GOODWARP、結成13年目の1stフルアルバム『Somewhere In Between』――「どこにも属せなくたって良いんじゃないか」

2025.1.29
インタビュー
音楽

撮影=桃子

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どちらのグループにも顔を出すけれど、片方にどっぷりと浸かっているわけではないから、心のどこかで疎外感を感じてしまう。結成13年目を迎えるダンサブルポップバンド・GOODWARPが1月15日(水)にリリースした1stフルアルバム『Somewhere In Between』は、こんなどっちつかずな状態を肯定してくれる1枚だ。ギターロックにもシティポップシーンにも属せなかったと話す4人だからこそ気づけた「自分は自分でしかない」というありのままの尊さを詰め込んだ本作には、6人組ゲーム実況グループ・White Tailsへ書き下ろした「夜市」や「月光花」、「ジブンシ」を含む、全14曲が収められている。「いつでも起死回生を狙ってやり続けてきた」と語ってくれたGOODWARPが、今改めて放つ渾身の一撃。どこに位置づくかも分からなかった彼らが作り出した居場所は、彷徨う私たちも受け入れてくれる。

吉﨑拓也(Vo.Gt)

ありのままを肯定する1stフルアルバム『Somewhere In Between』

ーー1月15日(水)にバンド初のフルアルバム『Somewhere In Between』がリリースされました。色とりどりの楽曲が収められていながらも、全体を通じて「まだまだここからだ」と思わせてくれる1枚だと感じています。本作を振り返って、皆さんはどのような1枚になったと感じていますか。

吉﨑拓也(Vo.Gt):タイトルの『Somewhere In Between』は「間のどこか」という意味なんですが、この言葉は活動を続けてきた中で自分が感じたことなんですよね。シティポップのバンドからは「ギターロックだね」と言われ、ギターロックのアーティストからは「シティポップだね」と言われてきた。どちらの畑にもジャストフィットできなかったGOODWARPのどっちつかず感を良い方向に出せた1枚だと思っています。

藤田朋生(Gt.Cho):2年前ほど前に作った曲も、最近制作した楽曲も収録されているので、僕らのこの2年間のベスト盤だと感じています。この2年間は「自分たちで物事を進めていきたい」って気持ちも強かったから、ようやく1人歩きができるようになった気がしていて。地に足のついた僕らの1つの成果を見せられる1枚になりました。

ーー藤田さんとしては、ここまで活動してきた10年超はどこかでフワフワした感覚があった?

藤田:というよりも、どう思われたいかやどうやったら人気が出そうかを考えすぎていたんです。でも、この2年間は良いところだけじゃなくて、悪いところも見せて良いんだと思えた。1人1人違うのは当たり前なんだから、裸のままでいることがほかの人から見れば個性になる。そうやって自分をさらけ出すことが自分たちにやりがいにも繋がっていったんですよ。

ーー10年間の活動を経て、自分たちが自分たちのままで良いと肯定できた2年間だったんですね。コウチケンゴさん、萩原"チャー"尚史さんは、本作を振り返ってみていかがですか。

コウチケンゴ(Dr.Cho):White Tailsへの楽曲提供をはじめ、制作期間中に色々なストーリーがあったので、アルバムを通じて成長していった過程を表現できたと感じています。あとは、僕個人としてもGOODWARPに加入後、初めてここまで沢山の楽曲を収録したので成長がありましたね。

萩原"チャー"尚史(Ba):GOODWARPにとって初めてのフルアルバムということもあり、作っていく中で「本当に完成するのかな」と思ったこともあったんです。それでも一生懸命制作を進めていくうちに、想像以上に色とりどりで華やかな1枚になったんですよ。もちろん、カラフルなアルバムを目指していた部分もありましたけど、自分でも驚く作品に仕上がりましたし、14曲それぞれの重みがあるアルバムになったなと。

藤田朋生(Gt.Cho)

ーー本作はGOODWARPが12年間活動を続けてきた中で、初のフルアルバムとなります。このタイミングでフルアルバムに挑戦することを決めたのは、なぜだったのでしょう。

吉﨑:正直に言ってしまうと、2023年の10月にやったワンマンライブで「フルアルバムを作ります」と言ってしまったのがキッカケだったんですよね。もちろん、「出したいね」と話はしていたけれど、具体的に何かが決まっていたわけではなかった。でも、ワンマンに来てくれた方たちに次へと繋がる何かを見せたかったんです。だから、フルアルバムを作る約束をして、そこから実際に曲作りが始まっていきました。あとは『SINGLES』をリリースしたことも一因かな。あのアルバムはシングル曲をまとめて出すための1枚だったから、今度はきちんとコンセプトを持ったアルバムを作ってみたいなって。

ーー約束ありきで実現に至った1枚だったと。先ほど、吉﨑さんから『Somewhere In Between』にはGOODWARPがどのジャンルにも馴染めなかったことを踏まえた上での思いが込められているとお話いただきましたが、どこにも属せないって孤独で寂しいじゃないですか。それでも、「このままで良いんだ」と宣言できたキッカケは何だったんですか。

吉﨑​:GOODWARPで活動を続ける中で「自分たちって一体何者なんだろう」って思い続けてきた気持ちが、段々と変わってきたんです。やっぱり早く大きなステージに立ちたかったし、界隈が分かりやすくて仲の良いバンドたちが羨ましかった。でも、そのコンプレックスを肯定しようと思えるようになってきて。そしたら、僕らが感じてきた孤独感はバンドに限らず、誰もが感じることなんだと気づいたんですよ。だからこそ、「どこにも属せなくたって良いんじゃないか」という気持ちをタイトルに込めました。

ーーどこにも所属できないコンプレックスを抱えて、どこかに属そうと考えることもあり得ると思うんです。そうではなく、そのコンプレックス自体を肯定しようと思えた理由は?

吉﨑:コロナでライブや練習ができなくなり、GOODWARPがこの先あるかも分からない状況の中で、久しぶりにスタジオに入れたことがキッカケだった気がします。バンドで揃って音を出しているうちに、あんなに悶々としていたのにもかかわらず、帰る時には元気になっている自分がいたんです。その時、シリアスに思えた悩みやモヤモヤは意外と根拠もないし、些細なことで治るんだなと思って。自分がセッションで気分を変えられたように、音楽はそのスイッチのオンオフになり得る力を持っていると実感したんですよね。あとは、これまで抱いてきたボーカリストの自分に対する疑問が解決したことも大きかったかな。

ーーというと?

吉﨑:僕は曲を書くことが好きなタイプなので、歌っている時よりも制作をしている時の方がのびのびできる感覚があって。でも、ライブがある以上、歌わなくてはならない。それが自分の中での乖離を生んで、もっとボーカルらしくしなきゃいけないと感じていたんです。でも、先ほどお話した音楽で元気になった経験を経て、「俺は俺だ」と思い始めた。すると、自然とボーカルらしくなれた気がしたんですよね。だから、どっちに行くべきか迷っている人に対して、「そのままで良いよ」と言えるんじゃないかなと。

ーー今のお話は、先ほど藤田さんがおっしゃった「自分たちをさらけ出せるようになった」という感想と繋がっていると感じました。

藤田:まさに。コロナ禍の時は、吉﨑だけじゃなくて、それぞれが悩んでいたと思うんですよ。そういった中でお互いに相談をした際に、「お前がそう思うなら、それが答えじゃん」と感じる場面が多かった。要するに、変に格好つける必要も気にしすぎる必要もなかったんです。このことに気づけたから、そのままのGOODWARPを見せれたんだと思いますね。

White Tailsとの交流から生まれた「夜市」「月光花」「ジブンシ」

萩原"チャー"尚史(Ba)

ーー冒頭でコウチさんからも触れていただきましたが、「夜市」と「月光花」はWhite Tailsへの提供曲であり、GOODWARPを広く知らしめるキッカケになったと感じています。皆さんはこの2曲をどんな存在だと考えていますか。

チャー:この2曲に自分たちも変えられたというか、今までやってこなかった書き方に挑戦した楽曲なんですよ。これまでは吉﨑が書きたいことを歌にしていたけれど、この2曲はWhite Tailsから寄せられたテーマを受けて、制作が進んでいった。この方法は初めてでしたし、実際に上がってきた楽曲を聴いて、間違いなく良い曲になると確信しました。

ーー吉﨑さんは、White Tailsからのリクエストをどのように消化していったのでしょう。

吉﨑​:もちろん、初めてのプロセスに緊張もしましたし悩みもあったんですけど、いざ始めてみたら凄く楽しかったんです。企画書を眺めながらメロディーを考える時間が充実していたし、意外とつまずくこともなく進行できました。というのも、「売れそうな曲」や「格好良い曲」といった目標よりも正解がハッキリしているじゃないですか。テーマが明確だからこそ判断もしやすかったですし、進みたいイメージに真っ直ぐ向かえたかな。

コウチケンゴ(Dr.Cho)

ーーリード曲の「ジブンシ」もWhite Tailsが結成したバンド・ワイテバンドへの提供曲です。GOODWARPとしての楽曲をリード曲に据えることも可能だったと思うのですが、このナンバーをアルバムの顔に選んだのはなぜだったんですか。

吉﨑​:おっしゃっていただいたように、率直なところ、当初はGOODWARPとしての楽曲をリード曲にするつもりだったんですよ。でも、White Tailsから歌詞をいただいて楽曲を作ったことで、White Tailsだけじゃなくて、White Tailsの向こう側にいた僕たちをこれまで知らなかった方たちもこの曲で喜んでくれたことが嬉しかったんです。だから、1番多くの人に喜んでもらえる「ジブンシ」をアルバムの顔にするべきだなと。

ーーなるほど。「ジブンシ」はギターロックのど真ん中を行くサウンドも印象的ですが、サウンド面ではどういった要望があったのでしょう。

吉﨑​:歌詞を書いてくれたNakamuくんのリファレンスもこれぞギターロックという感じだったんですけど、それも良かったんですよね。ここまで話してきたみたいに、ジャンルに属せない感覚もあったから、ド直球のギターロックは避けがちな部分もあった。でも、このタイミングでフルスイングのギターロックをやれたのも良かったし、サウンド的に懐かしさもある分、逆にそれが新鮮に映るんじゃないかなって。

藤田:アレンジに関して言うと、Nakamuさんと一緒にスタジオに入った際に、ギターの機材を買ったことを教えてくれたんですよ。でも、僕はライブの時にその機材を使ってなくて(笑)。「きっとコピーしてくれるんだろうな」と考えていたので、その機材を活かせるフレーズも盛り込んでいきました。あとは、純粋に歌詞が良いなと。真っ直ぐに成功している人から泥臭い苦悩の込められた歌詞が出てきたことに感動したし、共感もできたんですよね。

ーー「ジブンシ」の<超えていけ 自分史上>という一節をはじめ、<きっと何かが待っている 扉開けばまだ輝いてるんだ>と歌う「EMBLEM」や<他愛ない一つ一つの先を描いていこうぜ>と綴った「HONK !」など、本作には「ここから、また始めようぜ」という思いが満ち満ちていると感じています。初のフルアルバムリリースに伴い、バンドの中でもこういった高揚感があったのだと思うのですが、いかがですか。

藤田:GOODWARPをやる上での思いは、「サーチライト」に表れていると思っていて。<でも深層心理は決まって 起死回生を狙ってる>という歌詞に支えられて、僕はバンドをやっている。いつでも起死回生を狙ってやり続けてきたし、今回フルアルバムを出すにあたって、この思いも大きくなりました。

「不完全さを一緒に噛み締めたい」
飾らないをテーマに巡る対バン&ワンマンツアー

ーー2月8日(土)には東京・渋谷clubasia、2月15日(土)には大阪・難波yogibo HOLY MOUNTAINにてワンマンライブ『今夜一緒に潜らないか』が開催されます。2024年11月のフリーワンマン『月光花!夜市!!大感謝祭!!!』以来のワンマンとなりますが、どういったライブにしたいですか。

吉﨑:おっしゃっていただいたフリーワンマンの存在が、自分にとっては大きくて。動員はもちろん、お客さんの熱量も過去最高のものだったと感じているんですよ。あのライブを踏まえて、あれを僕らのライブのスタンダードにしていかなければならないと思った。GOODWARPらしさを見せたり、お客さんとの一体感を出すことは大前提で、フリーワンマンではトークタイムも設けたんですよね。そういうわちゃわちゃ感を出せたことも結果的にGOODWARPらしかったと感じているので、このアルバムを引っ提げてさらにバージョンアップしたワンマンにしたいです。

ーー東京・下北沢MOSAiCより、『Somewhere In Between』を引っ提げてのリリースツアーがスタートしました。東名阪3カ所での対バン公演を経て、東京・大阪2カ所でのワンマン公演を控えていますが、どういったツアーにしたいですか。

藤田:アルバムリリースの次の日から始まるツアーなので、正直なところ演奏面で満足ができないこともあると思うんですね。でも、例え満足にいかなくても、今の自分のプレーを切り取るから素晴らしいものになるんじゃないかなと。だから、そういう不完全さを一緒に噛み締めたいですし、ファンの方への感謝を全身で伝えたいです。

吉﨑​:来てくれた人に「バンドやってみたい」と思ってもらえるライブをしたいなって。先日White Tailsの武道館公演にお邪魔してきたんですね。その中で僕らの曲を披露してくれた時に、彼らにしか出せない空気と熱量を感じたし、「俺も武道館に立ちたい」って思ったんです。僕らのライブでもそうやって、「何かやってみたい」「ステージに立ちたい」と思わせたいなと。

ケンゴ:5本を通じて1つの祭りみたいにしたいと考えています。1本1本を個別に考えるのではなく、ツアーを通じての成長も盛り込んでいきたいです。

チャー:僕らがGOODWARPを良くするために作り上げていくものとお客さんの思いが交わって、成長していくのがライブだと思っていて。飾らない手作り感を大事にしたい。その手作り感も含めて、GOODWARPの全てを見てもらって、「GOODWARPって楽しいバンドなんだな」って思ってもらえたら最高ですね。

取材・文=横堀つばさ 撮影=桃子

リリース情報

アルバム『Somewhere In Between』
2025年1月15日 配信リリース
 
【収録曲】
1.HONK !
2. 夜市 (ワイテルズ 「花龍列車」 主題歌 (書き下ろし)
3.SANZ DANCE
4. 君に会いたい
5. 金魚
6. 革命
7.color
8.ROMEO
9.one on one (SIB ver.) (過去に自身のラジオ番組でリスナーから歌詞を募集し制作した 1 コーラスに、 今回新たに SNS で歌詞を募集し楽曲を完成させる)
10. ジブンシ (ワイテバンド提供楽曲)
11. 月光花 (ワイテルズ 「花龍列車」 ED テーマ (書き下ろし)
12.HINT
13.EMBLEM
14. カワズ (ゴホウビのスージー (Vo,key)をピアノに招きRec)

公式サイト:https://www.goodwarp.net/

ライブ情報

-release oneman live-
2025.2.8(土)東京 渋谷 clubasia
2025.2.15(土)大阪 難波 Yogibo HOLY MOUNTAIN
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