春の京都で心ゆくまでひたる展覧会『モネ 睡蓮のとき』、 京都展限定のオリジナルブレンドハーブティー完成秘話

2025.3.27
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3月7日(金)より京都市京セラ美術館で始まった、印象派の巨匠クロード・モネによる晩年の作品を中心に紹介する展覧会『モネ 睡蓮のとき』。本展では日本初公開となる7点を含む約50点の作品が一堂に展示され、中でも2メートルを超える大画面の「睡蓮」の数々が見どころとなっている。モネが最期の時を迎えるまで心血を注いで取り組んだ作品の数々に入り込んでいくような没入感ある展示が好評を博しているのだが、もうひとつ密かな人気となっているのが京都展の会場限定で販売されているオリジナルブレンドのハーブティーだ。『モネ 睡蓮のとき』の作品からインスピレーションを得て、京都・西陣のハーブティー専門店「たま茶」が製作したこのハーブティーは、色彩豊かな花々とハーブがブレンドされその豊かな香りと味わいで展覧会の世界観を思い起こさせてくれる。そのオリジナルブレンドのハーブティー完成までのエピソードを、たま茶の西山善喬(よしたか)さん・珠日(たまひ)さんご夫妻に訊いた。

左から西山善喬さん、珠日さん

モネの作品から感じた“目に見えないものも落とし込む力”

──まずは「たま茶」を始めたきっかけから伺えますか?

珠日:私がハーブティーの専門店で働いていたんです。そこでハーブティーのブレンドも手がけていたこともあって、自宅でもオリジナルブレンドを作って個人的に楽しんでいました。

善喬:当時彼女が作っていたのが、今も店で販売している「雪肌美人」というハーブティーなのですが、飲ませてもらったらすごく美味しくて。これを自分たちだけで楽しむのはもったいないと思ったことが店を始めるきっかけになりましたね。

珠日:ブレンドティーって、例えばカモミールなど単体だと飲みにくいと感じたり、単調ですぐ飲み飽きてしまう人もいらっしゃるんです。でも複数のものをブレンドすることでそれぞれのハーブがいい塩梅に手を繋いで味の深みや奥深さを出してくれるし、香りにもバラエティーが生まれて単純に美味しくなるんです。そういったことをたくさんの方に知っていただきたいなと思って。

──ハーブティーは、“美味しい一杯”に出会うのがなかなか難しいなと感じることもあります。

珠日:そういうお話もよく聞きます。 “美味しい一杯”に出会うために私が大切だと思っているのは、良質なハーブを使うことです。古いハーブが使われていると、雑味が出たり美味しさに繋がらないと思っています。なので、たま茶では野菜や果物と同じように、食材として体に安全なハーブを厳選することを徹底しています。

──ちなみに、ご自身のブレンドにはどういった特徴があると思われますか?

善喬:彼女のブレンドティーはすごく飲みやすいなと思いますよ。

珠日:そうですね、飲みやすさと美味しさ、調和でしょうか。もうひとつ、大切にしているというと旨みかもしれないですね。

──旨み?

珠日:日本の食における独特の表現が旨みだと思うんです、ダシ文化が根付くこの国だからこそ、食の分野では大切にされている旨みをブレンドティーの中にも表現したいというか。それとやっぱりハーブティーなので機能性を意識し、美味しさはしっかりキープしたいところです。そのバランスのいいところを探りつつ、できるだけ多くの人に美味しいと感じていただけるブレンドに落とし込むかをいつも念頭に置いています。

善喬:ハーブはブレンドするからこそそれぞれのよさをもっと引き出せるところがあるんです。ただ美味しいブレンドのレシピができたとしても、ハーブ自体の出来にバラつきがあるのも珍しいことではないので、隣で見ていると彼女の中の感覚が一番頼りになるのだなと感じます。

珠日:そういう観点で言うと、使うハーブが味わいとしてひとつひとつ立ってくるのにブレンド全体として調和したひとつの味わいに仕上げるのが、私流のブレンドだと思います。そこがブレンドのカギであり、難しいところでもありますけど。店ではお客様とお話をしながら試飲をしていただいて、お好みのものを選ぶお手伝いをします。リラックスできるお茶を求めていたはずでも試飲してみたらピンとくるものが違ったりすることもあるので、体が欲するものを感じていただいて……“究極の主観”で選んでいただくことが一番ですね。

──エステやマッサージ店でアロマオイルの香りを嗅いで、心身の状態が見えるというのと似ていますね。

珠日:そうですね。そういう方法で選んでいただくハーブティーが、お客様の心身の調和にも繋がるのだなと思います。

コラボハーブティーはグッズ売り場でも販売

──現在、京都市京セラ美術館で開催中の『モネ 睡蓮のとき』ですが、京都展の会場限定でたま茶オリジナルブレンドのハーブティーが販売されています。売れ行きも好調だと伺いました。

善喬:そうなんです。僕たちも嬉しく思っています。

珠日:私は美術コースのある高校に通っていた時に模写の授業でモネを選んで描いていたこともありましたし、フランスを旅行した際もモネを観に行ったりして元々好きな画家だったので、今回のお話をいただいて本当に驚きました。これまでの人生でも触れてきたモネの作品を元に、自分がブレンドティーを作るなんて……って。

──おふたりとも、『モネ 睡蓮のとき』を鑑賞されてどんな感想をお持ちになりましたか。

珠日:私は「睡蓮」の作品の数々に描かれた光と、そこに流れる空気感までも描き出している豊かな表現力に圧倒されました。

善喬:実は京都展の前に、東京展も観たんです。今回2回目という形でこの展覧会を見たのですが、ちょっと見え方が変わって。

楕円型の壁を睡蓮の絵で覆うというモネの構想を再現した展示室

──と、言いますと?

善喬:会場が違うからか、展示の方法が違うのか、僕の心持ち……2回目だから見方の解像度が上がったのかわからないのですが、今回は描かれている睡蓮がくっきりと水に浮いているように見えました。つまり水や水面の描かれ方が素晴らしいことに気がついたというか。筆でたくさんの色を重ねて水面を描いているのですが、本来無色透明である水を有色の絵の具で魅せる表現力の素晴らしさを今回気づけたのかなと思いました。

──この展覧会の中でフィーチャーされているモネの言葉の中にも「水と反映の風景に取りつかれてしまいました」という、印象的なものがあります。

善喬:像を映し出すということに意味があるのかな。光だけでなく、色も含めたものを水に反映しているということなのかなとも思います。

珠日:水に反映している像はあくまでも像であって、実在はしていませんよね。モネは存在していないものも描き出したかったのかなと考えたりしました。それこそ空気を含めた存在していない“何か”というか。

善喬:僕らの店でも、「カスタムブレンド」という形でオーダーいただくお客様だけのオリジナルブレンドを作ることがあるんです。お客様のご要望、つまり目に見えないものをブレンドティーに落とし込むという点では、モネの作品とも共通するところがあるのかなと今思いました。

お茶を通して表現したかった、“光”

──今回の作品展で展示されている約50点の中から心に留まった3つをピックアップされて、その作品からインスパイアされたブレンドティーを3つ製作されています。それぞれのブレンドティーをご紹介いただいてもよろしいですか?

珠日:まずひとつめは、この展覧会のメインビジュアルにも使用されている日本初公開の「睡蓮」を取り上げさせていただきました。実は店で販売しているブレンドティーにも「羊の時」「陽だまりの午後」など、私がタイトルをつけているんです。お茶の内容と無関係なようでブレンドの内容とリンクさせているのですが、「睡蓮」からインスパイアされて作るこのお茶にも、はじめに「睡蓮の咲く庭」というタイトルをつけてそこから味とバランスを考えていきました。

クロード・モネ「睡蓮」1916-1919年頃 油彩/カンヴァス 150 x 197 cm マルモッタン・モネ美術館、パリ (c) musée Marmottan Monet

──ブレンドについて、詳しくお願いします。

珠日:ブレンドしたハーブを見ていただくのが一番わかりやすいと思うのですが、色を大切にブレンドを組み立てました。作品を見た時にピンク、ブルー、イエローがパッと目に飛び込んできたその光景を落とし込んだ形です。印象に残ったピンクはピンクローズ、ブルーはコーンフラワーで、そしてイエローをマリーゴールドで表現しています。

善喬:もう見た目で「睡蓮」という感じがしますよね。

珠日:ストロベリーリーフなどの派手過ぎないグリーンを表現するハーブも入れています。ハーブティーで表現できる色も自然由来の色なので、モネの作品の世界観に近いものがあるなと感じます。味わいは私が絵から感じ取った甘酸っぱさを取り入れて、フルーティーなテイストに仕上げました。3つの作品からそれぞれ趣向の異なるブレンドのお茶にしたかったので、味わいにもコントラストをつけたかったんです。それもあってまずは「睡蓮の咲く庭」を甘酸っぱくフルーティーに仕上げました。

クロード・モネ「ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出」 1897年 油彩/カンヴァス 91 x 93 cm マルモッタン・モネ美術館、パリ(エフリュシ・ド・ロチルド邸、サン=ジャン=キャップ=フェラより寄託) (c) musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB

──そして「水面に映る光」は。

珠日:こちらも日本初公開となる「ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出」という作品から製作しました。作品から感じられたリラックス感を、お茶に落とし込もうと。使われている色がとても優しくて、それに触発されて“リラックスした眠りの後の光”をイメージしました。カモミール、ラベンダー、リンデンを軸に、リラックス効果と鎮静効果が期待できるお茶になっています。先ほどの「睡蓮の咲く庭」はお湯を注ぐと赤が綺麗なお茶になりますが、こちらは黄色になるんです。色のコントラストもお楽しみいただけると思います。

クロード・モネ「藤」1919-1920年頃 油彩/カンヴァス 100 x 300 cm マルモッタン・モネ美術館、パリ (c) musée Marmottan Monet

──最後が「春のおとずれ」です。

珠日:3つめの作品は、キャンバスに溶け込むように描かれた藤の美しさに目を奪われた「藤」を選ばせていただきました。この展覧会も春の京都が舞台ですし、春をイメージしていただけるものにしたかったんです。実はこの「春のおとずれ」は、店でも販売しているお茶なんです。花粉症やアレルギー症状の緩和が期待できると、特に春に人気で。ネトルやエルダーにほんのりとミントを加えたすっきりとした味わいをお楽しみいただけると思います。3つに共通して表現したいと思ったのは、光です。作品を見てお茶を飲んで、作品でも表現されていた光をどこかに感じていただけたら嬉しいですね。

──それらのオリジナルブレンドティーを、ティーバッグ専用に製作されたのも大きな工夫点ですよね。

善喬:はい。店ではリーフで販売しているのですが、今回はできるだけ手軽にハーブティーを楽しんでいただきたいと思ったのでティーバッグ仕様にしています。

珠日:大きなポイントは、ティーバッグでも美味しく飲んでいただけるように工夫していることです。市販のティーバッグのハーブティーは、ハーブが粉々になるほど細かくなっていることが多いんです。なので今回はお茶の繊細な香りや味わいをしっかりと感じられるように、綺麗にカットしたハーブと、カットをせずそのままのハーブを混ぜてティーバッグに詰めています。そうすると見た目もとても綺麗なんですよ。

善喬:かなりスペシャルなものができたなという自負はあります!

──そんなスペシャルなお茶だからこそ、正しい淹れ方でより美味しく楽しみたいなと思うのですが、淹れ方のポイントはありますか?

珠日:お湯がぬるいと栄養や味、香りも出にくいので、熱湯をご準備ください。しっかり沸騰したお湯を、少し落ち着かせたくらいの温度(95~98℃)がベストです。カップにティーバッグを入れて、そこにそっと熱湯を注ぎ入れてください。そこから3分蒸らすのですが、ポイントはそこにフタをすることなんです。

──フタ!

珠日:カップの中に香りと美味しさをギュッと閉じ込めるイメージです。ハーブティーは香りも栄養や成分のうちのひとつなので、余すことなく楽しんでいただくならぜひフタをしてみてください。フタを開けると内側に水滴が付いていると思うので、それもしっかりカップに戻すとよりいいと思います。最後にティーバッグを軽く揺らして取り出していただくと、味が均一になって美味しいですよ。

取材・文=桃井麻依子 撮影=川井美波(SPICE編集部)

商品/店舗情報

たま茶  モネ 3種のオリジナルブレンドハーブティー
<3種のブレンドハーブティー 各2包ずつ・計6包入り>
価格:2,300円
「睡蓮の咲く庭 」 色彩豊かな花々が華やかで、甘酸っぱくフルーティーなテイスト。
「水面に映る光 」 カモミールやラベンダーがやさしく香る、ほっとひと息つける一杯。
「春のおとずれ 」ネトルやエルダーにほんのりミントを加えた、すっきりとした味わい。
※イープラスにて、京都展限定ハーブティー付券を販売
※京都市京セラ美術館の展示会場特設ショップ、ミュージアムショップにて、会期中のみ販売

たま茶
2013年、ブレンドハーブティーの専門店として西陣にオープン。「雪肌美人」をはじめ、定番のオリジナルブレンドハーブティーを15種、季節によって変わるオリジナルハーブティーを5種、常備ラインアップ(50g 2000円前後〜)。現在は春のハーブティーが店頭に並んでいる。
住所:京都市上京区上長者町通日暮東入ル須浜東町448
営業時間:12:00〜18:00
定休日:日・月曜休
電話番号:075-201-3548

イベント情報

『モネ 睡蓮のとき』
会期:2025年3月7日(金)〜6月8日(日) ※月曜休館、ただし4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は17:30まで
会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1F・南回廊1F
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
交通:地下鉄東西線東山駅より徒歩約8分

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講師:山上やすお(博物館学芸員資格保有/アート系ユーチューバー/海外旅行添乗員)
日時:4月2日(水)14:00~15:30
場所:京都市京セラ美術館 講演室(本館地下1階)
定員:80名(要購入・先着順)
料金:鑑賞券付き 7,000円(税込)※既に鑑賞券をお持ちの場合は4,700円(税込)
販売場所:イープラス https://eplus.jp/sf/sys/comingsoon.html

主催:マルモッタン・モネ美術館、読売テレビ、読売新聞社、キョードーエンタテインメント、京都市
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
特別協賛:大成建設
協賛:第一生命グループ、光村印刷
協力:日本貨物航空、NX 日本通運、FM802、FM COCOLO、αSTATION FM KYOTO
企画協力:NTVヨーロッパ
入場料:当日券一般2300円 大学生・高校生1700円 中学生・小学生1000円/数量限定スペシャル 京都展限定ハーブティー付き4200円
※未就学児無料
※障がい者手帳等をご提示の方は本人及び介護者1名無料
学生料金でご入場の方は学生証をご提示ください
※入場券の変更・払戻・再発行・転売不可【日時予約について】本展は予約優先制です。通常時は予約がなくてもご入場いただけますが、混雑時には予約のない方は入場をお待ちいただく場合がございます。
※無料の方、招待券をお持ちの方は予約不要です
お問い合わせ:075-771-4334(京都市京セラ美術館)
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