What’s FAVOY ~ルーツと今を紐解き“ふぁぼい”を知る~ 第2弾:Sou

2025.4.8
インタビュー
音楽

Sou

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『FAVOY』ー それは細分化されたネット音楽を網羅するために立ち上がったプロジェクトである

その第1章となるライブイベント『eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-』が、2025年8月7日(木)・8日(金)にZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催される。
イベント名である『FAVOY』とは、FavoriteをFaveと略して推しと解釈する海外の若者文化に、2010年代に日本のSNSで流行した「ふぁぼる(いいねを押す)」を掛け合わせた「ふぁぼい(推せる!いいね!)」という造語。インターネットを超えリアルで推しを実感し、新たな推しとの出逢いに繋がるきっかけになってほしいという意味が込められている。

SPICEでは本イベントの開催に向けて、出演者であるSou、超学生、缶缶、DAZBEE、水槽、Empty old City、キービジュアルを担当したイラストレーター・萩森じあにインタビューを実施し、バイオグラフィを紐解く。
第2弾となる今回は、Souが登場。活動の原点やネットカルチャーと触れあうことになったきっかけ、いまの“ふぁぼい”など、たっぷりと語ってもらった。


――2023年で活動10周年を迎えたSouさんですが、そもそもどんなきっかけがあってネットカルチャーと触れあうことになったのでしょうか。

小学生のころ、ニンテンドーDSでゲームをする延長で、『うごくメモ帳』というソフトで遊んでいたんですよ。タッチペンを使って何枚も絵を描いて再生させると、パラパラマンガのようなショート動画をつくることができて。たぶん、それがネットカルチャーと出会ったきっかけだったと思います。ニコニコ動画の文化だったり流行っているものが流れ込んできたりする中、本格的にアニメーション作品を描いている人もいれば、面白動画をつくっている人もいたりしましたね。僕は、好きな漫画のアニメキャラ描いてみたり、棒人間の戦い(笑)みたいなショートアニメをつくってみたりしていました。

――それに対して、反応を得られたりもしたのでしょうか。

「いいね」みたいな「スター」を投入ボタンというのがあったんですよ。アカウントごとに1日に送れるスターの数が決まっていたんですけど、そういう制限がある中で自分にスターを送ってくれる人がいるっていうのはすごくうれしいことでした。今思えば、小4くらいのころのその体験がインターネットでの投稿活動の始まりかもしれないですね。その後、ニコニコ動画のIDを使ってスマートフォン向けの音声コミュニケーションアプリ『ニコルソン』で歌ったり生放送をしたりするようになりました。

――歌うことは小さなころから好きだったのでしょうか。

家族みんな音楽好きで、物心ついたころから音楽が身近にあったからか、自然と歌うことも好きになっていたんですよね。で、『ニコルソン』では知り合った仲間とコメントを通じてしゃべるのがただただ楽しかったんですけど、サービスがすぐに終わることになってしまって。居場所を探して仲間たちがニコニコ動画の「歌ってみた」を始めて、その流れに乗って僕も歌を投稿し始めたんです。

――「歌ってみた」を投稿し始めてみて、最初のころどんなことを感じたか憶えていますか? 

『うごくメモ帳』のスターもうれしかったけど、自分の歌に対していろんなコメントをもらえるっていうことにすごく感動しました。

――コメントに気づかされることもあったりしたりとか。

それもありますね。じゃあ次はこういう曲を歌ってみようとか、こういう歌い方をしてみようかなとか、「Souくんにこの曲合いそう」と言ってもらって新しく曲を知ったりとか。

――活動がどんどん楽しくなりそうですね。

まさにですね。リアルタイムでインターネット上に何かを発信するって普通ないし、普段の生活では会うことはないたくさんの人たちに自分の歌や言葉が届くことに対しての緊張感、不思議な感覚もあったりするんですけど、それも含めてハマっていったんだと思います。

――住んでいる場所も年齢も職業もバラバラの人たちが同じ時間、感動を共有できたりもするわけですもんね。やっぱり、そこがネットカルチャーの面白さでしょうか。

そうなんでしょうね。生放送なんかしていると、不思議な一体感が生まれたりしますもん。そういうワクワクが、活動を始めたときからずっと続いているんですよ。ほかにここまでワクワクを得られるものってなかなか見つけられないし、だから10年以上続けてこられているんだと思います。

撮影=川崎龍弥

――そんなSouさんが、これまでの活動で変わったなと感じること、ここは変わっていないぞと思うところを教えてください。

基本的にはあまり変わっていないはと思うんですけど……昔よりはただの趣味ではなくなってきたかもしれませんね。もちろん、活動は自分にとって好きなこと、楽しいことではあります。でも、やっぱり応援してくれる人の期待に応えたいという想いもあるし、結構いろいろ考えることが増えたかなという気はします。

――責任感のようなものが芽生えているというか。

そうですね。聴いてくれる人たちの気持ちも、僕は大事にしたい。と同時に、初心を忘れずにいたいとも思うんです。それは“変わらない”ということにつながるんですけど、やっぱりボーカロイドだったり「歌ってみた」とかの文化に対しての好きな気持ちを変わらずに持っているし、それはこれからもきっと変わらないんだろうなって。

――その上で、Souさんが活動に際してもっとも重んじているのはどんなことなのでしょうか。

好きな気持ちもそうだし……最近のインターネットカルチャーってとんでもない速度で消費されていくから、それに負けないように活動を頑張る!っていうタイプの人もいると思うんですけど、僕が高頻度に投稿しようと思ったら全部に熱を注げないというか、どんどん薄まっていっちゃう気がして。だったら自分は流されずに、時間をかけて本当にこれだ!っていうものを届けたいとは思っていますね。

――周りに流されず、生み出すものに関して一切妥協しない。そういう信念があるわけですね。

それこそ、最近のSNSはたくさん投稿しないとAI選別でおすすめに出してくれない、だったら自分の考えをねじ曲げてでもやらなきゃっていう焦りを覚えちゃうような大変な時代になってきているじゃないですか。でも僕はもう、そんなのは知らん!って思っています。

――自分の芯を持つ、というのは大事なことですよね。ちなみに、他の方の作品やライブで印象に残っているもの、ことはありますか?

同じ界隈で言うと、ライブイベントの『ETA』ですね。確か2014年くらいの開催だったと思うんですけど、歌い手やボカロP、ゲーム実況者がたくさん出るコンピレーションライブみたいなもので、「歌ってみた」は知っていたもののまさか自分が活動をすることになるなんて思いもしなかったころ、友達に連れられてたまたま観に行ったんですよ。まだ“歌い手”が今みたいに一般的な存在ではなかった当時、さいたまスーパーアリーナは満員で、出演者の方々のパフォーマンスにしても会場の熱量にしても圧倒的で、これはすごい世界だなって感じて。あの衝撃、今も鮮明に憶えています。

――いつか自分もあのステージに立ちたいとは……

いやいや、そんなことはまったく思わず、ただただすげぇ!って感動していただけです(笑)。

――そんなSouさんが、今では大きなステージに立ち、たくさんの人に推され憧れられる人になっているってすごいことですよね。

あまり自覚はないんですけど……「学生のころよくSouさん聴いてました」とか「Souさんがきっかけで自分も歌を始めました」とか、ありがたいことに言ってもらうことが結構あるんですよ。気づけばそっち側になったんだなぁっていう感慨深さは確かにありますね。

――そう考えると、Souさん出演のイベント『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』もまた、のちのち語られるイベントに、さらには誰かが新たに一歩を踏み出すきっかけになりそうです。

そうですね、そうなってほしいです。

撮影=川崎龍弥

――なお、『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』は多様性に富むネット音楽を一挙に楽しめるライブイベントを目指し、デジタルネイティブ世代の若者にとって画面を超えてリアルで“推し”に会える場になってほしい、という意図で企画されたものでして。

お声がけいただいた時点で、企画意図のすべてを汲み取れたわけではないんですけど、2日間の顔ぶれを見て、ワクワクするような新しい流れやうねりが生まれそうだなと感じることができて。微力ながら、その一員として僕もなにかできたらいいなと思います。

――共演される缶缶さん、超学生さんとは関わりがあったりするのでしょうか。

超学生さんとは、2023年に初めてライブでご一緒して、そこからちょっと交流はあります。超学生さんは僕よりも活動歴が長いし、多分声変わりもしてない小学生のころからすごい歌い手だと認識していたんですけど、すごくクールな低音ボイスで歌うようになって、本当に同じ人かなって困惑しました(笑)。いやぁ、彼はすごい進化を遂げていますよね。僕も歌のサウンドメイクを結構自分でやるんですけど、超学生さんも音響周りとかに詳しくて。同じ仲間として超学生さんの技術やこだわりをすごく感じるし、本当に尊敬できるアーティストです。缶缶さんとは交流はないんですけど、もちろん存じてはおります。突如ネットに現れて30日間連続で「歌ってみた」をあげたっていう、それがとにかく衝撃的でした。歌声がパワフルで自分の歌い方が確立されているめっちゃかっこいいなと思う方なので、『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』でご一緒できることをすごく楽しみにしています。

――『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』1日目、缶缶さん、Souさん、超学生さんが集ったらどんな化学反応が生まれるのか、期待が高まってしまいます。なんなら、コラボ的ななにかが行われたりも……?

もしかすると、するかもしれないですね。楽しみにしていただきたいし、どういうイベントになるか僕自身すごく楽しみにしています。

――今後の活動に目を向けると、挑戦してみたいこと、目標はありますか?

やってみたいことがありすぎて困っているくらいなんですけど……ここ最近は動画とかデザインとか、ビジュアル周りのクリエイティブを手がけてみたいんですよ。

――振り返ってみれば、Souさんの原点は『うごくメモ帳』ですものね。

そうそう。昔から変わらずビジュアル周りへの興味関心はやっぱりあって、よく美術展に行ったりもするので。自分の内にあるものを映像やデザインでも表現してみたいな、という気持ちは最近強くなっていますね。

――Souさんの表現の枝葉が増えて、これからますますいろいろな実がつき、色鮮やかな花が咲きそうですね。

そうなったらいいなと思っています。

――また、ネットカルチャーの今後に対して、Souさんが今思うこともお聞きしてみたいです。ネットカルチャーってどうなっていくんだろうだとか、その中で自分はどうなるんだろうだとか、そんなことに想いを馳せたりもするのでしょうか。

今後どうなっていくのか、なにが起きるのか……正直、あんまりわからないし、そういうのを考えずにやってはいますね。

――そのときそのとき、自分の中に芽生えるワクワクや直感を信じて進んでいくというか。

僕はやっぱり、そういうスタンスなんですよね。ネットカルチャーとはまた違うかもしれないですけど、今注目してるのはVR。リアルタイムで360度VR動画を配信するVRライブとか、アバターを使ってバーチャルの世界で人と交流できるVRChatとか、徐々に流行ってきてもいるじゃないですか。現実世界じゃないからこそ演出表現も上限突破できるVR、いつか自分のライブでもチャレンジできたら面白そうだなと思っています。

撮影=川崎龍弥

――可能性がどこまでも広がっていくネットカルチャーの世界に憧れて、“自分もネットカルチャーの作り手になりたい”と思う人たちに向けてSouさんが伝えたいことは?

「活動するにはどんな機材を買ったらいいですか?」って聞かれることも多いんですけど……僕自身、最初は電機屋さんでよくわかんないマイクを買って、パソコンのイヤホンジャックみたいなところに差して、つなぎ方もよくわかんないけど音入ったからいいか、っていう勢いだけで「歌ってみた」の活動を始めましたからね。今はもういくらでもインターネットで調べられるし、とにかく思うがまま手を動かしたらいいよっていうのは伝えたいですね。

――思い立ったが吉日精神で、初期衝動を大事に。

そうそう。本当に、やろうと思えばどんな形でもできるので。最近だとiPhoneで歌を録って投稿している人たちもたくさんいるし、家で歌う環境がなければ……僕も家で歌える環境ではないけど強引に歌っていたし(笑)。親が家にいない間に家で録るとか、カラオケで録るとかもできるし。せっかく夢中になれることを見つけたなら、自分の中の衝動を大事に一歩踏み出してほしいです。

――最後に、ジャンルを問わず今のSouさんの“ふぁぼい”(推し)を教えてください。

星宮ととさんですね。歌唱/企画/ディレクション/イラスト/デザイン/映像など、ひと通り手掛けるデジタルアーティストなんです。僕はいろんな音楽を片っ端から聴くんですけど、そういう中で偶然星宮ととさんの作品に出会いまして。歌声、ビジュアル、世界観、すべてのセンスが素敵だし、これから注目されていくべきアーティストです。これからも応援していきます!


取材・文=杉江優花

イベント情報

eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-
会場:Zepp Shinjuku(TOKYO)
開催日時:
2025年8月7日(木)     17:15開場/18:00開演
2025年8月8日(金)     16:30開場/17:15開演
出演(五十音順):
2025年8月7日(木) 缶缶/Sou/超学生
2025年8月8日(金) Empty old City/水槽[LIVE SET]​/DAZBEE(ダズビー)
U-18限定通し券 9,800円(税込)SOLD OUT/1日券 6,900円(税込)
主催/企画制作:イープラス
制作協力:YUMEBANCHI(東京)
 
【公演に関するお問い合わせ】
https://eplus.jp/favoytokyo2508078/

 
【公式リンク】
公式サイト:https://eplus.jp/favoy/
Instagram:https://www.instagram.com/favoy_eplus/
X:https://x.com/favoy_eplus

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