眉村ちあきの呼び掛けにでんぱ組.inc・chelmico・ミームトーキョーが集結、渋谷は最高の笑顔に包まれる

『ニッカニカ(๑>◡<๑)〜お愛でとう2024〜』2024.01.19(fri)渋谷O-EAST

引く前から大吉とわかっているおみくじのような、新年早々運勢最高のスリーマン(+1)ライブ。首謀者は眉村ちあきで、久々にでんぱちんとやりたい!　ちぇるみっこと遊びたい!　ミームちゃんも呼んじゃおう！という私欲らしい(たぶん)が、巻き込まれる我々観客としても望むところ。始まる前から満面の幸せが確約されるイベント、大歓迎のニッカニカだ。

まずはミームトーキョー。開演時間前のオープニングアクトで3曲だけどそんなの関係ないですよ、いつでもどこでも全力疾走ですよと突っ走る姿勢が清々しい。6人6様のカラフルなファッションに身を包み、パレットの絵の具をステージに全部ぶちまけるような爛漫な個性がいい。高速BPMでぶっとばすロッキンダンスチューン「アニモア」、圧巻のシャウトとラップでねじ伏せる「GAV RICH」、攻撃的ダンスチューン「AGAIN AND AGAIN」の3曲を、ノンストップダンスで一気に魅せて拍手喝采。パワフルMEW、しなやかSAE、元気印のNENE、キュートなMITSUKI、凛々しいRITO、頼れるSOLI。揃ってるけどどこかいびつで、ちょっとくらいはみだしたって怖くないのがミームトーキョーの奔放な魅力。みんなかっこいい。

さあchelmicoだ。RachelとMamikoでchelmico（kとcの間違いに注意!）だ。POLOのポロを着たとにかく明るいRachelと、Polo ベアのTシャツでかっこかわいいMamikoのおしゃれラップユニットだ。ストレスフリーなポジティブメッセージ「Eazy Breezy」から「PUMP!」へ、初見の観客も踊らにゃ損損のアッパーチューンを連ねてアクセルオンだ。ふと見ると2階席でミームトーキョーのメンバーも大はしゃぎ。ちなみにさっき歌った「AGAIN AND AGAIN」はchelmicoの提供曲だ。「ペンライトうれしい」と素直に喜ぶ二人と、初めて聴く人が多いはずなのに新曲「Question」で完璧な追っかけコーラスを決める観客が作り出す、なんて優しい世界。タオル回しソングだけどペンライトでもコブシでもハンカチでもなんでもいいよと、とにかく回しまくる「Player」で盛り上げ、ラストは眉村ちあきを呼び込んで「Love Is Over」を、フロアいっぱいの盛大なクラップと共に。MCでは「chelmico知らない人？」と聞いたりしていたが、大丈夫、この日全員がchelmicoのファンになったはずだ。とことん楽しいMC、ゆるさとかっこよさが絶妙なパフォーマンス、いつだってラップの楽しさを等身大で伝えてくれるchelmico。今夜の任務も完璧だ。

「でんぱ組.inc、始まるよー!」　美しいVフォーメーションからの激しいダンス、エレクトロなお祭りビートが一気にハジける「ちゅるりちゅるりら」から「でんぱれーどJAPAN」へ、あっという間に世界をでんぱ色に染め上げたらもう勝ったも同然。空手の型や相撲の四股を取り入れたユニークで激しい振付はもはやエクササイズ、ダンスの枠を超えて歌の中のドラマを表現する精密な振付はもはやミュージカルか演劇か。古川未鈴、相沢梨紗、藤咲彩音、鹿目凛、天沢璃人、小鳩りあ、高咲陽菜、これが他の追随を許さないでんぱ組.incの専売特許。お揃いの、セーラー服ベースのネイビーにシルバーをあしらった衣装がかっこいい。観客のコーラスが入って完成する「Future Diver」、7人の名前をコールする「キラキラチューン」と、ファン参加型の楽曲の盛り上がりがすさまじい。中でも最高の見せ場は、眉村ちあき作詞作曲の「プロタゴニスト」を、作者を呼び込んで8人で歌い切ったシーンで、この名曲を聴けたこの日の観客はたぶん今年1年ラッキーだ。ラストは再び全力疾走、ロックでぶっとばす「バリ3共和国」から「でんでんぱっしょん」の見事な団体競技・新体操リボンの舞いまで、息をもつかせぬノンストップダンス。これはもはやオリンピック競技、優勝です。

「今日はご来場まことにありがとうございまーす!」　主催者らしい律儀な挨拶から始まった眉村ちあき（銀色の手作り宇宙服風ファッションが素敵）のステージは、しかし1曲目「individual」から「BEAT UP」へ、ぐるっと回って「individual」に戻るポップでカオスな眉村ワールドに誘い込まれ、もう誰も逃げられない。怒りをテーマにした「顔ドン」ではRachelとMamikoが乱入し、笑顔で火に油を注ぎこむ。さらに「Queeeeeeeeeen」でペラペラの紙製ギターを弾きながら歌いまくったかと思えば、金のイカダに乗ってフロアを横断して魔法のステッキを探す旅に出るという、文字だけでは絶対に伝わらない奇天烈なパフォーマンスで満場の大喝采を浴びる。と、変なことばかりやっているようだが、ソウルフルで温かい「KARAAGE WARS」、キャッチーなエレクトロダンスの最新曲「バケモン」、アコースティックギターでしっとり歌う「Lovely days」と、多種多様な楽曲をまとめあげるメロディの良さと歌のうまさは絶対的。この日初披露となったタイトル未定の新曲は切なく温かく、あなたがスキとまっすぐに歌う素敵なラブソングだった。40分があっという間の熱演の果て、ラストは「みんなの未来が元気いっぱいになるように」というメッセージを添えて、壮大なギターロックバラード「大丈夫」を愛情たっぷりに。眉村ちあきのライブは非日常で非常識だが非常に楽しい。すごい中毒性だ。

そしてアンコール。「一番大団円にふさわしい曲を」と紹介した「旧石器PIZZA」は、途中からミームトーキョー、chelmico、でんぱ組.incの全員を呼び込んでにぎやかなコーラスがフロアを包み込む、絵に描いたような大団円になった。誰一人置いて行かない優しさあふれるフィナーレが、外の寒さを忘れさせてくれる。ポジティブなヴァイブスに満ちた4組の全力パフォーマンスが、根拠はないけど確かなやる気とパワーを届けてくれた2時間半。お愛でとう2024年。愛にあふれた1年になりますように。

取材・文＝宮本英夫