めくるめく色彩、迫力のバトルシーン 耽美でダークな世界観にどっぷり浸る『アニメ地獄楽の世界』レポート

2024.2.13
レポート
アニメ/ゲーム
アート

『アニメ地獄楽の世界』 (C)賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA(写真=オフィシャル提供)

画像を全て表示(14件)

『アニメ地獄楽の世界』が、2024年2月2日(金)から3月10日(日)まで、東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYAにて開催中だ。

『地獄楽』は、2018年1月から2021年1月まで『少年ジャンプ+』にて連載されていた、漫画家・賀来ゆうじによる人気漫画。荒々しくも耽美な画風に、和モノ×ダークファンタジーというキャッチーな舞台設定、予測不可能な展開、魅力的なキャラクターは多くの読者を魅了し、累計発行部数650万部を突破するベストセラーとなっている。

本展は、2023年4月から放送されたTVアニメシリーズを追体験できる特別展。魅力的な原作をアニメーションに仕上げたのは『呪術廻戦』や『チェンソーマン』を手掛ける株式会社MAPPAである。原作のケレン味溢れる世界観を、アニメ界の最前線に立つMAPPAがリスペクトしてアニメ化した『地獄楽』の展覧会となれば、これは期待せずにはいられない。

ここは地獄か極楽か!? めくるめく色彩の魔法に浸る

『地獄楽』は江戸時代末期を舞台にした忍術浪漫活劇である。主人公・画眉丸は死罪となるが、打ち首執行人を務める山田浅ェ門 佐切から、極楽浄土と噂される島・神仙郷で「不老不死の仙薬」を手に入れれば無罪放免になると告げられる。条件を飲む画眉丸だが、自由を求める死罪人や島に潜む化物や敵が立ちふさがって……という、生と死の重みを感じる濃密なストーリーである。

展覧会場に入ると、花々が船の形に積み重なっているフォトスポットが。カラフルでキレイだなと思いながらよくよく見てみると、花と化して神仙郷から帰ってきた役人が表現されており、人が花に埋もれる姿にびっくりさせられた。こうした耽美と残酷の鮮烈な対比が『地獄楽』の魅力のひとつであり、これから始まる展示に期待が膨らむ。

個人的に原作で印象的なのは、画眉丸たちが赴く島・神仙郷の情景描写だった。花々が咲き乱れる島はまさに極楽浄土だが、そこを徘徊する化物や敵がさながら悪夢のように恐ろしい。漫画はモノトーンだが、アニメ『地獄楽』はとりわけ色彩豊かなのが特徴である。MAPPAの流麗な色遣いが十二分に発揮されていて、神仙郷の美しさと化物のおぞましさが際立ち、印象を残す。迫力あるバトルシーンや淡い回想シーンなども独特の色使いで、華麗さと毒々しさが相まってサイケデリックですらあった。本展では、そんな鮮やかな色味をじっくり味わえる原画とアニメーションも多数展示されている。

会場には他にも、水や光の輝き、登場人物の艶やかさや表情の繊細さなど、MAPPAの技巧が注ぎ込まれたアニメーションならではの展示がたくさん見られる。

魅力的なキャラクターが勢揃い

会場はTVアニメシリーズの13のエピソードに分かれ、随所に「人物相関図」や「化物大百科」、設定資料などが差し挟まれる。登場人物の関係性を確認し、化物の不気味さを実感しながら会場を回ることができるのだ。

『地獄楽』の登場人物は性格と外観がマッチしていて、特にアニメでは各キャラクターの特徴が明確になるようにデザインされている。凄惨な過去や深い事情を持っている曲者揃いだが、真摯で独自の哲学を持ちとても魅力的だ。本作では第一線で活躍していたキャラクターが途中退場してしまうこともあるので、「人物相関図」を見て在りし日の姿を確認することもできる。

化物は手が突き出した目に長い舌を持つ門神、魚と人が融合したような竈神など、異形ぶりが凄まじい。極楽蝶と呼ばれる蝶ですら、人面に蛾のような羽を持つ不気味な姿をしており、よくこんな化物が思いつくなと、改めて感じた。

各エピソードのコーナーでは、画眉丸の忍法「火法師」発動シーンや、化物と対峙するシーンなど、記憶に残る名場面が満載だ。あのシーンでこのキャラが……!と思い返し、長く立ち止まってしまった。

アニメ『地獄楽』ができるまで

展示には制作過程を紹介するコーナーも。シナリオ、設定・デザイン、絵コンテ、原画、本編映像という制作工程を確認することができる。

特に「アニメ『地獄楽』ができるまで」というコーナーでは、「episode 08 弟子と師」の1シーンと、制作過程が順を追って紹介されている。episode08で活躍する典坐・ヌルガイ・士遠の台詞や心情が書かれたシナリオを作成し、そこからキャラクターの細かい設定やデザインを決め、全体の色のテイストを決定、絵コンテで脚本のイメージをビジュアル化、原画のキャラクターの表情や動きをチェック、映像が完成する……という一連の流れを知ることができるのだ。展示を見ると、これだけ多くの過程と人力と技術が注ぎ込まれているのか! と、一つひとつのエピソードが、まさに努力と熱意の結晶であることが実感できる。

フォトスポットやコンテンツキューブなども

なお、会場内には展覧会ならではのコンテンツが充実しているのも嬉しい。冒頭の花々のフォトスポットの他にも、この作品らしくダークでファンタジックなフォトスポットが複数用意されている。また、打ち首執行人らが使う刀の模型(!?)など、ちょっと変わった展示もある。

会場入り口付近には、「みどころキューブ」の案内が。こちらはネット上で各コンテンツを紹介するシステムで、スマホなどで接続してキューブ状のインタフェースを使い、展示に即したコンテンツのインタビューや制作コメント、用語集などにアクセスできる。監督やプロデューサー、声優などの貴重なコメントを読めるので、チェックしながら会場を回ると、より『地獄楽』の世界に詳しくなれそうだ。

また、アニメの中でも登場した水墨画を手掛けた水墨絵師・じんかい氏による、本展のキービジュアルになった作品やアートワークも見逃せない。墨の鮮烈な黒は迫力満点で、作品世界に躍動感や臨場感をもたらしている。

アニメ『地獄楽の世界』のカラフルでダークな雰囲気を楽しめる本展。『アニメ地獄楽の世界』は、3月10日(日)まで、東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYAにて開催中。

 

(C)賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA
文=中野昭子 写真=オフィシャル提供

イベント情報

『アニメ地獄楽の世界』
■開催会場:
東京アニメセンターin DNP PLAZA SHIBUYA
東京都渋谷区神南1丁目21-3 渋谷MODI 2F
■開催期間:
2024年2月2日(金)~2024年3月10日(日)
土日祝 10:00~20:00(展示最終入場19:30)
平日 11:00~20:00(展示最終入場19:30)
■入場料:
前売券 一般:1,800円(税込)
当日券 一般:2,000円(税込)
入場特典付き
販売ページ:
https://eplus.jp/theworldofjigokuraku/
日時指定制 該当日
2月3日(土)、2月4日(日)、2月10日(土)、2月11日(日)、2月12日(月)、2月17日(土)、2月18日(日)、2月23日(金)、2月24日(土)、2月25日(日)
3月2月(土)、3月3日(日)、3月9日(土)、3月10日(日)
入場時間枠:
《土日祝日》
①10:10- / ②10:40- / ③11:10- / ④11:40- / ⑤12:10- / ⑥12:40- / ⑦13:10- / ⑧13:40- / ⑨14:10- / ⑩14:40- / ⑪15:10- / ⑫15:40- / ⑬16:10- / ⑭16:40- / ⑮17:10- / ⑯17:40- / ⑰18:10- / ⑱18:40- / ⑲19:10-
※⑲は19:30が最終入場となります。
※時間指定の場合、集合時間は入場時間の10分前となります。
※遅れた場合は次回枠最後尾からお並びいただきます。
■主催 :
大日本印刷、MAPPA
■特別協力:
賀来ゆうじ、集英社、ツインエンジン
  • イープラス
  • 地獄楽
  • めくるめく色彩、迫力のバトルシーン 耽美でダークな世界観にどっぷり浸る『アニメ地獄楽の世界』レポート