「生まれてきてくれてありがとう」ミクスチャーロックの雄が集結、老舗音楽バー・ROCK ROCK 30周年を祝う『ROCK BEYOND ROCK VOL.3』レポート

2025.12.20
レポート
音楽

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『ROCK ROCK 30th ANNIVERSARY LIVE ROCK BEYOND ROCK VOL.3 -YK presents-』2025.12.3(WED)大阪・なんばハッチ

大阪・心斎橋の老舗ロックバー『ROCK ROCK』の開店30周年を祝うイベント『ROCK ROCK 30th ANNIVERSARY LIVE ROCK BEYOND ROCK VOL.3 -YK presents-』が12月3日、大阪・なんばハッチにて開催された。今年11月24日に大阪・インテックス大阪で開催された『ROCK ROCK 30th ANNIVERSARY LIVE ROCK BEYOND ROCK VOL.2』では、日本のロックシーンを代表するB'z、LOUDNESS、黒夢に、マイケル・モンローが熱演。

今夜は「ROCK ROCK」の女将、ヨーコ氏の主宰ということで、邦楽ミクスチャーロックシーンを牽引し続ける猛者が集結。宴にふさわしい、日本のミクスチャーロック・シーンの歴史を垣間見るような奇跡の一夜が繰り広げられた。

西海岸×大阪のミクスチャー魂
SUNSHINE DUBの「ROCK ROCK」愛

「コテツでーす。ROCK ROCKではコテツと呼ばれてます!今日はちゃんとバンドやってるとこ、見せまーす。キンチョーするな(笑)」

サトサンシャイン(Ba.Vo)が笑顔でフロアに呼びかける。この日のトップバッターは、大阪を基盤に活動する3ピースバンド、SUNSHINE DUBだ。「ずっと愛をキープしようぜ!」というサトサンシャインの合図で「keeping your love」がスタート。

スカのリズムでグルーヴするバンドサウンドを鳴り響かせ、たちまちフロアをカリフォルニアの青空の下に変えていく中、<I'm keeping your ROCK ROCK>と、「ROCK ROCK」への愛を込めた即興フレーズでサビを歌うサトサンシャイン。ダブやスカ、レゲエのグルーヴにロックやパンクのスピリットをぶち込んだピースフルでアグレッシブなハイブリッドサウンドを次々と披露し、ROCK ROCKで楽しく酔っている時の姿とは違った、バンドマンとしてのイケてる姿をさらりと見せつけていく。

「コテツでーす。ヨーコのしもべでございます。怒らせたり温かく迎えてもらったり(笑)、『ROCK ROCK』には26~27年通ってます。ヨーコがこの曲をやれ!というのでやります」というサトサンシャインのMCで始まったのは「Love is sunshine」。サトサンシャインが「前のバンド(SUNSET BUS)の曲なんですけど」と遠慮がちに紹介すると、演奏できて光栄やで、と言わんばかりの笑顔で応えるオキサンシャイン(Dr)とスネサンシャイン(Gt)。

西海岸のビーチを思わせる温かなバンドグルーヴもリリックもメンバー間の空気感も、酌み交わし合ってきたグラスの数だけ、きっと今の方がずっとドラマチックで美しい。
バンドのアンセム曲「Sunshine Love」で場内に観客のシンガロングが響き渡った後は、最後にスカパンクなナンバーを披露してオーディエンスをとことん熱狂させていく。

この日唯一の大阪のバンドということもあり、「ROCK ROCK」との濃密な絆を披露したSUNSHINE DUB。これからも愛と情熱にあふれたピースフルなバンドグルーヴで、「ROCK ROCK」と共に大阪の夜を熱く歌い鳴らし続けてくれるに違いない。

Kj、JESSE、JIN、JUUも参加!
ミクスチャー研究所の圧倒的な演奏力による祝宴

続いて登場したのは、PABLO(Gt)の呼びかけて誕生した、ミクスチャーロックやオルタナロックを研究する最強のコピーバンド、ミクスチャー研究所だ。

Vo.に来門(smorgas、ROS、RED ORCA)、Dr.に金子ノブアキ(RIZE、RED ORCA)、Ba.にKenKen(RIZE、LIFE IS GROOVE)、PABLO(Pay money To my Pain、The Ravens、RED ORCA)というミクスチャー界の猛者たちが、ミクスチャーロックの研究員として、白衣を纏った姿でステージに降臨。

そして、USミクスチャー界の伝説的バンド、スノットの「Snot」、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン「Bulls On Parade」を立て続けに披露すると、フロアは一気に熱狂のるつぼに。

盛り上がるフロアに、「中学生気分でやってます!」と来門。「今日来てる研究員を呼んでみようかな。The Ravens、Kj!せっかくなんでもう1人呼びたいと思います、The BONEZ、JESSE!」という彼の宣言で、「研究員でございます」と言って登場したJESSEと共に白衣姿で現れたKj。来門、Kj、JESSEの3MCで披露されたのは、シーケンス×バンドサウンドで邦ミクスチャーシーンを切り開いたTHE MAD CAPSULE MARKETSの「WALK!」だ。

日本のミクスチャー界を牽引し続ける最強の3MCの傍らで、MADのBa.の上田剛士(AA=)に対するリスペクトを込め、いつになく低い位置でベースを抱えて弾くKenKen。P.T.P.、Dragon Ash、RIZE、smorgasのメンバーが大先輩の名曲を歌い奏でるその様子は、まさに<邦ミクスチャーロック史>の縮図!

「ミクスチャー三銃士でした」と、来門が嬉しそうに告げる。そんな奇跡の競演後、次にステージに招かれたのはなんと、元P.T.P.の元ギタリスト、JIN(High Speed Boyz、M.E.D.S)。

「『ROCK ROCK』はもともとKがめっちゃ行ってて。Kが亡くなってから俺が行くようになって…。なんで死んでんだ、バーカ。フーファイターズの曲、やりまーす」

互いにギターを抱えて向かい合い、不在の友に届けるようにフーファイの「GOOD GRIEF」を掻き鳴らすPABLOとJIN。

演奏後、「JINくん、10年ぶりにライブしたらしいよ」とPABLOが言う。「次の人は15年ぶり(の競演)とかかもしれない」と来門が続けると、「大阪でミクスチャーと言ったらこの人を呼ばないと」と金子ノブアキ。

「やって来ましたよ、酒飲みアニマル」という自己紹介で登場したのはUZUMAKIの獣こと、JUU(Vo)だ。JUUの重低音ボイス×来門のハイトーンボイスが絡み合うAsian Dub Foundationの「Naxalite」が場内に轟いた後は、ミク研のメンバーのみでビースティーボーイズの「Time for livin'」とBad Brainsの「I」を披露。圧倒的な演奏力と歌力を誇る、ミクスチャーロック界の永遠の音楽少年たちの研究はこれからも続く。

The Ravensは、宴にふさわしい幸せ報告も!
「今日は祭りだ、俺たちが天国に連れてってやるよ」

「今日は祭りだ、好きにやれ!」

最初に投下された「共鳴夜行」のイントロが鳴り響く中、Kjの声を合図にオーディエンスが一瞬で弾け飛ぶ。続けて、日常をしばりつけるすべてのしがらみを吹き飛ばす「ボマー」、11月にリリースされたばかりの新曲「天国レイヴンズ」を披露。

「(「ROCK ROCK」には)大阪来る度に天国に連れてってもらってるから、今日は俺たちが天国に連れてってやるよ」

そんなKjの宣言通り、フロアに轟くエモーショナルで強靭なバンドサウンドの波間、渡辺シュンスケ(Key)が奏でるピアノの音色が天使の梯子のように美しく降り注ぐ。

「Nimby」では、<例えば「ROCK ROCK」の酒がアナタを喜びで満たせたならいいのに><皆さんの暗い心を晴らせたらいいのに>と、今夜の祝典と観客への想いを即興でリリックに乗せてKjが歌う。

観客にスマホのフラッシュライトでステージを照らすように促した後、Kjが言う。

「無責任なロックバンド、バンドマンが板(ステージ)の上に乗っただけで、みんなの力を借りればこんな美しい景色が作れる。酒の場も同じ」「ライブハウスも酒場も、入った時よりいい顔をして帰ってほしい」

The Ravensというバンドの原点とも言えるKjのMCの後、フロアに放たれた「Come As U Are」に観客たちのエネルギーが熱く炸裂し合う。

そして、「白鯨」の最後のサビを楽しそうにシンガロングする観客の姿を前にして、心の奥に押し込め続けていた人々の感情のフタを解き放つ力こそが、The Ravensの音楽の真髄だと実感する。

「(「ROCK ROCK」という店は)30年のうちに何人のバンドマンの世話をしたんだろう?でもいちばん世話になってるのはPABLOだと思う」とKj。するとPABLOが、「実は僕、結婚して1月に子供が産まれるんですよ」と突然の幸せニュースを報告。しかも妻との出会いも「ROCK ROCK」なのだという。

「KやP.T.P.との思い出もあるし(周年の祭りに)出るならThe Ravensで!と建志くんも言ってて。またこれからもよろしくお願いします」

PABLOの言葉にフロアから祝福の声があがる。最後に披露された「ミルフィーユ」では、PABLOとKjが面と向かいギターを弾き合う。ライブハウスも酒場も、さまざまな感情や人生が日々行き交う場所だ。「ROCK ROCK」も The Ravensも私たちも、人生というステージの砂時計が落ち切ってしまうまで、生きてやろうぜ。

「K、降りて来いよ。力を貸してくれ、Kj」
トリを飾ったThe BONEZの圧巻のステージ

ミクスチャーシーンを牽引し続けるバンドマンたちが集った祝宴のトリを務めたのは、ワンマンツアー「Tour 2025 I’m Not Your King」を終えたばかりのThe BONEZだ。メンバー全員がステージに登場し、リハ代わりの「BOSSMAN」で「ROCK ROCK」の30周年を祝うフレーズを即興で披露するJESSE。一気に盛り上がるフロアを前に、ZAX(Dr.)を囲んでメンバー全員での気合い入れの後、「Place of Fire」で本編がスタート。KOKI(Gt)のギターリフを合図に始まった「Zenith」でJESSEが「かかって来い!」と煽ると、なんとKOKIがギターを抱えたままフロアへダイブ。

ツアーで得たエネルギーのままの濃密な演奏と息の合ったパフォーマンスで突っ走った後、「『ROCK ROCK』30周年おめでとうございます。日本一のロックバーです」と、ZAX。するとすかさず、「お前ら来んなよ、俺らが行けなくなるから(笑)」とJESSE。正直過ぎる一言に観客は大爆笑だ。

T$UYO$HI(Ba)の奏でるヘヴィーなベースが最高に映える「New Original」の途中、JESSEの指示でフロアの中央に観客がとことん楽しめる空間が誕生。エモーショナルなリリックとバンドグルーヴを全身で楽しむオーディエンスの姿に、「文句ナシ、優勝!」と、JESSE。

「K、ヨーコさんも誠司さん(ROCK ROCK」代表)もお前のこと待ってっから早く降りて来い。ムリか……」

ステージの上を見上げて、JESSEが寂しそうにつぶやく。The BONEZ誕生のキッカケとなったP.T.P.のKの不在。喪失の痛みが癒えることはないけれど、残された者は前に進むしかない。

「力を貸してくれ、Kj」

呼びかけで登場した盟友に沸く観客に向かって、「うらやましがれ!」とJESSE。2MCで披露するのはもちろん、T$UYO$HIの呼びかけで実現したThe BONEZ×Dragon Ashのスプリットツアーの命題曲「Straight Up feat. Kj」だ。

宿命のライバルから唯一無二の同志へ。2バンドのドラマをシンガロングで讃える観客に向かって、Kjが叫ぶ。

「俺の友だち、かっけぇだろ!」

キラーアンセム「Thread & Needle」で再びフロアが興奮の渦と化すと、ステージにPABLOと来門が踊りながら乱入。T$UYO$HI、ZAX、PABLO……K以外のP.T.P.のメンバーが今またこんな風に、ごく自然にステージの上で笑い合えているという奇跡に気づく。30年間、「ROCK ROCK」という場所がバンドマンたちのドラマを見守ってきた日々の意味はきっとこれだ。

ラストを飾った「SUNTOWN」では、観客の頭上を大きなビニールボールが飛び交うピースフルな光景が広がる。

すべてのバンドの演奏が終わった後、今日の出演者全員が再びステージに登場。そして、今宵の主宰「ROCK ROCK」の女将、ヨーコ氏から「生まれてきてくれてありがとう」と言われたバンドマンたち全員で、ヨーコ氏を胴上げ。

いろいろあったであろう、「ROCK ROCK」の30年の日々。でもきっとまだこれからだ、音楽も宴も人生も。

取材・文=早川加奈子 写真=オフィシャル提供(撮影:細見栄起)

イベント情報

ROCK ROCK 30th ANNIVERSARY LIVE
ROCK BEYOND ROCK VOL.3 -YK presents-

・2025年12月3日(水) @大阪・なんばHatch
【出演】The BONEZ / The Ravens / ミクスチャー研究所 / SUNSHINE DUB
  • イープラス
  • The BONEZ
  • 「生まれてきてくれてありがとう」ミクスチャーロックの雄が集結、老舗音楽バー・ROCK ROCK 30周年を祝う『ROCK BEYOND ROCK VOL.3』レポート