マカロニえんぴつが果たした約束の先に、スタジアム公演に続く希望をみた

レポート
音楽
17:00
マカロニえんぴつ

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『マカロックツアーvol.19 〜いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇〜』
2025.02.04(tue) Zepp DiverCity

2020年4月1日にアルバム『hope』がリリースされた後、全国ツアーが行われる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で全公演が中止。約5年の歳月を経て『hope』の収録曲をたっぷり届けるツアー『マカロックツアーvol.19 〜いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇〜』が、全国6都市(12公演)で開催された。初日の2月3日の翌日、2月4日・東京・Zepp DiverCityの模様をお届けする。

マカロニえんぴつ

マカロニえんぴつ

ステージを覆っていた幕が左右に分かれて開き、高野賢也(Bass & Chorus)、田辺由明(Guitar & Chorus)、長谷川大喜(Keyboards & Chorus)、サポートプレイヤーの高浦''suzzy''充孝(Drums)が登場。はっとり(Vocal & Guitar)も現れると、観客の間から明るい歓声が上がった。オープニングを飾ったのは「ボーイズ・ミーツ・ワールド」。フロアで人々が一斉に掲げた掌が揺らぐのが美しい。はっとりが「楽しむ準備はできてますか?」と呼びかけて突入し、フロアの天井から吊り下げられたミラーボールの光が、盛り上がるフロアを照らし出した「レモンパイ」。観客の大合唱が何度も加わっていた「遠心」と「愛のレンタル」……アルバム『hope』の曲が深く愛されているのを再確認させられた。

「平日ですからお仕事、学校、その他の帰りだと思います。おつかれさまでした! 平日のこの開放感、好きかもしれない。人と向き合うのに疲れただろ? 今日は音楽とだけ向き合ってもらえばいいので」――最初の小休止ではっとりは観客に語りかけた。平日開催のライブではあるが、1階フロアも2階席も満杯。日常のあれこれを忘れてピュアに音楽に浸れる空間が完璧に生まれていた。「『hope』のツアーはコロナで飛んじゃったんです。がソールドアウトしていたのに。悔しい想いを抱えながら“いつかやります”と約束をしたけど、かなり時間が経っちゃったから、やらないんだろうなと思ってる人もいたかもしれない。でも、ずっと何をしててもこのツアーのことが頭の中に残ってました。Mステで階段を下りてる時も(笑)。それが雪解けるツアーですから我々としても嬉しいし、みんなも『hope』を愛して集まってくれた人だと思います。『hope』の曲であの頃の気持ちに還ったり、これからのことを一緒に考えたり。そんな素敵なツアーにできたらなと思っています」――ツアーの主旨を語るMCを経て、さらに曲が届けられていった。瑞々しいメロディがじっくりと躍動した「恋人ごっこ」。歌と演奏に身を任せるのが抜群に心地よかった「poole」。ステージの背景にメンバーたちの影が揺らめくライティングが、曲の世界と絶妙にシンクロしていた「裸の旅人」。観客の穏やかな手拍子を誘った「ブルーベリー・ナイツ」……『hope』の収録曲以外の2曲を間に挟みつつも、とても自然に連なり合っていた各曲。多彩な美メロにじっくりと浸ることができた。

はっとり(Vo/Gt)

はっとり(Vo/Gt)

高野賢也(Ba/Cho)

高野賢也(Ba/Cho)

「弾き語りをちょっとやってみようと思います」と言い、アコースティックギターを手にしたはっとり。他のメンバーたちは一旦ステージから去り、2曲を弾き語りで届けてくれた。最初に歌ったのは「たしかなことは」。爪弾くギターの柔らかな音色が、歌声を温かに彩っていた。「汚れた嘘はなぜだか本当になってしまって、自分を汚れた人間にさせていきます。あなたはきっと歌を聴くのが好きで、歌うことも好きな人だと勝手に思ってるけど、この歌をどこかで歌う時は、“嘘なき”ように」――この言葉の直後に披露された「噓なき」は、曲に刻まれている物語、渦巻いている感情をじっくりと想像させてくれた。エンディングを迎えた瞬間、ステージに届けられた大きな拍手。深く入り込みながら耳を傾けていた人々が、感極まっている様子が伝わってきた。

長谷川大喜(Key/Cho)

長谷川大喜(Key/Cho)


田辺由明(Gt/Cho)

田辺由明(Gt/Cho)

メンバーたちが戻ってきて通常のバンド編成となりつつも、引き続きアコースティックギターを手にしていたはっとり。そしてスタートした「ヤングアダルト」は、アコースティックギターver.での演奏となった。観客の歌声が随所で加わるのが楽しい。インディーズの頃から演奏し続けて、ライブの定番として浸透していった曲ならではのムードが生まれていた。「弾き語りが上手く行って良かった。昨日は「嘘なき」の歌詞が飛んじゃって、ほとんどみんなに歌ってもらったんだよね。お客さんもうろ覚えで(笑)。でも、だんだん思い出して歌ってくれて、あれはあれで良かったと思う」――前日の微笑ましい出来事に触れた後、はっとりは各メンバーを紹介。そしてデビュー10年目を迎えることにも触れながら、インディーズ時代の1stミニアルバム『アルデンテ』を出す前に渋谷Milkywayで開催した自主企画を振り返った。このイベントには、OmoinotakeやMrs. GREEN APPLEが出演したのだという。「10年経ってもやれてるのが素晴らしい。それもひとえにみんなのおかげ。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。6月には横浜スタジアムで2 DAYS。勝負なんです。みんな来てくれるよね? 今年も応援してやってください」――はっとりは、今後の活動への意欲を燃え盛らせていた。

マカロニえんぴつ

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骨太なバンドサウンドを全員で高鳴らせてから雪崩れ込んだ後半戦。「この度の恥は掻き捨て」は、やはりライブで聴くのが最高に楽しかった。起伏に富んだ展開に身を任せながら無邪気な興奮状態となった観客。曲が幕切れた瞬間に発する恒例の言葉「おつかれさまー!」が、とても明るかった。続いて「Mr.ウォーター」や「STAY with ME」も連発されて、会場内の熱気はさらに上昇。激しい手拍子がステージに向かって押し寄せた「Supernova」と「MAR-Z」。観客が掲げながら一斉に揺らした腕が、幻想的な風景を作り上げていた「然らば」。美メロがドラマチックに躍動し続ける様に息を呑まされた「青春と一瞬」……ステージから目を離せない瞬間の連続だった。

「あなたの前で『hope』の曲たちを演奏して、歌えて、まるで時間が止まったように動けずにいた曲たちが活き活きと動き出したような気がして、嬉しい気持ちになりました。あなたがマカロニえんぴつになってくれたように、最後の曲は、マカロニえんぴつが、俺たちが、俺があなたになります」という言葉が添えられて、ラストを飾ったのは「hope」。展開するにつれて少しずつ清らかな光に溢れていくかのようだったのが思い出される。ステージから迫って来る音を受け止めながら、観客の心が静かに震えているのを感じた。そして演奏を終えると、手を振ってステージを後にしたメンバーたち。惜しみない拍手を送る観客を眺めながら、彼らはとても嬉しそうだった。

マカロニえんぴつ

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このZepp DiverCity公演で印象的だったのは、『hope』を中心としたセットリストでありつつも、懐古主義的なムードとは全く無縁だった点だ。新旧問わず、あらゆる曲をフレッシュに輝かせることができていたのが、今のマカロニえんぴつであった。このツアーの各地も、おそらくそのような空間となっていたのだろう。6月14日、15日に開催される横浜スタジアム公演『still al dente in YOKOHAMA STADIUM』が大成功に至る準備は、既に万全ということなのだと思う。14日の公演はインディーズの時期、15日の公演はメジャーの時期にスポットを当てる旨が発表されている。軌跡をじっくりと辿る2日間は、絶対に見逃せないものとなるに違いない。


取材・文=田中大 撮影=酒井ダイスケ

マカロニえんぴつ

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セットリスト

『マカロックツアーvol.19 ~いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇~』
2025年2月4日(火)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
1.ボーイズ・ミーツ・ワールド
2.レモンパイ
3.遠心
4.愛のレンタル
5.恋人ごっこ
6.poole
7.裸の旅人
8.ブルーベリー・ナイツ
9.たしかなことは
10.嘘なき
11.ヤングアダルト
12.この度の恥は掻き捨て
13.Mr.ウォーター
14.STAY with ME
15.Supernova
16.MAR-Z
17.然らば
18.青春と一瞬
19.hope

リリース情報

「いま抱きしめる 足りないだけを」
3月12日発売
 
01.然らば (TVアニメ「アオのハコ」第2クールOPテーマ)
02.NOW LOADING(映画「山田くんとLv999の恋をする」主題歌)
03.前世よ、しっかり
04.ロング・グッドバイ
 
■各配信サイトはこちら
https://tf.lnk.to/Imadakishimeru

ライブ情報

『still al dente in YOKOHAMA STADIUM』
2025年6月14日(土)、15日(日)
神奈川・横浜スタジアム
開場 16:00 / 開演 18:00
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