GLIM SPANKY 確かな足跡を刻んだ1年と新作『ワイルド・サイドを行け』を語り尽くす
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GLIM SPANKY
2015年もっとも衝撃的なデビュー劇と言っても良い。1stアルバムをリリースするや否や、そのヴィンテージロック然としたサウンドと、強烈な個性をもったハスキー・ヴォイスで一躍話題となったバンド・GLIM SPANKY。「みうらじゅん賞」の受賞をはじめ、各界の大御所たちが次々とレコメンドし、注目を集めたのも記憶に新しい。そんな彼女たちが2016年の幕開けにリリースするのが、5曲入りのミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』である。詳しくはインタビューをお読みいただければと思うのだが、とにかく引き出しの多さとアレンジのセンスには驚かされるばかり。前作までの流れを敢えて引き継いだリード曲あり、自然と生まれるというフォーキーなサウンドあり、新機軸ともいえるUKロック的アプローチ有りと、充実の作品に仕上がっている。SPICE初登場となる今回はその新作を軸に、大ブレイク目前の彼女たちの想いに迫った。おそらく天性のクリエイティヴィティとクレバーな視点、ロックシーンを背負って立たんばかりの気骨に触れてみてほしい。
――2015年はお二人にとって色々と大きく動いた年だったんじゃないかと思います。
松尾レミ(Vo/G 以下、松尾):そうですね。デビューして1年経ったので、色々と変化もあり、一番大きく感じるのはライブの空気感がすごく変わってきて、何も言わなくてもお客さんが自然と盛り上がるような空気になってきた、そこはすごく変わったなと思うところです。あと、デビューして1stアルバムを作るまでで自分たちが学んできたこと、いろんなプロデューサーやディレクターから盗んだことを、ちゃんと新しい作品で出せたんじゃないかなって。そういう面では成長した一年だったと思います。
亀本寛貴(G 以下、亀本):でもあんまり「俺たち来たなぁ!」みたいなことを実感する間もないくらいで。ライブにしても、もっとすごいライブじゃないと!っていう気持ちの方が今はむしろ強い感じではありますね。
――理想とするところは当然、まだまだ?
亀本:そうですね。まだまだ……ですねぇ。
松尾:スタート地点、やっとスタート地点っていうところなので。
亀本:何回スタートすんの?(笑)
松尾:いいの!(一同笑) 死ぬまで「こっからだ、こっからだ」って言い続けていきたいなって。
――世間的には認知もすごく増えて、広がった年でもあると思うし、アルバムという形で作品が世に出ましたけど、ちょっとした区切りぐらいの。
松尾:そうですね、始まりの一歩くらいかなっていう感じ?
亀本:変わったなって思うのは、やっぱCDとか曲をある程度出したことで……今まではほぼ初めてCDを出すみたいな状況だったのが「次、どうしよう」ってなる感覚が初めてだったので、こう……これをずっと繰り返していくのって大変だなぁって思いましたね。前回と同じことをしたってダメだし、変わるっていっても”ダメに変わる”っていうこともあると思うし。だから、どう積み重ねていくのか、それとも一回ぶち壊してまた積むのかっていう、「次はどうするのか」を考えることが、簡単なことじゃないんだなっていうことを今初めて実感してる感じです。
――確かに。1枚目は、ほとんど知られていないところに「こういう人たちなんです」っていう作品を出しますからね。それを受けた次の一手をどうするのか。
亀本:そうなんですよねぇ。新しいファンを獲得しつつも、今いるファンの方々にも満足してもらえるものじゃなきゃダメだし。やっぱ……大変ですね(一同笑)。
新しい存在を認識してもらうには、
同じことを何回もやらないと絶対ダメだと思った (亀本)
――その一手になるのが、まもなくリリースになる『ワイルド・サイドを行け』になるわけですけど、早速聴かせていただいて。5曲なんですけど、色々入っている作品だなぁと。
松尾:おお、ありがとうございます!
――どちらかというとブルース要素というか、埃っぽさは少し薄れていて。もうちょっとアメリカン・ハードロック的なわかりやすさが前面に出つつ、でもそれだけじゃないというか。
亀本:全体の質感としては、本当におっしゃっていただいたような、重くてドヨンとした感じよりはカラッとした、若干アメリカンな明るさのあるようなテイストっていうのは、アートワークも含めて出したかったんですよ。その辺が伝わってるのは嬉しいよね。
松尾:うん。あと、5曲が全部違うテイストであるべきっていうのはフルアルバムのときから変わらずにあって。それに今までのGLIM SPANKYの楽曲って、基本的に生っぽい楽器しか使わなかったんですけど、今回はシンセをいっぱい使いたいと思ってかなり派手に入れたんですよ。
亀本:頭3曲は全部シンセが入っているので。
松尾:元々GLIM SPANKYがデビュー前に得意としていた楽曲の感じが、4~5曲目のちょっとアコースティックっぽいフォーキーな感じで。メジャーデビューしてからロックっぽい、元気な感じの楽曲を作りはじめたので、もしかしたら世間一般の強目のロックなイメージとは、本当はちょっと違うところにGLIM SPANKYはいて。そこをもうちょっとちゃんと見せたいなってことでこの2曲を入れたし、表題曲の「ワイルド・サイドを行け」に関しては、今まで「褒めろよ」や「リアル鬼ごっこ」っていう曲だったりの疾走感のあるロックを立て続けに出してきたので、印象づけとしてもう一曲、似たビートで前作と繋がるものを、だけど進化しているものを出すっていう。それ以外の4曲は全部違うビートで、ブルースっぽいシャッフルビートだったり、ポップで可愛いシャッフルビートだったりとか、UKロック的な曲だったりとか……全部違うテイストでロックの幅広さを出そうということで5曲をアレンジしました。
亀本:一曲目をタイトルにもして、リード曲として作ろうとした意味は、「GLIM SPANKYってどんな感じ?」って聞かれたときに、そういうエネルギッシュで疾走感があってっていう部分が、大きな枠組みで見たときに自分たちの印象になる……そうしようという意識というか、覚悟が僕の中であるんですよね。「褒めろよ」と「リアル鬼ごっこ」を出して、またこういう曲調を出そうっていうのは。例えばめちゃくちゃテンポの遅い曲を一曲目にしても良かったんですけど、なかなか印象づけとしては弱いなって。新しい存在を認識してもらうには、同じことを何回もやらないと絶対ダメだと思ったので、そこは意識的に決めました。
松尾:うん。だけどちゃんと5曲聴けば、ちゃんとそれだけじゃないっていうのが伝わると思います。
――まさにそういう作品ですよね。個人的には4~5曲目の感じがすごく好きです。
松尾:ありがとうございます! 嬉しい。何も考えずにギターを弾くとああいう曲がいっぱい生まれるんです。
亀本:そう。大体「曲出来た」っていうとああいうアコースティックギターを弾いて、みたいな曲調が多いんですよ。「ちょっとハードな曲作らないとやばいね」みたいになってそっち系の曲を足す、みたいな(笑)。
松尾:そうそうそう! 本当に気持ちよくできちゃうので、自分の得意としている部分だと思うんですけど。
亀本:(クレジット)表記もそうなっていて、4~5曲目は松尾レミ作曲になっていて、他3曲はGLIM SPANKYになっているんです。メジャーデビューしてから、前半3曲みたいな曲を一緒に作って新しいテイストを出せるようになってきた、ロック色の強い曲を一緒に作れるようになったのは、僕としてはすごく嬉しいんです。
――俄然ウェイトが増してきてるんですね。
亀本:そうですね(笑)。
松尾:今までビートとかドラムから曲を作るっていうことをやってきていなかったので、そういう曲にも挑戦し始めてる感じです。特に「BOYS&GIRLS」なんかは、「こういうリズムで行こう」からはじまって、そこから歌を作っていて。だから自分たち的にもすごく新鮮で、色んな挑戦が出来てるなっていう感覚はあります。
GLIM SPANKY 松尾レミ
爆発させるんだったら、良いもの爆発させろよ!って (松尾)
――なるほど。せっかくなので一曲ずつに関して、もう少し深く聞いていきたいと。まずはリードトラックの「ワイルド~」ですが、順序としてはまずこの曲が最初に出来たんですか?
亀本:いや、これが最後なんですよ。
松尾:この曲が一番最後に出来ましたね。これがさっきお話しした、あえて「ロックな曲をもう一曲」という曲、元気な曲を足したという(笑)。
亀本:最初、出来上がった曲を集めて並べてみたんですけど、「ちょっとイナタい(※泥臭いなどの意味)ぞ?」みたいな感じになって。やっぱり一曲くらいは必要だなと。
松尾:疾走感のある感じがね。そこから作り始めたんですけど……今までのシングルのリードトラックって、どれもタイアップが付いてから書き下ろした曲だったんです。今回はそうじゃない状態で書いてみようと書き始めて、自分が何を一番伝えたいんだろうって思ったときに、今の日本の音楽業界の中に「ロック」という分野って本当に少ないし、大衆的なものになっていない、大きな目で見たら。だけどロックってポップなものだと思うし、ちゃんとロックの土台を作りたいと思ったのと、日本語だけど世界に通用するようなサウンドをみんなで作っていきたいなっていうのがあって。こう……道なき道を切り拓いて、デカい世界を見に行こうぜっていう気持ちが一番強くて、この曲ができたんです。ワイルド・サイドーー決められたきれいに舗装された道じゃなくて切り拓いて、だけど一人だと細い道しかできないので、やっていることは違えど、みんなで同じ目標を持っていけば大通りが拓ける。決められた道って、行き先がもう分かるわけで、そうじゃなくて道なき道を突き進むことによって生まれる希望を歌いたくて。ちょうど今、社会情勢的にも色々あって、最初は歌詞に<同時多発>とか、そういうキーワードを入れてたんですよ。それが、曲が出来た後にパリでテロが起こってしまって、違う言葉にしたんですけど。でもそれって逆に言えば、自分のクリエイトしていたものと社会情勢が私の中でリンクしたわけで。
亀本:え、そうなの!?(笑)
松尾:そう、勝手にね。自分の言っていたワードが現実に起きてしまったことに、何か意味があるように思えちゃって。もちろんテロ肯定でもなんでもなくて、爆発させるんだったら、良いもの爆発させろよ!って思うわけですよ。カルチャーだったり、ロック、パンクとかそういうものっていつの時代も同時多発に生まれたものなんですよね、ニューヨークとロンドンでとか。そうやって文化って生まれてきているので、言葉自体は使いませんでしたけど、そういうテーマは今歌うべきだと思ったんです。社会に向けてそろそろ歌ってみても良いんじゃないかなって、そのスタートがこの曲かなと。……みんな幸せになりたいと思うんですよ、みんなで喜び合いたいし。だからハッピーなものを爆発させよう、同時多発させようっていう気持ちがすごく大きくて、その上で見える絶景をみんなで見れば、一人で見るよりももっと喜びは大きいということを歌いたかったので、こういった歌詞になりました。
――そもそもロックというジャンル自体、そういった性質が強いですからね。つづく「NEXT ONE」はブラインドサッカーの公式ソングにもなっていますが、そのために書き下ろした楽曲なんですか?
松尾:はい。ブラインドサッカーの事務局長をされている方がもともとGLIMを知っていて、聴いていただいてたらしいんですよ。その方がブラインドサッカーを頑張って世間に広めようとしているんですけど、どうしても普通のサッカーと同じようにはいかない。でもそこで戦っているし、この日本から世界に向けて挑戦しているワールドワイドなスポーツで、「もっと世界に行ってやる」っていう野望のある人たちなんです。その情熱がすごく自分たちとリンクして。私たちもブラインドサッカーも、同じように音楽で世界に行ってやろうと思ってる、その今の位置というか、どちらも「これから」という時期であることが、事務局長さんのお話を訊いていたらだんだんと自分のことのように思えてきて。だから歌詞もブラインドサッカーのことだけを思って書いているわけではなくて、自分が本当に思うことを素直に書いたらブラインドサッカーと繋がった、というくらい自然に書けたものだったので、すごくいいコラボレーションになったなぁって思っている曲です。
――なるほど。
松尾:試合の前とかにコートでこの曲がかかるので、選手の気持ちを奮い立たせられるような曲がいいと思いながら作って、人間を奮い立たせるのって早いビートもあるんですけど、本当に心底奮い立つビートって心臓のビート……鼓動とかのミディアムテンポだと思うんですよね。なのでミディアムの重目なビート、息をするくらいのスピード感にしたら人間の本能的にきっと奮い立つはずだと思って、ゆっくりめのビートにして。あとはみんなが歌える要素、リフだったりとかメロディだったりもスポーツの音楽には必要だと思ったんです。亀本がサッカー好きなんで、一緒に試合を観てたりもするんですけど、観客がホワイト・ストライプスの「セブン・ネイション・アーミー」を<オー、オオオオオー>って合唱してるんですよ。あれってリフ、ロックのリフだし、そんな風にみんなが歌えるようなリフでもいいし歌でもいいし、みんなが一緒になれるような要素がたくさんあればいいなと思って。だからこの「NEXT ONE」もギターのリフが歌えるんです。サビのところの<YEAH YEAH>のところもみんなで歌えるし、ドンドン、パンっていうシンプルなリズムですし。そういう一体感を生む要素をたくさん盛り込んであるんです。選手の方や観客が試合中や練習中に一体になる瞬間があればいいなって思って作りました。
亀本:リズムでいうと、この曲でめっちゃ自分的に発明した!と思ったところがあって。例えばクイーンの「ロック・ユー」とかってドン、パン、ドンドン、パンじゃないですか。そこをリフのメロディの頭も含めて、前の拍子の頭の裏から、半拍早く始まってるんですよ。ンドンドンって。それは他にあまり無いなと思って。ドン、パン、ドンドン、パンだけだと「聴いたことあるよ」ってなっちゃうのでずらそう、どうにかして他と違うことをやろうと思って半拍ずらしたら奇跡的にできたんですけど、結果としてリズミカルにも聞こえると思うんですよね。これはもう発明だろうと(一同笑)。
――確かにそうですね! それがグルーヴ感にも一役買うでしょうし、ライブでも盛り上がる様が目に浮かぶというか。
松尾:ありがとうございます。これもみんなで歌えたら楽しいなって思いながらコーラスを作りましたね。
――「BOYS&GIRLS」は一転して軽やかでファンキーな感じですね。
松尾:そうですね、シャッフルビートで。
――といってもトレンドの、最近多い感じのファンキーさとはちょっと違う雰囲気もあり。
松尾:もうちょっと土臭い感じもあり、ポップでキュートな。
亀本:ポップス的な要素も意識としてはあったんです。
松尾:そうそう、テイラー・スウィフトとか、そのぐらいのポップさのイメージはありましたね。そこにちょっと挑戦しようかなと思って……シャッフルビートってもともとブルースだったりジャズだったりとかそういうアダルティな?(笑)感じがするんですけど、そこをキュートにしよう!と。メロディはポップでキュートでシンプルでっていうことを心がけながら作って、歌詞は、この曲も「ワイルド・サイドを行け」と同じ方向性を歌いたいなと思って作ったんですけど、とにかく……大人という存在、年齢じゃなくて、うまく誤魔化したりだとか逃げたりっていう方法を知ってしまった大人たちに向けていて。子供ってそういう大人を見ると「ズルイな」とか「本当はあんなことしちゃいけないのに」って純粋に受け取ると思うんです。それって例えば、TVで政治家がそれっぽいこと言ってる、私は政治のことは100%は分からないけど、そんな”子供”の私からすれば「うわぁ大人ってズルイな」ってやっぱり思うわけですよ。だからそういうことを、可愛く歌にしようと思って。ガチで歌にしちゃったら……
――まぁ、色々とねぇ(笑)。
松尾:そうなんですよ(笑)、なんかちょっと。だけどそれをキュートな感じで曲にすることによって、刺さるものはあると思うんですよね。なんだろう、笑顔でめっちゃ怒ってるのって怖いじゃないですか。それみたいな感じ(笑)。それに「大人を困らせる」っていうキャッチーな言葉をすごく使いたくて……この言葉を使おうと思ったきっかけが、みうらじゅんさんと以前対談したときに「アイデン&ティティー」っていう映画の中で「大人を困らせる」っていう言葉を言ったっていう話をしていたことで。みうらさん、もう50代で父親とほぼ同じ年代なんですけど、そんないい大人が「大人を困らせたいよね」って言ってるわけですよ。もう、最高だな!と。そういうキッズな心を持ち続けた大人になりたいとも思いましたし、それぐらい怖いもの無しの気持ちを年齢関係なく持っていたいなと。これはいままでデビューしてから書いてきた曲の中で一番早くできた曲で、2時間ぐらいで原型はほぼできちゃって。
――おお、それは早いですね。
松尾:1stアルバムのツアーを回っているときだったんですけど、その間に曲を書かなくちゃいけなくて……私、本来すっごい時間かかるんですよ。曲書くのに。でもそんなこと言ってられなくて、ライブ終わったらすぐホテルに戻って朝まで曲書いて、次の日のライブまでになんとか終わらせないといけない、とかそのぐらいタイトで。「こういうフレーズもいいな」「こんな言葉も歌いたいな」とか、他のことを考えずに「はい、私はこれを伝えたい!」っていうことを明確に決めた上での曲制作だったからすぐできたというか。今までは何度も何度も歌って言葉が生まれる奇跡を待っているような作り方だったんですけど、この曲はテーマを決めてダイレクトに挑んだことですごく明確になったし、遊ぶこともできたなと思っていて、最近の自分の中でも特別な曲になってます。
GLIM SPANKY 亀本寛貴
人間って常に矛盾していて、私もすごく自信のある自分と
すごく自信がない自分と二人いる (松尾)
――そういう意味では新境地といえるかもしれないですね。そして4曲目「太陽を目指せ」。これはさっきも言いましたけど、好きです。僕は。
松尾:ありがとうございます! 嬉しい~。この曲は「褒めろよ」を書いていたときに、もう一曲作ろうと思って作ったんです。「褒めろよ」がすごく強気でアップテンポな曲だったから、もう一個書く曲は反対の感じの曲にしようと思って作ったんですけど、やっぱりこういう曲って一番私が得意としている曲で。昔から、高校のときにバンドを組んでから、オリジナルを作るとこういう曲がどんどん気持ちよく生まれてきたんですよ。歌詞は……地元が長野県のド田舎の村なので、すごく自然と自分の生活っていうものが密接なものとしてあって。太陽も月も星も川も山も、それに囲まれて育ったので、そういう大地のデカさ、凄さとかそういうものを曲にしたいなっていうところと、自分がポリシーとして持っている”目指す目標は誰よりもでかく”っていう気持ちとをリンクさせて、人間の生きるべき道であったり目標はなんだ?っていうことを書きたかったんですけど。太陽って私たちの世界で一番大きなものであって、太陽がないと人間だけじゃなく植物でもなんだって生きれなくて、月も太陽の光で光ってるわけですよね。目指すなら太陽に手を伸ばすくらい、そんくらいデカい目標を持っていきたいねっていうすごく前向きな歌詞で、だからこそ自然の辛さとかも対照的に描いていった曲です。
――面白いなと思うのが、一曲目の「ワイルド・サイドを行け」と対になってるなって。ワイルド・サイドを行くことと、太陽を目指すことってパッと見は逆ですよね。
松尾:片や道なき道で、片や目指すべき場所があってっていう。
――そうそう。でも、お二人のやっている音楽とも通じるのかなと思うんですけど、ルーツっぽいロックをベースにやるっていうのは、今のトレンドからすると「ワイルド・サイド」だと思うんだけど、元々のロックでいうと王道なわけじゃないですか。
亀本:そう、そうですね。
――そこもリンクしている、象徴するような曲なのかなって今聞いていて思いました。
松尾:いやぁ、すごく素晴らしい言葉を(笑)。実際に、精神的にも「ワイルド・サイドを行け」って自分からこう誰かに言っている、応援している視点が強くて、こっちの「太陽を目指せ」は自分の心の中へ訴えかける曲なんで、逆の要素はありますね。それに今言っていただいたように……なんていうか、人間って常に矛盾していて自分が二人いると思ってるんです。私もすごく自信のある自分とすごく自信がない自分と二人いるんですよ、自分の中に。多分みんなそうだし、その矛盾している自分っていうのも描けたらいいなっていう想いは昔からあって、この2曲はそういう面でもすごく対になっていると思います。
――では最後の「夜明けのフォーク」。この曲は先程言っていたUKロック的な感じで。アメリカっぽい中にこの曲が一個アクセントになってますね。それこそオアシスとかのテイストの。
松尾:この曲は大学2年生のときに作っていて、元からあったんですけど、当時映画学科の先輩から「自主映画を作るからその主題歌として書いてくれないか」って言われたのがきっかけで作り始めたんです。その内容が、人の死ぬ映画で、すごく仲の良い友達が死ぬ、で、私たちはこれからどうしたらいいんだって途方に暮れるっていうものだったんですね。そのときにその映画を観たりとか台本を読んだりして「友達が死ぬってこういう感じなのかな」って想像しながら歌詞を書いていったんですけど、その頃は身の周りに誰も死んだ人がいなかったから、本当にわからなかったんです。それからもこの曲はライブでやることもなくて眠っていたんですけど、絶対にいつか出したいなっていう想いは元からあって。でも何かまだ歌詞に落とし所が見つからなくて、フラついてる感じがするなって思っていたからできなかったんです。でも2014年、私がすごく尊敬していてすごく仲が良くて、音楽的会話も通じていた同志が自殺しちゃったんですよ。
――そうだったんですね。
松尾:それがすごく私の中でトラウマというか……本当に素晴らしいミュージシャンだったので「なんでだ」とか「今死んで良かったのかもしれない」とか、色々と渦巻いて。でも一緒にメジャーデビューしようって言ってたよなとか、音楽で世間を変えようって話したよなとか、何をしててもその子のことを思っちゃうし、かなりこう……精神的にショックだったんですよ。なにかこの気持ちを曲にできないかな、乗り越えたいな、その子のためにも書きたいなって思うようになって、「あ、そういえばずっと完成させずにいたあの曲、今なら書ける」と思ったんです。映画があってできた曲だし、映画のキーワードやテイストって曲げるべきじゃないと思っていたので、そこは極力変えずに。でもその映画の内容と自分の体験ってかなり通じる内容だったので、やっと書けた。3年越しに完成させることができた曲ですね。だからこの曲は自分の中でもすごく特別だし、ずっと心の中にあったシコリが今回リリースすることで取れた気がするし、私がその友達に抱く切なさとか想いとか……自分で自分の背中を押したかったんでしょうね。サビの部分なんかも、自分に向けても書いたし、その子の周りにいた人たちにも届けばいいなって思ったし、これは極めて個人的な想いが強い曲ですね。
――今のお話を聞いた上で、この曲のアレンジだったりメロディを聴くとまた違いますね。
亀本:うーん、そうですねぇ。
松尾:アレンジでいうと、ストリングスは前からずっと入れてみたいなと思っていて、でも中々ストリングスが合うのはこの曲だ!っていうものがなくて。この曲を書いた大学生当時はレコーディングなんてしたこともないし、ストリングスなんて入れられるわけないし(笑)。だから入れるなら今だし、今なら入れられるってことで。
――いい感じで入ってますよね。大仰に歌うわけでもなく。
亀本:そうですね。作っている時点から結構明確にバンドの音というか、ガッチリとブリティッシュ・ギターロックにしよう!と思っていたので、そこにストリングスが乗るのがこの曲にはいいんだろうなって感じてたんです。それに古い曲って早く出していかないと、自分たちも音楽活動の中で脱皮してアップデートされていってしまうんで、(曲の)賞味期限が切れてしまうし早く出さないとって思ってましたね。僕としては。
――だから世に出るタイミングとしては今だったんでしょうね。……という5曲が収録された作品を引っさげて、ツアーがありますね。
松尾:はい。東名阪で3ヶ所行うんですけど、今回は合唱だったりコーラスが入っている曲があるので、ライブにもCDを聴いてきてもらって、歌いたい人は歌ってほしいし、心の中で歌うでもいいし(笑)、好きに盛り上がって欲しいなと。あと段々とお客さんも増えてきて、GLIM SPANKYの過去の曲を知っている人も増えてきたので、全て新しい曲っていうよりは、ちゃんと過去の曲も変わらずにやり続けられるようなライブをしたいって思ってます。
亀本:それが逆に今ちょっと悩みの種で(苦笑)。リリースしてる曲とリリースしてない曲とでお客さんの温度差みたいなもの、今まで感じたことなかったんですけど、やっぱりCDが世に出ることによって感じるようになりました。だからリリースした曲を聴いて来てくれたお客さんと、一緒にキャッチボールできるライブっていうのがやっと出来るようになってきたかなって。……それに僕は満ち足りてしまうとすぐに次に行きたくなる性分で、「あ、なんか新しいことしなきゃ」みたいな(笑)。だから今回の音源もシンセを入れたりとかしていて、でもステージには4人しか立たないので同期で流そうと思うんですけど、そうするとやっぱりライブの尺とか細かいフレーズとかをその場のノリとかで変えることができないんですよね。だから良い意味で緊張感が生まれて、完成度の高いライブ……生々しいロックとは少し違う方向に行くかもしれないですけど、そういう緻密なプレイも出来るようになりたいなっていうのはあるので。次のツアーではそういう面も見せたいって思いますね。
――新旧で曲も増えてきて、セットリストの組みがいもありそうですよね。
松尾:確かに!
亀本:そうなんですよね。そういう方向の面白さもあるなぁってすごく思ってます。
松尾:やっぱりライブが一番、生々しく伝わる場所でもあるし、“今そこでやっている”ことの重要さ、歌っていることの重要さっていうのを、来て感じて欲しいと思う。やっぱり歌って――ギターもそうですけど、テンション感だったり空気感だったり、その場でしか歌えないもので。私はそこを一番大事にしているし、ライブって映像に撮ったとしてもキレイに音源に録ったとしても、絶対にその場の空気って完璧には伝わらないんですよね。熱もそうだし、匂いも全て含めてのライブなので。だからそういう意味でナマモノの音楽を楽しみに来て欲しいなっていう気持ちが一番です。ライブは。
撮影・インタビュー・文=風間大洋
GLIM SPANKY
1.27(水) 発売
≪CD≫
1.ワイルド・サイドを行け
2.NEXT ONE (ブラインドサッカー日本代表公式ソング)
3.BOYS&GIRLS (トランスフォーマーフェス テーマソング)
4.太陽を目指せ(テレビ東京系「ポンコツ&さまぁ?ず」エンディングテーマ)
5.夜明けのフォーク
SUNRISE JOURNEY TOUR 2015 (2015.10.17 赤坂BLITZ)
1. サンライズジャーニー
2. 焦燥
3. MIDNIGHT CIRCUS
4. ダミーロックとブルース
5. 褒めろよ
6. WONDER ALONE
7. リアル鬼ごっこ
8. NEXT ONE
9. 大人になったら
10. さよなら僕の町
通常盤: CD TYCT-60077 ¥1,500+税
※CD収録内容は初回限定盤と同内容
ワイルド・サイドを行け iTunes:http://po.st/itglimwildside
レコチョク ワイルド・サイドを行け/バンドルリダイレクト:http://po.st/recoglimwildside
レコチョク ワイルド・サイドを行け/楽曲リダイレクト:http://po.st/recoglimwildsideal
ワイルド・サイドを行け 特設サイト:http://po.st/glimrock
4月2日(土) 名古屋 SPADE BOX
OPEN 17:30/START 18:00 3,500円(ドリンク別)
4月3日(日) 大阪 JANUS
OPEN 17:30/START 18:00 3,500円(ドリンク別)
4月16日(土) 恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 17:00/START 18:00 3,500円(ドリンク別)