伊藤純奈、能條愛未が監禁された山小屋で迎える結末は? OFFICE SHIKA PRODUCE Operetta『Ms.YAMA-INU』ゲネプロレポート
2024年1月12日(金)~1月15日(月)CBGKシブゲキ!!にて、OFFICE SHIKA PRODUCE Operetta『Ms.YAMA-INU』が上演される。本作は、2023年11月に上演されたOperetta『YAMA-INU』の対となる男女逆転作品で、伊藤純奈、能條愛未、佐藤祐吾、木﨑ゆりあ、仲万美、そして脚色・演出を手掛ける丸尾丸一郎が出演する。
初日に先駆け行われたゲネプロ(公開通し稽古)の模様をお伝えしよう。
舞台上に一人のヴァイオリニストが登場し、どこか不穏な気持ちにさせる音色で物語がスタートする。ほどなく出演者全員の激しいダンスシーンが始まり迫力に圧倒される。
登場人物は6人。10年前、あることが原因で勤務先の高校を去っていた服部先生(佐藤祐吾)、その教え子の山本雲雀(伊藤純奈)、石橋直子(能條愛未)、ハマダマコト(木﨑ゆりあ)、ハマダに寄り添う或る女(仲万美)、そして謎のコック(丸尾丸一郎)だ。
同窓会の通知を受けた服部先生のもとに、石橋から電話が入ったところから物語は動き出す。自称ナンバーワンキャバ嬢という石橋は、服部との再会にテンションが高い。高校時代、服部に思いを寄せていた石橋は、再会を機になんとか服部と良い仲になろうと画策しているようだ。
服部先生を演じる佐藤は、面倒見が良く爽やかで「こんな先生がいたら、さぞかし女子生徒に人気があるだろう」と感じさせる雰囲気を上手く出している。しかし彼の「面倒見が良く爽やか」な部分が、今回の物語で起こる事件の一つの要因となっている。
石橋を演じる能條は、キャバ嬢らしいドレス姿や網タイツにミニスカートで華やかに登場する。高校時代はソフトボール部の部長で、自分の意見をはっきり主張する人物だ。ソフトボール部の顧問だった服部先生に人目もはばからずアタックする積極的な性格が仇になる。
そんな二人と再会するのは、飲食店でシェフをしている雲雀だ。ちょっとどんくさく「ドジでのろまなカメなんです」と某有名ドラマのヒロインが言っていたせりふを苦笑いしながら言ってしまう人物。しかしおどおどしているのは表面だけで、事情があって10年前に高校を去った服部先生に対し「よく同窓会に来れましたね」と言い放つ毒舌の持ち主だ。この瞬間、彼女に狂気さを感じたが、物語が進んでいくにつれ、その狂気が正しかったと思い知る。
3人がなぜ同窓会に参加することにしたのか。それは「ハマダマコト」と名乗る同級生から謎の手紙が届いたからだ。「私たちが埋めたタイムカプセルを一緒に掘りに行きませんか? ハマダマコト 」と書かれた手紙に3人は興味を抱くものの、ハマダマコトという名前に全く覚えがない。
同窓会へ行き「誰だったか名前が思い出せない……」と言われてしまう人は少なからずいると思うが、ハマダマコトはまさにそれに当てはまる人物だ。演じている木﨑は、不幸な高校生を健気に演じており、時折見せる暴力的な姿が彼女の寂しい人生を現わしているようで痛々しい。
そんなハマダに寄り添っている或る女を演じる仲は、20年以上のキャリアを誇るダンサーとしての実力をいかんなく発揮している。彼女の謎めいた存在感が物語の要となり、鋭い目つきと時折見せる悲しく寂しげなまなざしに心が痛くなる。
ハマダの手紙に吸い寄せられるように、雲雀、石橋、服部先生は、同窓会を抜け出してタイムカプセルを埋めた学校の裏山へ向かう。服部先生のスマホにハマダから電話がかかってくるが、裏山にハマダの姿は見えない。3人はタイムカプセルを掘り起こして、それぞれが埋めたものを取り出し、なぜこんなところに埋めたのか陽気に語り合うのだが、何者かに襲われて山小屋に監禁されてからは、想像を絶するサバイバルゲームが始まる。
ハマダからのメッセージと思われる「シヌキデオモイダセ」のとおり、誰かが記憶をよみがえらせるたびに不気味な食事が提供される。その記憶の一つに高校の食堂でコックをしていた謎のコック(丸尾丸一郎)が絡んでくるのだが、この人物が実はとんでもないことをしていたことが分かり、背筋が凍る思いを味わう。
山小屋に監禁された後の雲雀、石橋、服部先生は、空腹と恐怖で人格が崩壊していく。特に雲雀が10年前に感じていた恨みつらみを吐露する場面は、息を飲んで見守るしかないほど迫力がある。高校時代に受けた傷は10年経っても癒されないのかということ、そして何気なく言った言葉が誰かを傷つけてしまうのかという恐ろしさを体感した。
2時間15分、途中休憩なしの本公演。物語の後半は緊迫したシーンが続くが、雲雀、石橋、服部先生のやり取りでは笑いが起きるせりふもあり、昭和世代には懐かしいシーンも登場したりする。「Operetta」と銘打っているとおり、歌やダンスシーンも盛りだくさんだ。
雲雀、石橋、服部先生がどのような結末を迎えるのか、ハマダは一体何者なのか、ハマダに寄り添う女は何を意味しているのか、ぜひ劇場で確認してほしい。
なお1月14日(日)13時と18時、1月15日(月)13時の公演で、イープラスStreaming+による配信が予定されている。
取材・文=咲田真菜 写真=和田咲子