原作 荒川弘×脚本・演出 石丸さち子 スペシャル対談が到着 舞台『鋼の錬金術師』第二弾公演東京・大阪にて上演
-
ポスト -
シェア - 送る
――演出のイメージはどの段階から考えられていますか?
石丸 脚本を書いている時点で演出が見えてくるシーンもあります。例えば病院の屋上のシーンでは、兄弟二人が始点と終点のない円の上を交わることなく走りつづけることで、最も近く最もわかりあえるはずの兄弟でもわかりあえない不安と、終わりのない旅のイメージを描けると思いました。原作には様々な印象的なシーンがあるので、演劇ではどう見せるか、常に考えています。
荒川 頭の中で描くスクリーンは、舞台サイズなんですか?
石丸 はい。舞台セットを縮小した舞台模型があり、模型を見ながら頭の中でも箱庭のようにそこに世界を創り出しています。
脚本をまとめる段階は、原作をリスペクトしながら、演劇としておもしろいまとめ方をしようと思っています。失礼のない代弁者でいたいです。
荒川 媒体によって全然違うと思うので、好きにやっていただいていいんですよ! 漫画は私が好きに描きますが(笑)。
―― それでは、第二弾公演のプランはどのような形になりますか。
石丸 登場人物が一気に増えて、エドとアルも別行動を始めたりするのでシーンがたくさんあるんですよね。しかも「これをやっておかないと、後々これが分からなくなる」ということが多い。でも“忙しい方のためのハガレン”みたいなことにならないように、心を描いていこうと思っています。なぜ彼らはこの行動を選んだのか、その心の旅路をきちんと、そしてテンポ良く描ければ。
―― マスタングの部下や隣国シンの者たち、新キャラが続々と登場します。彼らはどのように生み出されたのでしょうか。
荒川 マスタング隊で最初にできたのは誰だったかな。ホークアイは「銃を撃ちまくる姉ちゃん、いいなあ」と思って。銃を撃つ有能な副官に、“とっぽいにーちゃん”な上官、真面目なフュリー、頭脳労働派のブレダとファルマン。ハボックは肉体労働派で…少年漫画ではよくある役分けだと思います。あとは、犬ですね(笑)。シンについては、錬金術を調べていたら我々が知っている西洋の錬金術とは別に、中国では錬丹術というものがあって。「錬金術があるなら、錬丹術も出そう!」というところからで、キャラクターは後からついて来た感じです。
―― 調べられたものはなるべく取り入れようと?
荒川 もともと『三国志』や『水滸伝』が好きで、中国古典を読んでいると、錬丹術や「皇帝が不老不死を求めた話」がバンバン出てくるんです。昔から錬丹術を知っていたので、錬金術を出すならそちらも出したいなと思って。そこから「じゃあ、東(シン国)の面子を考えよう」「そこにホーエンハイムをつなげちゃおうか」と。西の錬金術と東の錬丹術ではちょっと考え方が違うんですが、さらに調べると、中間地点のインドにも錬金術があったんですよ。イシュヴァールはその辺りをイメージしています。
石丸 そこからちゃんと諸々がつながって、あの素晴らしいエンディングに辿り着くのがすごいです。
荒川 やっぱり幸せになってほしいじゃないですか。わりとシビアな物語だから、苦めなオチにすることも可能ではありましたが……幸せになってほしい、その一心でしたね。完全にエンディングが固まったのはいつ頃だったかな。自分が生み出したとはいえキャラクターは生きているので、イベントの度に自分が想像していない方へ行ってしまうんです(笑)。作者としてはこちらのルートに進んでほしいけど、今までの物語での積み上げからするとコイツは絶対に行かないだろうと。だから、最後の最後まで考えていました。「人を犠牲にはしない」という縛りはありましたが、絶対に何か道があるはずだと思って。
石丸 エドとアルの強い意志ですもんね。身体を取り戻したい、でも人を犠牲にはしないっていうのが。
荒川 はい。賢者の石…誰かの命を使ってしまえば簡単ですが、エドはそれをしないと決めていたので。「難しいルートを選びやがってこの野郎…!」と思いながら。
石丸 あんなにすごいものを生み出しながら、彼らに手を焼いている姿が面白過ぎます(笑)。
荒川 大人だったら落としどころを見つけろよ、となるでしょうが、エドは大人じゃないし、エドは私ではないので。エドならこうする、アルならこうする、というのを考えました。「幸せになってほしい」という願いは、作者としてブレずに最後まで行けた。彼らがちゃんと幸せになる道があって本当によかったです。過去に伏線を張っておいた自分、ありがとう!と思いました(笑)。
石丸 連載中は何に育つか分からない種を撒いていたってことですか?
荒川 そうですね。どうとでも取れるようにしておいて、後で「お、これ使えるぞ」って。貧乏性なので出したネタは全部使い切りたい(笑)。奇跡的に、無事にハッピーエンドを迎えられてよかったです。
―― 今後の物語、舞台でも目にしたいですね。
石丸 最後の駅のシーン、大好きなんです。出来るならばぜひ、あのシーンまで演出したいと思っています。
荒川 恥ずかしいエドワードさん…しかもダブルキャストってことは、二人分聞けちゃうんですね!
石丸 そうです、二通り(笑)。駅のシーンを積み重ねてあの場面に行きたいなと思っているんです。第一弾も汽車に乗車しているところから始まって、駅で終わったので。全てのキャラクターが面白いので全部取り上げたいんだけれども、舞台だと表現できる情報が限られている。そうなるとエドとアルの成長と旅が一番の基本になると思っていて。だから旅しているんだってことを、いつも忘れないようにさせてあげたいです。目の前のシーンを描くことに夢中になり過ぎて、旅のはじまりと目的を忘れないようにしたいなと思っています。
荒川 舞台で一番感じたのは生き物だなあ、ということ。前の日、もしくは当日午前の公演で得たものが、次に経験値として積み上がっていく。生だからこそですよね。見る側もめちゃくちゃ楽しい。漫画とは違うからこそ、漫画からは得られない刺激があります。
石丸 原作の魅力と「わくわく」を大切にしながら、演劇という形態の自由さを最大限に活かし、工夫して、改めて一から作っていきます。原作ファンにも演劇ファンにも、それから初めて演劇を見る方にも、どの人にも届くような作り方をしていきたいと思っていますので、是非劇場に足を運んでいただきたいと思います。
荒川 まさにどの人にも、年齢の制限なく見て楽しんでいただけたら。
――本日はありがとうございました。
インタビュー&文=片桐ユウ
公演情報
作詞 石丸さち子 作曲 森 大輔 /
美術 伊藤雅子 照明 日下靖順 音響効果 天野高志 音響 増澤 努 映像 O-beron inc.
舞台監督 今野健一 / ヘアメイク 馮 啓孝 井村祥子 衣裳 渡邊礼子 小道具 羽鳥健一 殺陣 新田健太 演出助手 矢本翼子 楽器 中平チェリー皓也/ 制作進行 麻田幹太 / 宣伝デザイン 山代政一
グッズデザイン 山代政一 石本寛絵 デザイン協力 石本茂幸 フォトグラファー TOBI
アルフォンス・エルリック 眞嶋秀斗
リザ・ホークアイ 佃井皆美
ジャン・ハボック 君沢ユウキ
ヴァトー・ファルマン 寿里
デニー・ブロッシュ 原嶋元久
ハイマンス・ブレダ 滝川広大
ケイン・フュリー 野口 準
マリア・ロス 七木奏音
メイ・チャン 柿澤ゆりあ
フー 新田健太
ランファン 星波
ヨキ 大石継太
イズミ・カーティス 小野妃香里
ラスト 大湖せしる(※※)
エンヴィー 平松來馬
グラトニー 草野大成
ピナコ・ロックベル 久下恵美
傷の男(スカー) 星 智也
ゾルフ・J・キンブリー 鈴木勝吾
※※出演者が変更になっております
SUIT ACTOR アルフォンス・エルリック 桜田航成
ENSEMBLE 真鍋恭輔 田嶋悠理 榮 桃太郎 丸山雄也
BAND MEMBER Band Master & Key. 森 大輔 Gt. オオニシユウスケ Dr. 直井弦太 Ba. 富岡陽向
【TOKYO】2024年6月8日(土)~6月16日(日) 日本青年館ホール
【OSAKA】2024年6月29日(土)~6月30日(日)SkyシアターMBS
主催 舞台『鋼の錬金術師』製作委員会
■公式X @stage_hagaren
■公式Instagram stage_hagaren_official