中川晃教×相葉裕樹×木内健人「新たな作品のつもりで深めていきたい」~ミュージカル『CROSS ROAD』インタビュー

2024.3.7
インタビュー
舞台

――ご自身が演じる役の印象を教えてください。また、中川さんから相葉さん木内さん、お二人から中川さんを見て、キャラクターと似ていると感じる部分はありますか?

相葉:パガニーニは5歳くらいからヴァイオリンを始め、神童と言われて育ちました。才能がある故に自分に才能がないことに気づいてしまうもどかしさの中でアムちゃんに出会い、契約してしまいます。「なんで?」って思った時に、とっても家族思いの子なんです。家族の幸せを一番に考えているし、笑顔でいてほしいと思っている。自分自身が称賛されることで家族が喜んでくれるのが原動力になっていて、音楽への想いと同時に家族愛が描かれています。弱さもあるし、堕落してしまうところは人間らしい子だなという印象ですね。契約後は言葉遣いが荒かったり乱暴だったり、史実では守銭奴で女好きと言われているけど、根本的には音楽を愛していて家族思いだと感じます。

木内:一言で表現すると、すごく脆い人。自分がこうなりたいとか家族のために音楽で生計を立てたい、家族を喜ばせて期待に応えたいというのが第一にある。戦っているからこそ運命の十字路に立てたし、戦っているからこそ脆い部分がある、という印象を受けました。話が少し変わるかもしれませんが、この間、ローザンヌ国際バレエコンクールを見ましたが、今ってほぼアジア人しか出ないそうなんです。なぜかというと、ヨーロッパの子はお金を稼ぐためにバレエをする。アジアの子は生計を立てようとしていない。それってすごいなと思っていて。僕の中で、パガニーニがお金を稼ぐ・家族を喜ばせるためにヴァイオリンをやるっていうのがピンときていなかったんです。でも、ローザンヌの話を聞き、今でもそういう人たちは芸術という小さな穴を狙って命をかけていると考えた時に、僕はちょっと甘い考えでミュージカルをやっていたかもしれないと思いました。僕もきっと戦わないとアムちゃんは来てくれないんだなって。本当に頑張りたいなと思います。

木内健人

中川:ちなみに、僕とアムちゃんが重なるところは?

相葉:なんか悪魔っぽい。

中川:一言だと破壊力あるな(笑)。

木内:ざっくりしてる(笑)。

中川:天使っぽいって言われるけど。自分で言っちゃった(笑)。

相葉:悪魔も元々は天使で、神様から追放されて堕天使になって……っていうじゃないですか。アッキーさんは天使な部分も悪魔な部分も両方持っているんですよね。いい意味で。

木内:「いい意味で」って言えばなんでも解決すると思うなよ(笑)!

相葉:この作品でも、日によってはすごくおどけているアムちゃんだったり、超クールなアムちゃんだったり。今日はどっちだろうっていう読めなさもあって、掴み切れないのも悪魔っぽいなと感じます。

木内:僕はまだアムちゃんを体験してないんですけど、アッキーさんって忍び寄ってくるタイプ。僕をすごくいじってくれるんですが、後でこそっと「僕は健人のこと大好きだからね」って(笑)。『SHINE SHOW』の時とかも、稽古のスタンバイ中にスッと忍び寄ってきて、「もっとこうしてみたらいいんじゃない?」とか「あれはどうしてああなの?」とか。

中川:そんな偉そうなこと言った?

木内:いつもアドバイスしてくれるじゃないですか。そこはアムちゃんぽいかなと思います。

中川:僕のアムドゥスキアスの印象ですが、悪魔って言われるとすごく楽しくなってしまうんです。東宝の錚々たる作品の中で、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』でも『エリザベート』でも、人智を超えた存在はみんなどこか滑稽さや憎めない感じがある。あれはなんだろうと思っていて、自分なりに婉曲して解釈しようとするとできる気がしています。この作品で文翁さんが考える“悪魔”って結構明確で、ドラマティックなんです。才能というものに恋する乙女が「出逢っちゃった!」っていうやつ。僕の中で、コーヒーが抽出される時の最初の一滴みたいなものが悪魔のイメージ。だから、二人のパガニーニの印象を聞いていて「なるほど」と思いました。

僕の中でこの作品のパガニーニはばっちそのもの。誰も・何もパガニーニという人間に触れることができないくらい孤高でピュア。本人は自覚がないけど、親でさえも触れるのをはばかるくらいの感じ。かたや木内くんは歴史上の中でたくさんの才能を持った人と出会ってきたアムちゃんが、また一人運命の十字路に迷い込んだ人を見つけて、「こいつはいかがなものかしら?」っていう。「手から血が滲むほど練習して、何のためになるの?」と、ちょっとそそのかせばころりといくような。でも簡単にころりと来てほしいんじゃなく、彼が持っているキラッと光る原石をほしいだけ。近くても遠くても輝きは同じなんですが、二人のパガニーニは距離感が違うなと思いました。そういう部分にゾクゾクしながらアムドゥスキアスというキャラクターを深めていっています。

――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

中川:大好きなばっちと、同じく大好きな健人と、この作品で再会できることに運命を感じます。お客様が客席に座ってくれて引き込まれる、そこに僕らの出会いが凝縮されるような作品をお見せできるように稽古を頑張っていくので、あたたかく応援していただけたら嬉しいです。

相葉:新パガニーニを迎え、2ヶ月弱の稽古を通してさらに深めていけるだろうし発見もあると思います。新たなものを作るつもりで頑張っていきます。劇場でお待ちしています。

木内:とても信頼している先輩お二人とご一緒できるのが嬉しいですし、この物語を見にきてくださったお客様が没入できる時間を作りたいと思っています。楽しみにしていてください!

<中川晃教>
ヘアメイク:松本ミキ
スタイリスト:Kazu(TEN10)

<相葉裕樹>
ヘアメイク:成田幸代(&'s management)
スタイリスト:吉田ナオキ

取材・文=吉田沙奈 撮影=池上夢貢

公演情報

ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』
 
原作・脚本・作詞:藤沢文翁 作曲:村中俊之 編曲:江草啓太 演出:末永陽一
製作=東宝
 
<出演者>
音楽の悪魔 アムドゥスキアス 中川晃教
ニコロ・パガニーニ 相葉裕樹/木内健人(W キャスト)
ジプシーの娘 アーシャ 加藤梨里香/有沙 瞳(W キャスト)
ナポレオン皇帝の娘 エリザ・ボナパルト 元榮菜摘
ヴァイオリン教師 コスタ 坂元健児
パガニーニに仕える執事 アルマンド 山寺宏一/畠中 洋(W キャスト)
パガニーニの母 テレーザ 春野寿美礼
 
荒居清香 荒川湧太 小倉優佳 川口大地 柴田実奈 趙 京來 德岡 明 中野亮輔
宮田佳奈 山﨑感音
 
2024年4月22日(月)~5月12日(日)東京・日比谷シアタークリエ
5月17日(金)~19日(日)大阪・新歌舞伎座
5月24日(金)~26日(日)福岡・博多座
 
  • イープラス
  • 藤沢文翁
  • 中川晃教×相葉裕樹×木内健人「新たな作品のつもりで深めていきたい」~ミュージカル『CROSS ROAD』インタビュー