄想は膨らむばかりだ。「ミニマル系の楽曲を演奏する際のリズムを活かし、スコアを現代の解釈で演奏すると、クラシック音楽がUp‐to‐dateな音楽になる!」とは、久石が首席客演指揮者就任時の談。この間、「ロックのようなベートーヴェン!」に驚き、難解なプログラムに集中力を使い果たした最後に、予期せぬ「人生のメリーゴーランド」で涙したり。2024-2025シーズンも久石が指揮する定期演奏会に、ワクワクドキドキが止まらない。

久石譲 日本センチュリー交響楽団 首席客演指揮者 (c)Nick Rutter

ミュージックアドバイザー秋山和慶は『第281回定期演奏会』でラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」(独奏:小林愛実)とデュティユーの交響曲第1番他、『第286回定期演奏会』ではブラームス交響曲第3番と、ピアノ協奏曲第2番(独奏:亀井聖矢)の2回に出演。巨匠指揮者が人気若手ピアニストとの共演に、興味は尽きない。そして残りを、待望の巨匠指揮者ヤーノシュ・コヴァーチュの再演と、若き実力者 太田弦の定期演奏会指揮者デビューとなる。

秋山和慶 日本センチュリー交響楽団 ミュージックアドバイザー (c)s.yamamoto

『センチュリー豊中名曲シリーズ』には、出口大地、松本宗利音、川瀬賢太郎と気鋭の指揮者と並んで、秋山和慶が登場。また、バイオリン岡本誠司、バリトン井上大聞、ピアノ務川慧悟、谷昂登と活きの良いソリストが揃う。日本センチュリー交響楽団にとってホームタウンでのシリーズ公演だけに、こちらのコンサートにも注目だ。

日本センチュリー交響楽団 (c)Masaharu Eguchi

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