Roselia「Sei stark」ライブレポート!彼女たちの“運命”は常に音楽と共にある

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レポート
アニメ/ゲーム

撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

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■2025.06.15 Roselia「Sei stark」@東京・有明アリーナ

(C)BanG Dream! Project

6月15日、東京・有明アリーナで行われたRoseliaの単独公演“Roselia「Sei stark」”は、ドイツ語で「強くあれ」を意味するライブタイトルの通り、彼女たちの音楽に賭ける想いとバンドとしての信念がひしひしと伝わってくるライブだった。

ガールズバンドを題材にしたメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!」(以下、「バンドリ!」)より、Poppin'Partyに続く第2のバンドとして登場し、今年で結成9周年を迎えるRoselia。その道のりは、アニメ/ゲームのストーリー上においても、リアルバンドとしての活動においても、決してすべてが順風満帆というわけではなかった。

だが、彼女たちはどんな逆境にも挫けることなく、自らの信じる音を奏で続けることで、バンドリーマー(※「バンドリ!」ファンの総称)を含む多くの音楽好きの信頼を勝ち取り、今や1万人規模の公演を成功させるほどの大きな花に成長している。バンドのモチーフである青いバラの花言葉は“奇跡”。不可能を可能にするため、運命に立ち向かってきた彼女たちの、ここまでの総決算と言うべき一夜のレポートをお届けする。

オープニングアクトとして会場を温めたのは、Roseliaと同じく「BanG Dream!」から誕生した“夢(バーチャル)と現実(リアル)を飛び越える運命共同体(バンド)”の夢限大みゅーたいぷ。今年のエイプリルフール企画にて夢幻戦隊むーたいぷ名義でカバーした「熱風海陸ブシロード~熱き咆哮~」のSEに合わせて勇ましく登場したメンバー5人は、特設された花道を進み、センターステージへ。

まずは1st Singleの表題曲「コミュ着火Fire!」で会場の熱気に火を付けると、自己紹介を兼ねたMCを挿み、メンバーの藤都子(Key.)をモチーフに制作されたライブ人気の高い「限界現実サバイブ天使」を披露。“労働!”“感謝!”というコール&レスポンスを含め、独特のテンション感でゆめみたワールドに引き込む。最後は仲町あられ(Vo.)の拡声器を用いたアジテーションや、サビでは千石ユノ(DJ&Mp.)とのツインボーカル体制で盛り上げた「夢現妄想世界」で締め。宮永ののか(Gt.)と峰月律(Gt.)のポジションを忙しなく入れ替えながらの賑々しいプレイも込みで、徹頭徹尾カオティックな雰囲気が楽しく、Roseliaファンにもしっかりと爪痕を残していたように思う。

この日の主役・Roseliaは、登場の演出から圧巻だった。アリーナにクワイアとオーケストレーションによる壮大なオーバーチュア「Sage der Rosen」が鳴り響き、オーディエンスは立ち上がって期待に胸を膨らませると、突然、音楽が途切れて会場が暗転。ベートーヴェンの交響曲第5番、通称「運命」の最も有名で印象的なフレーズが流れ出す。しかし、その音楽もガラスの割れるような音と共に突如中断。真っ暗闇のステージに篝火が灯り、神聖にして厳粛なSEに導かれて、志崎樺音(白金燐子役/Key.)、櫻川めぐ(宇田川あこ役/Dr.)、中島由貴(今井リサ役/Ba.)、工藤晴香(氷川紗夜役/Gt.)、相羽あいな(湊友希那役/Vo.)の順で一人ずつステージに降臨する(以降、ライブ本編ではキャラクターを演じているのでキャラ名で表記する)。5人とも本公演のキービジュアルを再現した初披露の衣装を纏っており、ヘッドアクセサリと揃いの紋様で飾られた前垂れが、女神のような高貴さを醸し出す。

撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

ライブの初手として放たれたのは、重厚かつドラマチックなマイナーアップチューン「overtuRe」。“青薔薇”や“全てを賭ける覚悟”といったRoseliaを象徴するフレーズが多く盛り込まれており、劇場版『BanG Dream! Episode of Roselia Ⅰ : 約束』のEDテーマではあるが、その物語の先に進む覚悟を示す歌として、幕開けを飾るに相応しい1曲だ。そこから友希那の「今この時だけは何も考えなくていい」「私たちだけを見ていて」というセリフからスタートした「Break your desire」で会場にさらなる熱気を注ぐと、続くMCで友希那は本公演のテーマは“運命”であることを説明。「運命に身を任せるか、立ち向かうか。2つの気持ちの狭間で、私たちRoseliaはどう動くのか。その目で見届けて欲しいわ」。その意味深な言葉が、これから繰り広げられるステージへの期待をさらに高める。

「私たち5人が出会ったのも、もしかしたら運命だったのかもしれませんね」(紗夜)、「でもここまで来るのは決して簡単じゃなかったよね」(あこ)と感慨深げに語る5人。そして「次に歌うのは9年間の想いが詰まっている曲よ。私たちの始まりの曲」(友希那)と告げると、Roseliaの最初のオリジナル曲「BLACK SHOUT」を届ける。しかも楽曲の半ばに演奏メンバーそれぞれのソロ回しパートを入れたアレンジバージョン。まさにこの9年分の成長と進化を込めた、新たな「BLACK SHOUT」で会場を熱狂させた。

冒頭のギターイントロを含め紗夜にスポットライトを当てた「Swear ~Night & Day~」では、友希那が1番でステージ中央の入場用アーチ前のステップに腰掛けながら歌唱。そのアーチのスクリーンに投影された雨粒の映像演出が“降り注ぐ痛み”を、その後の2番で友希那の側に寄り添いながら背中合わせで演奏する紗夜とリサ、さらに彼女たちと同じ段で横並びになって演奏するあこと燐子の姿が、立ち止まることなく共に進んできた5人の“誓い”を思わせて、胸が熱くなる。

続くMCで、過去の思い出深いライブについて口々に語り合い、これまでの歩みを振り返った5人は、コロナ禍により思い通りにライブができなかった時期のことにも触れる。それまで当たり前のようにあった音楽による交歓が、当たり前ではなくなった日々。「闇を知ったからこそ見える景色がある。そうして何度でも立ち上がり、扉を開く。すべてを賭けて」。友希那のそんな言葉を合図に披露されたのは「ROZEN HORIZON」。彼女たちの人気曲のひとつ「FIRE BIRD」のアンサーソングとして制作された、不死鳥の如き不屈の精神を宿した青き薔薇たちの歌だ。友希那が「すべてを賭ける覚悟、今此処に!」と力強く宣言すると同時にステージからは火柱が上がり、情熱的な歌と演奏によって会場を“新世界”へと導いていく。

撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

そしてライブ前半戦のクライマックスを壮大に彩ったのが、6月26日にリリースを控える17th Singleの表題曲「Requiem for Fate」。当然、ライブで披露するのはこれが初めてだ。紗夜とリサを伴って花道に進み出た友希那は、「さあ、運命に抗いましょう」と不敵に言い放つと、バンドは「ROZEN HORIZON」をも凌駕する灼熱のスピードメタルでアリーナを蹂躙する。ポエトリーリーディングのようなパートも盛り込んだ、Roseliaの最新進化形態ともいえる本楽曲によって、彼女たちは立ちはだかる“運命”を自らの手で葬り去り、会場の熱狂と称賛を勝ち取ってみせた。

ここまで怒涛のステージが展開されたが、Roseliaの単独公演と言えば、バラエティ色の強い幕間映像も魅力のひとつ。メンバーが各々の担当キャラクターを演じながら様々な企画にチャレンジする、恒例の「キャラ設定をくずしちゃいけない!!」シリーズとして、今回は“運命の館”からの脱出を賭けたギャンブル対決が行われた。その面白さを文章で伝えるのは難しいので、詳しくはぜひ配信アーカイブ映像を観てほしいが、オリジナルのカードゲームやぱちんこ、グレート-O-カーン、テリテリマン、なつぽい、藤都子、Roseliaの担当プロデューサーが出走したダービーなど盛りだくさんの内容で、メンバー5人もキャラを忘れて楽しんでいたことはお伝えしておきたい。

ライブ後半戦の幕開けを飾ったのは、ベートーヴェンの交響曲第9番の合唱パート、通称「歓喜の歌」。天上のミラーボールが回転して会場全体が光に包まれるなか、楽器を携えたメンバーたちが登場して「Keep Heart」を奏で始める。スマートフォン向けゲーム「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」には2021年1月に実装された楽曲だが、ライブでは今回が初披露。そのメロディやサウンドには晴れやかさが宿っており、前半戦とは違って舞台セットの電飾が煌びやかに輝く演出も合わさって、過酷な運命を乗り越えた先の希望を感じさせるパフォーマンスだ。さらにシーケンスによる高速リズムに合わせて紗夜が冒頭のギターリフを繰り返し弾いて会場を煽るアレンジも秀逸だった「BRAVE JEWEL」で会場のボルテージは沸点へ。フロント3人が左右ウイングに展開するなど、広いステージを活かした見せ方でも盛り上げる。

その後のMCでは、5人揃ってセンターステージまで出てきて新衣装をアピール。衣装デザイン担当の燐子が、前垂れの紋様のデザインはタロットカードの“運命の輪”をモチーフにしたことを明かす。そしてピアノの華麗な調べと美しいメロディが印象的なパワーバラード「Safe and Sound」、冒頭でリサがスラップ演奏を盛り込んだベースソロで魅せた「ZEAL of proud」を続けて演奏。特に後者ではメンバー5人が歌い繋いでいくパートで、センターステージまで躍り出てギターソロを披露した紗夜を友希那が追い、ひとつのハンドマイクを使って2人で歌う場面もあり、頂点を目指して前進する5人の絆の強さを改めて感じさせた。

撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

早いものでライブは残すところ、あと2曲に。友希那は「これは終わりじゃなく、新しい始まり。そう信じられる音を、今ここで」と語ると、昨年のツアー“Roselia LIVE TOUR「Rosenchor」”でもクライマックスの局面で披露していた「一逢のFull Glory」をパフォーマンス。一期一会の歓びを伝える栄光の歌がアリーナ中に響き渡る。落ちサビでメンバー5人がお互い向き合って演奏&歌唱する演出もエモーショナルだ。そしてライブ本編のフィナーレを飾ったのは、6月26日に同時リリースされる16th Singleの表題曲「Dazzle the Destiny」。“運命”の光の側面を表現した、「Requiem for Fate」とは対照的なナンバーで、5輪の薔薇たちによる絢爛なアンサンブルが会場を眩く照らし出す。最後は友希那がセンターステージまで歩み出て、生命力に満ちた歌声で不変の輝きを誓うと、あこが銅鑼を叩いて祝祭のステージを締め括った。

すかさず巻き起こったアンコールを受けて、まずは幕間映像の後半パートが上映されると、Tシャツ姿に着替えた5人が登場して、「キャラくず」勝負の結果発表、さらにRoselia初のアジアツアーとフリーライブの開催という嬉しい新情報を届ける。しかもフリーライブの会場は、Roseliaの1st Live「Rosenlied」が行われたのと同じ場所、東京・渋谷のライブハウス、duo MUSIC EXCHANGE。開催日は奇しくも中島由貴の誕生日当日となる9月12日。YouTubeでの無料生配信も予定されており、きっと伝説のライブとなることだろう。

そしてアンコールの1曲目に演奏されたのは、5人の道が交わりひとつになることを歌ったシンフォニックなナンバー「"UNIONS" Road」。間奏で紗夜、リサと共にセンターステージへと歩み出た友希那は、「今日は最高の時間をありがとう。こうしてあなたたちに出会えたのも運命。私たちと会場のみんなでひとつになりましょう」と呼び掛け、客席にマイクを向ける。「Wow wo wow…」と合唱する声が溶け合い、その場にいるすべての人の想いがひとつになって最高の景色を作り上げた。

そこから友希那が間髪入れず「ここにいるみんなに聞きたい。あなたたち、Roseliaにすべてを賭ける覚悟はある?」と檄を飛ばすと、この日のラストナンバー「FIRE BIRD」に突入。始まりと同時に銀テープが発射されると、友希那は猛ダッシュしてメインステージを駆け巡りながら、火の鳥のように熱く力強い歌声を会場中に注ぐ。熱気溢れる演奏、燃え上がる火柱、赤とオレンジのペンライトで染まる客席。会場を絶世の新世界に塗り替え、この日の頂点となる盛り上がりを見せるなか、熱狂のライブは幕を閉じた。

夢限大みゅーたいぷ 撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

Roselia 撮影:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

最後のMCで相羽が少し種明かししていたように、ライブ前半戦は“闇”、後半戦は“光”を感じさせる楽曲を中心にセトリを組み、それぞれの終点に“運命”をモチーフにした対照的な2曲の新曲を置くことで、バンドのこれまでの軌跡と、それを経た最新の姿を見せる構成が素晴らしく、舞台セットや演出も非常に練られたものだった。そして何より、バンドとしての逞しさと華やかさを併せ持ったステージング。演奏力やフィジカル面においても、一朝一夕には築けないものが感じられたし、間違いなく最高点を叩き出したライブだったように思う。だが、Roseliaの頂点を目指す物語はまだ終わらない。彼女たちの“運命”は常に音楽と共にあるのだから。

取材・文:北野創 撮影:ハタサトシ、関口佳代

 

セットリスト

■2025.06.15 Roselia「Sei stark」@東京・有明アリーナ

アーカイブ配信受付中
【単日視聴
価格:5,500円(税込)
販売期間:~2025年6月22日(日) 21:00まで
配信期間:~2025年6月22日(日) 23:59まで
【2DAYS通し視聴
お得な価格で、6月14日(土)開催のRAISE A SUILEN LIVE 2025「REBEL SOUNDWAVE」を含む2公演いずれも視聴いただけるです。
価格:9,900円(税込)
販売期間:~2025年6月21日(土) 21:00まで
配信期間:各公演視聴の配信期間と同時刻となります。
※近畿大学附属高等学校 E.S.S.S.(第4回全国高校軽音楽部大会「we are SNEAKER AGES」優勝校)の配信はございません。予めご了承ください。
◆各公演の詳細はこちら:https://bang-dream.com/raiseasuilen-roselia2025

【夢限大みゅーたいぷ】
01.コミュ着火Fire!
02.限界現実サバイブ天使
03.夢現妄想世界
【Roselia】
01.overtuRe
02.Break your desire
03.BLACK SHOUT
04.Swear ~Night & Day~
05.ROZEN HORIZON  
06.Requiem for Fate
07.Keep Heart
08.BRAVE JEWEL
09.Safe and Sound
10.ZEAL of proud
11.一逢のFull Glory
12.Dazzle the Destiny
<アンコール>
13."UNIONS" Road
14.FIRE BIRD

 
「BanG Dream!(バンドリ!)」公式サイト:https://bang-dream.com/
「BanG Dream!(バンドリ!)」公式X:https://x.com/bang_dream_info
「BanG Dream!(バンドリ!)」公式Instagram:
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「BanG Dream!(バンドリ!)」公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bangdream_music
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(C)BanG Dream! Project