前代未聞のアクシデントが発生!? 高島健一郎が語る『プリンス・ガラ+』~リアル・トラウム×Budo×追川礼章、初の九州・福岡公演へ
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IL DIVOに始まり、日本でもLE VELVETSなど多くのフォロワーを生んできたクラシカル・クロスオーヴァーの男性ヴォーカル・ユニット。そんな音楽シーンの潮流の中で、東京芸術大学を卒業した同門の声楽家たち4人が集まって結成されたREAL TRAUM(リアル・トラウム)は、Bunkamuraオーチャードホールでの公演を完売で終えたばかりであるが、そのメンバーを軸としながら、交流のあるピアニストたち(Budo・追川礼章)が参加してつくりあげるニュータイプのコンサート『プリンス・ガラ+』の初回公演が2025年3月1日に岐阜県の下呂で開催された。今回は、その模様をお伝えしながら、近づく福岡公演について下呂には参加できなかったリーダーの高島健一郎に話を聞いた。
『プリンス・ガラ』というコンサートは、REAL TRAUMデビュー前の2023年3月に、高島健一郎の発案で堺裕馬と鳥尾匠海とピアニストの藤川有樹で行われ、その日にミュージカル本番日だった杉浦奎介がアンコールのみに加わって、6月のREAL TRAUM結成を宣言した、グループにとっても記念すべき公演であったはずで、その『プリンス・ガラ』から『プリンス・ガラ+』へはどんなコンセプトのシフト・チェンジがあったのだろうか? そのあたりからまずは話を聞いてみた。
――下呂の『プリンス・ガラ+』ですが、元になった『プリンス・ガラ』を始めた高島さんが参加されないままでのスタートでしたが、そのあたりはどのような事情があったのでしょうか?
昨年あたりから、福山でのお話もそうでしたが、有難い事にリアル・トラウムというグループを知っていただいた方から自分の街に来て欲しいというオファーをいただくようになりました。ただ、メンバー各々の活動も充実してきてなかなかお受けすることがかなわずにいました。ファンの皆さんは事情はうすうす感じていただいていると思いますが、僕自身も年末からドイツ44都市での『メリー・ウィドウ』のツアーをやり遂げた直後に、リアル・トラウムのオーチャード公演、平行してミュージカル『タリータウン』の稽古もスタートして、そのまま3月末まで本番というスケジュールでした。
岐阜県の下呂のホールの方からはそれでも3月末の期内までに何とか実現できないかと熱心に相談をいただいたので、杉浦くんのいない中、実験的に企画したプリンス・ガラを発展させた形で考えてみないかとプロデューサーから提案をしてもらったので、メンバー全員が参加できない時や自分たちがまだあまり知られていない都市での挑戦の企画として、『プリンス・ガラ』の発展形として『プリンス・ガラ+』として、やっていけるといいかもなと考えたのです。『プリンス・ガラ』や『オーチャード・ガラ』との違いは、リアル・トラウムの魅力を知ってもらいながら、同時にピアニストの2人の魅力も知ってもらい、音楽の輪がどんどん広がっていくようなシリーズにしたいです。具体的には追川くんのYouTubeチャンネルで一番人気の「リベルタンゴ」を聴いていただいたり、Budoくんの超絶技巧の「白鳥」、そしてお2人での2台ピアノでの新しい挑戦などです。
――他のメンバーから下呂公演の話は聞かれましたか?
もちろん聞きました。Budoくんが自分のYouTubeチャンネルや「目で知るクラシック」のショート動画でもアップしてくれていますが、前代未聞の停電事件が発生したので、メンバーやスタッフからも報告がありましたよ。
――ホール含めてその周辺エリアの700戸だけが停電したとうかがいましたが、あれは、皆さん驚かれたんでしょうね。
スタッフも含めて全員初めての経験だったので大慌てだったようですね。僕も初めて知りましたが、そういう時には災害対応も含めて客席の電源だけが非常用の別電源でちゃんとつくようになっているんですね。そのことに気付いて1分もしないうちに、それを立ち上げてなんとか演奏できる環境を作っていただいたホールスタッフさんのファインプレーでしたね。
【大事故】演奏中に大停電!混乱のなか弾き続けるピアニストの勇姿を全てお見せします【ラフマニノフ:ピアノ協奏曲】
――お客さんの反応はどうだったのでしょうか?
アンケートを見たメンバーたちの話によると、停電になって復電してしばらくするまではもちろんどうなることかとハラハラドキドキされたようですが、客席照明だけでも回復して、Budoくんと追川くんの2人が熱演を続けているうちに、普通の公演にはない興奮が、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第3楽章のクライマックスとあいまって生まれたようでしたね。停電は前半の最後の曲だったのですが、後半も停電はそのままでしたが、全員一致でステージの照明もない状態で、杉浦君の得意なガーシュイン、堺君の十八番の「闘牛士の歌」、鳥尾君のパッションが活きる「グラナダ」などのソロ曲でも盛り上げ、「フニクリフニクラ」こと「鬼のパンツ」でお客様も停電のことを忘れるくらいに楽しんでいただけたようです。
――災い転じて福となる、忘れられない公演になったんですね。
普段以上の結束力や一体感は演者もお客様も感じたようですね。ホールの皆さんからも是非このメンバーで高島さんも加えてまたご一緒しましょうと大変有難い言葉もいただきました。
――高島さんも加わってのリアル・トラウム全員での『プリンス・ガラ+』福岡公演がますます楽しみになりました。
リアル・トラウムとしても初めての九州・福岡公演になるので、どんな新しい出会いがあるのか、どんなステージになるのかとても楽しみですし、みんなで福岡に行くのも楽しみです。やっぱり仲間と遠征に行くのはワクワクしますね。実は僕はまだ九州には行った事がなくて、初の九州にコンサートで行けるなんて本当に幸せです。停電の再発はないことを祈りたいですが(笑)、停電で培ったチームワークで下呂以上の熱演と感動をお届けしたいと思います。
文=神山薫