松岡充「ボウイの魂、日本に響け」 デヴィッド・ボウイが遺したミュージカル『LAZARUS』が開幕

レポート
舞台
2025.5.31
前列左から 白井晃(演出)、鈴木瑛美子、松岡充、豊原江理佳、上原理生 後列左から 渡部豪太、崎山つばさ、小南満佑子、遠山裕介

前列左から 白井晃(演出)、鈴木瑛美子、松岡充、豊原江理佳、上原理生 後列左から 渡部豪太、崎山つばさ、小南満佑子、遠山裕介

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伝説的なロック・スター、デヴィッド・ボウイの最後のアルバム『★(ブラックスター)』と同時期に制作され、遺作ともなったミュージカル『LAZARUS』日本初演が、2025年5月31日(土)KAAT 神奈川芸術劇場にて開幕する。開幕に先立ちゲネプロ・囲み取材が行われ、主演の松岡充、豊原江理佳、鈴木瑛美子、小南満佑子、崎山つばさ、遠山裕介、渡部豪太、上原理生、演出の白井晃が登壇。意気込みを語った。


本作は、ボウイが主演したSF映画『地球に落ちて来た男』に着想を得て、地球に取り残された異星⼈ トーマス・ニュートンのその後を描いた物語(2015年オフブロードウェイで初演)。脚本はボウイとエンダ・ウォルシュが共同で⼿掛け、孤独なニュートンがある謎の少⼥と出会い、魂の解放を求めて⾃らの運命を模索する姿を描いている。

主演を務めるのは、ボウイへの憧憬からロック・スターの道を志したという松岡充。これまでを「怒涛の稽古期間だった」と振り返る。今年は、松岡がボーカルを務めるSOPHIAの30周年アニバーサリーイヤーにあたり、その活動と並行しての稽古期間だった。役者としても24年目を迎えたが、これまでになかった怒涛のスケジューリングのなかでその両方に精力的に取り組んできたのだと言う。

松岡充

松岡充

「14歳のとき、ボウイと出会っていなかったら、バンドマンにもなっていなかったし、デビューもしていなかった。それを考えると、(『LAZARUS』の話を)受けないという選択肢はなかった。スタッフやメンバー、周りの方々が理解をしてくれて、稽古場でも迷惑をかけつつもここまで来られたのは、ボウイが導いてくれたのではないかと思っています」(松岡)

豊原江理佳もまた、「探し続けた稽古期間だった」と振り返り、「見つけたと思ったら、零れていくような。お客様にこの作品がどう届くのか楽しみです」と話した。鈴木瑛美子は、「みんなで話し合って練ってきたので、あとはお互いを信じて、白井さんを信じて演じるのみ」と力強く、小南満佑子は、「世界的大スターの残したこの作品の日本初演を迎えるわくわくとどきどきが深まっています」ときらめく笑顔。「素晴らしいキャストのみなさんと白井さんと、作品のなかで生きられる幸せ。お客様にどう届くのか心を込めていきたいと思います」と語った。

意気込みを語るキャスト一人ひとりの目を見て話を聞く松岡。「こんなに見つめられるとは……」と照れる小南

意気込みを語るキャスト一人ひとりの目を見て話を聞く松岡。「こんなに見つめられるとは……」と照れる小南

続く崎山も「目力が……」とたじたじ。そんな崎山に「ほんとカッコイイよね」と松岡。カンパニーの仲睦まじい様子がうかがえた

続く崎山も「目力が……」とたじたじ。そんな崎山に「ほんとカッコイイよね」と松岡。カンパニーの仲睦まじい様子がうかがえた

崎山つばさは「愛にあふれたカンパニー」と紹介。小南とともに「愛を表現する役」だと言う崎山は、「それをもっと表現できるように、みなさんに愛を届けられるようにしたいと思います」と続け、遠山裕介も「セットや映像、照明が素晴らしいので、はやく皆様に披露できるのが楽しみです」と笑顔を見せた。

渡部豪太は、開口一番、「渡部豪太、今回は歌唱いたしません」と堂々宣言。「最初はミュージカルなのにと寂しかったけれど、皆さんの歌を聞いたときに吹っ切れました」と話した。ミュージカル『LAZARUS』は、「Changes」、「Absolute Beginners」、「Heroes」をはじめとするデヴィッド・ボウイの代表曲のほか、本作のために書き下ろされた新曲「Lazarus」、「No Plan」、「Killing a Little Time」、「When I Met You」など全17曲が織り込まれてる。歌唱力抜群の面々を前に、「歌唱がほんとうに素晴らしくて、この人たちの歌を毎日聞けるんだ!」と、一番の特等席で見ているような気分だと語った。

さらに、「いつも松岡さんが仰っているんですけれど、『この作品に選ばれたのは、ボウイに選ばれた』ということだから……」と渡部が続けると、「ああ、それ決めゼリフだったのに!」と大げさに悔しがる松岡。一同笑いに包まれる。松岡は、自分たちが「メッセンジャーの役割だと思っている」と言う。「ボウイは日本のカルチャー、人々を愛していた方なので、このカンパニー一人ひとりが、『その初演を託すよ』と言われたメンバーだと思っています」と続け、稽古中にも「自分の人生に刻もう」と度々話していたと明かした。

上原理生はこの作品を「感情の波が押し寄せる作品」だと話す。「いろんな受け取り方ができる作品で、想像する余白があります。劇場に入って、すべてがそろった状態でやっと白井さんが言っていたビジョンを見ることができました。初日にお客様がいらして、最後のピースがはまるのかなと。どんな反応をしてくださるのか楽しみです」と期待を口にした。

⽇本版の演出は、ウォルシュ作品を数多く⼿掛けてきた⽩井晃が担当する。日本初演を演出する機会を得たことに、「光栄」と感謝を述べ、さらに「素晴らしい歌唱能力がある人たちが揃い、とても上質な作品になっていると思います。ボウイの想い、ウォルシュの想いが埋め込まれているので、“ミュージカル”とは言っていますが、通常のミュージカルの領域では語れない作品になっていると思うので楽しみにしてほしい」とアピールした。

松岡への印象を聞かれると、「稽古に真摯に向き合う人。まずは舞台に向かう姿勢が素晴らしい。そして、この作品の理解、ボウイの魂をしっかりと受け取っている」と絶賛。松岡も「そんなふうに言っていただけてうれしい」と笑みをこぼし、「全幅の信頼を置いています」と返した。

演出・白井晃

演出・白井晃

本作は、デヴィッド・ボウイの遺作となる作品。自らの死を悟り、最後のメッセージとして遺した本作は、やはり精神的な厳しさも大きかったそうだ。「20世紀に世界で最も影響力を持ったアーティストが、最後になにを残すのか、その心の中を表現しているので、それを毎日やりながら、SOPHIAのライブをやって、帰ってきて……とその繰り返し。ほんとうにみなさんに助けていただきました。ほんとうに優しいカンパニーなんです!」と、カンパニーの男性陣から甘酒や酵素など体調を気遣った差し入れをもらっていたと明かす。「三人(豊原・鈴木・小南)からは……」と考えるような仕草をすれば、「愛を……! 特大の愛を……!」と鈴木・小南が慌ててアピールし、現場は笑いに包まれた。

初日を前にした今も「正直、いまだに辛い」と松岡は吐露したが、同時に「そうでないとだめだと思った」と強い意志をうかがわせた。「ボウイは苦しみの中でこのメッセージを作ったので、そこに近づきたいという思いがあります。彼の遺志をウォルシュが書いて、演出・キャスト・スタッフが伝えて……それを受けてのこの日本チームだ、という思いがあるので、“イェーイ!”って感じではいれられない。従来であれば、コンディションは大事なのですが、今回は綺麗に歌うというよりも“魂の叫び”だと思っています。ボウイの魂、日本に響け、という」。

いよいよ日本初演。本作が教えてくれているのは、「死はENDではない」ということだと思う、と松岡は語った。「死を目前にしたとき、明日にどう希望を持って生きるのか? そこにも希望はある、とメッセージしているのだと思います」。

「一人ひとりがボウイの最後のメッセージとは何かを、自分の人生とともに見つめてやってきた」というこのミュージカル『LAZARUS』。会見でもたびたび話にあがったように、歌唱力は折り紙付きのキャストたちだ。安定して素晴らしくそれぞれの個性も見える。それだけでなく、映像もふんだんに使われ、照明、美術、振付と総合してアート性も高い作品に仕上がっていた。ミュージカル『LAZARUS』は、5月31日(土)~6月14日(土)KAAT 神奈川芸術劇場 、6月28日(土)~29日(日)フェスティバルホールにて上演。

公演情報

ミュージカル『LAZARUS』
※デヴィッド・ボウイの遺志により、音楽パートは英語での歌唱となります。
音楽・脚本 デヴィッド・ボウイ
脚本エンダ・ウォルシュ
演出 白井 晃 
 
出演
松岡 充
豊原江理佳 鈴木瑛美子 小南満佑子
崎山つばさ 遠山裕介
栁沢明璃咲 渡来美友 小形さくら
渡部豪太 上原理生
 
【ダンサー】 Nami Monroe ANRI KANNA
【演奏】
益田トッシュ [Bandmaster] フィリップ・ウー [Key.] 松原”マツキチ”寛 [Dr.]
 Hank西山 [Gt.] 三尾悠介 [Key.] フユミカワカミ(おふゆ) [Ba.]
【スウィング】 塩 顕治 加瀬友音
 
スタッフ
翻訳 小宮山智津子
音楽監督 益田トッシュ
 
美術 石原 敬
照明 齋藤茂男 
音響 佐藤日出夫
映像 上田大樹
衣裳 髙木阿友子
ヘアメイク 川端富生
振付 Ruu Akiho
振付助手 Kokoro
アクション 渥美 博
歌唱指導 益田トッポ
英語発音指導 六反志織
 
演出助手 河合範子 相原雪月花
 
舞台監督 足立充章
プロダクションマネージャー 平井 徹
 
制作統括 笠原健一
制作 原 佳乃子 藤本綾菜
KAAT神奈川芸術劇場 伊藤文一 金子紘子
キョードー東京 兵藤哲史 小川美紀
イープラス 岸 憲一郎 秋元紗矢佳 増田 萌 多々羅あすか
プロデューサー 熊谷信也
 
宣伝 雲林院康行 佐藤知子(キョードーメディアス)
宣伝美術 永瀬祐一(BATDESIGN)
撮影 加藤アラタ 宮脇進[松岡充]
宣伝衣裳 青柳美智子(Barchetta.)
宣伝ヘアメイク 川端富生 伊荻ユミ 戸倉陽子[松岡充]
宣伝映像 十川利春
 
主催 イープラス/キョードー東京/KAAT神奈川芸術劇場
 
【横浜公演】
日程 2025年5月31日(土)~6月14日(土)
会場 KAAT 神奈川芸術劇場 〈ホール〉
料金(全席指定・税込)
SS席(前方実質3列⽬以内確約&プログラム付き) 18,000円 ※公演プログラムはご鑑賞公演当⽇に会場にて引換を実施いたします。
S席 13,500円 A席 10,000円
 
主催 イープラス/キョードー東京/KAAT神奈川芸術劇場/フジテレビジョン

後援 J-WAVE
お問い合わせ キョードー東京 0570-550-799 (平日11時~18時/土日祝10時~18時)
 
【大阪公演】
日程 2025年6月28日(土)~29日(日)
会場 フェスティバルホール
料金(全席指定・税込) S席13,800円 A席10,000円
 
主催 読売テレビ/サンライズプロモーション大阪
後援 FM802/FM COCOLO
お問い合わせ キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日12:00~17:00 土日祝休業)
 
一般発売日
横浜公演 4月12日(土)10:00発売開始
大阪公演 5月18日(日)10:00 発売開始
 
公式サイト https://lazarus-stage.jp
公式X @LAZARUS2025
公式Instagram @lazarus_musical
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