昆夏美、大原櫻子らがカラフルであたたかい世界を描き出す 新作ミュージカル『この世界の片隅に』会見レポート
こうの史代による漫画『この世界の片隅に』。太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の暮らしを描いた本作は、時代を超えて愛されてきた。 様々なメディアミックスが行われてきた本作初のミュージカルが2024年5月9日(木)に開幕。 主人公・浦野すず役の昆夏美と大原櫻子、北條周作役の海宝直人と村井良大、音楽を担当したアンジェラ・アキによる会見が行われた。
――昨日の初日の感想、初日に向けての気持ちを、色に例えて教えてください。
昆:新作ミュージカルなのでまだ色がついていない「白」だと思いますが、この作品の温かみを入れると、まっしろというより「オフホワイト」かなと。お客様がいてくださることで作品が誕生すると感じました。「どんな作品が繰り広げられるんだろう」というワクワクやそわそわ、劇場が一体になっていく感じがありました。笑いや拍手を改めて肌で感じて、届いているのかなという印象で初日を迎えられました。
海宝:色か。大喜利みたい(笑)。原作はあるけど世界初演のミュージカルで、観客の皆さんも僕らも緊張感があるところから始まりましたが、とてもあたたかく迎えていただき、皆さんのおかげでいい初日を迎えられたと思っています。お客様によって、様々な「パステルカラー」で作品を彩っていただけた気がしています。
大原:先ほど通し稽古を終えて、今の率直な気持ちは「オレンジ」です。私自身もそうですし、昨日お二人の初日を見ても、あたたかい気持ちで劇場を出られるなと感じました。
村井:最後のリハーサルを終えた時は「青色」でした。自分でも驚くほど冷静だった。これから本番に向けて、赤を混ぜて紫にして臨みたいと思います。
アンジェラ:4名がおっしゃっている色が私の中でもしっくりきています。4年近く費やし、ピアノと一人で向き合って作ってきたものが演者さんの声を通して新しいものに生まれ変わりました。さらにここからお客様と一緒に作っていくので、「自由の色」。それぞれの公演が違う色に染まっていくと思います。
――楽曲制作で苦労した点はありますか?
アンジェラ:いくつもありますが、原作が持っている温かさ、こうの先生の作品をどう音楽化するか。(上田)一豪さんが素晴らしい脚色をしてくれたので、支えられるような音楽にしたいと思いました。最初に作ったのが「醒めない夢」と「端っこ」だったんです。それができた時に「見えた!」と思いました。それからはどうバランスを取っていくかだったので、最初の2曲は時間を費やしたかなと思います。
――キャストの皆さんからも、曲の印象を教えてください。
昆:お客様の前で歌った時に、すごく没入感のある楽曲が多いなと感じました。今日初日を迎えるお二人を客席で見ようと思っていますが、本番の客席で聴いた時にどういう印象を受けるか楽しみです。稽古の中で「端っこはさくちゃんと昆ちゃんの色で歌っていい、任せるから」と言っていただきました。二人の個性もあるでしょうし、幅広い聞き方で聞いていただける楽曲も多いです。キャストによって聞こえ方が違う楽曲が多いんじゃないかと思いました。
海宝:とても原作にマッチした瑞々しい楽曲だなという印象を受けました。音楽の力が作品の推進力になっていると感じます。アンジェラさんが音楽界で培ってきたものと、ミュージカルを勉強された感覚が混ざり合って、新しい形になっている。それが作品の瑞々しさにマッチしていると日々感じています。俳優とのディスカッションもしていただき、妥協せずに歩んでくださったのが僕らとしてはありがたいし贅沢だったなと思います。
大原:初めてこの作品に携わった時に「端っこ」と「醒めない夢」を聞き、涙が止まらない感激がありました。その他の曲にもどこか懐かしさがあって、たくさんの楽曲に感動しました。私はアーティストとしてポップスなども歌っている中で、「ポップスで歌っていいよ」と言っていただいて、曲との距離がとても近くなりました。のびのび歌わせていただいています。バラエティに富んだ楽曲たちを早く皆さんにお届けしたいです。
村井:全ての曲が耳に残り、心地よく聞けます。役を忘れて歌いたくなるし、他の皆さんが歌っている曲を自分も口ずさんでいるくらい、耳にも心にも残るし温かさがある。様々な色が入っている曲が多いので、皆さんにどう届くのか。地方公演もありますから、いろいろな方に聞いていただき、それぞれの心に響くメロディを感じ取っていただけたら。温かみを感じ取れる楽曲なので、帰る時に口ずさんでもらえたらと思います。
――おすすめシーン、好きなシーンを教えてください。
村井:僕が一番好きなのはスイカのシーンです。
一同:いいよね!
村井:何度見ても泣いちゃうんですよね。聞いて、見て、セリフも込みで感じ取っていただけたらと。ちなみに本物のスイカを食べています。
海宝:甘いよね。
昆・大原:美味しいよね!
海宝:どこから取り寄せてるんだろう。
大原:日本人の自分が見て、桜って美しいなというのが花祭りの曲の時に感じます。あの歌とセットだけで泣けるくらい。自分自身が櫻子という名前なのもあって親近感が湧いて大好きです。
昆:全体でいうと「この世界のあちこちに」。幕が開いて最初に聴く曲で、物語を進めるエネルギーを落とさないでほしいというディレクションを一豪さんからもいただきました。楽曲のあたたかさと前に進む力がすごくフィットすると思っています。お客様の心をグッと掴んで物語が進んでいけば勝ちかなと。責任を持ってお届けしたいと思います。
海宝:個人的には水原さんとすずの納屋のシーンがとても好き。稽古場でも色々な形で試した結果今の形になっていますが、とにかく繊細。バックに流れているアンジェラさんの音楽とお芝居の高まりの描き方が素晴らしい。僕はその後ちょっとやきもちを焼くんですが、あのシーンがよければいいほど「むっ」となれるので、いいシーンだなと思っています。
アンジェラ:歌は100点。それは置いておいて、お芝居に圧倒されるんですよ。村井くんに言ったのは、桜の下で二人のキャラクターがすれ違うシーン。喋らなくても泣けるのはすごい。二人の思いがちょっと違って、毎回フレッシュな気持ちで見られてとっても好きです。もう一つは最後の方ですずと妹のすみちゃんが会話をするシーン。間の取り方などがさすが。こんな演技を毎日見られるという素晴らしい体験をさせていただいています。
――最後に、全国ツアーへの豊富を含めた皆さんへのメッセージをお願いします。
大原:戦時中のお話で、「暗い気持ちになるんじゃないか」と思う方もいるかもしれません。戦争の悲惨さも描かれていますが、重きを置いているのはすずの成長です。普遍的なお話ですし、見たお客様が絶対に笑顔で劇場を去ることができる温かい物語になっていると思いますので、多くの方にご来場いただきたいです。組み合わせによっても受け取る印象が全然違うと思うので、ぜひ見にきてください。
昆:こうの先生の原作はありますが、新しい作品が生まれる瞬間に立ち会えているのが光栄です。皆さんが原作を愛して、リスペクトしつつミュージカル化する意味を考えながら、最大限お客様にお届けする方法を考えて作ってきました。温かい人たちが、温かい空気の中、温かい作品を届けられていることがとても嬉しいです。この作品が持っているメッセージや温度感を劇場に体感しにきてほしいですし、日本人が作る日本の物語を全国にお届けできるのも貴重な機会だと思います。ふらっとという値段ではないかもしれないけど、気軽に作品に出会いにきていただけたらと思います。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(ゼノンコミックス/コアミックス)
音楽:アンジェラ・アキ
脚本・演出:上田一豪
浦野すず:昆夏美/大原櫻子(Wキャスト)
北條周作:海宝直人/村井良大(Wキャスト)
白木リン:平野綾/桜井玲香(Wキャスト)
水原哲:小野塚勇人/小林唯(Wキャスト)
浦野すみ:小向なる
黒村径子:音月桂
飯野めぐみ 家塚敦子 伽藍琳 小林遼介 鈴木結加里 高瀬雄史 丹宗立峰
中山昇 般若愛実 東倫太朗 舩山智香子 古川隼大 麦嶋真帆
桑原広佳 澤田杏菜 嶋瀬晴
大村つばき 鞆琉那 増田梨沙
2024年5月9日(木)初日~5月30日(木)千穐楽 日生劇場
6月 北海道公演札幌文化芸術劇場hitaru
6月 岩手公演トーサイクラシックホール岩手大ホール(岩手県民会館)
6月 新潟公演新潟県民会館大ホール
7月 長野公演まつもと市民芸術館
7月 茨城公演水戸市民会館グロービスホール
7月 大阪公演SkyシアターMBS
7月 広島公演呉信用金庫ホール
リリース情報
アンジェラ・アキ sings 『この世界の片隅に』(C)Sony Music Labels Inc.
2024年4月24日(水)発売
CD 品番:MHCL-3076
https://lnk.to/AngelaAki
1 この世界のあちこちに (2024年2月7日先行配信済み)
2 焼き尽くすまで
3 波のウサギ
4 醒めない夢 (feat.海宝直人)
5 掘り出しもんみーつけた
6 端っこ
7 花まつり
8 言葉にできない (feat.海宝直人)
9 自由の色
10 記憶の器
(全曲作詞/作曲アンジェラ・アキ 編曲河内肇)
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