山本耕史&クリスタル・ケイにインタビュー~日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』の魅力と期待をたっぷりお届け!
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ーークリスタルさんはモーリーン役について、今どんな印象を抱いていますか?
クリスタル:うーん、自分とは真逆の性格かもなと思っていて、それをどう表現できるかなと考えています。本当に怖いもの知らずで、言いたいことは言うし、自分のやりたいようにする、結構自己中なところもあるけど、みんなを虜にしちゃうパワーやエネルギーを持っている役。もう恥は全部置いて、バーン!とやるしかないですよね。未知の世界だけど、自分と全然違う役ってすごく楽しいとは思う。
山本:ケイちゃん、めちゃくちゃ合うと思うよ。
クリスタル:心強いコメント! 特にあのモノローグというか、ずっと歌って喋っているパフォーマンスアートのシーンは、きっとリハを重ねていくうちにどんどん馴染んでいくんだろうなぁ。全くの別人になるかもしれないし、ドキドキで楽しみです(笑)。あとはオリジナルの印象がやっぱり強いけど、それを意識しすぎたくない。リスペクトしつつも、「クリスタル ケイのモーリーン、良かったじゃん」と思ってもらえるようにしたいですね。
The Company of the RENT 25th Anniversary Farewell Tour (c) Carol Rosegg
ーークリスタルさんはミュージカル『ピピン』に出演されて、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞されました。ミュージカルのどんなところに魅力を感じられますか?
クリスタル:どんなジャンルのどんな作品でも、どこか必ず掴まれるところがあると思うんですよね。仮にそんなに興味がない作品でも、触れたら、何かが変わっていったり、何かが動かされたりする。そういうところは本当すごいなと思いますね。ライブもそうなんですけど、毎回違う。生モノであるところがすごく刺激的ですし、みんなの魂やエネルギーが感じられるところが素晴らしいですよね。
ピピンを終えたあとの手応えは……自分の身体全体を使ってちょっとは表現できるようになったのかなと思いますけど、まだまだかな。ただ、やりがいは間違いなくあります。得るものしかなかったです。
ーー山本さんはいろいろなジャンルのお仕事をされていますが、ミュージカルにも力を入れていて、お好きなのかなと思うのですが。
山本:これがね、紙一重というか。「ミュージカルが好き」というわけではなくて、「自分が出るなら、自分が観たいと思う作品に近づけたいな」という思いが強いだけなんです。
この『RENT』も、そもそもジョナサン・ラーソンが“ぶち壊すような作品”を作れないだろうかと、本物のロックを舞台に乗せて作ったことがスタート。だから当時のブロードウェイにとって、革命的な作品だったわけですよね。その2年後に初めて海外公演で日本に作品を持ってきて。今でこそケイちゃんみたいにミュージシャンの方が舞台に出ることがあるけれど、当時はミュージシャンの人が舞台に出るなんてまずもってなかった。だけど、僕以外の出演者は全員ミュージシャンだったんですよ。当時のメンバーは「俺はこれやりたくねえ」「俺はこっちをやりたい」と、いい意味で滅茶苦茶だった(笑)。でもそれこそが、『RENT』だったというか……。僕は「あ、ミュージカルって一言で言うけど、こんなミュージカルもあるんだ」と気づかされて。いわゆるグランドミュージカルだけではなくて、全く違うミュージカルがあるんだと衝撃を受けたんです。
この『RENT』が生まれた後から、ミュージシャンの人が曲を書いたものが作られたり、ミュージシャンの人が出演する作品が増えてきたと思うんですよね、それまではミュージカル俳優/女優さんがミュージカルをやることが当たり前な世界だったけれど。そういった意味でも、新しい世界を開いた作品だと僕は思うんです。
ーーなるほど。だからこそ山本さんは『RENT』に対して思い入れがあると。後々『tick,tick...BOOM!』ではジョナサン・ラーソン役も演じられますよね。
山本:そうそう。『RENT』をやってから、ある意味、自分がやりたいもの、やるべきものが明確に見えてしまったんです。逆に『RENT』に出会ってから、むしろちょっと辛い思いをした時期もあったかな。
例えば、「赤」という色ひとつにも、何千という赤があるでしょう? だけど『RENT』をやったときに「これが赤なんだ」という強烈なものを見せつけられちゃったがゆえに、 他の作品で「これも赤なんです」と言われても全然赤に見えなくて。これらが一括りの「赤」だということがすごくもどかしくて。
自分の求める色というか、道が見つかって、それをずっと妥協せずに続けてきたから、今の自分があるという感じかな。『RENT』に出会っていなかったら、多分いろいろな「赤」を受け入れていたかもしれない。けれど、一度出会ってしまったがゆえに、心の中にある「赤」をずっと追い求めてきた。
……で、その到達地点が今ここですよ(笑)。この後はまたどうしようかな。自分なりの赤を作るのか?なんて、この先のことを考えたりもします。
ーーちなみに、初演のパンフレットを持っているのですが……。
クリスタル:わー!(山本さんの写真を見て)アイドルじゃないですか! ローラースケートを履いてそう!(笑)
ーー当時のご自分に言いたいことありますか?
山本:なんだかんだ、またやることになるよと言いたいかな(笑)。 26年も経って、しかも英語でやるとは思っていないだろうから、もうちょっと真剣に英語を勉強しといた方がいいよ、と伝えたい(笑)。
ーー山本さんが「今の自分があるのも、まさにこの『RENT』があったから」と仰っていましたが、クリスタルさんにとっての「原点」となるような音楽や演劇、ミュージカルは?
クリスタル:マイケルとジャネット(・ジャクソン)。彼らのミュージックビデオを最初に見たのは、多分2歳ぐらいの頃だったと思うんですけど、言葉も喋れないのに、真似して踊れるぐらい好きだった。私は大きくなったら、この人たちみたいになるんだと思って。今も常に目指していますね。
というか、多分パフォーマーはみんなどこかで目指していると思います。ライブなんかを見ていると「あ、これマイケルのあれだな」とすぐ分かるもの。演出でも衣装でもダンスでも。それぐらいの影響力があるパフォーマーだと思うので、私の原点はそこかな。