カラフルに彩る、青春と命のきらめき～東島京×宮本佳林らによる、ミュージカル『四月は君の嘘』が開幕！　【ゲネプロ＆囲み取材レポート】

ミュージカル『四月は君の嘘』が2025年8月23日（土）、東京・昭和女子大学人見記念講堂にて開幕した。同日に行われた公開ゲネプロおよび有馬公生役の岡宮来夢と東島 京、宮園かをり役の加藤梨里香と宮本佳林、澤部椿役の希水しおと山本咲希、渡 亮太役の吉原雅斗と島 太星が登壇した囲み取材をレポートする。

原作は新川直司による同名漫画。ミュージカル界の巨匠作曲家フランク・ワイルドホーンを迎え、2022年に初めてミュージカル化された。再演となる今回はキャストを一新し、オーディションで選出された若手実力派が勢ぞろいしたWキャスト体制での上演となる。8月23日に行われた公開ゲネプロでは東島、宮本、山本、島が出演した。

母の死をきっかけにピアノの音が聴こえなくなってしまった、かつての神童・有馬公生。プロローグ『僕にピアノが聞こえないなら』は公生の苦悩と葛藤を示すナンバーだが、キャッチ―なメロディラインはこれから始まる物語に希望を感じさせ、一気に観客を引き込んでいく。

公生が高校生になったある日、幼なじみの澤部 椿を介して同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと出会う。かをりは公生の親友である渡 亮太に好意を寄せており、椿に仲を取り持ってもらったのだ。自由奔放なかをりに戸惑う公生だったが、彼女が弾くヴァイオリンの演奏に衝撃を受け、強烈に心惹かれる。

きらめくヒロインのようなかをりにとって、公生はまるで“友人A”——そんな関係性のはずだったが、渡の“代役”として公生をデートに連れ出すかをり。彼女の勢いに圧倒されっぱなしの公生だが、心なしかどこか楽しげだ。カフェを訪れた2人が互いの気持ちをなんとか探ろうと奮闘するデュエット「君がわからない」は本作のお楽しみナンバーのうちの1曲。キュートな掛け合いが、甘酸っぱく微笑ましい。

ミュージカルナンバーはどれもが登場人物たちの機微を抽出し、観客側の心ごと震わせる。渡がサッカーの試合に挑む「The Beautiful Game」では、パワフルで求心力のある島の歌声に胸が熱くなった。椿のソロナンバー「月の光」は彼女の優しさと切なさを、山本が深みのあるボーカルで包み込むように響かせる。

舞台装置は、階段状の可動式セットと盆の回転をフル活用。過ぎ去っていくかけがえのない時間を目まぐるしく、緊迫感あふれる場面は鬼気迫る空気感へと演出していく。コンクールの場面では、かつての公生を知るピアニストの相座武士（内海大輔）や井川絵見（飯塚萌木）らが中心となって歌い上げる「One Note～この一音に賭けて～」は息をのんだ。

公生の心に触れたかをりは再び音楽の道を示そうと、コンクールのピアノ伴奏を公生に依頼する。なかなかピアノと向き合うことができない公生だったが、かをりが抱えたとある秘密を知ることとなり……。

本作のストーリーに込められた、青春と命のきらめき。あるときは弾むように、あるときは胸を締め付ける感情のふれ幅を持つかをりを、宮本は繊細さと芯の強さで表現。特に「Perfect」では色とりどりの歌声を堪能させてくれた。

かをりと心を通わせるうち、徐々にピアノと向き合っていく公生。彼の心の動きを一つひとつ丁寧に描き出したのは、東島が持つ重厚な歌唱力だ。「君が聞こえる」のような壮大なナンバーによく映え、作品そのものを引っ張っていく。しばらくのあいだ、心地良い余韻が残り続けた。

公開ゲネプロ終了後、囲み会見が行われた。初日を迎えた心境については以下の通り。

岡宮：本当にみんな素敵なので、早く届けたいという気持ちでいっぱいです。

東島：エネルギーが滅茶苦茶に溢れているので、ダイレクトに受け取ってほしいです。

加藤：繊細な場面もたくさんあるのでエネルギーも大切にしながら、大切に紡いでいきたいです。

宮本：皆、それぞれのいろんな気持ちが届くといいなと思っております。

希水：キャストのみんなと、見に来てくださった皆さんと思いっきり青春したいです。

山本：キャスト一人ひとりが個性豊かでとても楽しいので、ぜひワクワクしながら見ていただけたら。

吉原：恥ずかしくなっちゃうくらい青春。拒まずしっかり受け取っていただきたいです。

島：ハンカチまたはティッシュが必須だと思います！

それぞれＷキャストで役を演じるにあたり、互いに協力し合い高め合っていたそう。公生の演奏シーンについて、ピアノ未経験者だった岡宮は経験者である東島から教わっていたエピソードを披露。また、個性的なヴァイオリニストという役どころであるかをりを演じるにあたり、加藤と宮本はヴァイオリンの早弾きに苦戦。演奏者の動画を見ながら研究を重ねたという。

椿役の希水と山本は、自分たちを“正反対”と表現。同じ曲でもアプローチがまったく異なっていたため、互いに「それいい！」「めっちゃ好き！」と声を掛け合った稽古だったと振り返る。爽やかなモテ男である渡役については互いを「この子（島）は天性の感じです」（吉原）、「（Wキャストとして）ライバル心を抱くタイプでしたが、今は大好きです！」（島）と称賛した。

稽古期間中には花火を楽しんだり、あだ名をつけ合ったりして仲を深めていったそう。会見中も笑いが絶えず、チームワークを育んできた様子が窺えた。最後に東島は「皆に平等にある“今”という瞬間が、どれだけ光輝いているかを感じていただける作品」と本作について表現。岡宮も頷きながら「青春を生きるみんなが本当にキラキラ輝いているので、ぜひ劇場で体感してもらえたら」と締めくくった。

東京での上演は9月5日（金）まで。以降は全国ツアーとして愛知公演、大阪公演、富山公演、神奈川公演が控えている。

取材・文・撮影＝潮田茗