What’s FAVOY ~ルーツと今を紐解き“ふぁぼい”を知る~ 第3弾:缶缶

2025.4.9
インタビュー
音楽

缶缶


『FAVOY』ー それは細分化されたネット音楽を網羅するために立ち上がったプロジェクトである

その第1章となるライブイベント『eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-』が、2025年8月7日(木)・8日(金)にZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催される。
イベント名である『FAVOY』とは、FavoriteをFaveと略して推しと解釈する海外の若者文化に、2010年代に日本のSNSで流行した「ふぁぼる(いいねを押す)」を掛け合わせた「ふぁぼい(推せる!いいね!)」という造語。インターネットを超えリアルで推しを実感し、新たな推しとの出逢いに繋がるきっかけになってほしいという意味が込められている。

SPICEでは本イベントの開催に向けて、出演者であるSou、超学生、缶缶、DAZBEE、水槽、Empty old City、キービジュアルを担当したイラストレーター・萩森じあにインタビューを実施し、バイオグラフィを紐解く。
第3弾となる今回は、缶缶が登場。活動の原点やネットカルチャーと触れあうことになったきっかけ、いまの“ふぁぼい”など、たっぷりと語ってもらった。


――2018年の5月に動画投稿を開始し、2025年に活動7年を迎える缶缶さん。そもそもネットカルチャーと触れあうことになったきっかけ、またこの活動を始めるきっかけになったことを教えてください。

高校のとき、ニコニコ動画に出会ったんですよ。それまでネットカルチャーに触れる機会があまりなくてよくわかっていなかったんですけど、高校に進学してできた友達がネットカルチャーが大好きな子で、ニコニコ動画を教えてもらって。そこから一気にハマったんです。

――主に夢中になったのは「歌ってみた」動画だったのでしょうか。

音楽はもともと好きだったので歌い手さんやボカロPさんの音楽系動画はもちろんなんですけど、ネタ系の動画とか実況とか、毎日いろいろなジャンルの動画を観漁るようになりました。

――日々楽しい発見があって。

そうなんです。それで、学校に行ってそのネットカルチャー好きの友達と「あの動画いいよね」って盛り上がったり情報交換をしたりするっていう。一気に世界が広がったような感覚がありました。

――先ほど「もともと音楽が好きだった」とおっしゃっていましたが、どんな音楽が好きだったのでしょうか。

母親が以前音楽に関わる職業に就いていたこともあって、歌がすごく好きなんです。その影響で、幼い頃から洋楽を聴くことが多かったですね。

――将来は歌う人になりたい、という夢を抱いていたりもしたのでしょうか。

物心ついた時から歌が好きで。保育園で将来の夢を聞かれたことをきっかけに、ぼんやりと大人になったら歌う人になりたいと思っていました。

――すると、ネットカルチャーとの出会いは大きな転機にもなったのではないでしょうか。自分も「歌ってみた」に投稿してみたいと思うようになりそうですよね。

まさにそういう感じで、実は高校生のときに“缶缶”とは違う名義で動画投稿したことがあるんですよ。自分でレコーディングして、自分でその音源いじって、自分で動画と合わせて。1曲くらい投稿しただけで長続きはしなかったんですけど、それが今の活動につながる第一歩だったと思います。

――振り返ると、どんな衝動に突き動かされてその第一歩を踏み出したのでしょう。

きっかけは、「歌が好きならやってみたら?」という感じの、さらっと友達から言われたひと言なんですよ。そのタイミングでたまたま親にパソコンを買ってもらって、これはもうやるしかないんじゃね!?って勢いづいて(笑)。当時ちょうどバイトを始めたタイミングでもあったので、稼いだバイト代で録音機材を買って、拙いながらも自分で「歌ってみた」動画をつくって投稿してみたんです。ただ、その当時軽音楽部に所属していた自分は、ひとりで動画投稿作業を続けるよりも友達と実際に一緒にバンドでライブをするほうが楽しくなって、動画投稿はやめて観る専になっちゃいました。

――そこから、どんな経緯で“缶缶”さんとして動画投稿することになったのでしょうか。

やっぱり自分も音楽をやりたいなとは思いつつものらりくらりと過ごしていたんですけど、とあるきっかけで現在のチームメイトであるボカロPのbizさんと出会いまして。「やってみない?」というさらっとした感じで誘われたんですよ。名前は高校時代のあだ名由来だし、アイコンはフリー素材の鯖缶のイラストだし(笑)、とりあえずやってみるか的な本当に軽いノリで始めました。

――いざ活動を始めてみてどんなことを感じたか、憶えていますか?

自分が投稿した動画に対して反応があるのが、まずはなによりもうれしかったんですよね。初投稿したときの緊張感とか、その後自分が思っていた以上にいろんな人からコメントをしてもらったこととか、結構すぐに1000回再生いったこととか、今もすごくよく憶えているし、これからもずっと忘れられない思い出です。

――初投稿にしてすぐに1000回再生!

それはもう、単純に運がよかったというか、タイミングがよかったんだと思うんですけど……。

――30日間連続「歌ってみた」投稿という驚きのチャレンジも注目を浴びました。

我ながら常軌を逸しているなっていう感覚はありました。1日に3曲レコーディングして、録り終わったあとにマイクが逆だったことに気づくっていう予想外のハプニングもあったりしながらなんとか乗り越えましたけど、もう一度やれって言われたらできないですね(笑)。

――(笑)。そもそも、好きじゃないとそこまでできないですよね。

自分は飽き性でだいたいのことは長続きしないんですけど、唯一歌だけは小さいころからずっと大好きなんですよね。活動を始めてから7年、小学生のときから聴いてくれていたリスナーさんが今大学生になっていたりして、感慨深かったりもします。

――投稿すればするほどたくさんの反応があってリスナーさんが増えていく、それもやりがいにつながりそうです。

やっぱり、そういう反応とかリスナーさんの存在は活動のモチベーションになるし、好評であればあるほどやる気が出ますね。

――リスナーさんからの言葉で気づかされることもあったりして?

ありますあります。コメントって肯定的なものばかりではないんですけど、否定的なコメントが必ずしも悪いというわけでもなくて、ハッとさせられることもあるので。自分では気づいていなかった良さを教えてもらえたりもするし、リスナーさんのコメントは常に参考にさせてもらっています。

――さまざまな感じ方を受け容れる許容力・柔軟性があるのですね、缶缶さんは。

なんだよ!って思うことも、やっぱり時にはあるんですよ。でも、自分だってなにかに対して必ずしもポジティブな感情を抱くとは限らないわけで、あなたはそうなんだねって割り切るようにしています。

――活動を始めて7年、自身で感じる変わったこと、変わらないことは?

大きく変わったのは、歌との向き合い方ですね。 活動を始めて最初の1年くらいはただ楽しい、自分は歌いたいから歌うっていう気持ちが強くて。もちろんそれは大事なことなんですけど、2年目くらいからはこの楽曲はどういう楽曲なんだろう、この曲のよさを引き出すためにはもっとこういうアプローチが必要だよな、とかそういうことを考えるようになったんですよ。聴いてくれる人の数が増えれば増えるほど、よりよいものを届けたいっていう気持ちが自然と大きくなっていったのかなって。変わっていないところは……音楽が好きっていう気持ちですかね。うん、それはずっと変わらないです。

――飽きてしまったり、惰性に流されたりしてしまうことはないのでしょうか。

歌に関してはないんですよね。小さいころからずっと歌が好きだし、呼吸するのと同じくらい、自分にとっては歌うのが当たり前のことというか。

――歌うことが天職、なのですね。

そうだったらいいなって思います。でもやっぱり、自分はいろいろとタイミングがよかったんですよ。

――先ほどもそうおっしゃっていましたけど……運も実力のうち、とよく言いますから。

いえいえそんな……自分は本当に周りの人に恵まれているし、自分ひとりではきっと続けられなかったことだと思っていて。そういう人たちと出会えたこと、タイミングにただただ感謝しています。

――活動に際して、もっとも大事にしているのはどんなことなのでしょうか。

まず自分が楽しめているかどうか、ですかね。自分が楽しんで活動していないとリスナーさんに伝わると思うし、一緒に作ってくださるクリエイターの方たちにも楽しんでもらってこそいい作品が生まれると思うし。心から楽しめているかどうかが一番大事かなと常々思っています。

――そうすると、缶缶さんもクリエイターさんもリスナーさんも全員Win-Win-Win。いいことしかありませんね。

そうなんですよ。みんなでまるっと楽しめるのが一番いい形だと思います。

――時間的にだとか体力的にだとか、楽しめなくなさそうな気配が漂ってきたときの缶缶さん的な対処法はなにかあるのでしょうか。

もちろん苦しいことなんて山ほどあって、なんでもっとうまく歌えないんだろうって自分を責めることもあるんですよ。でも、そういう苦しさを乗り越えた先にもっと強くなれている自分がいることはわかっているので。苦しいときは、今を見つめすぎないように、その先を見るようにしています。

――成功体験を積んできた自分を信じて。そんな缶缶さんにとって、他の方の作品やライブで印象に残っているもの、ことはありますか?

一番印象に残っているのは、煮ル果実さんのライブですね。作品への愛と熱量がひしひしと伝わってきて、終盤はボロ泣きしてしまったんですよ。これまで楽しんだライブはたくさんあったんですけど、あんなに作品への愛とパワーを感じて感動したライブは生まれて初めてで。観ている人にパワーを感じてもらえるようなライブを自分もしたいなってそのときにすごく強く感じました。

――大きく心を動かされたのですね。

あのときは本当にえぐかったですね。すごく感銘を受けました。その後、1stアルバム『ROAR』で「バビルサ」という曲を提供していただいたんですけど、夢みたいな話だなってあらためて思います。

――缶缶さんが感銘を受けたみたいに、この夏缶缶さんが出演されるイベント『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』もまた、誰かにとっての特別な記憶になることでしょうね。多様性に富むネット音楽を一挙に楽しめるライブイベントを目指し、デジタルネイティブ世代の若者にとって画面を超えてリアルで“推し”に会える場になってほしい、という意図で企画された『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』。缶缶さんはどんな期待感を抱いているのでしょうか。

今ってサクッとスマホで推しの動画を観ることができちゃうから、現場まで足を運ぶっていうことのハードルが以前よりも高くなってしまっている気がしていて、実際に現場に足を運ぶ人って相当好きな人だったりすると思うんですよ。でも、ちょっと気になったから行ってみようかなっていうくらいカジュアルにラフに生の推しに会えるイベントに来てほしいし、目の前にいるからこそ感じ取れる推しの魅力だとか体を突き動かすような音楽の迫力だとか、日常を忘れるような楽しさがそこには存在しているので。『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』はまさにそれを肌で感じられる場になると思うし、一も二もなく「絶対出たいです!」ってbizさんに言いました。

――共演されるのは、Souさんと超学生さん。超学生さんとは2022年8月投稿の「ドロシー」でコラボされていますよね。

そうなんです。すりぃさんに提供いただいた楽曲でコラボさせていただきまして。そのときの事前ミーティングだとか動画公開後の配信でお話させてもらってはいるものの、実は直接お会いしたことはなくて今回のイベントが初対面の場になるので……「いつも聴いてます!」という感じでめちゃめちゃ緊張しちゃいそうです(笑)。Souさんとは完全にはじめましてなんですけど、第一線にずっといらっしゃる大先輩ですから。もう床に這いつくばりながら「今日はよろしくお願いします!!」ぐらいの気持ちでお会いすることになると思います(笑)。

――先日、Souさんに『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』についてのお話をうかがったときに、缶缶さんについて「突如ネットに現れて30日間連続で「歌ってみた」をあげたっていう、それがとにかく衝撃的で僕の中ではありえない人。歌声がパワフルで自分の歌い方が確立されているめっちゃかっこいいなと思う方です」とおっしゃっていました。

え!?……あのSouさんにそんなふうに言っていただけるなんて恐縮です、震えます、ありがとうございます! 『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』2日目に出演される水槽さんはプライベートで一緒に遊びに行ったりするくらい仲良くさせていただいているんですけど、Empty old Cityさん、DAZBEEさんははじめましてになるんですよ。それから、今回のイベントのキービジュアルを担当される萩森じあさんは、2024年10月投稿の動画「青染」のイラストを描いていただいた方。だいぶ人見知りしちゃう人間なんですけど、この機会にみなさまにご挨拶させていただきたいと思っております。

――リスナーさんだけでなく、ステージに立つ人、関わる人もたくさんの刺激を受ける場所になりそうですね。

そうなると思います。あと、こちらからするとライブってリスナーさんが本当に存在していたんだ!って実感できる場所なんですよね。目の前にいるリスナーさんの反応を思いきり楽しみたいです。

――今後の活動に目を向けると、挑戦してみたいことや目標はありますか?

これまで以上にライブに顔を出していきたいなと思っています。どこでも聴けるのが音楽の強みではあるんですけど、やっぱり生の音楽の威力は凄まじいので。「缶缶のライブやばいらしいよ!」って口コミでどんどん広がるようなライブをたくさんしていきたいです。ネットでの発信に関しては、オリジナリティのある作品をもっと出していきたいし、MVを自分で作ってみたいなという気持ちもあります。

――創作意欲がどんどん湧き出ているのですね。

そうなんですよ、どんどんあふれ出ていて。そのためにはいろいろと練習を積み重ねていかなきゃいけないわけですけど、折れずにやっていこうと思います。

――今後ネットカルチャーがどうなっていくんだろうだとか、その中で自分はどうなるんだろうだとか、そんなことに想いを馳せたりもするのでしょうか。

いつかは自分がひとつのムーブメントを作れるようになりたいなというのは活動している身としてはやはり思ったりはしつつ……ネット民のひとりとしてネットカルチャーを楽しみ続けたいですね。

――そこで自分が発信していくことはライフワークでもあり。

自分にとってネットカルチャーはもはや生活から切り離せないものだし、どんな形であれずっと続けていきたいと思っています。

――可能性がどこまでも広がっていくネットカルチャーの世界に憧れて、“自分もインターネットカルチャーの作り手になりたい”と思う人たちに向けて缶缶さんが伝えたいことは?

なにかになりたいって思っているなら、まずは勇気を出して一歩踏み出してほしいです。そして、一歩を踏み出したあとに大事なのが続けること。踏み出すより続けることのほうが難しくて、それこそいいことばかりではないしへこむこともありますけど、それでも“好き”という気持ちが残っているなら折れずに続けてほしいなと。立ち上がるのに時間がかかってもいいし、立ち上がることに意味があるし、そういう経験もその人が生み出すものの力になりますから。あとは、とことん楽しんでください!ということを伝えたいですね。素敵な仲間はどんどん増えていってほしいので、新たなクリエイターの誕生を心待ちにしています!

――最後に、ジャンルを問わず今の缶缶さんの“ふぁぼい”(推し)を教えてください。

いくつか挙げてもいいですか? まずはボカロPのあさぬこさん。最近はあさぬこさんの曲にドハマりしてずーっとリピートして聴いています。あと今の推しのアイドルはXG。メンバーそれぞれのスキルが高くてパフォーマンスもアートワークも大好きで、新曲が出たりなにかの番組に出たりするたびに沸いています。ライブは人気すぎてが取れないので、Xで流れてくるライブ映像を指をくわえながら観漁っています。芸人さんにも推しがいて、マユリカさん大好きです。YouTubeに上がっている動画は全部観て、ポッドキャストも♯1から全部聴いています。あと漫画も推しがあって、『進撃の巨人』はもう自分の中で殿堂入りしていて、ここ3年くらいは『呪術廻戦』にドハマり中です。ちなみに、『進撃の巨人』ではリヴァイ、『呪術廻戦』では両面宿儺が推しです! 強い人が好きなんです。推しがたくさんいてすみません(笑)。

――素晴らしいです(笑)。缶缶さんの推したちを知っていけば、缶缶さんというアーティストの解像度も上がるかもしれませんね。

もしかしたら、なにか掴んでもらえるかもしれませんね(笑)。缶缶だけではなく、缶缶の推しもみなさまよろしくお願いします!


取材・文=杉江優花

イベント情報

eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-
会場:Zepp Shinjuku(TOKYO)
開催日時:
2025年8月7日(木)     17:15開場/18:00開演
2025年8月8日(金)     16:30開場/17:15開演
出演(五十音順):
2025年8月7日(木) 缶缶/Sou/超学生
2025年8月8日(金) Empty old City/水槽[LIVE SET]​/DAZBEE(ダズビー)
U-18限定通し券 9,800円(税込)SOLD OUT/1日券 6,900円(税込)
主催/企画制作:イープラス
制作協力:YUMEBANCHI(東京)
 
【公演に関するお問い合わせ】
https://eplus.jp/favoytokyo2508078/

 
【公式リンク】
公式サイト:https://eplus.jp/favoy/
Instagram:https://www.instagram.com/favoy_eplus/
X:https://x.com/favoy_eplus

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