GRAPEVINE、LOSTAGE、ZAZEN BOYSらのライブとクオリティの高い国内外のクラフトビールを満喫『CRAFTROCK FESTIVAL '25』レポート
『CRAFTROCK FESTIVAL '25』撮影=大橋祐希
CRAFTROCK FESTIVAL '25
2025.5.10,11 立川ステーガーデン
今年もまた『CRAFTROCK FESTIVAL』を楽しめる喜びを噛みしめよう。数あるビアフェスの中でも特に利便性の高い駅近ロケーション、一貫した音楽のジャンルとテーマ性、そして国内外の著名ブリュワリーが集うビールの種類とクオリティにおいて、主催者のこだわりとファンの熱気をたっぷりと味わえる2日間。5月10日(土)、11日(日)に東京・立川ステーガーデンで開催されたフェスの初日を振り返ろう。
朝からあいにくの雨模様だが、クラフトロッカーたちの燃える心に水はさせない。10時半の屋外エリア開場、11時のホールステージ開場と共に会場は多くの来場者が集まり、まずは幸せの昼ビールで乾杯。ライブは屋外のガーデンステージではSee You Smileが、屋内のホールステージではyonigeが口火を切った。今日のラインナップはパンク/エモ系が中心で、バンド好きの主催者の意思を強く感じる。観客は20代、30代のロックファンを中心に、家族連れの姿も見える。ステージ前の最前方ではバンドTシャツを着たファンが拳を振り上げ、後方ではゆったりと体を揺らしたりビールを飲んだり。フリーダムないい雰囲気だ。
ランチタイムになると、ホットドッグとポテトフライのSUNNY HOP、フライドチキンのCRAFTROCK BREWPUB&ハイリキの前に列ができる。横で匂いを嗅ぐだけでうまそうだ。ガーデンステージではceroが、ホールステージではeastern youthが、続いてガーデンステージではbachoが気合の入ったパフォーマンスを見せる。いくつもある『CRAFTROCK FESTIVAL』の魅力のうち、「屋内と屋外のステージが近い」のは大きなポイントで、ホールステージの2階後方に回って外に出ればすぐにガーデンステージ。移動ストレスゼロで二つのステージを連続で楽しめるのが素晴らしい。いつの間にか雨も上がり、屋外の芝生エリアに心地よい風が吹いてくる。
ホールステージではKOTORIが「ビール好きに悪い奴はいない!」と宣言して熱い演奏で盛り上げ、ガーデンステージではYOUR SONG IS GOODが「カンパーイ!」と言いながらグルーヴィーなインストミュージックであらゆる人を踊らせる。出演バンドが誰よりも楽しんでいるように見えるのも『CRAFTROCK FESTIVAL』の魅力で、ステージの上も下もとにかくピースフル。17時前にホールステージに登場したZAZEN BOYSの向井秀徳は、グラウラーに入れたビールをあおりながら「クラフトロックはあなたの人生くらい苦い。その苦さがいいね」とつぶやいて大喝采を浴びている。通常のロックフェスとは一味違う、アーティストと観客の独特の親密さが『CRAFTROCK FESTIVAL』にはある。
ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS
ライブにのめり込んで飲むのを忘れていたので、ここでブリュワリーの探検に出よう。ガーデンステージの左右にずらりと並ぶ出店者は、CRAFTROCK BREWING(東京)、志賀高原ビール(長野)、TEENAGE BREWING(埼玉)、REPUBREW(静岡)、Firestone Walker Brewing Company(カリフォルニア)、Hudson Valley Brewery(ニューヨーク)、KUNITACHI BREWERY(東京)、うしとらブルワリー(栃木)の計8社。どこを選んでも間違いない、『CRAFTROCK FESTIVAL』が誇る今年の最強ラインナップ。一杯目はCRAFTROCK BREWINGとSUNNY HOPがコラボした限定ビール・CODE-Bをチョイスしてみる。カモミール、すだち、山椒を効かせたスッキリ&スパイシーな一杯。うまい。もう一杯、Hudson Valley Breweryのピンクレモネードは、ラズベリーとレモンを加えたサワーIPAで、酸味とコクと爽やかさとのバランスが絶妙。うまい。
COMEBACK MY DAUGHTERS
COMEBACK MY DAUGHTERS
夕暮れのガーデンステージに登場したCOMEBACK MY DAUGHTERSが、エモとルーツミュージックをブレンドさせたオリジナルのグルーヴで観客の心を一つにする。PIZZA OF DEATHのTシャツを着た、年季の入ったファンも大喜びだ。ゆったりマイペースな活動のバンドゆえ、今日ここで観られたのはとても貴重だ。ホールステージに戻ると3階席まで人がぎっしりで、大歓声を浴びてAge Factoryのライブが始まった。曲間にひっきりなしに飛ぶ声援に応え、「みんな酔っとるの(笑)。ビールのフェスで野次が飛ぶのは光栄ですよ」とボーカルの清水英介が笑う。和やかな、しかし熱い空気がホールを満たす。楽しみ方は自由だ。
Age Factory
Age Factory
LOSTAGE
LOSTAGE
ガーデンステージのトリを取るLOSTAGEを観ようと外に出ると、すでに芝生エリアの後方まで人がいっぱいだ。『CRAFTROCK FESTIVAL』の観客の印象は、「とりあえず見ておこう」ではなく「このバンドが観たい」という思いの強さで、それに応えてLOSTAGEは堂々たるパフォーマンスを披露。緊張度の高い演奏はいつも通りだが、イントロでつまづきそうになったギターの五味拓人にボーカルの五味岳久が「もっと飲め(笑)」と煽ったり。ここでしか味わえない雰囲気がとても楽しい。
GRAPEVINE
時刻は20時15分、ホールステージの2階席後方の仕切りが取り外され、ガーデンステージまで一望できるようになった。抜群の開放感とフェスの終わりのリラックスしたムードの中で登場したGRAPEVINEは、ビアフェスにぴったり1曲目「IPA」で観客の心をつかむと、ボーカル・田中和将が「早い出番で、そのあと飲むつもりだったのに(笑)」と言いながら、ベテランの貫禄と永遠のバンドキッズの両面を兼ね備えたしなやかな演奏で代表曲を次々と披露。エモ/パンク系が多かったこの日のラインナップの最後を締める、癒し効果抜群の演奏だ。2階席にはすやすやと眠る子供と、見守る親の姿も見える。最後に「今度は早い時間に呼んでくれ!」と笑顔のメッセージを残して、初日のトリという大役を見事に果たしてくれた。
GRAPEVINE
翌日の2日目は出演バンドの傾向を変えて、サニーデイ・サービスをトリに据え、SPECIAL OTHERS、浪漫革命、MONONO AWRAREなどが熱演を繰り広げ、初日とはまた違う客層で大いに盛り上がったと聞く。熱心な音楽ファンを集める企画力をベースに、上質なビールとフードを楽しむフェスとして、『CRAFTROCK FESTIVAL』は毎年成長を続けている。来年もまたここで乾杯したい。
取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
イベント情報
イベント公式サイト:https://craftrock.jp/fes2025/