イギリスのスーパースターDJジョナス・ブルー、ひと足早く夏の気分を運んだ過去最大規模の来日公演をレポート
ジョナス・ブルー
Jonas Blue LIVE In Japan Special Edition Featuring Jack & Jack, JP Cooper, William Singe
2024.4.17(WED) 東京ガーデンシアター
イギリスのスーパースターDJ、ジョナス・ブルーが約1年ぶりに単独来日公演『Jonas Blue LIVE In Japan Special Edition』を開催。ひと足早く夏の気分を運んでくれた。思わず一緒に口ずさみたくなるポップなメロディと、高揚感あふれるサウンド。耳にした途端、すぐさまトロピカルムードに包まれる数々のヒット曲は、日本でも大人気。すでに何度も来日を重ねているが、今回は東京ガーデンシアターと大阪のなんばHatchで1日ずつ。ここでレポートさせてもらう東京公演は、単独での来日公演としては過去最大規模。しかも彼の代表曲にフィーチャリングされるジャック&ジャック、JPクーパー、ウィリアム・シンジも来日。彼らもゲスト参加するとの事前告知が為された発表時点から、ファンなら必ずや足を運びたいスペシャルなイベント感が満載だった。
満員御礼の東京ガーデンシアターは、オープニングアクトのBABY-TとTJOのDJセットにより、すでにパーティーモードがあふれている。19時半、そこにジョナス・ブルーが「ありがとうございます!」という日本語の第一声と共に登場すると、1階のスタンディングフロアはもちろん、2〜4階のシートのあるフロアの観客もほぼ全員が総立ちに。この後もずっと踊りっぱなしになるのだけれど、ファンは惜しみなく拍手と声援を贈って日本への帰還を歓迎。オープニング曲の「ドント・ウェイク・ミー・アップ feat. ホワイ・ドント・ウィー」から大きな熱気に包まれる。サム・フェルトとのプロジェクトであるエンドレス・サマーの「クライング・オン・ザ・ダンスフロア feat. ヴァイオレット・デイズ」、アレッソの「ウィズアウト・ユー」とワンリパブリックの「アポロジャイズ」のマッシュアップなどを続けて、かなりアッパーに飛ばしていく。先日『ブリット・アワード』で6冠を果たしたレイをいち早くフィーチャーした彼の初期ヒット曲「バイ・ユア・サイド」では、早くも大合唱に。一方、アリアナ・グランデの「イエス・アンド?(ジョナス・ブルー・リミックス)」など、最新曲も織り混ぜていく。
そしてもちろん「パーフェクト・ストレンジャーズ」では、イギリス人シンガーのJPクーパーが登場。事前に録音されたボーカルトラックを一切使わず、完全なる生歌で歌い上げてくれた。当然ながらオーディエンスの声援も一段と跳ね上がったが、あえて曲を止めたりMC入れることなく、JPがそのままステージからはけると、ノンストップで次の曲「リチュアル」(with ティエスト&リタ・オラ)へと続けられ、カルヴィン・ハリスの「フィール・ソー・クロース」をマッシュアップ。この辺り、やはりセット全体の流れを大切にするDJとしての拘りだろうか。そんなDJらしさは、彼が敬愛する先輩DJ、アヴィーチーの「レヴェルズ」がレーザー光線を使ったひと際ドラマチックな演出でプレイされたときにも痛感させられた。
中盤には、美しいメロディで聴かせるダンスナンバーを連続投下。大合唱が巻き起こった「ファイナリー feat. ラニ」、今年の『グラミー賞』でも話題になったトレイシー・チャップマンの「ファスト・カー」のカバー(feat.ダコタ)、ひと際大きな歓声で迎えられたワン・ダイレクションのリアム・ペインとレノン・ステラによるデュエット曲「ポラロイド」などが心地よいペースで繰り出されていく。「ネイキッド feat. マックス」では、その曲名にちなみ、着ていたシャツを脱ぎ捨てタンクトップ1枚になるというオチャメな一面も窺わせた。
そんな中、シンガーも立ち替わりステージに登場。オーストラリア人シンガーのウィリアム・シンジが「ママ」をワイルドに熱唱し、再びJPクーパーが登場して「ユー・アー・ザ・ワン」を歌唱。後者は、3月にリリースされた最新アルバム『Together』にも収録されたボーナストラックで、ジョナス本人が「日本版アルバム『Together』のために特別にリリースした曲です」と説明を加えていた。また告知されていたゲスト以外にも、ドイツ人シンガーのゾーイ・ウィーズがサプライズで登場。ボアのイヤーパッドとロングブーツに、ミニスカという全身ピンクな可愛いコーデで、5月にリリースされる予定の新曲「マウンテンズ」をいち早く披露してくれた。
終盤は、再びアッパーな、比較的最近のナンバーを集中的にドロップ。「ヒア・ミー・セイ feat. レオン」、「オールウェイズ・ビー・ゼア feat. ルイーザ・ジョンソン」、エンドレス・サマー名義の「レスト・オブ・マイ・ライフ feat. セイディー・ローズ・ヴァン」、フェリックス・ジェーンとの「パスト・ライフ」など、最新アルバム『Together』からのナンバーでアッパーに攻め上げた。そしてアンコールでは、お待ちかねのアメリカ人デュオ、ジャック&ジャックの登板だ。ジョナスによる「この曲は僕自身にとってスペシャルであると同時に、みんなにとっても同様ではないかと思います。日本での僕のブレイクのキッカケを作ってくれた曲です」というMCに続いて「ライズ」を披露。元気いっぱいに飛び跳ねながら歌って踊り、コール&レスポンスで大いにオーディエンスを盛り上げてくれた。その後方では、一段高いDJブースでジョナスも日の丸の旗を振りながら満足そう。エキサイティングでハッピーで、ラストに相応しい最高にピースフルな瞬間だった。
来年には早くもデビュー10周年を迎えるジョナス・ブルー。デビュー当初から、その陽気でポジティブな音楽性はまったく変わらず、ジョナス・ブルーとしてのブランドカラーを打ち出し浸透させてきた。多数のボーカリストを率いたこの日のライブは、その真骨頂といえるもの。ほぼ全ての代表曲が網羅され、アーティストとしての全キャリアを振り返る、フルサークルと思えるイベントだった。最後に彼自身が「今夜のことは決して忘れません」と語っていように、全てのファンにとっても一生の思い出となる特別な夜だったに違いない。
取材・文=村上ひさし