人間たちよ!日本の秋はかくして楽しめ!『たちかわ妖怪盆踊り2024』が思い出させてくれた祭りの心意気

2024.10.30
レポート
音楽
イベント/レジャー

撮影:大橋祐希

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立川の秋の風物詩となりつつある『たちかわ妖怪盆踊り』の季節が今年もやってきた。2024年は、10月12日(土)から14日(月・祝)の3日間で、東京都立川市のGREEN SPRINGS 2F 中央広場にて『たちかわ妖怪盆踊り2024』が開催された。2022年の初年度から今年で数えること3回目の開催ということもあり、会場周辺のみならず、駅前を中心に街全体に和装や妖怪に扮した参加者らの姿を見かけることが出来た。まさしく妖怪そのもののように、我々の日常に溶け込むような形で立川という街中にこのイベントが馴染んできたのがよく分かる。いろいろな妖怪がいろいろな楽しみ方を出来るこのお祭りは、我々日本人が忘れかけている古来からの日本の秋の楽しみ方を参加者に教えてくれているような気がする。

「たちかわ妖怪盆踊り」と銘打つからには、もちろんこれは立川市で行われる盆踊り大会なのではあるのだが、“たちかわ”と“盆踊り”の間に馴染みのない“妖怪”の2文字が挟まっている事で「はて?」と思われた方もいらっしゃることだろう。しかしこれは全くもっての文字通りで、参加者が思い思いの妖怪に扮して盆踊りを楽しむというイベントなのだ(もちろん着の身着のままの参加もOK)。広場の中央にはやぐらが組まれており、その周りにはキッチンカーや射的、輪投げといった出店から、大道芸などの見世物小屋ショーにお囃子、さらには妖怪メイクを施してくれるブースなどが軒を連ねる。
 

こちらはステンドグラス作家の熊谷さんのブース。普段は窓ガラスなど大型オーダーメイド作品がメインだが、今回は河童や唐傘小僧のランプを出品。ご自身の作品としては妖怪をモチーフに制作される事が多いのだとか。 撮影:大橋祐希

夜店も多数、子どもたちが楽しそうなのも印象的だった。 撮影:大橋祐希

いわゆる“近所の盆踊り大会”的な雰囲気を楽しみにフラッと訪れるだけでも楽しいイベントではあるが、このイベントの目玉はそれだけに非ず。“妖怪コンテスト”という、ざっくりと言えばベストドレッサー賞のような妖怪を決める大会も行われている。そこへの入賞を狙いに来ている本格的な参加者を見るも良し、自身が出場するも良し。出場するには本部テントでの妖怪登録が必要となる。唐傘小僧のような馴染みのある妖怪から、自身の創作妖怪まで、バラエティ豊かな参加者たちの姿がイベントを彩る。
 

見世物小屋ショーでの一幕。”家族紙芝居の○○一味”による読み聞かせには人だかりが。 撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

もちろんイベント名にもなっている通り、一番の目玉と言えるのは“妖怪盆踊り”だ。メインのやぐらステージエリアには別売りのが必要になるのだが、それに加えてドレスコードも設けられているのがポイント。ここに入るには、自身が妖怪となるか、浴衣・甚兵衛などの和装をするか、イベント公式グッズを身に纏わなければならない。東京音頭や炭坑節のような定番の盆踊りナンバーを踊るのはよく知るモノと同じだが、やぐらの近くで踊る人々は、妖怪か和装の人間で統一されているので、異形交じりの盆踊り大会に思わず笑みがこぼれる。

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

中には、和装で来たけどテンションが上がっちゃって、妖怪メイクブースでフェイスペイントを行ったであろう集団の姿もあったりして、妖怪たちに囲まれると自然と自分も妖怪に寄せたくなる気分を私も味わった。妖狐の耳を付けるだけでも、面を付けるだけでも、受け入れてくれる懐の深さがある。童心に帰って、出店でお面を買ってみたくなるのだ。

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

また、やぐらステージでは終日、これらのメインイベント以外にも和太鼓や民謡ユニットによるパフォーマンスだったり、ダンスユニットによる舞踊や、さらにはTOWA TEIや石野卓球といった豪華アーティストによるDJなども目玉のひとつだ。無料のエリアにも”妖怪ディスコ”と名付けられたDJブースが設けられており、お酒片手にテクノやエレクトロサウンドが鳴りやまない楽しい空間になっていた。

入口近くには「妖怪DISCO」ブースが、テクノやダンスミュージックでお出迎え。 撮影:大橋祐希

筆者は今回、最終日にお邪魔したのだが、大トリを務めた石野卓球による1時間のアクトは、まさにこの祭りの象徴のような風景だった。テクノ×盆踊り×妖怪の相性がなぜこんなにも良いのだろうかと考えていたが、電気グルーヴはTVアニメ『墓場鬼太郎』の主題歌「モノノケダンス」を担当しているし、私が疑問に思うより遥か前からテクノ×盆踊り×妖怪の相性の良さは証明されていた。色んな妖怪、色んな参加者が、思い思いに身体を動かしているけど、輪の中心には石野卓球がいて、全員が彼の方向に向かって踊っていて、一見バラバラのように見えるけど、そこには大きなグルーヴが確かに存在していて、一体感が生まれていた。間違いなくこのイベントを象徴する存在だった。

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

実際に足を運んでみて、一番に感じたのは雰囲気の良さだ。会場の規模感もそうだし、立川という土地柄、ファミリー層も多く、たくさんの子供たちの笑顔で溢れていたのも印象的だった。スタッフをはじめとするイベント関係者、そして参加する妖怪たちの手作り感も温もりに満ちていて、街全体で作る文化祭のような良さが感じられた。近年、秋口に世間を騒がせるのは渋谷のハロウィンのような傍若無人な若者たちの姿だったりもするが、このイベントにはそのような騒がしさは皆無だ。むしろ真逆と言ってもいい。仮装して、大きな音を出して、大人はアルコール片手だったりするのに、秩序があって、なんならどこかアカデミックな雰囲気すら感じるのも、テクノ×盆踊り×妖怪のマリアージュとしか形容できない。このイベントの妙はきっとココにある。また、この組み合わせはインバウンド受けも非常に良いのだろう。海外からの参加者の姿も散見することができた。

撮影:大橋祐希

撮影:大橋祐希

このイベントをひと言で表すなら”日本のハロウィン”だ。むしろ逆で「日本の秋には盆踊りがあっただろう」と妖怪が教えてくれた。という表現がしっくりくる。どんな格好をしたって良い、どんな楽しみ方だって良い。なぜなら日本には八百万の妖・物の怪が存在するのだから。そして妖怪には妖怪のルールがある。妖怪たちは彼らのルールに乗っ取って、我々の日常に潜んでいる。我々と日常を共有している。だからこそ、きっと妖怪たちは苦言を呈しているはずだ。「お前たち、日本の秋は本来こうやって楽しむものなんだよ」と。

撮影:大橋祐希

レポート・文:前田勇介 撮影:大橋祐希
 

イベント情報

たちかわ妖怪盆踊り2024

日程:2024年10月12日(土)・13日(日)・14日(月・祝)
会場:GREEN SPRINGS 2F 中央広場(東京都立川市緑町3-1)
時間:11:00~21:00
イベント内容:妖怪盆踊り/アーティストライブ/妖怪ディスコ(DJステージ)/妖怪コンテスト/狐の嫁入り/立川百鬼夜行/魅世物小屋ショー/お囃子/たちかわミステリーZONE/妖怪屋台村(お祭り屋台)/キッチンカー
 ※やぐらステージエリア(有料エリア)はドレスコード(「妖怪の仮装」、「浴衣」または「イベント公式グッズ着用」)あり。

やぐらステージ出演:
【10月12日(土)】柳家睦とラットボーンズ/ELECTRONICOS FANTASTICOS! /モノガタリ宇宙の会+辺高正+にゃんとこ/イマジン盆踊り部/こでらんに〜と中西レモン/モノノケダンスクラブ/和太鼓師 広純-HIROZUMI/コクーンexs
【10月13日(日)】U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS/切腹ピストルズ/xiangyu/モノガタリ宇宙の会+辺高正+にゃんとこ/イマジン盆踊り部/こでらんに〜と中西レモン/モノノケダンスクラブ
【10月14日(月・祝)】石野卓球/ZOMBIE-CHANG/モノガタリ宇宙の会+辺高正+にゃんとこ/民謡ユニットこでらんに〜/モノノケダンスクラブ/珍盤亭娯楽師匠&火縄銃ボーイズ/Sunbeone/siva-T/文鼎-buntei-

MC:木村mitsu/Jura
やぐらステージDJ:ヤマモ/菅野カズシゲ/石井正宏/ゴリポポレコード店主
 
メインビジュアル制作&やぐらステージデコレーション:KAIHO
協賛:株式会社立飛ホールディングス、株式会社立飛ストラテジーラボ、株式会社河内屋ジェノス、サントリー株式会社、キリンビール株式会社、サントリーフーズ株式会社、アサヒビール株式会社、有限会社たるたるジャパン
運営:株式会社夏祭り
後援:立川市、立川商工会議所、J-WAVE
主催:たちかわ妖怪盆踊り実行委員会
 
公式ホームページ:https://yokaibonodori.tokyo/ 
公式Instagram:@yokaibonodori
公式X(旧Twitter):@yokaibonodori
 
問い合わせ:たちかわ妖怪盆踊り実行委員会
運営事務局:株式会社夏祭りtachikawa@yokaibonodori.tokyo Tel:042-519-3230
 
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