前回のカンパニーの思いも載せ、浦井健治らが作り上げる新たな『天保十二年のシェイクスピア』稽古場&囲みレポート
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発表から約400年以上を経た今も世界中で上演され続け、現代演劇にも絶大な影響を与えているウィリアム・シェイクスピア。その37作品を横糸、江戸末期の人気講談「天保水滸伝」を縦糸に織り込んだ井上ひさしの傑作戯曲が、2020年公演から約4年を経て上演される。
音楽・宮川彬良、演出・藤田俊太郎が再びタッグを組み、キャストは2020年公演で「きじるしの王次」を演じ、今回「佐渡の三世次」役に挑む浦井健治を始め、大貫勇輔、唯月ふうか、土井ケイト、阿部裕、玉置孝匡、瀬奈じゅん、中村梅雀、章平、猪野広樹、綾凰華、福田えり、梅沢昌代、木場勝己ら豪華な顔ぶれが集結している。
12月9日(月)の開幕を前に公開稽古が行われ、藤田の解説のもと3つのシーンが披露された。藤田は「本番まで約20日ありますから、20日後にカンパニーが舞台に立つのを想像しながら見てほしいと思います」と語る。
まず披露されたのは、佐渡の三世次が故郷に帰ってくるシーン。鰤の十兵衛を演じる中村梅雀の芝居で見るものをグッと惹きつけ、ストーリーテラーを務める隊長役・木場勝己が『天保十二年のシェイクスピア』の世界に誘う。鰤の十兵衛の娘であるお里とお文の対立が艶やかな曲とダンスに乗せて描かれるなか登場した佐渡の三世次は、暗く鋭い眼光、怪しく不気味な佇まいで存在感を放つ。短いシーンでも「悪」を見事に表現して見せる浦井に、本番への期待が高まった。
続いては、紋太一家の跡取り・きじるしの王次が数年ぶりに帰郷し、佐渡の三世次が用意した“紋太の亡霊”から事件の真相を聞くシーンが行われた。きじるしの王次が登場する華やかなナンバーで、大貫は周りを巻き込む明るさとキザな雰囲気で空気を作っていく。時折笑えるセリフを挟みながら、愛嬌のあるキャラクターを描き出していた。
最後に、宮川のピアノ演奏で、女郎屋や賭場の仕事という日常と、鰤の十兵衛の三女・お光が復讐心に燃えて故郷に戻ってくる場面が披露された。日常シーンは、どこか和やかな賭場の風景にマッチした軽やかでオシャレな楽曲が楽しい。唯月演じるお光と瀬奈演じるお文の緊迫感ある対峙、お光とおさちの演じ分けや歌唱でも魅せてくれた。
随所にシェイクスピア作品の要素が散りばめられているが、シェイクスピアを知らなくても楽しめるだろう本作。本番まで約20日の段階で満足感のある稽古を見せてくれる頼もしいカンパニーがどこまで進化するのか楽しみだ。