『ブギウギ』舞台シーンも登場、OSK日本歌劇団トップスター楊琳&舞美りら、最後の『春のおどり』で「元気とパワーを届けたい」

2024.1.25
動画
レポート
舞台

OSK日本歌劇団 撮影=ハヤシマコ

画像を全て表示(13件)

4月6日(土)~14日(日)の期間、大阪松竹座にてOSK日本歌劇団による『レビュー 春のおどり』が上演される。これを受けて1月24日(水)に行われた製作発表記者会見で、第1部は2年ぶりの和物のレビューショー、第2部は連続テレビ小説『ブギウギ』の要素も盛り込んだ「踊りまくる」洋物レビューショーで構成されることを発表。併せて、前日発表されたばかりのトップスター楊琳(やんりん)と娘役トップスター舞美りら(まいみりら)の退団について、それぞれ心境を明かした。

連続テレビ小説『ブギウギ』ヒロインのモデル、笠置シヅ子らを輩出した劇団として再注目されているOSK日本歌劇団。創立102年目を迎える老舗劇団ではあるが、2003年には劇団解散の危機に陥ってしまうなど、順風満帆というわけではなかった。街頭での署名活動などの努力を重ね、2004年に市民劇団として復活、66年ぶりに『春のおどり』で大阪松竹座の舞台に返り咲いた。「その年の『春のおどり』でOSKを初めて観て、一目で虜になった」という楊は、2007年には自身も同じ場所に立ち、創立100周年の年に新生OSK初のトップスターとなった。そして、復活公演から20周年となる今回、最後の『春のおどり』の舞台を踏む。

楊琳

楊は「あっという間の濃い18年間だった」と振り返る。「諸先生方、スタッフの皆様、劇団員の皆、そして何よりどんな時もOSKを愛し、支えて応援してくださったファンの皆様の愛があってこそ、今のOSK、今の私がある」と感謝を伝え「全身全霊、一球入魂、全力投球でさらに上を目指し、楽しんでいただける舞台にします。ラストステージとなる8月の新橋演舞場での『レビュー 夏のおどり』まで見守っていただけたら」と意気込んだ。

舞美りら

過去に幾度となくペアを組んできた娘役トップスターの舞美りらは、「見送るのも見送られるのも寂しい」と感じた楊に「一緒に卒業しませんか」と声を掛けられ、劇団では異例となる男役、娘役トップスターの同時退団を決意したという。舞美は、娘役トップスターに就任した時から卒業は覚悟していたとし「新しい公演に向けての期待とワクワク感の方が勝ち、まだ卒業の実感がありません。楊さんのお隣にいてふさわしい、そしてOSKの娘役を最後の最後まで追求し、これまでたくさんの方からいただいた愛を舞台上でお返しできるように精進します」と前を向いていた。

千咲えみ

同じく娘役トップスターの千咲えみ(ちさきえみ)は、「3年前、共に責任ある立場をいただけて本当に光栄で幸せでした。おふたりの舞台やお客様、スタッフの方々に対する思いを近くで見て、お勉強させていただきました。あと半年ほどですが、いっぱいいっぱい、おふたりからのエネルギーを吸収して、私自身も精一杯この作品に挑みたい」と、涙を浮かべた。

そんな楊と舞美のラスト『春のおどり』は、和物と洋物の2本立て。第1部は、ふたりを初舞台の頃から知る、山村友五郎の構成、演出によるレビューを上演。タイトルは楊の名前も入った「春楊桜錦絵(やなぎにはなはるのにしきえ)」で、山村いわく「男役 楊琳、娘役 舞美りらの魅力を余す事なく、思う存分発揮していただけるような作品」となるそうだ。元禄若衆の舞、コミカルな芝居、民謡メドレー、振付に市瀬秀和を迎えた男役による迫力満点の殺陣、娘役による二枚扇での舞と続き、最後は楊がひとりで舞い納める。ここで制作担当者から「この場面の歌詞を楊さんにお願いする」とサプライズ発表が。これには楊も劇団員も驚きを隠せず、笑いが起きていた。

第2部は4度目の『春のおどり』への参加となり、『ブギウギ』の舞台演出もつとめる荻田浩一によるレビュー「BAILA BAILA BAILA」。荻田は「OSKさんの歴史を支えた逸材である楊さん、舞美さんの魅力を、そして現在の劇団の皆さんの充実を、余すことなく楽しんでいただける時間をお届けする」とコメント。激しいラテンからデュエットダンスまで、スペイン語で「踊れ、踊れ、踊れ」を意味するタイトルにふさわしく「ダンスのOSK」の魅力を詰め込んだダンスレビューショーになるという。そして『ブギウギ』の舞台シーンをOSKならではの演出で盛り込み、朝ドラの歌劇音楽も担当する甲斐正人を迎え、ブギを題材とした新たな交響曲での壮大なダンスシーンも用意。さらに楊の故郷である中国の宮廷を舞台とした幻想的なシーンもありと、盛りだくさんな内容となる。

なお第1部、第2部の内容は『春のおどり』のほか、8月7日(水)~11日(日)に新橋演舞場での『レビュー 夏のおどり』でも上演される。また7月13日(土)~21日(日)に南座にて上演される『レビュー in Kyoto』では、第2部を中心に新たな趣向で送られる。

華月奏

白藤麗華

構成内容を聞き、華月奏(はなづきそう)が「たくさん踊りそう(笑)」と感想を漏らしながら「残る立場として、ふたりが安心して卒業できる状況を作り、最後まで誰ひとり欠けることなく一丸となって笑顔で送り出したい」と頼もしいコメントを残した。上級生組のひとり、白藤麗華(しらふじれいか)も「二人の卒業には衝撃を受けました。ただ、和物と洋物のレビューというOSKの王道の構成で、ふたりと同じ舞台に立てることが何よりの幸せ」と噛み締めていた。

翼和希

城月れい

一方、『ブギウギ』に橘アオイ役として出演した翼和希(つばさかずき)と、城月れい(きづきれい)は、年末に卒業の話を聞いてから今まで実感が沸いていないという。「8月の私の情緒はどうなってるんだろう」と不安を口にした翼は「おふたりの志を続けていかなければいけない。卒業されるその日まで、穴が空くほどしっかりと見つめ、全てを吸収して「今のOSKはこれだ」と胸を張れる劇団で、華やかに明るく見送りたい」と熱い眼差しを向けた。城月も「劇団員をまとめる学年になったので、劇団員の方向性をまとめて、基盤を作っておふたりを見送れたら」と今できることに注力するようだ。

壱弥ゆう

下級生の壱弥ゆう(いちやゆう)、椿りょう(つばきりょう)、唯城ありす(ゆしろありす)もそれぞれの気持ちを吐露。「カッコ良いおふたりからまだまだ勉強したかったという気持ちもあるが、しっかりしたと思ってもらえるように真摯に舞台に向き合いたい」(壱弥)、「あっという間に8月が来てしまうのかなという気持ちでいっぱい。絶対に公演を成功させるぞと力を尽くす」(椿)、「一瞬一瞬を大切に。私たち下級生はしっかりと舞台をつとめることが、おふたりへの最大のお返しになる」(唯城)と、舞台へ向き合う姿勢を見せた。

椿りょう

唯城ありす

劇団員の熱い思いを聞いた楊は「もっと頑張ろうと。特別専科の桐生(麻耶、きりゅうあさや)さんをはじめ、初舞台生に至るまで、誰も欠けることなく、皆様に元気とパワーをお届けする」と心を新たにした。舞美も「支えたいと言ってくれましたが、皆さんも演者のひとりなので、笑っている姿を見るのが私の最大の幸せです。お稽古場では毎日笑って、皆で作品を作り上げる過程を大切に過ごしていけたら」と笑顔を輝かせた。

右から楊琳、舞美りら

ふたりが退団を決めたキッカケやOSK人生の振り返り、『春のおどり』に懸ける思いなどは、別途SPICEにてインタビューをお届けする。これまでもSPICEでなんどもインタビューに応えてくれてたふたり。いつも明るく、編集部のどんな要望にも真剣に向き合ってくれたふたりが、今、何を思うのか。ふたりの胸の内に迫るインタビューは2月中旬に掲載予定。(更新:インタビューはこちら

会見では「見つめないで」と言われるほどひとりひとりの顔を見ながら話しを聞き、舞美が涙を拭うたびに声がけをしていた姿が印象的だった楊。そのトップスターたる姿は、劇団員の目に焼き付いたことだろう。そして二人と過ごす時間を大切に過ごす劇団員と、その熱に焚きつけられた楊と舞美による舞台は、さらにパワーアップするはずだ。今まで応援してきたファンはもちろん、朝ドラからOSKが気になった人も、現体制最後の『春のおどり』を見届けてほしい。

右から楊琳、舞美りら

取材・文=川井美波(SPICE編集部) 撮影=ハヤシマコ

公演情報

OSK日本歌劇団『レビュー 春のおどり』
会場:大阪松竹座
日程:2024年4月6日(土)〜14日(日)
※4月13日(土)はイープラス貸切公演
※最終日には終演後、引き続き、さよならショーを上演いたします。
 
【観劇料(税込)】
一等席(1・2階) 9,500円
二等席(3階)    5,000円
 
『OSK日本歌劇団レビュー 夏のおどり』
会場:新橋演舞場
日程:2024年8月7日(水)~11日(日)
※最終日には終演後、引き続き、さよならショーを上演いたします。
  • イープラス
  • OSK日本歌劇団
  • 『ブギウギ』舞台シーンも登場、OSK日本歌劇団トップスター楊琳&舞美りら、最後の『春のおどり』で「元気とパワーを届けたい」